城下町の低身長   作:かるな

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プロローグと一緒に投稿したかったんですけど、プロローグが1話みたいなもんなのでいいかなーと


登校

 朝食を済ませた俺は葵姉さん、修、かなねえ、茜と学校へ向かう。

 

 

「もう桜も終わりね」

 

 

「うん、今週末が花見の最後のチャンスかも」

 

 

「花見か」

 

 

「今週末はバイトないから行けるかも」

 

 

「おはようございます」

 

 

「「おはようございます」」

 

 

「……おはようございます」

 

 

突然女性に挨拶をされる。

葵姉さんとかな姉は挨拶を返し、俺と修は会釈で返す。

茜はというと、俺の背中に隠れながらか細い声であいさつをする。

 

 

「バイバイ」

 

 

「……ばいば~い」

 

 

小さな子にもこのありさまである。

 

かな姉が俺の方を睨んでくる。

 

 

「はぁ…茜、そろそろこういうのにも慣れようぜ」

 

 

「優までそういうこと言うの!?」

 

 

「というかなんで俺の後ろに隠れてるわけ?」

 

 

「あんたが甘やかしすぎてるのよ」

 

 

「奏、優君、二人ともそれぐらいで」

 

 

「「は~い」」

 

 

いつもの感じで話をしていると、近くにあった電柱に付いている一台の監視カメラがこちらをとらえる。

 

 

「ひゃっ!」

 

 

「……。」

 

 

監視カメラに驚きながら俺の背中に額を当てて、顔を隠す茜。

妹だが、女の子にそんなことをされるとちょっとドキッとするのでやめてほしい。

 

 

「茜、こういうのもカメラに映ってるから恥ずかしいんだが」

 

 

「そう言う割には顔にやけてるわよあんた」

 

 

「......。」

 

 

「しょうがないさ茜。これが俺たちを守るためだってことはお前も分かってるだろ?」

 

 

「それはそうだけど。町内に2000台って多すぎない!? しかもせっかくカメラの位置全部覚えたのに変わってるし….」

 

 

『全部ってすごい…』

 

 

この町には茜が言った通り2000台もの監視カメラがある。

これは王族の生活を監視するためであり、なぜ設置されることになったのかはまた別の話。

 

 

「カメラの位置なんてよく覚えたわね、私だったら国民へのアピールに使うのに」

 

 

「なんでアピールするの?」

 

 

茜が奏にそう尋ねる。

 

 

「だって私たち次期国王選挙の候補者よ?自分の支持率を挙げようと思うのは普通のことでしょ?」

 

 

「う~、なんで選挙で決めるのよ…」

 

 

茜はそう言ってガックリと肩を落とすが、俺もあまり選挙に乗り気ではない。

やはりこういうのは長男長女が王様になるのがお約束というものだろう。

 

 

「お父さんが決めたことなんだからしょうがないでしょ」

 

 

「にしても光と輝と栞が候補というのはいいのだろうか」

 

 

「それより奏、生徒会があるんだよね、時間大丈夫?」

 

 

「え? もうこんな時間!? ありがとう葵姉さん、先行くわ」

 

 

「んじゃ、俺も行くわ」

 

 

2人はそう言うと走っていってしまった。

 

 

「私たちも行こう茜、優君」

 

 

「で、でも監視カメラが…」

 

 

「茜は俺が何とかするから、葵姉さんも先行ってていいよ」

 

 

「でも…」

 

 

「今日は本当に間に合うか微妙だし、姉さんまで遅刻するわけにはいかないでしょ」

 

 

「そう? じゃあお願いね優君」

 

 

葵姉さんにも先に行っててもらう。

 

 

「ごめん優」

 

 

「いつものことだから気にしてないよ。監視カメラは俺が引き付けるから、捕まらないように来いよ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

土下座をしてまで感謝を伝えてくる妹。

こいつは近くに監視カメラがあるということを忘れているのだろうか。

あまりゆっくりしてもいられないので、カメラを引き付けるために先導する。

予定通りカメラは俺を捉え続ける。

この調子なら茜は問題なく進めるだろう。

 

