城下町の低身長   作:かるな

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毎日更新が途切れてしまいました...

昨日楽しみにしてくださった方、申し訳ありません!!

なので、今回は2本投稿します。

これでチャラにしてください!


ニュース

『皆さんこんばんは、櫻田ファミリーニュースの時間です!』

 

 

毎日夜7時に放送される櫻田ファミリーニュース。

その内容は、王家の一日を総集編にしたものである。

基本的には父さんの仕事のことなのだが、監視カメラが設置されているため、俺らの行動でネタになりそうな場面があればそれも放送される。

俺たちのプライバシーとかは無いんでしょうか…

 

 

「優ちゃーん! ニュース始まったよー!!」

 

 

冷蔵庫の中を漁っていた俺は、光に呼ばれる。

 

 

「ほいよー。あと優ちゃん言うな」

 

 

「えー? いいじゃん! 優ちゃんは優ちゃんだもーん」

 

 

「はいはい」

 

 

適当に選んだアイスカップとスプーンを手に、光が待つソファに向かう。

光は俺がアイスを持っていることに気付くと、目をキラキラさせながらこっちを見てくる。

 

 

「やらんぞ光」

 

 

「まだ何も言ってないよ!」

 

 

これは俺がバイトをして手に入れたお金で買ったアイスなのだ。

絶対にやらん。

 

 

光の隣に座り、アイスカップを食べ始める。

やはり労働をした報酬というものは心地いい。

労働の喜びを知ってしまったのだ。

将来は良い社畜に……

 

はっ! いかんいかん。

将来はホワイト企業に就職するんだ!

ちゃんと定時に帰るんだい!!

 

 

「優ちゃんがニュース見ようだなんて珍しいね」

 

 

「今日は面白いもんが見られそうだからな」

 

 

面白いもんとは十中八九茜のことである。

 

うーん…ただ見るだけじゃ勿体ないし、茜でも呼ぶか。

ソファから立つのはめんどくさいし、夜に大声で2階にいる茜を呼ぶのは迷惑なので、能力を使う。

 

 

(おーい、茜―)

 

 

(どうしたの優?)

 

 

(一緒にテレビ見ようぜ)

 

 

(私宿題があるんだけど)

 

 

(アイスやるからさ)

 

 

(行く!!)

 

 

ちょろいやつだ

 

 

「来たよ優!」

 

 

「早いな!?」

 

 

言ってから10秒もしないうちにきやがった。

どんだけアイス食べたいんだよ…

 

 

「ニュース見るの?」

 

 

「ああ、今日は面白そうだからな」

 

 

「へー。優、アイスは?」

 

 

「ほれ」

 

 

俺は自分が食べていたアイスカップを茜に渡す。

 

 

「食べ掛け…」

 

 

「嫌ならいいぞ?」

 

 

「久しぶりのアイスだし…いただきます」

 

 

「一口だけな」

 

 

「ケチ!!」

 

 

何を言う。

食べれるだけでも幸せだと思え。

ちなみに家族の中でアイスを買うのは俺だけなので、割と貴重なのである。

 

 

「太るぞ…いでっ!」

 

 

言い終わった瞬間に茜に殴られる。

 

 

「今のは優ちゃんが悪い」

 

 

年頃の女子というのは扱いが難しい。

言葉の選択を間違えようものなら容赦なく拳が飛んでくる。

 

ひどいときには重力によって強化された拳が…

 

 

『さて皆さん、次のニュースはこちらです!』

 

 

「お、そろそろかな」

 

 

「何が?…あ、あ、ああああぁぁぁ!!」

 

 

テレビの画面を見た瞬間に絶叫する茜。

ふふふ、この反応が欲しかったんだよ!

 

 

「茜ちゃんがテレビに映ってるー!」

 

 

今始まったのは、今日の下校中に茜がひったくり犯を捕まえたという内容。

俺が茜を見つけた時には茜は報道陣に囲まれていたので、何事かと気になったが、茜に何度聞いても「聞かないで!」、「うるさい!」と断られる一方だった。

どうしても詳細が気になった俺は、報道陣がいたのなら今日のニュースに必ず出るはずだと確信し、この計画を企てた。

ついでに俺の要望を断りまくった茜に対する嫌がらせでもある。

 

しかも茜の犯人制裁の映像は防犯カメラがしっかりと捉えている。

 

というか茜、能力で追いかけたは良いが犯人の顔面に膝蹴りっていうのはちょっと…

しかもあの角度だとパンツが…

 

 

「優! これやるの知ってたでしょ!! せっかく忘れかけてたとこなのにー!!!」

 

 

「さぁて、何のことかなー」

 

 

俺はニヤニヤしながら立ち上がり、茜の反応に満足して気分が良くなったので、光に残りのアイスをくれてやる。

 

 

他の兄妹たちが晩御飯のために下に降りてくると、幸せそうにアイスを食べる光と、生気を失った目で壊れたように「あははは…」と言い続ける茜がいたそうだ。

 

 

ついでに食事の前にアイスを食べていたのが母さんにばれて、主犯である俺と半分ものアイスを食べた光はこっぴどく叱られた…

 




やっぱ兄妹のやりとりって心が安らぎます。


ヨシーダさん、感想ありがとうございます!

評価・お気に入り・感想お待ちしております!

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