城下町の低身長   作:かるな

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今日はあの人視点です。




昔話2

 

私がここに来てから数か月、随分この仕事にも慣れてきました。

ですが、まだミスが多いので先輩やオーナーに怒られることもしばしば……。

 

これでも毎日バイトをしてるのに。

 

 

なんで中学生の私が毎日バイトをしているかというと、今私は一人暮らしをしているからなのです。

幼いころから祖父と祖母に育ててもらったのですが、私が中学に上がると同時に他界してしまいました。

 

でも、両親はちゃんと生きています。

海外で仕事をしているらしく、年に一度しか会えません。

 

小さいころから海外に生活させるのを反対した祖父と祖母が、私を引き取ってくれたのです。

 

なので、祖父と祖母がいなくなってしまって寂しいです。

 

 

でもバイトを始めてから、先輩やオーナーとお喋りするのがとても楽しいんです!

あ、ちゃんと仕事はしてますよ!?

 

 

 

「おーい、加藤さん!」

 

 

 

「は、はい。すみません! 今行きます!!」

 

 

 

先輩に呼ばれてしまいました。

あまりぼーっとし過ぎると先輩に怒られちゃいます。

てへへ……

 

 

 

「ちょっと在庫が切れちゃったから、買いに行ってほしいんだけど、頼めるかな?」

 

 

 

「はい、任せてください!」

 

 

 

「俺今日3時で上がりだから、それまでには戻って来てね。これメモ、無くさないようにね」

 

 

 

「はい、では行ってきます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…………」

 

 

 

ピンチです、超ピンチです。

渡されたメモを無くしてしまいました。

しかもスマホを置いてきてしまいました、これでは連絡できないですし、時間も分かりません。

何度かメモの内容を思い出そうとしたんですが、全然思い出せません。

 

 

 

「はあぁぁぁ………」

 

 

 

ため息が大きくなってきました。

 

 

 

「何か困ってるようだけど、私でよかったら相談に乗るよ?」

 

 

 

「え?……あ、はい、えーっと……どちら様ですか?」

 

 

 

ピンク色の髪の女性……

何だかこの人、見たことあるような気が……

 

 

 

「そんなこと気にしなくていいの。それよりも、話してごらんなさい」

 

 

 

「は、はい。よろしくお願いします……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程そう言うことね。なら、素直に謝りに行きましょう。私も一緒に行ってあげるわ」

 

 

 

「え!? それは申し訳ないですよ!! 話を聞いてもらっただけでも申し訳ないのに……」

 

 

 

「いいのいいの。さ、行きましょ」

 

 

 

何だろう、この人と話していると、とても安心した気持ちになれます。

知らない人に付いて行っちゃいけないとは言いますが、この人なら信じられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このお店です。あの、ここまで大丈夫ですので……」

 

 

 

「ダメよ、それじゃ私が付いてきた意味が無いじゃない。ほら、早く入りなさい」

 

 

 

「は、はい……」

 

 

 

女の人に言われるがままにドアをノックして中に入る。

 

 

 

「あ、あの~……遅れました~……」

 

 

 

怖いです、正直怖いです。

先輩が怒ってそうで怖いです。

 

 

 

 

「随分遅かったね、加藤さん」

 

 

 

良かった、いつもの先輩の笑顔です!

これなら怒られずに……………………

 

 

ち、違います、この笑顔はいつもの先輩のじゃないです!

なんか黒いオーラ出てます!!

ものすごい怖いです!!!

 

何を言っても簡単には許してもらえそうにないです……

 

 

 

落ち着くんです桜。

こういう時のために、さっきの女性が付いてきてくれたじゃありませんか!

 

あの人ならきっと今の先輩をどうにか……

 

 

 

「い、いない!?」

 

 

 

後ろを振り向くと、そこには誰もいませんでした……

 

 

 

「あれ? あれ!?」

 

 

 

「ちゃんとこっち見ようか、桜ちゃん? 今何時か分かってる?5時だよ?5時。 言い訳なら聞いてあげるけど?」

 

 

 

「ひっ!! あの、その……メモを無くしてしまいまして……それで先輩に連絡をと思ったんですけど、スマホを置いて行ってしまって……その、ずっとどうしようか悩んでまして……」

 

 

 

「成程、電話しても出ないわけだ。それにしても……………」

 

 

 

せ、先輩がすごい呆れた顔で見てきます!

スマホをロッカーに置いてきてしまうのはよくあると聞くんですけど、やっぱりメモを無くすのってすごいおっちょこちょいですよね……

 

 

 

「加藤さん、ちょっと失礼するよ」

 

 

 

え? 先輩? 何で手を私に近づけてるんですか?

失敗が多すぎるから体で責任を取れということですか!?

待ってください! 私、心の準備が……そうじゃなくて!

私たちまだ中学生ですよ!? まだこういうのは早いというか……

 

目をぎゅっと瞑りながら縮こまっていましたが、先輩の手が私に触れたのは一瞬でした。

 

 

 

「これ……」

 

 

 

「ふぇ?」

 

 

 

私が想像していたことは起こらず、気の抜けた返事が出てしまいました。

 

 

 

「メモ、内側のポケットに入ってたけど……」

 

 

 

「あれ? そんなはずは……………あ、ああっ…あああ~!!!」

 

 

 

思い出しました!

完璧に思い出しました!!

落とさないように内側に入れたんでした!!!

 

 

 

「うぅ~……」

 

 

 

恥ずかしさのあまりその場に崩れてしまいました……

穴があったら入りたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、いつまで落ち込んでんの。行くよ」

 

 

 

「え? でも、二人で行ったらお店が……」

 

 

 

「オーナーに連絡して、今日はもう店を閉めていいって言われてるから。行くよ」

 

 

 

「か、買い物ぐらい一人で大丈夫ですよ。ほら、今度はちゃんとメモもスマホも持ってますので……」

 

 

 

「加藤さん?」

 

 

 

「で、でも……」

 

 

 

正直男の人と一緒に買い物は恥ずかしいです……

 

 

 

「行くよ?」

 

 

 

「はい、是非ともよろしくお願いします……」

 

 

 

何だかこれ以上逆らうのは危険だと思いました……

 

 

 

「よろしい」

 

 

 

こうして私と先輩は、一緒に買い物に行くことになりました。

 

 

 

先輩のいない間に、メモに無いものをいっぱい籠に入れてしまい危うく買いそうになってしまいました。

もちろん、先輩をまた怒らせてしまいました……

 

 

 

 

必要だと思ったんです!!!

 

 

 

 

 

ごめんなさい………

 

 




女の子視点って難しいですね...

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