居眠り常習犯さん、ゆりンスさん、感想ありがとうございます!
大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございます!
「ねえ優。ボルシチ知らない?」
平日の夜、いつも通りテレビを見ていると茜に声をかけられた。
「そんなものの存在など知らん………光の所じゃないか?」
「何だかんだ答えてくれるあたり、優ってツンデレだよね」
「うるせぇ」
別に動物は嫌いではないのだ。
テレビで見たり、遠くから見たりする分には他の人と変わらないだろう。
ただ、近くに来られるのは苦手なのだ…
少しして茜が戻ってくる。
「ねえ優、光が何か企んでるっぽいんだけど何か知らない?」
「茜にばれるなら相当だな。ちょっと様子見てくる」
「なんかムカつく……」
光(俺と茜)の部屋に向かう。
「小学生の募集はどれも保護者同伴、後2年もすれば私一人でオーディションに行けたのになー」
ドア越しにそんな声が聞こえる。
「時代が私についてこれてないんだよねー」
「小学生についてくほど、時代は暇じゃないぞ」
「優ちゃん!? いつからいたの? ていうか、ノックぐらいしてよ!!」
「今さっき……というか、自分の部屋に入るのに何でノックしなきゃいけないんだよ」
「話聞こえてた?」
「あー、オーディションが何とかしか…」
「しょ、しょうがない…こうなったら優ちゃんも巻き込んで……」
「ほんとになんか企んでたのかよ…」
光に一人で何かをやらせるのは輝と同じくらい心配だが、まあ好きにやらせるか…
「優ちゃん! 岬ちゃんの部屋まで付いてきて!」
「どうしたんだ急に?」
「いいから!」
「はいはい」
妹には弱い俺であった…
「うーん、どれもぱっとしないなー。勝負服とか無いの?」
岬の部屋に俺を連れていった光は、何をするのかと思えば岬の服を漁り始めた。
おいおい、そんなん岬にばれたら殺されるぞ。
主に俺が。
「ゴホン!!」
「ふへ?」
あらら、遥にばれたか…
俺も気付かなかったぞ。
まぁ岬にばれなかっただけマシか。
「光だって、自分の物を勝手にいじられたら嫌だろ? というか何で優兄さんも一緒にいるわけ?」
「「ごめんなさい…」」
「オーディションを受けに行く服が無くて…」
「オーディション?」
「私、王様になりたくて。人気集めるにはどうしたらいいか考えて、アイドルになった
らいいんじゃないかって」
「「アイドル?」」
「そうアイドル!」
「優兄さん知らなかったの?」
「ああ初めて聞いた。それでオーディションとか言ってたのか」
光がアイドルか…
確かに派手好きな性格と合ってい良いのかもしれない。
「何であれ、光がそうしたいのなら、俺らは止めるつもりはないぞ。なあ遥?」
「うん、光にやる気があるなら僕も賛成するよ」
「ほんと!? やったあ!」
「ただし、光の面倒は遥見ろよ」
「「え!?」」
「俺バイトあるし」
「そこを何とか!!」
いつもは人をあまり頼らない遥が土下座で頼み込んでくる。
そうかそうか、そんなに俺の力が欲しいのか。
そこまで言われたら兄として融通を利かせてやっても……
「優兄さんがいないと、歌の練習でカラオケとかアイドルの情報誌とかの費用が……」
「………いい度胸だなぁ、遥?」
「あ、ちょっと待って優兄さん! 僕の腕はこれ以上そっちには曲がらなっ……」
その後、死にかけた遥を捨て置き、光と話し合った結果、アイドルの給料が出たらそれまで借りていたお金を返すということで話がついた。
それから数週間、光がアイドルになるための特訓が始まった。
カラオケや走り込みを繰り返し、着実に実力をつけていた。
一次審査は写真審査であるため、ある程度見た目が良ければ受かるのだが、光なら天地がひっくり返ろうとも落ちることなどないだろう。
もし落ちたら審査員全員血祭りにあげてやる。
無事に一次審査を通過し、いよいよ二次審査。
面談が行われるのだが、光なら緊張することも無いだろう。
それよりも心配なのは中身が小学生ということだ。
光には悪いが、あまり真面目な話が出来るのか心配である……
俺と遥と光はアイドル事務所へ到着。
「ごめんね優ちゃん。バイト休ませちゃって…」
「別に構わないよ光。昔と違ってオーナーと俺がいなくても、安心して任せられるからな」
「光、そろそろ時間だよ。王族ってだけで敬遠されるだろうが、今のところは順調に来てる。名前を貸してくれた光の友達のためにも、絶対に合格しないとな」
「うん!」
俺たちの最後の仕事は、光を信じて待つのみ。
ここまで来たんだ、しっかりやれよ。
そう思っていたのだが、直ぐに光が帰ってきた……
「計算外だった...未分証を見せなくちゃいけないなんて…」
(なあ遥、俺らのどっちかが変装して保護者を演じれば、小学生の部には応募出来たんじゃないか?)
(僕も今そう思っていた所だよ……光には言わないでおこう)
(そうだな……)
「帰るぞ二人とも」
「「うん」」
失敗は成功の元とも言うしな。
まだアイドルになれないと決まったわけじゃない。
選挙まで時間もあるんだ、どうにかなるさ。
「あ、すまん二人とも、電話だ」
歩き始めた頃に電話がかかってくる。
「どうした桜ちゃん? え……はぁ~、分かったよ。今行くから」
「どうしたの優兄さん?」
「バイトの後輩がドジやったみたいでな、ちょっと行ってくる」
2人を置いてバイト先へと急ぐ。
やっぱ桜ちゃんには、まだあの仕事は早かったかな……
「やっぱ優ちゃんって面倒見がいいよね」
「そこが優兄さんのいいところでもあるからね」
「で、桜ちゃん? 言い訳があるなら聞くけど?」
「あの、その~......先輩の言う通りにやってたんですけど~」
バイト先に着いてすぐ、桜ちゃんが犯した失敗を確認して問い詰める。
「俺の言う通りにやったなら、こんなことにはならないはずなんだけどな~?」
「あははは……」
桜ちゃんが失敗したのは、売り上げ金額や売り上げ数、在庫の個数を数えて計算すること。
作業の簡略化をするためにオーナーから頼まれて、表計算ソフトで計算できるようにしたのだが、桜ちゃんはパソコン操作が大の苦手なのである。
そんな桜ちゃんのために、前から少しずつやり方を教えてあげたのだが……
「何で今までのデータが全部消えるんだろうね~? 桜ちゃん?」
「い、言われたこと以外の事をしたらそうなると思います……」
「うんうん、よく分かってるね~桜ちゃん」
「ご、ごめんなさい…」
桜ちゃんが涙目になってきている。
そろそろやめてあげるか……
「誰だって失敗はあるから、今日はこれくらいにしといてあげるけど、次からは気を付けてね」
「はい…//」
あやすように頭をポンポンとしてあげる。
「今までのデータは別の所に保存してあるからいいとして、オーナーが戻ってくる前に今日の分を終わらせようか」
「え? データ残ってるんですか!? それじゃあ私怒られ損じゃないですか!!」
「自分が失敗したのに何を言ってるのかな~?」
「ふぉへんなひゃい!ふぉへんなひゃい~!!」
割と強めに桜ちゃんの頬を引っ張る。
ほぅ…良く伸びるな。
オーナーが返ってくる前に何とか終わらせ家に帰ると、なぜか光がアイドルになっていた……
バイトにかわいい後輩がいると羨ましいですね
働きたくないでござる!!
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