城下町の低身長   作:かるな

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最近書き始めたい作品が多くて困ってます...

キヨさん、感想ありがとうございます!
大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございます!




追跡

電柱に隠れながら住宅街を進む。

標的はただ1人、先日から疑惑をかけられている紫色の髪の美(?)少年。

お供に光と岬を連れてバレないように追跡するのだが......

 

 

 

「暑い~! 優ちゃんアイス買ってよー!」

 

 

 

追跡を始めてから僅か10分で脱落者が出るとは......

この軟弱者め。

 

と思いつつもしっかりアイスを買ってやるあたりやはり甘い。

 

金が無いんじゃないのかって?

妹の笑顔が見れるんなら安いものだ。

 

 

 

「優兄、私にも!」

 

 

「いいのか? アイスを買ってる間に遥を見失うかもしれないぞ?」

 

 

「光のときには全力ダッシュで買いに行ったくせに......このロリコン」

 

 

「櫻田家専用アイス貯蔵マシーンは燃費が悪くてな。すぐに再稼働は出来ないんだよ、み・さ・き?」

 

 

「ギブギブ! ごめんって優兄!! ていうかまだその事根に持ってたの!?」

 

 

 

全く、この駄妹はどうしてこんなにも俺を怒らせるのが上手いんだろうか?

もう予備動作無しでアイアンクロー出来るまで上達してしまったではないか。

 

 

 

「慈悲で聞いてやるが、岬は何のアイスが欲しいんだ?」

 

 

「勿論ハーケンタッ......冗談だって優兄! お願いだからこれ以上強くしないでぇ!!」

 

 

 

 

 

仕方ないので急いでコンビニに行き、頼まれていたパプコとついでにコーラを買う。

パプコというのは2つで1つのアイスである。

 

手早く会計を済ませて店を出ようとした時、ふとある子供に目が行った。

 

その子は光と同じくらいの年の男の子で、この炎天下の中誰かを待っているのだろうか、少しながらキョロキョロと周りを見ている。

 

 

 

「ねぇ君、誰を待ってるかは知らないけど、流石に外にいると暑いからコンビニの中に入ったら? このままじゃ熱中症になっちゃうかもよ」

 

 

「お兄さんだれ?」

 

 

「俺は櫻田 優。君は?」

 

 

「僕はアキラ! 妹を待ってるんだ」

 

 

「一緒には来てないの?」

 

 

「そのつもりだったんだけど、アイツ道を覚えたいからって僕を先に行かせたんだよ。迷子になったら危ないからって言ったのに駄々こねてさ」

 

 

 

成程そういう事か。

妹が暑い中歩いてるのに、自分だけ涼むのには抵抗があるんだろう。

なんだか、昔の俺と茜を見ているようだな。

 

 

 

「それでもこの暑い中待ってるんじゃ大変だろ。ほら、これあげるから、体調だけは崩すなよ」

 

 

 

「え、でも......」

 

 

「いいっていいって、こういうのは遠慮せずに貰っとくもんだよ。じゃあな」

 

 

 

渋る少年の手に無理やり先ほど買ったコーラを握らせると、スタスタと歩いていく。

その最中にふと思いついたことがあったので、スマホを取り出し電話をかける。

 

 

 

「町に腐るほど設置されてんだし、利用しない手はないよなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優兄遅いよ、何処行ってたの! しかも何でパプコ一個しかないの!? せっかく優兄に分けてあげようと思ったのに......」

 

 

戻って来て早々に岬に怒られるが、特に気にする様子を見せずに宥める。

 

 

 

「ちょっと人助けしてきただけだって。てか、岬って案外優しいんだな」

 

 

 

 

そう言いながら岬の頭を撫でてやると、岬の顔が少し赤くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、遥は何処まで行く気なんだ? もうそろそろ1時間経つぞ」

 

 

 

尾行を始めたはいいが、こんな真夏日に1時間も歩くのはかなりキツイ。

普段あまり運動しない俺にとっては中々にくるものがある。

 

光と岬はと言うと、ダンスの練習や元々の行動力のお陰なのかまだ余裕そうだ。

 

 

 

「あ、遥がショッピングモールに入ってったよ!」

 

 

 

遥がショッピングモールか......

もしかして本でも買いに来たのか?

いやいや、あいつなら外なんて出ずにネットで済ませるだろう。

そもそも小物なら近くの店で済ませるだろうし、家具とかならまず父さんや母さんが一緒に見に来るはずだ。

 

この前光から聞いた話だと隣町に行く事は確かなのだが、買い物では無いとすると一体何のために......

 

 

 

まさか......な。

 

 

遥に限ってそんな事は無いと思いたい。

 

 

 

「どうしよう優兄、遥を見失っちゃった!」

 

 

 

俺が考え事をしている最中に、どうやら人混みに紛れてしまった遥を見失ったらしい。

流石に夏休みのショッピングモールは普段とは違うな。

 

 

 

「見失ったもんはしょうがないな。こうなったら手分けして探そう。遥を見つけたら俺に連絡すること、いいな?」

 

 

 

「「ラジャー!」」

 

 

 

2人とも遥を探しに他の階へ向かったのを確認し、俺も動き出す。

 

よし、これで自由だ。

 

 

本来なら遥が居そうな場所を探しに行くべきなのだが、俺が目指す場所は1つ。

 

 

 

「いらっしゃいませ~、1名様ですか? ではこちらの席へどうぞ」

 

 

 

俺が来たのはカフェ。

理由としては、ライバル店の偵察という建前の元、とにかく休みたいから。

流石に歩き疲れたのである。

 

 

 

「アメリカンコーヒーとレモンチーズケーキ1つお願いします」

 

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

 

 

因みに俺は窓際に座っているため外の人には丸見えなのである。

 

だから何だという話だが、これでも王族の1人で次期国王候補なのである。

 

皆もうちょっと俺の事見つけて騒いでくれてもよくない?

店員さんとかならまだ分かるけど、同じ空間にいる客とかは気づいて欲しい......

 

SMSに上げてもいいからさ!

王子様ナウとか呟いてもいいからさ!

 

何で誰も寄ってこないんだよ!

 

 

あ、俺の知名度が無いだけか。

ロクに選挙活動もして無いからな......

 

 

 

「はぁ、少しでいいから年上のJKにちやほやされてみたいな」

 

 

 

身長以外でな!

 

なぜ年上なのかと言うと、姉さん達は絶対に俺の事を甘やかそうとしないからだ。

かなねぇはともかく、あの優しそうな葵姉さんでさえも最近俺に対して厳しい気がする......

 

 

 

「小学生の次は年上のJKですか。本当に困った先輩ですね」

 

 

「............。」

 

 

 

おかしい、このタイミングで本来聞こえてはいけないはずの声が聞こえる。

 

 

 

「そう言えばこの前新しい包丁を買ったんですよ」

 

 

 

落ち着け、この場所にあの子がいるはずがない。

そうだ! これはきっと光か岬のどっちかが俺をからかっているに違いない。

 

 

 

「少し高かったんですけど、値段以上の切れ味でして......」

 

 

 

なぁ、遥を見つけたんだろ?

そうなんだろ?

だから包丁の切れ味なんてそんな物騒な話やめて遥の情報を......

 

 

 

「先輩も味わってみるべきだと思うんです」

 

 

「さっきのは言葉のあやというか一瞬の気の迷いでして年上の女性に囲まれたいとかそういうやましい考えなど本当は微塵も無いんです信じて下さい申し訳ございませんでした」

 

 

一息で言えたよ!

皆褒めて!!

 

 

 




眠い!!!

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