城下町の低身長   作:かるな

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魔法科高校の劣等生の映画が近くでやってなくて非常に萎えています。

大鉄人ワンセブンさん、感想ありがとうございます!


羞恥

 

「----聞いてるんですか、先輩?」

 

 

 

「はい、聞いてます......」

 

 

 

1人でカフェに入ったまでは良かったが、運が無いことに偶然居合わせた桜ちゃんに自らのいやらしい欲望を聞かれてしまったのだ。

 

1人席で話(説教)をするわけにもいかないので4人用のテーブルに移動させてもらい、今は桜ちゃんと向かい合うように座っている。

 

 

 

「あ、ここのケーキ凄く美味しいですね」

 

 

 

「......そうだね」

 

 

ついでに俺が先程頼んだレモンチーズケーキを桜ちゃんは食べている。

 

何故かって?

 

説教の最中に目のハイライトどころか俺の存在まで消しかねない程の圧力だったので、やむを得ずケーキを差し出した所何とか収まったのである。

 

まぁいつもと変わらないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

スッ...

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

突然俺の目の前に、小さく切り分けたケーキを載せたフォークが差し出される。

 

 

 

「一応、先輩のケーキですし。先輩にも食べて貰わないと。私が全部食べたら太っちゃいますし......」

 

 

 

桜ちゃんの方を見ると頬を少し赤く染めて、少し顔を逸らしながら......それでも目線はチラチラと俺の方を見てくる。

 

どうやら怒りは収まったらしく、いつもの桜ちゃんに戻っている。

 

 

 

ということは.........

 

 

 

「成程、そうやって あーん をする口実が欲しいと」

 

 

 

「ち、違います!! その......ええと.........」

 

 

 

どうやら図星だったらしく、何か言い訳をしようにも中々言葉が出てこない桜ちゃん。

 

その様子がどうにも可愛らしく見え、ニヤニヤが止まらない。

 

 

 

「もういいです! 先輩がそう言うならこのケーキはあげませんから!!」

 

 

 

「悪かったって。ほら、この通り」

 

 

 

頬を膨らましながらケーキの皿とフォークを下げようとする桜ちゃんに、手を合わせて謝罪の意を伝える。

 

てかそのケーキ元は俺の......

 

なんて言ったら今度こそ貰えなくなりそうな気がする。

 

 

 

「しょうがないですね......先輩、どうぞ」

 

 

 

「え? ほんとに あーん するの?」

 

 

 

再び差し出されたフォークに少し戸惑う。先程は少しからかってやろうという気があってので気にしてなかったが、今は別だ。

 

さらに先程から多くの視線を感じる。テーブル席に二人しかいないとはいえ、ここはお店の中。

男女が あーん なんてしようものなら他のお客さんの目はそこに釘付けにあるだろう。

ましてや俺は王家の次男だし......

 

ってかお前ら、俺が1人で居た時は見向きもしなかったくせに何で今だけガン見してくんだよ!

 

おいそこのお前! 写真撮るな!!

 

 

 

「どうしたんですか先輩? 早く食べないと私が食べちゃいますよ」

 

 

 

「あはは、お腹いっぱいだから桜ちゃんが全部食べても.........ひっ!」

 

 

 

ちくしょう! またハイライトが消えてやがる!

 

 

 

恐らくそのまま あーん されようものなら......

 

①ネットに写真がUPされる。

②社会的に抹殺される。

③「.........優?」(ニッコリ笑顔の茜)

→死

 

死が2回程訪れるとか恐ろしすぎる!

 

 

 

なら断るしか......

 

①「.........先輩?」(ニッコリ笑顔の桜ちゃん)

→斬殺

 

 

 

どっち選んでも死ぬ未来しかねぇ。

 

 

 

 

 

ん?よく見ると桜ちゃんがニヤけて......まさか!

 

 

 

「最初からこれが狙いで......」

 

 

 

「ふふふ、先輩? 折角女の子に あーん して貰えるんですから、それを断るなんて無粋な事はしませんよね?」

 

 

 

「でもいいの? こんな大勢の前で あーん だなんて、結構桜ちゃんも恥ずかしいと思うけど......」

 

 

 

「食べるのは先輩ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだったーー!!!

