城下町の低身長   作:かるな

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勉強2

文化祭が終わり、中間テストが近付いてきた。

 

とは言え、まだ2週間程余裕はある。いつも通り行くなら、最初の一週間まではバイトを入れ、残りの一週間で詰め込みを行う。

 

本来なら2週間前から少しずつ準備をしていき、余裕を持ってテストに臨むべきだ。だが、先のやり方で中間以上の成績を取っているので、中々止められない。

 

しかも暗記科目は一夜漬けに近いので、当日フラフラになり、帰宅するなりすぐに意識を手放してしまう。

 

なので下の兄妹達に心配される事もしばしば......。

 

 

そんな事が中学生時代から続き、俺の体を心配した遙や岬が、それを上の姉さんに相談してしまったのである。

 

別に遙と岬が悪い事をした訳では無いのだが、相談する相手を別の人にして欲しかった.......。

 

せめて次女のかなねえに相談していたなら、「あいつの事だし、大丈夫でしょ」と言った感じになったはずだ。

 

 

 

「優君? 手が止まってるよ?」

 

 

「ここが分からなくて......」

 

 

「じゃあ教科書を見ようか」

 

 

「......はい」

 

 

 

この長女もとい葵姉さんは、妥協を許さず、甘えも許さないのだ(兄妹に対してのみ)。

 

そのせいで、分からない問題は教科書を見ろと言われ、どうしても理解出来ない所だけにヒントを出すという、学校の先生と比べて慈悲の欠けらも無い。

 

しかも1日の目安を終えるまで決して部屋から出れず、食事とトイレの時のみ出れる。

 

さらにスマホは取り上げられ、茜に預けられている。もし俺が逃げ出した時の保険としてとの事らしい。

 

 

 

「優くん、今日のノルマまで後20ページだけだから、頑張ろう!」

 

 

「......この鬼ババア」 ボソッ

 

 

「そういう事言っちゃうんだ? じゃあこの前桜ちゃんと一緒に買い物して、その後に家まで行ってご飯作ってあげたこと、茜に言ってもいいんだよね?」

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいお願いですからそれだけはっ...!!」

 

 

 

実は先週の土曜日の昼に夕飯の買い出しをしていた所に、偶然桜ちゃんと会ったのだ。

 

お互いにその後の予定が無く、折角なので昼食を作ってあげようと(無理矢理)桜ちゃんの部屋にお邪魔し、昼食を食べた後はゆっくりと世間話をし過ぎたせいで、葵姉さんに伝えていた帰りの時間を大幅に過ぎてしまっていた。

 

結果、帰った時には葵姉さんはかなり怒っており、洗い浚い話したのだった。

 

 

 

「全く、普段から勉強しろとは言わないけど、せめて2週間前からはやるべきだよ?」

 

 

「返す言葉もございません......」

 

 

 

自分の不甲斐なさに落ち込みつつ、気分転換にと少し部屋を見渡す。

 

葵姉さんの部屋は他の妹達とは違い、女の子らしいものがかなり少ない。1番そう言った物が多いのは光の部屋だが、あれはどちらかと言うと散らかっているだけだ。もしかしたら物が入り切らなくなっている可能性もあるが...。

 

 

 

「ところで葵姉さん。気分転換にファミレスとかで勉強しない?」

 

 

「駄目よ優くん。私たちがそこでまともに勉強出来ると思う?」

 

 

 

長時間滞在可能なファミレスでの勉強を提案したが、そもそも俺達が王族である事を忘れていた。

 

王族がファミレスで勉強しようものなら、周りからの視線でそれ所ではないだろう。

 

 

 

「あ、でも優くんが働いてる所なら大丈夫じゃない? この前行ったことあるけど、結構落ち着いた雰囲気だったし、勉強にはぴったりだと思う」

 

 

「いやっ...あそこはほら! 桜ちゃんや店長いるから長話ししちゃうし、染み付いた社畜魂が俺を仕事に引っ張り出すかもしれないし......」

 

 

「へぇ、優くんは私の前で勉強を差し置いてそういう事するんだ?」

 

 

