城下町の低身長   作:かるな

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お正月回ですよー!皆さん台風大丈夫ですかー!?


お正月

中々濃い一年を過ごした俺達家族は、正月というビッグイベントを楽しんでいた。

 

 

「優ちゃん初詣行こー!」

 

「あー・・・すまん光、俺今から用事あるんだよ」

 

「え~・・・あ、桜ちゃんとデート?!」

 

「大声で言うな!茜に聞こえたら「へぇ・・・優、私とも行くって約束したよね?」あ、あれは脅迫だろ!?関節キメながらだっただろうが!」

 

 

桜ちゃんと初詣に行く予定だったが、茜と光に捕まってしまう。何だかんだ言って連れて行ってしまうあたり、自分の命よりも妹の方が大事だと俺の本能が告げている。

 

全員支度を終えて家を出る。神社までは距離があるので、いったんある場所を経由する。

 

 

 

「やあ優くん、それに茜くんと光くんまで。あけましておめでとう」

 

『おめでとうございます!』

 

 

その場所は俺がバイトしている喫茶店。今日は定休日だが、オーナーにあることを頼まれていたため、初詣の前にこうしてやってきたのだ。

 

 

「せっかくのお正月だというのにすまないね。年末までには終わらせたかったんだが、店全部となると中々大変だったんだ」

 

「それならもっと早くに言ってくださいよ・・・掃除ぐらいいつでも手伝いますって」

 

「ありがとう。報酬と言っては何だが、お年玉を用意してるよ。桜くんはもう奥の方をやってるから、手伝ってあげて欲しい」

 

 

オーナーの言葉に頷くと、俺は自分のロッカーへと向かう。

 

 

「あ、あの!私たちも何か手伝いますよ!」

 

「ありがとう、気持ちだけ受け取っておくよ。流石にお子さんを3人も手伝わせたとなれば、五月さんに怒られてしまうからね」

 

「そういうことなら・・・」

 

「私コーヒーが飲みたい!今年こそブラック飲めるようになるんだもん!」

 

 

そんな3人のやりとりを聞きながら準備を終えると、桜ちゃんが作業しているであろう倉庫へと向かった。

 

 

(あけましておめでとう、桜ちゃん)

 

「っ!?」

 

 

倉庫の入り口から彼女の姿を確認すると、扉に隠れて能力を使う。彼女の頭に直接喋りかけているのだ。

 

桜ちゃんは毎度こういうことをするとよい反応を見せてくれる。今回もそうで、体をビクッとさせると、素早く後ろを確認し、誰もいないと知ると頬を膨らませて黙々と作業を再開した。

 

 

「無視は結構傷つくよ・・・」

 

 

おふざけも程々にして、倉庫の中へと足を踏み入れる。桜ちゃんの後ろ姿からは、[私不機嫌です]というオーラが出ていた。

 

 

「私と二人で初詣行ってくれるんじゃなかったんですか?」

 

「うっ、ごめん・・・。茜と光がどうしてもって聞かなくて・・・」

 

「全く、先輩は妹さんたちに甘すぎるんです」

 

「この埋め合わせはきちんとするからさ!」

 

 

両手を合わせて平謝りする俺に、桜ちゃんは[その言葉はもう聞き飽きました]というような目を向かてくる。

 

そんな雰囲気に耐えられなくなった俺は、自分も掃除を初めながら無理やり話を変えることにした。

 

 

「受験勉強はどう?」

 

「うっ、せっかくお正月気分で忘れてたのにぃ・・・」

 

 

言った瞬間に桜ちゃんは顔をしかめた。

 

 

「こっちが落ち着いたら勉強みてあげるから、頑張って」

 

「はい・・・」

 

 

桜ちゃんの志望校は俺が通っている小中高の一環校である。よって外部からの入学はそれなりの学力を持っていないと許可されない。今はそのための最終段階である。

 

お互いに少し喋った後は黙々と作業を再開し、掃除はあっという間に終わった。

 

 

「さて、それじゃあ戻ろうか」

 

「はい!」

 

 

作業着を脱ぎ、道具を片付けてホールへ戻ると、茜と光がケーキを頬張っていた。傍にはオーナーが腕組みをしながら笑顔でその様子を見守っていた。

 

 

「オーナーって子供好きなんですかね?」

 

「まぁ・・・あの年で結婚してないし、そういう願望はあるかもしれない」

 

「私たちはいつ結婚しましょう?やはり私が大学卒業してからですか?ですが大学生活をしながら家事を行うのもアリだとは思っていますが・・・」

 

「何言ってんの?」

 

 

中学生とは思えない言動をする桜ちゃんの頭にチョップを食らわせ、二人が座っているテーブルへと自分も向かう。

 

 

「オーナー、掃除終わりましたよ」

 

「ありがとう二人とも。とりあえずこれを受け取ってくれ」

 

 

そう言ってオーナーは懐から二つの封筒を取り出した。

 

 

「バイト代とは関係ない。これは私からの気持ちだ。存分に使ってくれたまえ」

 

『ありがとうございます!』

 

 

やはりお年玉を前にするとつい顔が緩んでしまう。その顔を見た茜と光は若干引いていたが、あいつらもじきにそうなるのだ。

 

 

「ところで優くん。私が独身だから子供に飢えているという見解について、少し話し合おうじゃないか」

 

「・・・・・・神社行ってきます!」

 

 

後日、俺はセルフ残業をすることで何とか許しを貰ったのだった・・・。

 

 




今回はちょっと短めでした!

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