藍い苺の咲く頃   作:鶉野千歳

2 / 19
歓迎パーティ

今日の分の書類仕事を終え、執務室と寝室となる私室での整理を終えると、時間は1800となっていた。

ホントはもう少し早く終わったのだが、途中、何度か瑞稀が起きてしまい、泣くのである。泣くたびに、手が止まり、瑞稀をあやすのである。

時には、ミルクを、オムツを、と、対応するのだ。

大淀も赤ん坊をあやすのは初めて!であって、その手はぎこちないものであったが、曙は・・・そうでもなさそうだった。

 

「あらあら、瑞稀ちゃぁん、ばああ!」てな感じで・・・。

 

1830。

基地内の建物には、食堂がある。 間宮食堂だ。50人ほどが入れる広さがある。

今日は、ここで新提督の歓迎パーティーが催されるのだ。

テーブルには、ジュース、酒類いろいろと、料理が並ぶ。料理は間宮お手製である。

そして、一角にマイクが置いてある。 司会用だろうか。

大淀に則され、提督と、赤ちゃんを入れた籠を抱いた曙が入って、席に着く。

 

「ではでは、みっなさああん! 新提督歓迎パーティ、はっじめるよ----!!」と青葉が声を挙げる。

 

『お--!!』

 

「司会は、毎度の、青葉が務めさせていただきまああす!!」

 

「まず、最初に、新提督のご挨拶、でぇぇっす!」の声で立華がマイクを握る。

 

「え~、本日付けでここ、大湊鎮守府の提督に着任しました、立華です。 1か月ほど休養期間があるが、前任地は、第2佐世保鎮守府で、2年間、指揮を執っていました。今回、ここの前任提督の後任と言う形ではあるが、拝命してきました。以後、よろしくお願いする。」

 

一通り部屋を見回しながら挨拶が続く。

司会に、青葉

立華の席の隣には、曙、大淀が座る。

食堂のメンバーは・・・・

戦艦:金剛、榛名、扶桑

空母:蒼龍、飛龍、祥鳳、瑞鳳

重巡洋艦:衣笠、鈴谷、熊野

軽巡洋艦:名取、阿武隈、天龍、龍田

駆逐艦:朝潮、漣、潮、朧、霞、睦月、如月、夕立、村雨、秋月、五月雨、涼風

それに、工作艦:明石、

調理場には間宮 が居る。

さすがに、北太平洋の一角を担う艦隊である。皆、高練度のようだ。

 

「それと、今回、私の家族も一緒にここへ来たので紹介するよ。 娘の瑞稀だ。」籠から瑞稀を抱き上げる。

 

『ええっ??!! 家族???? しかも、赤ちゃん???!!!!!』

 

みんなの眼が点になる。

無理もない。 普通、鎮守府には、赤ちゃんはいないのだから。

 

「これから、2人共よろしくお願いする。」

 

眼をパチクリするヤツ、赤ちゃんに興味津々なヤツ・・・いろいろだ。

 

「せっかく眠ってるんだから、無理に起こさないでくれる?」と曙が言う。

 

「ん? 曙? お前さんの子みたいだね?」

 

「ち、違うわよ!! クソ提督一人じゃ面倒見きれないから、見てあげてるだけよ!!!」

 

(あ-、もう、既にデレてるじゃない・・  素直じゃないわねぇ。)とは、衣笠。

 

「あ-、うっさいわよ!!」

 

(曙ちゃんが一番、うるさいにゃしぃ。)

 

「では、乾杯!!!」

 

宴会が始まった。

当然、話の中心は立華ではなくて、珍しい”赤ちゃん”である。

きゃ-! 可愛い!

プニプニだよ-。

ねぇ! あたしも、あたしにも触らせてぇ!!

ちっちゃい手だねぇ。

・・・・・・

まあ、なんだかんだいっても、今日の宴会の中心は、”赤ちゃん”だった。

(瑞稀のやつ、よく泣かないでいられるなあ・・・。 さっきは朝潮をみて泣いたのに・・。 寝起きだったからかな?)

宴の時間が簡単に過ぎていき、2100となった。

明日の出撃に備え、早めに引き上げる者も出だしたころ、天龍と霞が立華の前に来た。

 

「提督さんよ、ちょっと聞いてもいいかい?」

 

「ん? なにか? 俺が答えられるものだといいが・・・」

 

「大丈夫よ。アンタに関わる事だから。」

 

「以前、横須賀の連中から聞いたことがあるんだ。「西の鎮守府で、艦娘が身籠った」と。

 通常、俺たち艦娘は身籠る事なんてないハズだから、その時は気にもしなかったんだ。

 その話を聞いてから1年が経ってるし、アンタは横須賀から西の、佐世保から来た。

 その子は生後半年って言ってたよな? 時期的に重なるんだけど。

 その子の母親は、艦娘じゃないのか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それを聞いてどうするんだ?」

 

「どうもしない、って言いたいけど、俺たちにも、その可能性があるんじゃないかと。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか・・・・・・・。聞きたい?」

 

「ああ。 アンタを信用させてほしいな。」

 

「分かった。 ま、大淀や朝潮、曙にも、後で話すと言ったし・・・。話そうかね。 あんまり面白い話じゃないから、期待しないでね。」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。