次の日の午後。
午前中は大淀にあやされていた瑞稀であったが、お昼のミルクを飲んだ後、大淀から曙に変わった。
曙に抱かれると・・・瑞稀がしゃべり始めた・・・・・
曙をジーっと見つめて
「ボーノ、マーーマ」と。
えっ、喋った? と皆が驚いた。
(生後半年すぎで喋れるのかよ?)と。
曙の顔が少しずつ赤くなってくる。
「あ、あたしが、ママぁ?????」
ちょっと驚いたような表情をしている。
「あら! 曙ちゃん、ママですって! よかったわね!」
と大淀が言う。さらに、
「その年でママって、どう?」
完全に茶化してる。
いじっているように顔が笑っている。
(大淀さん、口角があがってるって。)
「大淀! あんたが笑ってどうすんのよ?? 」
「俺なんか、まだ、パパってすら呼んでもらってないんだぞ? うらやましいぞ? 曙!」
と立華も茶化しに入った。
「クソ提督、そこ、違う!!」
顔の赤い曙をよそに「ボーノ、マーマ」と更に。
「曙ちゃん、正直に言ったら? ママと呼ばれて、実は喜んでんじゃないの?」
と大淀がさらに曙を茶化す。
「う、うっさい!!」
曙が盛大に反応するが、この時点で味方は誰もいなかった。
その時、執務室の扉が豪快に開けらる。
「Hey!! テートクゥ!! 紅茶が飲みたいネ!!!」
入ってきたのは金剛だった。
「提督、お邪魔しますね。」
と榛名が続いて入ってきた。
「金剛。 ノックをしなさい!」
「カリカリしないネ! いつものことネー!」
「で? 何を騒いでるんすカァ??」
「話しを逸らすな!!」
「瑞稀ちゃんが喋ったんですよ。 曙ちゃんを”ママ”って。」
「Oh! 瑞稀のママを曙に取られてしまいましたカ!!!」
「違うって言ってるでしょうが!! あんたたち、人の話を聞きなさいよ!!!」
誰も曙の話は聞いていない。
立華が呆れて話を挟むが・・・
「お前らなあ・・・・・ ほら、瑞稀の眼が点になってるだろ? その辺にしてくれ。 ったく。」
「それ、あたしのセリフだからね!!」
「OK、OK、それじゃ、せっかくなので、Tea Timeネ!! 大淀も曙も一緒ネ!!」
騒がしいままであったが、なぜか5人で紅茶を戴くことになった。
榛名がティーカップに紅茶を煎れてくれた。
「うん、いい香り。 紅茶はいいねぇ。 落ち着くなぁ。」
と立華が言う。
「そうですねぇ。 いいですねぇ。」
と大淀が答える。
執務室に5人が飲む紅茶の香りが漂う。
「デモ、瑞稀のママを曙に取られたのはショックデスネェ。 ま、選ぶのは瑞稀なのでシカタナイデスケド。」
金剛も榛名も瑞稀をあやしてくれている。
瑞稀は人気者である。
「コンゴ、コンゴ」と喋って2人に寄っていく瑞稀を見ながら和む5人であった。
「ハァイ瑞稀、曙に飽きたら、金剛ママの処に来るデスヨ-」
「あら、金剛お姉さま、違いますよ? 来るところは榛名ですよ。 ねぇ、瑞稀ちゃん?」
どこまでも曙を茶化し倒そうとする金剛と榛名である。
その本心は、どこまで本当なのやら、立華には分かりかねる世界であった。
そして、その二人の言葉に、ヒクつく曙であった。
(アンタたちねぇ!!!!)
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ここで、ちょっと脱線。
提督の執務室は、”執務室”、”応接室”、”私室”の3つになっている。
”執務室”は文字通り、提督が執務を行う仕事部屋である。
入口から入ると、衝立で目隠しがあり、右から入ると、手前に応接セットがある。
4人掛けソファがテーブルを挟んで向かい合わせにあり、応接セットの向こうに提督の机が、どどん!と置かれている。
提督から見て左に副官の机、右に秘書艦の机があり、3人で”コの字”になっている。
秘書艦席の後ろにワードローブが2つ、副官席の後ろにもワードローブと本棚が並ぶ。
副官席側の入り口にミニキッチンが備えられている。冷蔵庫も完備。
秘書艦席のやや斜め後ろに隣部屋”応接室”への扉がある。
”応接室”といっても、提督個人の”応接室”である。
ここ大湊鎮守府の”応接室”は、応接セット、キッズコーナー、こたつがある。
キッズコーナーは、言わずと知れた瑞稀のためである。
で、こたつは、というと、30cmほどの高床になっており、その上にこたつがあるので、一見、掘りごたつ状になっている。
大湊鎮守府の秋は短く、冬が早く訪れる。暖房装置とも言えるこたつは必須である。
時期的にちょっと早い気がしなくもいないが・・・ 既に設置済であった。
”応接室”の更に隣に、シャワールーム、トイレ、ミニキッチン、”私室”がある。
”私室”は、ベットルーム、寝室である。 クローゼットも備えられている。
ベットは・・・大きいですな。大人2人寝てもまだ余るくらいに・・・・。
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