IS……雪語り   作:クリスティア・ローゼン

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第22話

雪七と束、ロイが孤児院に向かっている間、千冬はあるところにいた。

 

「・・・・・何処だ・・・・・雪七は何処なんだ!雪七!頼む!いるなら返事をしてくれ!」千冬が今いる場所は雪七が誘拐され、身を置いていた場所だった。

 

「ブリュンヒルデ、少し落ち着いてください!」「これが落ち着いていられるか!」とそばにいたISを纏った女性に対し気が高ぶっているために取り付く島のなさそうな千冬は「そもそも貴様らが誘拐されたことを黙っていたのが原因だ!決勝の前に誘拐された?ならなぜそのことを私に教えなかった!雪七の命と称号なら雪七を助けに行っていた!!」と誘拐されたことを伝えられなかったことに対して怒りを見せる千冬だが、

「それなら言葉を返させていただきますが、何故あなたは優勝を果たし、インタビューを受けた時、日本にいる御家族に伝えたいとおっしゃったのですか?!」と水色の髪が外側にはねている女性がそのことを伝えると千冬は反論できずに口を結び、「私たちの家で貴女の家のことを少し調べさせていただきましたが、貴女と弟さんは雪七君の事を疎ましく思っていますよね?!そのような人に伝えたところで意味が無いと思いますがどう思われますか?!」と更に事実を重ねられ千冬は何も言い返せずにいた。

 

「・・・・・これから雪七君のことは私たち更識が調査し続けます。」と更識と名乗った女性が言い放つと千冬は「何故だ?!私も調査に加えろ!」と雪七の調査に加勢すると言ってきた。

 

そのことに対し、「・・・・・それは無理ですよ?何せあなたはドイツ軍に借り、ありますよね?今回の雪七君の誘拐について、ドイツ軍に協力してもらったとか・・・・・その代償に貴方は一年間ドイツ軍で教鞭を取らなくてはいけないのですよね?雪七君の調査にどう加わるというのですか?」と正論を言われグウの音も出せない千冬から目線を外し、「・・・・・私たちはこれから雪七君の生存を最優先に調査を続行します。ですがここにいないと考えれば移動したと考えるのが筋だと思われます。なので一旦家に戻り、それから調査を再開します。では一時解散です。」と後ろに控えていた女性達に今からの行動パターンを伝え、更識も飛び立とうとしたその時、「・・・・・ちょっと待て」と千冬に遮られた。

 

「・・・・・何ですか?」と更識が聞き返すと「・・・・・お前の名前を聞いてなかったのでな。成果は無かったが雪七の調査を手伝ってもらったんだ。名前くらいは知っておきたい。」と千冬が名前を尋ねてきた。

 

「・・・・・それもそうですね。では改めて。私は更識第十七代目当主、更識楯無です。」と名前を告げ、その場を去った。

 

それから千冬は一旦日本の家に戻っていた。家に着き、ドアを開けた瞬間「千冬姉!おかえり!優勝おめでとう。さすが俺の姉ちゃんだよ。」と秋十が千冬をベタ褒めしたのに対し、「・・・・・おかえり」「・・・・・」一夏は一言、円に至っては言葉すら発してなかった。

 

そのことに対し千冬が聞こうとしたが「千冬姉、今日の晩飯どうする?外で食いに行こうぜ!」と秋十が一方的に話しかけてくるため一夏達に話ができずにいた。

 

秋十のマシンガントークと言えるような会話(?)が終わり、ようやく尋ねることが出来ると思った千冬だが「・・・・・千冬姉・・・・・ひとつ聞いていいか?」と一夏が質問をしてきた。

 

「・・・・・なんで千冬姉だけなんだよ・・・・・雪七はどうしたんだよ・・・・・なんで雪七がいねえんだよ!」と初めは抑えていたのか質問の最後あたりには怒気を孕んだ口調に変わっていた。

 

「千冬姉は雪七を連れてドイツに行ったよな?!なのになんで雪七と一緒じゃねえんだよ!!やっぱりあの優勝インタビューで言ったことは本心だったんだな?!ってことはやっぱり千冬姉は雪七のこと落ちこぼれとか恥さらしって思ってたことかよ!!!」と一夏に責められながら千冬はあることを思っていた。(違う!私は・・・・・雪七の事も大事だと思っている!あの時はその場にいたからで・・・・・)と頭では思っていたが言葉にすることは出来なかった。

