藍い苺の咲く頃   作:鶉野千歳

6 / 19
おしゃべり

次の日の午後。

午前中は大淀にあやされていた瑞稀であったが、お昼のミルクを飲んだ後、大淀から曙に変わった。

曙に抱かれると・・・瑞稀がしゃべり始めた・・・・・

曙をジーっと見つめて

「ボーノ、マーーマ」と。

えっ、喋った? と皆が驚いた。

(生後半年すぎで喋れるのかよ?)と。

曙の顔が少しずつ赤くなってくる。

 

「あ、あたしが、ママぁ?????」

 

ちょっと驚いたような表情をしている。

 

「あら! 曙ちゃん、ママですって! よかったわね!」

 

と大淀が言う。さらに、

 

「その年でママって、どう?」

 

完全に茶化してる。

いじっているように顔が笑っている。

(大淀さん、口角があがってるって。)

 

「大淀! あんたが笑ってどうすんのよ?? 」

 

「俺なんか、まだ、パパってすら呼んでもらってないんだぞ? うらやましいぞ? 曙!」

と立華も茶化しに入った。

 

「クソ提督、そこ、違う!!」

 

顔の赤い曙をよそに「ボーノ、マーマ」と更に。

 

「曙ちゃん、正直に言ったら? ママと呼ばれて、実は喜んでんじゃないの?」

と大淀がさらに曙を茶化す。

 

「う、うっさい!!」

 

曙が盛大に反応するが、この時点で味方は誰もいなかった。

その時、執務室の扉が豪快に開けらる。

 

「Hey!! テートクゥ!! 紅茶が飲みたいネ!!!」

 

入ってきたのは金剛だった。

 

「提督、お邪魔しますね。」

 

と榛名が続いて入ってきた。

 

「金剛。 ノックをしなさい!」

 

「カリカリしないネ! いつものことネー!」

 

「で? 何を騒いでるんすカァ??」

 

「話しを逸らすな!!」

 

「瑞稀ちゃんが喋ったんですよ。 曙ちゃんを”ママ”って。」

 

「Oh! 瑞稀のママを曙に取られてしまいましたカ!!!」

 

「違うって言ってるでしょうが!! あんたたち、人の話を聞きなさいよ!!!」

 

誰も曙の話は聞いていない。

立華が呆れて話を挟むが・・・

 

「お前らなあ・・・・・ ほら、瑞稀の眼が点になってるだろ? その辺にしてくれ。 ったく。」

 

「それ、あたしのセリフだからね!!」

 

「OK、OK、それじゃ、せっかくなので、Tea Timeネ!! 大淀も曙も一緒ネ!!」

 

騒がしいままであったが、なぜか5人で紅茶を戴くことになった。

榛名がティーカップに紅茶を煎れてくれた。

 

「うん、いい香り。 紅茶はいいねぇ。 落ち着くなぁ。」

 

と立華が言う。

 

「そうですねぇ。 いいですねぇ。」

 

と大淀が答える。

執務室に5人が飲む紅茶の香りが漂う。

 

「デモ、瑞稀のママを曙に取られたのはショックデスネェ。 ま、選ぶのは瑞稀なのでシカタナイデスケド。」

 

金剛も榛名も瑞稀をあやしてくれている。

瑞稀は人気者である。

 

「コンゴ、コンゴ」と喋って2人に寄っていく瑞稀を見ながら和む5人であった。

 

「ハァイ瑞稀、曙に飽きたら、金剛ママの処に来るデスヨ-」

 

「あら、金剛お姉さま、違いますよ? 来るところは榛名ですよ。 ねぇ、瑞稀ちゃん?」

 

どこまでも曙を茶化し倒そうとする金剛と榛名である。

その本心は、どこまで本当なのやら、立華には分かりかねる世界であった。

 

そして、その二人の言葉に、ヒクつく曙であった。

(アンタたちねぇ!!!!)

 

-----------------

ここで、ちょっと脱線。

提督の執務室は、”執務室”、”応接室”、”私室”の3つになっている。

”執務室”は文字通り、提督が執務を行う仕事部屋である。

入口から入ると、衝立で目隠しがあり、右から入ると、手前に応接セットがある。

4人掛けソファがテーブルを挟んで向かい合わせにあり、応接セットの向こうに提督の机が、どどん!と置かれている。

提督から見て左に副官の机、右に秘書艦の机があり、3人で”コの字”になっている。

秘書艦席の後ろにワードローブが2つ、副官席の後ろにもワードローブと本棚が並ぶ。

副官席側の入り口にミニキッチンが備えられている。冷蔵庫も完備。

秘書艦席のやや斜め後ろに隣部屋”応接室”への扉がある。

”応接室”といっても、提督個人の”応接室”である。

ここ大湊鎮守府の”応接室”は、応接セット、キッズコーナー、こたつがある。

キッズコーナーは、言わずと知れた瑞稀のためである。

で、こたつは、というと、30cmほどの高床になっており、その上にこたつがあるので、一見、掘りごたつ状になっている。

大湊鎮守府の秋は短く、冬が早く訪れる。暖房装置とも言えるこたつは必須である。

時期的にちょっと早い気がしなくもいないが・・・ 既に設置済であった。

”応接室”の更に隣に、シャワールーム、トイレ、ミニキッチン、”私室”がある。

”私室”は、ベットルーム、寝室である。 クローゼットも備えられている。

ベットは・・・大きいですな。大人2人寝てもまだ余るくらいに・・・・。

-----------------


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。