わかりにくくてすいません。
「おはよー、瀧君っ!」
おはよう……って、アレ、四葉? いや、だが、俺の身体は……待て、これは……どういう……!?
「うわぁ……まさかとは思ったけど……ホントにお姉ちゃんの彼氏なん?」
いっ、いやいや、そんなはずないでしょ? まったく四葉ったら寝ぼけてるのかしら? おほほほほ……
「お姉ちゃんはそんな笑い方せんて……」
だな……。どうして判った? というか、何で名前まで知ってるんだよ。
「何でって……お姉ちゃんが
夢? それってどういうことだ?
「ふぅん、この期に及んで白を切るんだ。そんなら、お姉ちゃんにバラしていい? こないだトイレで……」
わっ、わっ、わかった! 知ってることは全部正直に話すから!
「……ホントにお姉ちゃんやなくて瀧君って人なんね。自分のこと自分にバラすとか、ありえんもん」
***
……ということで、原因はわからないが、俺と三葉は時々身体が入れ替わってるらしいんだ。
「ふぅん……ホントにそれだけ?」
他に何を隠してるって言うんだよ。
「やから、夢のこと」
本当にそれは何も知らないんだよ。むしろ、こっちが教えて欲しいくらいで。
「あ、そ。なら教えたげるけど、瀧君とお姉ちゃん、夢の中でセックスしてた」
……な……っ
「やから、セックスしとったで」
にっ、二度言わなくていい! その……女のコが!
「ヒューヒュ~♪ セックスセックス~♪」
……さすがにそこまで言われたら……な?
「つまらんの。んで、とにかくセックスしとったん」
な……何を根拠に……
「夢に根拠もナニも。でもさ、こちとら何度も同じ夢見るんやもん。勘弁してほしいわ」
それってつまり、四葉の夢の中で、俺と三葉がその……してる、ってことじゃないのか?
「ちょっと待って」
あ、いや……すまんかった。
「もしセックスのこと気にしてるんなら違うから」
ソレ言われるのもさすがに慣れてきたけど……じゃあ何だよ。
「瀧君は瀧君であって、私のお姉ちゃんやないんよね。知らん男の人からいきなり呼び捨てってのも……」
そう言われればそうなんだが、入れ替わっていた都合上、最初から四葉のことは呼び捨てなんだよ。
「瀧君の都合はわかる。でも、都合ってのは時間と共に変わっていくもんだから。瀧君とお姉ちゃんの関係みたく」
妙な言い方すんなよ……。じゃあ、四葉ちゃん、って呼べばいいか?
「……ま、それでええわ。ともかく、私が、瀧君とお姉ちゃんがセックスしてる夢を見てる、って言いたいんやろうけど、多分、それ、違う」
随分強気で言い切るな。何でだ?
「やって、私が瀧君の名前知っとるわけないやろ」
……三葉が三葉の時に、ポロっとやらかした、とか?
「聞いとらんで。とにかく、私は夢の中でしか瀧君の名前は知らん」
……で、だから、何なんだよ……
「何なんだよ、やないでしょ!」
と言われても……俺たちだって好きで入れ替わってるわけじゃないし、他の人にこのこと話して、信じてもらえると思うか?
「まあ、それは、そうなんやけど……」
むしろ四葉ちゃんの方が、理解者として俺たちに協力して欲しいくらいなんだが。
「ふっふ~♪ そりゃそうよねぇ……」
何だよ、変に乗り気じゃねーか。
「だったらさぁ~……ちょ~っと私のお願い聞いてくれんかなぁ~?」
断る。何かもう、嫌な予感しかしないから。
「あっ! そゆことゆってええと思ってん? 何ならトイレでやらかしたこと……」
わっ、わっ! わかっ……たから……本当にそれだけは勘弁してくれ……
「やけど、何でトイレで突っ立ったままお漏らししとったかわかったわ。瀧君、男の時のクセで、立ちションしよとしたでしょ」
……あの時はたまたまズボンだったし、急いでたし。取り出そうとしてなかった時は心底焦ったぞ。
「やれやれ。お姉ちゃんに恥かかさんためにも、その身体にも慣れといた方がええよ」
もちろん気をつけるが……で、俺に何をさせようってんだよ。あんまり変なことさせると、三葉にバレるぞ。
「うん、それは私も恥ずかしいから……」
おい……まさか……
「ん。私、瀧君をね……」
ま……待て……それは、さすがに……!
「――お兄ちゃんって呼びたいの!」
……はぁ?
「何よっ! トイレでお漏らししてたのお姉ちゃんにバラしてええん!?」
いやいやいやいや! そーじゃなくて、ちょっと拍子抜けだったから驚いただけだ!
「拍子抜けって……あぁ……期待させちゃってすまんかったなぁ。まさか、お兄ちゃん女子小学生とセックスしたいと思うとは。守備範囲広すぎない?」
ちっ、違うっての!
「何が違うって? じゃあ何と勘違いしてたん? ゆってごらん? んん~?」
例えば、その……キス、とか?
「ぷっ、ぷははははっ! 何ゆってんのお兄ちゃん! そんなんするわけ――」
悪かったな。アホなこと言って。
「……ふむ、そういえば……」
何だよ唐突に。
「コレ、マジで訊くんやけど……夢のこと、ホンっトーに、覚えとらんのよね?」
あ、あぁ……マジだぜ……。だからこそ、四葉ちゃんに教えてもらいたいくらいで……
「❤」
何だよ。
「ま、ええわ。やったらお願いは夢の中でしーとこーっと♪」
ちょっ……お願いって……それならもう……!
「起きてひとつに寝てひとつ、ってことで」
ことわざっぽくゆってるけど、そんな格言ないからな。
「そもそも、夢やったら何でもやり放題っしょ? 但し……こっちは夢のこと覚えとるからね。あんま酷いことしたり、そもそも言うこと聞いてくれんかったら……」
ぅ……わかったよ……でも、本当にあんまり変なことさせるなよ?
「変なことでなければ今頼んどるわ!」
何させる気だよ!
「ま、それは寝てのお楽しみ、ってことで。少なくとも、ここではできないことをお願いするつもりよん♪」