城下町の低身長   作:かるな

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お久しぶりです!

結構間が空いてすみません......

するめーんさん、感想ありがとうございます!


文化祭前編

「起きなさーい!!」

 

 

「ゴフッ!」

 

 

 

夏休みが終わり、憎き学校が始まった。

夏休み明けの課題テストも何とか乗り越え、今は学園祭でやる出し物を決めている最中である。

 

クラス委員である茜と福品が前に出て、出し物の案をクラスメイトから求めているのだが......。

 

 

 

「何だよ茜。俺は眠いんだ、頼むから寝させてくれ」

 

 

 

そう、俺は今かなり睡魔に襲われている。

なぜかって?

 

全部あの光のせいだ!!

 

 

 

 

 

それは夏休みが終わる前日。

つまり昨日である。

 

例年通り光が何も手を付けずに残していた夏休みの宿題を午前中のうちに片付けた。

 

はずなのだが......。

 

 

 

 

― 昨日の夜 ―

 

 

 

「ね、ねぇ優ちゃん」

 

 

 

次の日から始まる学校に備えて (少しでも身長を伸ばすために) 早めに寝ようとしてたところに、光が来た。

 

 

 

「ん、どうしたんだ光。明日は学校だろ? 寝坊しないように早く寝ろよ」

 

 

「それは分かってるんだけど......」

 

 

 

そう言いつつ、光はかなり申し訳ない顔をしながら手に持っている細長くも丸みを帯びた白い色の何かを......真っ白な何かを広げて見せてきた。

 

光はバツが悪いのか、顔を合わせようとしない。

 

そして俺は、ふつふつと煮えたぎる何かを感じながら光ににこやかな笑顔を向ける。

 

 

 

「それで光、俺に何か用か?」

 

 

 

俺が向けた笑顔にガクガクと震えながらも、光は口を開く。

 

 

 

「絵の宿題を忘れてて......ひっ!!」

 

 

 

まだ言い終わる前に、光の頭を上からわしづかみにする。

光から短い畏怖の悲鳴が聞こえたが、気にする必要はない。

 

少しずつ、掴んでいる手に力を込めていく。

 

 

 

「忘れてて、何なんだ光?」

 

 

 

光の目に涙がたまっていくのが見える。

いつもならこの時点で妹愛に妨げられるのだが、今は愛の鞭として心を鬼にしている。

 

 

 

「て、手伝って優ちゃん......」

 

 

 

消え入りそうな声で、しかも今にも泣きだしそうな表情で言われると流石に心にくる......。

 

深くため息をつき、手の力を緩めて頭を優しく撫でてやる。

 

 

 

「ったく、早く支度してリビングに行ってろ」

 

 

 

「手伝ってくれるの!?」

 

 

 

光の顔が見る見るうちに驚きと嬉しさを含んだ顔に変わる。

 

 

 

「光。俺はな、お前の宿題なんかより、お前が寝不足になって体調崩す方が心配なんだよ」

 

 

「優ぢゃ~~ん!!」

 

 

「なっ! こら光、泣きながら抱き着くな!!」

 

 

「だって~~!!」

 

 

 

泣きじゃくる光の頭を撫でて何とか泣き止ませようとするが、中々泣き止んでくれない。

他の部屋に居る皆は既に寝ているし、これ以上騒ぐと起きかねない。

まあ茜は起きないから大丈夫だが......。

 

 

 

その後、途中で光が寝落ちしてしまったため、明け方まで一人で絵を描くことになってしまった。

 

 

 

 

 

― 現在 ―

 

 

 

茜にたたき起こされた俺は、他に寝ているクラスメイトへの見せしめのためにボコボコにされてロープでつるし上げられていた。

 

 

 

「で、皆何かやりたいことは無い?」

 

 

委員長らしく、クラスの指揮を取る茜。

 

それにつられて皆それぞれ案を出す。

 

 

 

成程。

メイドカフェにお化け屋敷、喫茶店か……普通だな。

 

 

 

てかそろそろロープほどいてもらえないでしょうか?

 

 

 

 

 

「じゃあ出し物はメイド喫茶で......」

 

 

 

多数決の結果、我がクラスの出し物はメイド喫茶となった。

よくある感じのものだが、男子によこしまな考えが無いことを信じている。

 

 

 

「はい!」

 

 

「どうしたの花蓮?」

 

 

「メイド喫茶だと恥ずかしい思いをするのは女子だけだから、執事も取り入れるべきだと思う!」

 

 

 

まあ確かにメイドもあるなら執事もあった方がいいのだが、もうちょっとマシな理由なかったの?

 

 

 

「皆もそれでいい? 何もないなら、これで決まり! じゃあ早速厨房とホールを誰がやるか決めよう!」

 

 

 

茜の号令によって、班分けが始まった。

 

基本的には料理が出来る奴が厨房をやるのだが......。

 

 

 

「なあ茜、俺が厨房とホールを兼任するのはまだいいんだが.........なんで衣装がメイド服なんだよ! 普通執事服だろ!?」

 

 

「女子のホール班が少ないからお願い!!」

 

 

「嫌だ!!」

 

 

俺と茜が言い争っていると、クラスの女子たちがぞろぞろと俺の前に出てきた。

 

おい、まさか......

 

 

 

『お願い優君!』

 

 

「うっ......」

 

 

 

まさか女子が一団となって俺を説得に来るとは......。

 

後ろの野郎どもが笑いをこらえきれずに吹き出しているのが分かる。

お前ら後で覚えとけよ。

 

女子たちにここまでされて断ると後が怖い。

腹をくくるしか......。

 

 

 

「わ、分かったよ! 着ればいいんだろ、着れば!」

 

 

『やったー! ありがとう優君!!』

 

 

 

どうやら俺は押しに弱いらしい。

分かってたことだけどね。

 

 

 

この後、衣装を注文するために必要なサイズを測るのだが、勿論俺も測るわけで、先程の腹いせにサイズの記録係に名乗りを上げたところ、今度は女子全員に袋叩きにされてつるし上げられたとさ......。

 

 

 




文化祭は良い文明

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