「そういう訳ではなくてっ! あそこで勉強する事自体が...」

 

 

「でも、場所を変えてみるのはいい事だし、行ってみようか!」

 

 

「はぁ......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来てしまった...」

 

 

 

あの後、結局葵姉さんの言う通りに店まで来てしまった。

 

今は15時なので、おそらく2時間程は滞在する。最初の30分は軽く食事をして、残りは勉強、といった感じだろう。

 

ここまで来て家に引き返そうとは言えるはずもなく、渋々ドアを開ける。

 

 

 

「いらっしゃいま......あれ? 先輩に葵さんじゃないですか。珍しい組み合わせですね?」

 

 

 

今は丁度、桜ちゃんがシフトに入っている時間帯だ。相変わらず仕事は頑張っているようで微笑ましい。

 

 

 

「今日は優くんの勉強を見てあげようと思ったの。2時間ぐらい居座る感じになっちゃうけど、大丈夫?」

 

 

「今の時間帯なら大丈夫ですけど......そう言えば先輩この前、テスト勉強はもう完璧だからやらなくむぐっ!」

 

 

 

突如聞こえてきた不穏な言葉を遮るように桜ちゃんの口を手で塞ぐ。

 

傍から見ると女性定員に手をかけようとする変態客に見えなくもないが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

 

今桜ちゃんが言いかけた言葉だが、実はこの間テストの話題になった時......。

 

 

『先輩、もうそろそろテストだってこの前言ってたじゃないですか。勉強の方は大丈夫なんですか? 先輩のスマホにある予定表見た感じだと、シフトをいつも通り入れてたと思うんですけど......。』

 

 

『勿論! 最近はコツコツと勉強してたからね。バイトを入れても問題無いように、既に完璧にしてあるんだよ!』

 

 

『流石です! ですが先輩? 予定表に書いてあったテスト明けの土曜日に行われる、クラスの女子達と思われる数名とカラオケにフリータイムでみっちり歌うという事を目標に頑張っていたわけでは無いですよね?』

 

 

『......。』

 

 

 

 

 

と言ってしまったのだ。

 

決して嘘を付いていた訳では無いのだが(現にこうなってしまっている時点で嘘)、数ある教科の中で化学に関してはあの時点で未だにノータッチ。他の教科は化学程ではないにしろ、それでも点数は半分取れるかどうかだった。

 

だが、桜ちゃんにはそう言っておく必要があった。なぜなら、情報はどこで漏れるか分からない。なら誰が聞いても安心できるようなことを保険として言っておく必要があったのだ。

 

これなら、たとえ何かの間違いで葵姉さんに俺が言った事が伝わったとしても、特に詮索は無い。

 

我ながら完璧な作戦だったのだ。

 

 

そんな作戦も、昨日唐突に行われた葵姉さんによる口頭試問により無残に砕け散ったが...。

 

 

 

そんなこんなで、桜ちゃんが失言をしてしまわない内に釘を刺しておく必要がある。

 

突然口を手で塞がれた桜ちゃんは、自分が何をされたのかを理解した瞬間に顔を真っ赤にしていたが、落ち着かせている暇は無い。早くしないと葵姉さんが不審に思ってしまう。

 

急遽桜ちゃんの体を反転させ、葵姉さんに背を向ける感じで話しかける。

 

 

「桜ちゃん。葵姉さんの前では俺の勉強の話はしない事! いいね!?」

 

 

「ふぁ...ふぁい」

 

 

「どうしたの優くん? 突然桜ちゃんを襲ったりして...」

 

 

「誤解を招くような発言はやめてくださいお姉様。桜ちゃんに店長からの伝言を伝えただけだよ。企業秘密だからあんまり大きな声では言えなかっただけ」

 

 

「そうだったんだ」

 

 

 

何とかその場をやり過ごすことに成功した俺は、その後もボロを出さないように頭をフル回転させるのだった。

 




中々3000字いかない......。

これからの目標として、最低3000字でいこうと思ってたんですが、中々行きませんね(^_^;)

10月に入れば更新速度は早くなると思うので、もうしばらくお待ちください.....。.

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