テイルズオブベルセリア 自由の代償   作:カウボーイ

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少し書き直しました。
申し訳ありません(。>д<)


4話

二人は森の外れにある、岬の祠に来ていた。ウリボアを探していたらいつの間にかこんな場所まで来ていた。

カインはこの場所があまり好きではなかった。

この祠にあるそこが見えない穴がとても恐ろしいものに見えて、あまり近寄りたくなかったのだ。

それに、ここに来るとどうしてもあの日を思い出す。

一面に広がる真っ赤な世界、そしてそこにいたあの冷たい目をしたアーサー義兄さんのことを。

 

 

 

「危ないわね。また崩れて穴が広がってる」

 

ベルベットの言葉にはっとなったカインはすぐに意識を

ベルベットの言葉に向けた。

 

「ここ柵とか作ったほうがいいんじゃないか?」

 

もっともなことをカインが言った。確かに少し足を滑らせたらそのまま落ちてしまいそうなくらいなにもなく、ここに誰か来たら危なそうだ。

 

「あたしだって何回もいったのよ?けど、『触れちゃいけない場所たから』って」

 

「・・・・触れちゃいけない場所・・・・」

 

確かにここにくるといつも思う。なにか嫌な感じかするようなそんな気分にさせる場所だと。

 

「セリカお姉ちゃんにも、よく脅かされたっけ。『ここは地獄に繋がってるのよ』・・・・って」

 

そういえばそんなこといっていたな。

 

「そんなこと信じるほど、もう子どもじゃないけど!」

 

ベルベットが心なしか少し怖がった口調でそう言った。

 

「本当か~?昔は怖がって俺の手をガッチリ握ってたくせに」

 

カインはからかうようにイタズラっぽい口調でベルベットに言った。

 

(昔は、夜寝る時も俺とベルベットとライフィセットの三人でよく寝てたっけ。)

 

カインが昔のことを懐かしんでいると、ベルベットが頬を赤らめながら必死に反論した。

 

「あ、あれはあんたやラフィが恐い思いをしないように手を握ってやっていたのよ!」

 

「のわりには毎日トイレに・・・・」

 

「わー!」

 

カインがベルベットの恥ずかしい過去を話そうとすると必死にベルベットがカインの口を手で覆いながら止めた。

 

「もうっ!ウリボアも十分狩ったし、早く村へ戻るわよ!」

 

ベルベットは少し怒り気味で言うと、そっぽを向いてずんずんと先に村の方へ戻っていった。

カインはそんなベルベットをみながら、おかしく笑い、ベルベットのあとについていった。

そのとき―

 

 

 

「!?」

 

 

刺すような不気味な視線がカインを襲った。

 

(・・・・何だ?この気配は?・・・・)

 

周囲を見渡してみても、人影はなく、誰もいなかった。

 

 

(・・・・気のせいなのか?誰かに見られてる気がしたんだが)

 

考え込んでいると、ベルベットがカインの様子が変なことに気がつき、歩みを止めてこちらを心配そうに見ていた。

 

「どうしたの?大丈夫?」

 

ベルベットの声にカインが反応し、大丈夫だと心配をかけないように言った。

 

「そう?なら早く村へ戻りましょ。ラフィが待ってるわ」

 

「ああ、今行く」

 

再びカインが周囲の気配を探ったが、謎の視線は感じられなかった。

 

(やっぱり、考えすぎか)

 

カインは安心すると再びベルベットのあとについていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローブの男がこちらをじっと見ていたことに気づかずに。

 

 

 

 

 

 

 

ベルベットと一緒に村へ戻る途中、ウリボアの群れが敵意をむき出してこちらに迫ってきた。

 

「あんたたち、もしかしてあたしたちが狩ったウリボアの・・・・・・!」

 

どうやら自分たちが狩ったウリボアの子どものようだった。

だが、自分たちも生きるためにウリボアを狩った。それにこちらを襲うというなら、戦うしかなかった。

 

「・・・・ベルベット」

 

「・・・・わかってる」

 

ベルベットも覚悟をきめ、ウリボアに向けて構えた。

 

