城下町の低身長   作:かるな

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お待たせしました~


喧嘩

 

「化学なんて嫌いだ~」

 

 

 

「何言ってんの優、覚えるだけじゃん......」

 

 

 

「お前なぁ、興味の無いもんほど覚えられないものは無いぞ」

 

 

 

「それは......分からなくもないけど......」

 

 

 

「だろ? だから化学の勉強なんてする必要が無いんだよ」

 

 

 

「でも、赤点取ったらバイトさせてもらえないよ?」

 

 

 

そうだった!

高校で部活をやらずにバイトをするときの約束として、赤点を取ったら補習期間が終わるまでバイトに出れないのだ。

 

 

 

「優が私に数学教えてくれるんだったら、私が化学の面倒見てあげてもいいけど?」

 

 

 

「めんどくさいから嫌だ」

 

 

 

「なんでよ!? お互いwin-winじゃん!」

 

 

 

「だって茜、何回教えても覚えないんだもん」

 

 

 

「うっ!それを言うなら優だって、途中で逃げ出すくせに!」

 

 

 

「俺は効率よく勉強してんだよ!」

 

 

 

「そんなこと言って出来たこと無いじゃん!」

 

 

 

「人には休憩が大事なんだよ!」

 

 

 

「それで出来ないんだから意味ないでしょ!」

 

 

 

「茜の分からず屋!!」

 

 

 

「優の頑固者!!」

 

 

 

「「ぐぬぬぬ......ふんっ!!」」

 

 

 

お互いに意見が合わずに言い争いになってしまう。

それだけならいいのだが、珍しく喧嘩してしまった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「......。」」

 

 

 

『はぁ......』

 

 

 

今日は父さんが国際会議に出席し、母さんがその付き添いをしているため今夜は兄妹だけの食事なのだが...

 

とても気まずい空気が流れている。

原因はもちろん俺と茜の雰囲気。

 

お互いに敬遠しているため、対角線上の端っこに座っている。

 

 

 

「「ごちそうさま......ふんっ」」

 

 

 

茜と言葉が重なってしまう。

普段なら気にすることは無いのだが、喧嘩中はなんともイライラする。

 

俺と茜は食器を片付けると、部屋に戻る。

終始無言である。

 

 

 

「あの二人何があったのよ」

 

 

 

「優兄さんと茜姉さんて滅多に喧嘩しないよね?」

 

 

 

「いつもなら、言い争いになっても直ぐに何事もなかったように話すのに......」

 

 

 

「光が言うには、昼頃からずっとあの調子らしい」

 

 

 

「も~、居心地悪いよ!」

 

 

 

「優お兄様と茜お姉様、仲直りして欲しい......」

 

 

 

「何とかしないといけないわね」

 

 

 

兄妹たちの中で、思いが一つになった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「......。」」

 

 

 

次の日。

俺たちの部屋にはペンを動かす音、紙をめくる音だけが部屋に響く。

 

一通りやることを終えた俺は、休憩に入ると同時にスマホを見る。

すると、一通のメールが届いていた。

 

 

 

 

 

 

 

To 先輩

From 桜ちゃん

 

もしよろしければ、今日喫茶店で一緒に勉強しませんか?

今日はお店が休みなので、オーナーが使っていいと言ってくれたんです!

 

 

 

 

 

 

 

茜と喧嘩中で部屋に居にくい俺にとって、桜ちゃんからのこの案は嬉しいものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ桜ちゃん」

 

 

 

「いえ、こちらこそ急な話だったのにありがとうございます!」

 

 

 

「ここなら勉強がはかどりそうだ」

 

 

 

「先輩の家は騒がしそうですもんね......あっ、別に悪い意味ではないですよ!?」

 

 

 

「気にしてないよ、ほんとの事だしね。じゃ、早速始めようか」

 

 

 

 

 

 

