今日の分の書類仕事を終え、執務室と寝室となる私室での整理を終えると、時間は1800となっていた。
ホントはもう少し早く終わったのだが、途中、何度か瑞稀が起きてしまい、泣くのである。泣くたびに、手が止まり、瑞稀をあやすのである。
時には、ミルクを、オムツを、と、対応するのだ。
大淀も赤ん坊をあやすのは初めて!であって、その手はぎこちないものであったが、曙は・・・そうでもなさそうだった。
「あらあら、瑞稀ちゃぁん、ばああ!」てな感じで・・・。
1830。
基地内の建物には、食堂がある。 間宮食堂だ。50人ほどが入れる広さがある。
今日は、ここで新提督の歓迎パーティーが催されるのだ。
テーブルには、ジュース、酒類いろいろと、料理が並ぶ。料理は間宮お手製である。
そして、一角にマイクが置いてある。 司会用だろうか。
大淀に則され、提督と、赤ちゃんを入れた籠を抱いた曙が入って、席に着く。
「ではでは、みっなさああん! 新提督歓迎パーティ、はっじめるよ----!!」と青葉が声を挙げる。
『お--!!』
「司会は、毎度の、青葉が務めさせていただきまああす!!」
「まず、最初に、新提督のご挨拶、でぇぇっす!」の声で立華がマイクを握る。
「え~、本日付けでここ、大湊鎮守府の提督に着任しました、立華です。 1か月ほど休養期間があるが、前任地は、第2佐世保鎮守府で、2年間、指揮を執っていました。今回、ここの前任提督の後任と言う形ではあるが、拝命してきました。以後、よろしくお願いする。」
一通り部屋を見回しながら挨拶が続く。
司会に、青葉
立華の席の隣には、曙、大淀が座る。
食堂のメンバーは・・・・
戦艦:金剛、榛名、扶桑
空母:蒼龍、飛龍、祥鳳、瑞鳳
重巡洋艦:衣笠、鈴谷、熊野
軽巡洋艦:名取、阿武隈、天龍、龍田
駆逐艦:朝潮、漣、潮、朧、霞、睦月、如月、夕立、村雨、秋月、五月雨、涼風
それに、工作艦:明石、
調理場には間宮 が居る。
さすがに、北太平洋の一角を担う艦隊である。皆、高練度のようだ。
「それと、今回、私の家族も一緒にここへ来たので紹介するよ。 娘の瑞稀だ。」籠から瑞稀を抱き上げる。
『ええっ??!! 家族???? しかも、赤ちゃん???!!!!!』
みんなの眼が点になる。
無理もない。 普通、鎮守府には、赤ちゃんはいないのだから。
「これから、2人共よろしくお願いする。」
眼をパチクリするヤツ、赤ちゃんに興味津々なヤツ・・・いろいろだ。
「せっかく眠ってるんだから、無理に起こさないでくれる?」と曙が言う。
「ん? 曙? お前さんの子みたいだね?」
「ち、違うわよ!! クソ提督一人じゃ面倒見きれないから、見てあげてるだけよ!!!」
(あ-、もう、既にデレてるじゃない・・ 素直じゃないわねぇ。)とは、衣笠。
「あ-、うっさいわよ!!」
(曙ちゃんが一番、うるさいにゃしぃ。)
「では、乾杯!!!」
宴会が始まった。
当然、話の中心は立華ではなくて、珍しい”赤ちゃん”である。
きゃ-! 可愛い!
プニプニだよ-。
ねぇ! あたしも、あたしにも触らせてぇ!!
ちっちゃい手だねぇ。
・・・・・・
まあ、なんだかんだいっても、今日の宴会の中心は、”赤ちゃん”だった。
(瑞稀のやつ、よく泣かないでいられるなあ・・・。 さっきは朝潮をみて泣いたのに・・。 寝起きだったからかな?)
宴の時間が簡単に過ぎていき、2100となった。
明日の出撃に備え、早めに引き上げる者も出だしたころ、天龍と霞が立華の前に来た。
「提督さんよ、ちょっと聞いてもいいかい?」
「ん? なにか? 俺が答えられるものだといいが・・・」
「大丈夫よ。アンタに関わる事だから。」
「以前、横須賀の連中から聞いたことがあるんだ。「西の鎮守府で、艦娘が身籠った」と。
通常、俺たち艦娘は身籠る事なんてないハズだから、その時は気にもしなかったんだ。
その話を聞いてから1年が経ってるし、アンタは横須賀から西の、佐世保から来た。
その子は生後半年って言ってたよな? 時期的に重なるんだけど。
その子の母親は、艦娘じゃないのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それを聞いてどうするんだ?」
「どうもしない、って言いたいけど、俺たちにも、その可能性があるんじゃないかと。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか・・・・・・・。聞きたい?」
「ああ。 アンタを信用させてほしいな。」
「分かった。 ま、大淀や朝潮、曙にも、後で話すと言ったし・・・。話そうかね。 あんまり面白い話じゃないから、期待しないでね。」