「・・・・・・戦訓その三『剣を抜いたら迷うな、非常の戦いは非情をもって制すべし』!」

 

「これも俺達が生きるためだ!行くぞ!」

 

ベルベットとカインはウリボアの群れへ切りかかった。

ベルベットは得意の蹴りでウリボアを翻弄し、止めの刺突刃で仕留めていき、カインはウリボアの攻撃を紙一重で交わしながら、カウンターをしかけ一刀ので切り伏せていった。

 

ベルベットが最後の一匹を仕留め、ウリボアは全滅した。

 

「やった!」

 

ベルベットが最後の一匹を仕留めて安堵したのか、警戒をといた瞬間だった。

 

「!ベルベット!」

 

仕留めたはずのウリボアの一匹が起き上がると、ベルベットに飛びかかったのだ。ベルベットは反応できず、体が動けなかった。

 

(くそっ!間に合わない!)

 

カインも咄嗟のことに反応できず、ベルベットがウリボアにやられると思った瞬間だった。

 

「シアリーズ」

 

火の玉がウリボアに直撃し、ウリボアはそのまま地面に落ち、動かなくなった。

 

「これは、まさか・・・・」

 

「対魔士の技!」

 

さっきの火の玉は聖隷が使う聖隷術の力だった。

この力を扱える人といえばこの近くには一人しかいない。

 

「自負と不安。敵への同情。勝利への歓喜―」

 

聞き覚えのある声のする方向に振り向くと、そこには長剣を持った、アーサーが立っていた。

 

「お前たちは、感情が豊かすぎる。それでは、いつか破滅するぞ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・でも、アーサー義兄さん―」

 

ベルベットがアーサーの言葉に落ち込み、カインが反論しようとすると、アーサーの側にいたシアリーズがカインが答える前に言った。

 

「ですが、その感情が彼らの優しさに繋がってるともいえます」

 

「ああ。それがこの子たちの長所でもある」

 

「え?」

 

ベルベットにはシアリーズが見えないため二人の会話は聞こえてないようだ。

 

「そのおかげでこの二人が強くなっているのも事実です」

 

「わかってるさ。だが、それでは―」

 

アーサーがいいかけると、長剣の柄の先に結ばれている2枚の鳥の羽根がクロスした形のペンダントが吊るされており、それをどこか悲しい目で見つめていた。

 

「義兄さん?」

 

ベルベットが心配そうに声をかけると、アーサーが二人の顔を見て答えた。

 

「アーサーの戦訓その四だよ。『勝利を確信しても油断するな』」

 

「「はい!」」

 

二人はアーサーに元気よく返事をした。

 

「ともかく、これでライフィセットの薬代を払えるだろう」

 

ベルベットが後ろを振り返り、さっき倒したウリボア達を悲しい顔で見ていた。

 

(ベルベット・・・・)

 

ベルベットは優しい少女だ。まだ非情になりきれない所もあるだろう。まぁそれは自分にも言えることだが。

だがシアリーズもいった通りそう言った感情があるおかげで自分達は強くなれたわけだが。

 

「売る方のウリボアは、俺が先に店に届けておこう。」

 

アーサーがウリボアの死体に歩みよった。

 

「先に?」

 

「アーサー義兄さん、用事でもあるのか?」

 

「会う予定だった知人が遅れていてな。おそらく今夜は帰れない。それを伝えに来たんだ。薬はお前たちがうけとってくれ」

 

「・・・・うん」

 

「・・・・わかった」

 

二人はアーサーが今夜帰れないと聞いて、少し落ち込んだ様子をみせ、暗い表情になった。ベルベットが今夜はセリカ姉さんの特製メニューをご馳走するつもりだったのでよけいに残念な気持ちになった。

 

「もうひとつ。村の近くで業魔の群れを見た」

 

「!業魔が!?」

 

カインが声をあらげ、ベルベットも驚いた表情をした。

 

「万が一、襲われたら迷わず逃げるんだ」

 

「ううん!業魔が来たってあたしが―」

 

「業魔と戦えるのは、対魔士の力を持つ者だけだ」

 