 

 

いつもからかう立場なのに何故気づけなかったんだ......

 

 

 

「先輩、もしかして恥ずかしいんですか? どうです?これがいつも私が味わっているものですよ!」

 

 

 

くそっ! 桜ちゃんにペースを握られてしまった......

 

いつもからかうばかりでこういう事に耐性が無いのかっ!!

 

 

 

「どうします? せ・ん・ぱ・い?」

 

 

 

勝ち誇った用な笑を浮かべてジリジリとフォークを近付けてくる桜ちゃん。

 

周囲からは「いけっ」、「男を見せろ!」などの声が聞こえてくる。

 

お前ら後で覚えてろよ!

 

 

 

「あ~もう......// 分かったよ......」

 

 

 

俺は観念して差し出されたフォークを咥えてケーキを食べる。

 

恐らく今の俺は顔が真っ赤だろう。

そのせいなのかケーキの味など全く分からなかったが、ただただ甘いということだけは分かった。

 

屈辱だ......

 

嬉しくないと言えば嘘になるが、いつもからかっているはずの相手に手玉に取られるとは......

 

 

 

「いいよ~優兄、その赤くなった顔をもうちょっと見せて! あっ、出来れば涙目で!!」

 

 

 

突然いつも聞いている声が聞こえたので、いつものように鷲掴みにし、いつもよりも力を込めてアイアンクローをキメた。

 

 

 

「待って優兄! ここお店の中......きゅぅ......」

 

 

 

「凄い! 今までで1番早いダウンだったよ!」

 

 

 

「光も体験してみるか?」

 

 

 

「!?」 ブンブンブンっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、遥を追跡しに行ったはずが逆に2人とも見つかったと」

 

 

 

「.........きゅぅ」

 

 

 

「えへへ」

 

 

 

「行きのときからバレバレだったよ、優兄さんも」

 

 

 

現在、駄妹2人+弟と合流して5人でお茶をしている。

 

俺の隣に遥、向かいに桜ちゃん、その隣に岬、そして4人テーブルなので、お仕置きをするという意味も込めて光は俺の膝の上に座っている。

 

 

 

「ふえぇん......あひゃひはふぉめはのに~(あたしは止めたのに~)」

 

 

 

「いいか光、実際にあのアホが実行した時点で一緒にいたお前も同罪だ。覚えておけ。お前もだ遥」

 

 

 

「ははは、ごめんごめん。でも優兄さんがあんなに動揺するなんて......」

 

 

 

俺をここまで辱めた元凶は、今は岬の介抱をしている。

 

捨て置けそんなやつ。

 

 

 

「う~まだ痛い......、この暴力ロリコン兄貴め」

 

 

 

「ほう......」

 

 

 

額に青筋を浮かべ、口元を引き攣らせながら右手を岬に伸ばそうとすると、岬が自分の頭をスッと桜ちゃんの背中に隠す。

 

 

 

「奥義、桜ちゃんガード!」

 

 

 

「なら桜ちゃんごと......」

 

 

 

「えぇっ!! 落ち着いてください先輩!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、私はこれで。皆さん今日はありがとうございました」

 

 

 

「気を付けて帰りなよ。まだ日があるとはいえ、1人は危ないだろうし」

 

 

 

「はい、それでは!」

 

 

 

夕方になりショッピングモールを出た俺達は、途中まで桜ちゃんと帰路を共にして別れた。

 

家のすぐ側まで来た時、ふとある事を思い出す。

 

 

 

「そいや遥は何であんな遠くのショッピングモールに居たんだ?」

 

 

 

「それはっ......!! また今度話すから! 僕は先に戻ってるよ!」

 

 

 

「あ、そう言えば......って、待て遥~!」

 

 

 

「2人とも行っちゃった」

 

 

 

「ま、ゆっくり帰るか」

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰宅後

 

 

 

「で? 優、何か言い残すことある?」

 

 

 

玄関で仁王立ちしながら立っている茜の手に握られているスマホには、俺が桜ちゃんに あーん されている写真が......

 

 




次は奏回かな~

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