「「......。」」
仲直りすると言ったはいいが、部屋に戻るとやはり気まずい。
俺が返って来てからお互い終始無言で、光に至っては俺と茜を交互に見てはいつまた喧嘩を始めるかと心配している。
(光)
「はいっ!」
(ばか、声を出すな!)
(ご、ごめん優ちゃん)
(少しの間部屋から出ててくれないか?)
(別にいいけど、どうしたの?)
(いいから)
(むぅ、分かった)
能力を使って、茜に悟られぬように光を部屋から出す。
ふぅ......
一呼吸置き、茜の方を向く。
なんて言って切り出せばいいんだ......
喧嘩中の話程、最初の一言は重要である。
昔は葵姉さんが仲介役に入ってくれたが、この歳になってそれは情けない。
茜の方を向いたまま、どうしたものかと考える。
「何か用? 優」
突然茜が背を向けたまま声をかけてくる。
特に言葉を考えていなかったため、直ぐに言葉が出てこない。
「昨日の事なら、もう怒ってないよ」
「え?」
昨日あんなにお互い険悪だったのに......
「私ね......加藤さんに嫉妬してたんだと思う」
「......。」
「優は加藤さんに勉強を教えるのに、何で私には教えてくれないんだろうって」
違う、悪いのは俺の方だったんだ。
「いつも優が加藤さんと一緒にいると思うと、優がいなくなっちゃいそうで......」
違う! 俺は茜をもっとちゃんと見てあげなきゃいけなかったんだ。
兄として。
家族として。
「ごめん、私のわがままに優を付き合わせちゃって......」
「違うっ!!」
「優......?」
「お前は何も悪くない、悪いのは俺なんだ! 茜を...妹を...ちゃんと見てなかった。茜の気持ちも知らずに、茜に寂しい思いをさせてた。俺は、兄失格だな」
「そ、そんなことない! 優は誰にでも優しくて、中学の頃からバイトもやってて、しっかりしてて、私の自慢の兄なの!!」
「茜......」
「私の一番大好きなお兄ちゃんなの!!」
「茜っ!!」
咄嗟に茜を抱きしめる。
「これからは、ちゃんと茜の事を見るようにする。今まで茜にかまってやれなかったし、その分の埋め合わせみたいな感じになっちゃうけど。それでもいいか?」
「......うん」
茜を放すと、急に顔が熱くなった。
「わ、悪い! 急に抱きしめちまった」
「ううん、大丈夫。これも埋め合わせでしょ」
「そうだな」
そう言って、もう一度茜を抱きしめてあげる。
「でも、少し恥ずかしい」
「そりゃこっちもだ」
「さて、栞の所へ行くぞ」
「どうして?」
「ちゃんと仲直りした所を見せてやんないと、栞にまた泣かれても困るからな」
「栞を泣かせたの?」
先程までいい雰囲気だったのに、茜にジト目を向けられる。
「かなねえにしてやられたんだよ。ほら行くぞ」
ガタッ
茜と共に栞の所に行こうとした瞬間、ドアの方に物音がした。
「「.........。」」
茜とアイコンタクトを取り、瞬時にドアを開ける。
『痛っ!』
「「何やってんの?」」
ドアを開けた先には、栞と輝と遥を除いた兄妹たちがいた。
『あはは......散開!!』
「「待てっ!!」」
兄妹の大掛かりな鬼ごっこが始まった。
「ねーえー、ごめんってばー」
ムニムニ......
「ごーめーんー!」
ムニュ~......
「ふぉへんなひゃい~」
真っ先に捕まえた光を膝の上に乗せ、頬をいじくりまわす。
この行為は茜が全員を捕まえてくるまで続いたという。
「そろそろ寝るか、電気消すぞー」
「「はーい」」
「ん?」
電気を消し、ベッドに入ろうとしたところで異変に気付く。
「茜、ベッドから出ろ」
「嫌」
「そこは俺のベッドだぞ」
「知ってる」
「「......。」」
「分かったよ。俺はお前のベッドで寝るから」
「どうしてそうなるの!? 一緒に寝てよ!!」
何を言い出すんだこの妹は。
「それとも優は妹のベッドで寝て興奮したいんだ!」
「おい、なんてこと言うんだ! 断じてそんなことはない!!」
「じゃあ一緒に寝よ?」
「それは......」
「埋め合わせしてくれるんじゃなかったの?」
「うっ......」
先程茜との仲直りの際に確かにそんなことを言った......
今日だけなら......
そう自分に言い聞かせながら、ベッドに入る。
茜が入っていたせいか、僅かなぬくもりがある、
落ち着け俺っ!
「ふふ~ん」
「っ!?」
茜が俺の腕に抱き着いてくる。
柔らかな感触とか、女の子特有の匂いとか......
はっ! あぶねえ、理性が飛びかけた......
「あたしも一緒に寝るー!!」
「ゴフッ!」
光が俺の腹にダイブしてくる。
左に茜、右に光というなんとも刺激的な夜を過ごした俺は、もちろん一睡もできなかった。
また運動初めてみようかと思います。
評価・感想・お気に入りお待ちしております!