 

「・・・・・姉さん」「・・・・・円」さっきまで口を閉ざしていた円が口を開いたため、千冬は円に気を向けた。

 

「・・・・・姉さんは・・・・・何でそこまでユキの事を嫌うの?ユキはずっと頑張ってた・・・・・学力でも運動でも、ユキは凄く努力していた・・・・・なのに・・・・・なのに姉さんはそれをどうして認めてあげなかった!」と円が今まで言いたかった言葉を口にすると千冬はバツの悪そうな顔をするだけだった。

 

「・・・・・ユキは今までたくさんの努力してきてる!なのに・・・・・姉さんやソコにいるクズ兄の成績が良すぎるから、私たちだけでなくユキも比較され続けた!。兄さんは運動も学力も秀でてるわけじなかったけど、そこまで言われることは無かったし、私は姉さんと同じように運動ができた。だからあまり周りから言われなかったけど・・・・・ユキは違う。ユキは学力も運動も私たちの誰よりも劣ってた。だからユキはたくさん勉強して、私たちと一緒に剣道もした。でも!周りはみんな口を揃えてこう言っていた!「そんなことも出来ないのか!」「ほんとにお前あの織斑姉弟の弟なのか」「お前は織斑の出来損ないだ」って!それがどれだけ辛いことなのか、姉さんに理解できるか?!ユキの味方はほんとに両の手で数えられるほどしかいないんだぞ!それでユキの心が傷ついてないと思っていたのか!そんなことあるわけが無い!ユキは今までずっと傷を負い続けた。そして優勝インタビューのあの言葉・・・・・あの言葉でユキが生きる意味を・・・・・生きることが辛いって思ってしまったら・・・・・ユキが死んでいたらどう責任取る?!言っておくけど、私と兄さんはあなた達のことを兄、姉とはもう思わないから!」と言いたいことをすべて吐き出した円は自分の部屋に戻っていった。

 

「・・・・・俺の言いたいことは円が全部言ってくれた。だけどこれだけは伝えとくよ。円が言ったように、俺と円はもうアンタらを家族としては見ない!だから俺達はこの家から出る。」と一夏が家を出るつもりだということを知った千冬と秋十は「なっ!そんなこと許すわけないだろ!」「そうだぞ一夏!千冬姉の言う通りだ!それにお前達がいなくなったら飯とかどうすればいいんだよ!」と千冬は本気で心配するような素振りを、秋十は千冬の言葉に乗っかり更に自分の生活にのみ心配をしていた。

 

その様子を見た一夏は「・・・・・これは前から考えていたことだから。俺たちにとって雪七は自分の命と同じくらい大事な家族だ。そんな雪七を家族として見てない2人と一緒にし続けるわけには行かなかったからな。」と出ることは撤回しないと言わんばかりに円同様自分の部屋に戻っていった。

 

それから数十分後、いつ用意していたのか、かなり大型のキャリーバッグとパンパンの学校の指定カバンを携えた円と一夏が部屋から出てきて真っ直ぐに玄関に向かっていた。

 

その様子を見た千冬はなんとかして止めようと「・・・・・待て!雪七は必ず帰ってくる!だからここにいろ!」と2人に伝えたが、「・・・・・そんな保証がどこにあるんだよ・・・・・必ず帰ってくる?それならなんで一緒にいないのか説明しろよ・・・・・それも無しによく必ずって言葉使えるな・・・・・」と一夏が一蹴し、円を連れて外に・・・・・いや、織斑家から出ていった。

 

その様子をただただ眺めることしか出来なかった千冬は後悔の念に駆られていたとか・・・・・




(´・ω・)=3

今回は雪七が誘拐された後の織斑家での出来事でした。

秋十出ないわw

とりあえずこんな駄文を読んでくださった皆様、お気に入り登録してくださった皆様ほんとにありがとうございます。

いつもの如く、誤字報告や感想などございましたらぜひお願い致します。

ではまた次回

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