二人で勉強をやること二時間、桜ちゃんが分からない所を聞いてくれるので、適度な休憩を得られている。

でも流石にしっかりと休みたいので、二人分のコーヒーを淹れる。

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

「熱いから気を付けてね」

 

 

 

自分の教科書を見つめる。

ただその目は焦点が合っていなかった。

 

 

 

 

「先輩、どうかしましたか?」

 

 

 

 

「え? 何でもないよ」

 

 

 

「そうですか......何か難しい顔をしていたので」

 

 

 

「ごめんね、心配かけさせちゃって。大丈夫だよ、ほんとに何もないから」

 

 

 

「もしかして、兄妹の誰かと喧嘩でもしましたか?」

 

 

 

す、鋭い......

女の勘というやつか。

 

 

 

「どうしてそう思うの?」

 

 

 

「先輩が悩むなんてこと滅多に無いですから、もしかしたらと思いまして」

 

 

 

「失礼な、俺だって悩むわ! はぁ、桜ちゃんにだったら話してもいいかな」

 

 

 

「ほんとに喧嘩したんですか!?」

 

 

 

「そりゃあ兄妹だし、喧嘩ぐらいはするさ。俺らは滅多に無いんだけどね」

 

 

 

桜ちゃんに茜と喧嘩した原因を教えてあげる。

 

 

 

 

 

 

「たまに思うんですけど、先輩って頑固ですよね」

 

 

 

「桜ちゃんにも言われるとは思わなかったよ......」

 

 

 

「自分が決めたことはやり通すって感じですね。怒ると私の話を聞いてくれませんし」

 

 

 

「それ桜ちゃんも同じだからね?」

 

 

 

「ともかく、聞いた限りだと悪いのは先輩です! 茜さんは先輩の事を思って言ってるんですよ?」

 

 

 

「それは、分かってるけど......。なんかムキになっちゃって」

 

 

 

「子供ですか! ともかく、ちゃんと謝るべきです」

 

 

 

最近桜ちゃんがしっかりと成長してる気がする。

体はまだみたいだけど......

 

 

 

「聞いてますか、先輩!?」

 

 

 

「は、はい」

 

 

 

どっちが先輩でどっちが後輩なんだか......

 

 

 

「帰ったら茜さんに謝ってください、いいですね!?」

 

 

 

「わ、分かったよ......」

 

 

 

「それと、ちゃんと茜さんの勉強も見てあげてください。私は兄妹がいないのでよく分かりませんが、せっかく妹さんが頼んでるんですよ? それに応えるのは兄の使命だと思います」

 

 

 

桜ちゃんの言葉が心に突き刺さる。

 

 

 

「でも、あいつ覚え悪いし......」

 

 

 

「私も悪いじゃないですか」

 

 

 

「分からず屋だし......」

 

 

 

「でも先輩は頑固者です」

 

 

 

「胸小さいし......」

 

 

 

「先輩、何か言い残すことはありますか?」

 

 

 

しまった、特に何も考えずに失言してしまった!

最近胸の話を桜ちゃんの前でしないようにしていたから忘れていたが、桜ちゃんはあの茜以下なのである。

しかも現状立場が上なのは桜ちゃんである。

 

何とか平謝りでその場をやり過ごすが、次からは立場を考えなければ......

 

 

 

「とにかく、今日の勉強会はこれまでにして、先輩はさっさと茜さんと仲直りしてきてください」

 

 

 

「え、もう終わりにしちゃうの? せっかくオーナーが使わせてくれてるんだから時間いっぱい使った方が......」

 

 

 

 

「早く仲直りしてもらわないと、私の気が済みません!」

 

 

 

「えぇ......」

 

 

 

「とにかく! 早く仲直りしてきてください!」

 

 

 

桜ちゃんにせかされるようにして店を追い出された。

 

茜に何て言えばいいんだろう......

 

 




自分には兄妹がいないので、想像でこんな感じかな~と。

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