藍い苺の咲く頃   作:鶉野千歳

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出張-(提督と曙の心)-

早朝、曙が布団の中で目を覚ました。

曙の腕の中には瑞稀が居た。

瑞稀は曙に抱き着いている。

その曙は大きな腕に抱かれている。

目を上げると・・・・立華の顔がすぐそこにあった。

(おはよう。 クソ提督。 今なら・・・・)

曙が立華の顔を見上げるようにしながら・・・・唇を合わせた・・・・。

(やたっ!!)

そう思った瞬間、ギュッと強く抱きしめられた。

唇を離そうとしたが、逆に強く求められた。

(ん?!!!)

不意に唇が離れると・・・・立華が目を開けていた。

 

「お、起きてたの??」

 

「誰かさんが、寝てるのをいいことに口付けしようとしてんだから、さ。 起きちまったよ。」

 

二人とも顔が・・・耳まで赤い。

 

「・・・このクソ提督! 起きたならはっきり起きなさいよ!」

 

「し-っ。 瑞稀が起きちまう。」

(もう!!)と膨れる曙であったが、立華はそれが微笑ましく見えた。

 

 

今日は朝から時間が無い。

そそくさと起き出し、朝食を済ませ、瑞稀を母親に預け、立華と曙は0800には実家を出発した。

行き先は水上機の開発会社で、神戸港にある。

車で1時間30分程。

現地に到着すると、ゆっくりする暇なく、社長やら開発担当者やらと面会し、状況を確認する。

既に数機が完成しており、飛行艇と水上戦闘機の実機による飛行試験に立ち会った。

飛行艇は、従来機よりペイロードが増え、対潜哨戒機としての機能も大幅に強化されている。

水上戦闘機も同じく、強力なエンジンを搭載し、速力、武装共に強化されていた。

新たに対潜哨戒能力も追加されている。

大湊鎮守府が望む機数には足りないが、既に大湊鎮守府への輸送計画が始まっており、水上戦闘機は水上機母艦にて第1陣が出発できるとのことだった。

飛行艇は、艦には乗り切らないので、自ら飛んでいくしかないのだが、こちらも、数機が出発できるとのことだった。

夕刻近くになって受領と今後の製造計画の確認を終えた。

足早に確認し、手続きを手早く終えたつもりであったが既に1700になっていた。

そこからは、実家に帰るだけとなっていたが、2時間ほどかかる。

まだ明るい時間帯ではあったが、到着する頃には日は落ちていた。

 

家に上がり込んでくつろぐ。

 

「一通り、仕事は終わったあああああぁ。」

 

さすがの強行軍であり、結構疲れてしまっていたので、居間の畳の上で、伸びをする立華であった。

 

「さすがに、疲れたわね。 お疲れ様、ク・・・ 提督。」

 

「今、クソって言いかけたやろ?」

 

「言ってないわ!」

 

「ほほう、、、言ってないけど、言いかけたやろ?」

 

「ち、違うわよ! アンタの耳がおかしいのよ!」

 

「なんや、アンタら。痴話げんかか? 仲のええこっちゃなぁ。」

 

痴話げんかの二人の顔が、母親の一言で赤くなっていく。

 

「ほ、ほら。 瑞稀ちゃん、こっちおいでぇ。」

 

ボーノマーマと言って曙の元まで這っていく。

 

「さ、晩御飯やで。 二人とも。」

 

「よし。 じゃぁ、頂こう。」

 

今日はカレーだった。しかもちょっと甘めの。

サラダは、庭の畑からもいできた野菜だ。

きゅうりとトマト。

立華はおかわりもした。

曙もしっかり食べてた。

瑞稀は、最近始めた離乳食だ。

 

「辛い方が良かったか?」

 

「いいや、これくらいでええよ。 曙は辛いの、ダメやモンな?」

 

「そうかい。 トマトは曙ちゃんが、もいでくれたんやで。なぁ?」

 

「ええ。 赤くて大きなヤツを選んだの。」

 

「よく熟れてるやんか。美味い美味い。」

 

今晩も楽しく夕食が終わり、4人は居間でくつろいでいる。

 

「そやけど、よく懐いているなぁ、瑞稀ちゃんは。 そや、お風呂入っておいで。」

 

「じゃ、先に頂くよ。」

 

と言って立華が先にお風呂に行った。

それを見届けてから、

 

「曙ちゃんも入ってきたら、一緒に?」

 

「ふぇ! い、いやぁ、後でいいです・・・。」

 

「あんたら、一緒に居るって決めたんやろ? なら、一緒に入って、何の問題があるんや?」

 

「・・・・・でも・・・・・」

 

「はよ、いきや。」

 

平然と言い放つ母親である。

湯船に浸かった立華が「ふうううう、いいお湯・・・」と言い終わると同時に、

ガラっと入口が開いた。

驚くように見ると、曙が瑞稀を抱いて入ってきた。

しかも・・・裸で・・・・。

 

「?!! な、なんで?」

 

「お義母さんが、入ってこいって、言うから・・・。」

 

顔を赤くしながら答える。

 

「だから・・・3人で・・・・。」

 

「(おふくろ・のやつ!!)・・・・・・・わ、分かった・・・。 」

 

掛け湯をして曙が湯船に入った。

2人とも言葉が無い・・・・。

 

「ど、どうだ? 暖かいか?」

 

「うん、暖かい・・・・。」

 

次第に曙の身体が立華に寄っていく。

 

「2回目ね。こうしてお風呂に入るの・・・・。」

 

「そうだな。 ・・・曙」

といって曙に腕を廻した。

瑞稀を抱いた曙を抱き寄せるように。

 

「曙の身体は、華奢だな。細く、すぐに折れてしまいそうな。」

 

「そう? ・・・・ちゃんと支えて。・・ちゃんと抱いててよ・・・・・。」

 

「ああ。 離さないぞ、曙。」

 

そう言って曙の唇を、立華の唇が塞ぐ・・・。

それを見ている瞳がある。

瑞稀だった。

時間が止まったように思えた2人だった・・・。

しばらくして唇が離れる・・・。

お互いを見つめている。

立華は曙を、曙は立華を。

二人の頬は朱かった。

それを見ている瑞稀がきゃっきゃっ言って二人に手を伸ばしてきた。

瑞稀のその手を、二人が捉える。

 

「そういえば、瑞稀にずっと見られてるよな。」

 

「そういえば、そうね。」

 

曙の顔がさらに赤くなる。

しばし、無言の時間が流れたのだった。

そして今日も、三人が川の字になって就寝。

曙は瑞稀を抱いて、さらに立華の胸に抱かれて。

 


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