 

 

そう思っていた。

 

 

 

が、俺を捉えていたはずのカメラは突然向きを変え、茜を捉える。

 

カメラが自分の方に向いていると気付いた茜は、悲鳴を上げながら超ダッシュで駆け抜けていく。

まったく、カメラの性能を上げるなんて税金の無駄遣いではないだろうか…。

 

そんなことを考えながら、兄を置いて先に行ってしまった妹を追いかける。

 

 

 

 

 

茜はすぐ近くにある公園のベンチに座っていた。

 

 

「兄を置いていくとは薄情な妹だ」

 

 

「だ、だってカメラが! あいたっ」

 

 

そんな薄情な妹の脳天に手刀を当て、制服のポケットからスマホを取り出して時間を確認する。

 

 

「なあ茜、どう頑張ってもこのままじゃ遅刻なんだが」

 

 

叩かれた頭を押さえていた茜が「こうなったら」と言って覚悟を決めたような顔をする。

 

 

「いいのか? お前ズルしてるみたいだからって使いたくないんだろ?」

 

 

「だって、このままじゃ本当に遅刻しちゃうんだもん。せっかくの皆勤賞なのに」

 

 

「たまには遅刻しても大丈夫だろ」

 

 

「優は授業さぼりたいだけでしょ。はい、手だして」

 

 

「はいはい」

 

 

茜から差し出された手を握る。

女の子の手を握りながら登校なんて他の男どもが見たら発狂もんだが、あいにく俺にとってはそこまで嬉しいものではない。

妹だからな。

手をつなぐぐらいならどうってことはない。

あまり密着されるとあれだが……

 

 

「じゃあ、行くよ」

 

 

すると、茜の体が輝き始める。

少し経つと体が浮き始める。

何度やっても俺はこの感覚には慣れない。

 

 

今更だが、王族の血を引くものには特殊能力が宿っている。

今朝も茜が俺に使っていたが、こいつの能力は重力制御。

簡単に言うと、自分と自分が触れているものの重力を操ることが出来るのだ。

この能力のおかげで空を飛べるので、監視カメラには映らないし、国民の視界にも入らないので極度の人見知りな茜でも問題なく進むことが出来る。

 

飛び方は地面に対して体を水平にして飛ぶ。

直角にするとスカートの中が見えてしまうのだ。

 

茜に引っ張られるように飛んでいるため、自然と茜の斜め後ろを飛ぶ感じになる。

 

斜め後ろだからって特に何もない。

が、今の茜はスピードを出しながら飛んでいるため、風に煽られてスカートがひらひらとしている。

 

 

「茜、もう少しゆっくりいかないか?」

 

 

「え、どうして?」

 

 

「パンツ見えてるぞ」

 

 

「……へ?」

 

 

茜が素っ頓狂な声をだすと、しだいに顔が赤くなっていき、最後には口をパクパクさせてショートする。

 

やべ、言わない方がよかったかも……

 

時すでに遅く、完全に取り乱した茜は能力の制御が出来ずに落下を始める。

 

 

「ば、馬鹿っ! 落ち着け!!」

 

 

「ゆ、ゆゆゆ優が悪いんだからね! なんで今そんなこと言うの!?」

 

 

何とか立ち直した茜は先程と同じように飛び始める。

しかし顔はまだ赤かった。

 

 

「なんでって、そりゃあ俺にパンツ見せびらかしたいなら何も言わないけど......ちょ、手! 力強すぎ!! 潰れるって!!!」

 

 

こいつの能力は重力制御だが、器用に使えば馬鹿力を生み出すこともできる。

 

 

「茜! 茜さん!! なんで振りかぶって……うおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

茜は俺を力任せに分投げ、落ちる寸前でキャッチするというのを学校に着くまで繰り返した。

 

 

「もういや……ガクッ」

 

 

学校についたときには意識は無くなっていた。

 




前回より1000文字以上多くなっててびっくりです


これ書いてる最中に気付いたんですけど、輝と栞がまだ喋ってない...
ごめんよ

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