「はぁ~、なんでこんなめんどくさいことを…」
今日は土曜日、いつもならバイトをしている時間だが、なぜか大きなビルの下にいる。
しかもその周りには多くの報道陣。
上にヘリも飛んでいる。
なぜこうなったかというと、昨日の父さんの一言が原因である。
「急な話だが、明日お前たちのテレビ出演が決まった。どうした、嬉しすぎて声も出んか」
「急すぎてびっくりなんだけど…」
ほんとびっくりである。
しかも明日はバイトがある日なのだ。
せっかく中学の時の後輩である女の子と一緒のシフトなのに…
「いやー悪いとは思うんだが、なんせ今日決めたことだからなぁ」
「今日かよ!」
前日に決めたのにテレビ局が許すとは、さすが王様である。
「というわけで、皆頑張ってくれ!」
ということがあり今に至る。
今俺らがやってるのは、「ダンディ君を救え!」というゲームである。
ビルの屋上に置いてあるダンディ君人形を、ビルの下にあるそれぞれの籠に多く入れた人の勝。
参加者は王族兄妹である。
しかもビリには罰ゲームがあるらしい。
「僕はこのビルを上ります!」
どうやら一番最初に動くのは輝らしい。
小学1年生がビルを上るというのは非現実的すぎるが、それを現実的にしてしまうのが我ら兄妹の四男、輝である。
輝がビルの側まで寄ると、しゃがんで力を貯める。
ここで輝の能力を説明しておこう。
輝の能力は『怪力超人』。
自分の身体能力を大幅に上昇させるというものである。
輝はこの能力を使い、ビルの突起している部分を掴みながら上っていく。
順調に進んでいくが、たまたま掴んだ部分が砕けてしまい、それに驚いたのか能力を解除してしまう。
能力が無くなってしまうと力は元に戻ってしまう。
そんな状態で自分の体重を支えられるわけなく、落下してしまう。
なんとか近くの突起に掴まった輝は、上る作業を再開する。
まったく、心臓に悪い。
これが終わったら説教だな。
「次はあたしー」
今度は光か。
光の能力は『生命操作』。
触れたものの年齢を自由に変えることが出来るのだ。
ただし一度変えたら24時間は元の姿には戻らない。
光は近くの木に上り、この能力を使って木を成長させ、ビルの屋上まで一気に行くつもりらしい。
光にしては頭を使ってるな。
と感心していると、どうやら成長させすぎたらしい。
ビルよりも高く成長してしまい、降りられなくなってしまった。
前言撤回。
やはり光は光だった。
こいつも説教だな。
「よし、私も!」
今度は岬。
岬の能力は『感情分裂』。
最大で7人の分身を生み出すことが出来るのだ。
成程、人員を増やして正攻法で集める作戦か。
岬らしいな。
ん? 一人足りなくね?
岬は分身を7人出したはずなので、8人の岬がビルの中に入っていったはずなのだが、一人見当たらなかった。
思考を共有できる岬-ズ達が一人だけ別の手段を使うとは思えないんだが…
そう思いながらあたりを見回していると、急に服を後ろから引っ張られる。
「お、なんだブブか。どうしたんだ?」
「優兄、アイス頂戴」
「早く行け」
暴食という特性をもったブブがアイスをねだってくるも、外にいるのにアイスなんか持っているはずはなく、岬―ズの所へと送りかえす。
「え? そうなの? ごめんなさい、よくわからない…」
「栞、どうしたの?」
「あのね、消火器さんが近道を教えてくれたんだけど、行き方が分からなくて…」
「じゃあ一緒に行こっか。ビルにはこの前入ったことあるから覚えてるしね」
次は栞と葵姉さんか。
栞の能力は『物体会話』。
動物や物、いろんなものの声を聴き、会話することが出来る能力。
ビルの近くにある物から話を聞いて近道を見つけるとは、幼稚園児ながら要領がいいな。
葵姉さんの能力は『完全学習』
一度覚えたら絶対に忘れない能力。
正直うらやましい…
「よく考えたら、自分で行くなんて効率が悪いですね」
次はかなねえか、正直もう説明めんどくさくなったから省いていいよね?
「ダメに決まってるでしょ! ちゃんと説明しなさい!!」
「心読まないでよかなねえ」
そんな分かりやすい顔してたかな?
確かに嫌そうな顔はしたけどさ…
しかも素が出てるぞ。
外面用のおしとやかな話し方はどこ行った。
かなねえの能力は『物質生成』。
欲しいと思ったものが具現化する。
ただし、出てきたものに等しい金額が自分の通帳から自動的に引かれるのだ。
その能力でドローンを4機生成した奏は、そのままダンディ君に人形を取りに行かせる。
要領が良いというか、ずる賢いというか…。
まさか、栞はあんな風にならないよな?
容姿は似てるけど、まさかな……
「じゃ、俺もそろそろ行くかな。カメラに映りっぱなしってのも嫌だし」
「え? うひゃあ!!」
次は修兄か。
そんで茜、お前はずっと修兄の背中に隠れてたのか。
お兄ちゃん気付かなかったぞ。
修兄の能力は『瞬間移動』。
瞬間移動するだけ。
以上!!
「茜姉さん、このままだと76%の確率で僕たちビリになっちゃうから、協力しない?」
「私ビリでもいいよ。目立つならお城のトイレ掃除やるもん」
「はぁ、城のトイレ何個あると思ってるの? しかも、トイレ掃除の期間は一週間。その間お城の人たちと会うかもしれないんだよ?」
「そ、そんな! それは嫌だよ!! 遥、行くよ!」
「あ、待ってよ茜姉さん!」
遥かの能力は『確率予知』。
あらゆる出来事の確率を予知することが出来る。
さっき遥が言っていた数値はこの能力によって導かれたものである。
遥と茜は協力するのか。
確かに茜の能力を使えば、ビルの上までひとっ飛びだからな。
さて、俺も動くとするか。
優がどんな手段を使うのか想像しながら次話をお待ちください!
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