城下町の低身長   作:かるな

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ぱぱっと書き終わったので早めに上げました!!

夏編はもうすぐ終わりです(現実の夏は始まったばかり)。


ダイエット

かなねえとのいざこざ?から数日、夏休みは終盤に差し掛かっていた。

 

今日はいつものことながら父さんと母さんは王宮で仕事をしており、葵姉さんは輝と栞の買い物に付き合い、修兄は花さんとデート、かなねえは選挙活動、岬は部活の助っ人に出ており、遥はその付き添い。光はダンスのレッスン。

 

ということで、今家にいるのは俺と茜だけである。

 

葵姉さんの日ごとに増す無言の圧力のおかげで、俺と茜は夏休みの宿題が片付いており、家を留守にするわけにもいかないのでかなり暇だが、一応バイト先のカフェから、今年の秋から新しく提供を始めるコーヒーの試飲を頼まれており、それを飲んではテーブルに突っ伏している。

 

バイトを入れれば良かったと思いつつも、茜を1人にすると後からうるさそうなのでどうしようもない。

 

のだが......

 

 

 

「ぐへ~~」

 

 

 

この駄妹、先程からソファーに寝そべりテレビを見ながら俺が買ってきたアイスを食べているのだ。

 

確かに特にやることは無いが、お前一応“王女”だよね?

 

何この堕落した生活......。

 

何を隠そうこの堕妹、このままだと夏休みの半分を無駄にしかけない。

母さんや葵姉さんもこの夏休みは忙しいのか、あまり茜を注意することは無かった。

 

え? 父さん? 逆効果でしょ。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

そんな妹を見ていると、ふと違和感に気付く。

何だかいつもと違うような......

でも髪形とかが変わったわけじゃないし......

顔つきも堕落しきったアホ顔以外はとくにいつも通りだし......

 

 

まさかな......

 

 

 

「優、何飲んでるの?」

 

 

「ん? あぁ、今度うちの店が出す新しいコーヒーだよ。店長から味の感想を頼まれてる」

 

 

「私も飲んでいい?」

 

 

「良いけど、茜ってブラック飲めたっけ?」

 

 

「や、やめとく......」

 

 

 

茜がソファから立ち上がったので、頭の先からつま先までじっくりと観察する。

 

 

 

「ゆ、優? そんなにジロジロ見られると恥ずかしいよ///」

 

 

 

俺の視線に気付いた茜が、顔を赤くしながらもじもじし始め、顔を逸らしながらも時折こちらをちらちらと見てくる。

 

そんな茜に俺は、

 

 

 

「茜、太った?」

 

 

 

そう言った途端、茜の動きがピシッと止まる。

口元は引きつっており、腕と足は小刻みに震えている。

 

 

あ、膝から崩れ落ちて四つん這いになった。

 

 

 

「優にデブって言われた......」

 

 

 

「おい、そこまでは言ってないぞ」

 

 

 

膝立ちになりながら、「そんなに太ってないよね?」と言いつつ自らの腕やお腹のお肉をつまみ始める茜。

 

そんなに認めたくないのなら兄が現実というものを教えてやろう。

 

リビングを出た俺は、あるものを取りに脱衣所へと向かう。

 

目的の物を見つけると、それを茜の前に置き、指をさして......

 

 

 

 

「乗れ」

 

 

 

「ぜっっったいに嫌!!」

 

 

 

この反応を見るに、どうやら自分の体の状態に薄々気付いていたらしい。

だが、ここでしっかりと見せておかないと、取り返しのつかないことになりかねない。

兄としてここだけは譲れない。

 

 

 

「どうした茜、体重計に乗るくらいどうってことなあいだろ? ま、どうしても嫌なら水着姿を見せてくれるだけでもいいんだけどな」

 

 

 

「うぅ......」

 

 

 

やはり贅肉が付いてきたときに水着を着るのは嫌なのか、ゆっくりと片足ずつ体重計に乗り始めた。

 

 

 

「優は向こう向いてて!!」

 

 

「はいはい」

 

 

 

流石に女子の体重を見る程デリカシーが無いわけじゃないので、素直に反対を向く。

 

ほどなくして、茜のすすり泣きが聞こえてきたので向き直ると、灰と化した茜がいた。

 

 

 

「で? 前測ったときよりどんくらい増えてた?」

 

 

「2きr......」

 

 

「本当は?」

 

 

「5......」

 

 

 

成程、51ってとこか。

 

 

 

「割と深刻だな」

 

 

「これじゃあ水着着れないよぉ......」

 

 

 

今の体系の時に既に着たのかは知らないが、やはり5キロも太ったんじゃ相当なのだろう。

 

これは、心を鬼にするしかないな。

 

 

 

「茜、痩せるまでアイス禁止な」

 

 

「そんなぁ!!」

 

 

「それと、今日から毎日走り込みだ。それくらいなら俺も一緒にやってやる」

 

 

「この鬼! 悪魔!! ■■■!!!」

 

 

 

何とか逃れようと思いつく限りの暴言を吐いてくる茜に、少し、ほんの少しだがイラッと来たので......

 

 

 

「嫌なら葵姉さんに手伝ってもらうしか......」

 

 

「何言ってるの優! 時間は限られてるんだから早く走りに行かなきゃ!!」

 

 

 

まあ分かってはいたが、こうも手のひら返しが早いと葵姉さんがかわいそうというか、自分でもおそらくこういう反応になるだろうから何とも言えない。

 

 

 

「よし、今から行くから着替えて来い」

 

 

「優は着替えないの?」

 

 

「あのな、部屋同じなんだから一緒に着替えるわけにはいかんだろ」

 

 

「私は、別に一緒でも///」

 

 

「早く行け」

 

 

「むぅ」

 

 

 

茜が不満げな顔をするも、知ったことではない。

なぜ妹と一緒に着替えなきゃならんのだ。

 

 

俺と茜は着替え終えると、玄関で久しぶりに掃く運動靴を取り出していた。

 

 

 

「そう言えば、家留守にしちゃうけど大丈夫かな?」

 

 

 

茜が心配そうに聞いてくる。

確かに家の鍵を閉めてしまうと、後から帰ってきた他の兄妹が家に入れないという事件が起きてしまう。

 

だが、我が家では高校生組がカギを持っており、岬と遥は買い物に行った葵姉さんたちよりかは帰りが遅いため問題なし、光はまだ小学生なので安全を考え、レッスンが終わる時間を見計らっていつも俺が迎えに行っている。

 

まあ問題は無いだろう。

 

 

 

「よし、じゃあ行くぞ」

 

 

「うへ~......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいま~」」

 

 

「あら、優くんに茜、お帰りなさい」

 

 

 

5キロぐらい走ったところで今日の所は終了した。

初日なのだからこれくらいで十分だろう。

 

 

 

「それにしても茜、お姉ちゃん感動しちゃった」

 

 

「「え? 何が?」」

 

 

 

葵姉さんが目をキラキラさせながら言ってくる。

はて、茜が太ったのは自業自得だし、ダイエットを始めたからってそこまで感動するものなのか......

 

 

 

「だって、あの茜が監視カメラを気にせずに外を走れるようになったんでしょ?」

 

 

 

「「あ」」

 

 

 

みるみる内に茜の顔が真っ青になっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、茜の走ってる姿写真をサイトにアップロードしなきゃな。

 

 

 




茜の体重は身長から女子の平均体重を出し、そこから本来あるべきものの重さを引いたのと、結構スレンダーなので大体こんな感じかなと思って計算しました。

ご了承ください......。


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