アーサーがベルベットの言葉を遮るように強い口調で言った。

 

「それが現実の"理"だ感情ではどうにもならない」

 

アーサーの言葉が胸につきささり、ベルベットは顔を地面にむけた。

 

「だが、カイン。お前には俺たちと同じ"力"がある」

 

アーサーがカインの方に目を合わせながら答えた。

 

「お前のその剣には業魔を祓う特別な力を有している。そしてその力を扱えるのはお前だけだ」

 

アーサーのその言葉を聞いてカインの表情に力が入った。アーサーの言葉には強い責任がのっているような強い言葉だった。

 

「その時、皆を守れるのはお前しかいない」

 

「ああ、わかってるよアーサー義兄さん。だって、それが俺がここにいる理由だから」

 

アーサーの目をみながら、そう言ったカインは覚悟を決めていた。

そうだ、あの時、ベルベットに助けてもらったあの時から、守ると誓ったんだ。

 

「頼んだぞ、カイン」

 

アーサーはカインの肩に手をおくとそう言った。

 

「あたしも・・・・なれないのかな?対魔士に」

 

ベルベットが顔を上げるとアーサーに聞いてみた。

 

「ベルベット・・・・それは・・・・」

 

カインは言いかけて、やめた。対魔士になるには高い霊応力が必須でそれがなければ対魔士にはなれないからだ。ベルベットには対魔士になれるほどの霊応力は有してなかった。

アーサーは顔を空に上げると、ベルベットに質問した。

 

「なぜ鳥は、空を飛ぶのだと思う?」

 

それは今朝、カインにも聞かれた質問だった。

 

「・・・・!それって・・・・」

 

カインは驚いていたが、ベルベットは質問の意図がわからず不思議そうな顔をしていた。ベルベットは空を飛ぶ鳥を見上げた。

 

「なぜって・・・・?飛ばないとエサを捕まえられないし・・・・」

 

ベルベット至極当然のことを言った。

 

(いや・・・・多分義兄さんが聞きたいのは・・・・もっと・・・・)

 

カインはアーサーの質問の意図の全てはわからなかったがなんとなく伝わってはいた。

 

アーサーは少し黙ると、再び口を開いた。

 

「対魔士になるには特別な才能が必要なんだ。だが、それをもった人間は、もうほとんどいない」

 

「・・・・はい」

 

ベルベットは悲しい声でそう答えた。ベルベットは悔しかった。アーサーやカインのような力があれば、ラフィや皆を守ることができ、カインの隣に立つことができると思ったからだ。

カインはそんなベルベットを、見て自分まで悲しい気持ちになってしまっていた。

 

「明日はセリカたちの命日だ。なるべく早く戻るよ」

 

「うん。お姉ちゃん直伝のキッシュをつくってまってるから」

 

「アーサー義兄さん!帰ったらまた剣の稽古つけてくれよ!」

 

「ああ、約束するよ」

 

二人はアーサーの去っていくアーサーの背中を見ながら、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたし、足手まといなのかな」

ベルベットは村へ帰る途中そんなことを言った。

 

「なんだよ、いきなり?」

 

「あたしは、アーサー義兄さんやあんたみたいに特別な力があるわけじゃない。さっきだってやられるところだったし・・・・」

 

ベルベットはさっきのことで相当落ち込んでいる様子だった。自分に自信をなくし始めているんだろう。

 

「・・・・確かに俺やアーサー義兄さんができることはベルには出来ないかもしれないな」

 

ベルベットはその言葉にさらに落ち込んでしまい、暗い表情になった。しかし、カインがそのまま言葉を続けて言った。

 

「でも、俺やアーサー義兄さんに出来ないこと、ベルには出きるだろ」

カインは微笑みながら、ベルベットの顔をみながら言った。

 

「え?あたしにしか出来ないこと?」

 

「ああ。例えばその身軽さとかさ、俺やアーサー義兄さんにはない武器だし、敵を翻弄するとかに使えるしな」

 

「でも、それは・・・・」

 

ベルベットが言いかけて、カインがそのまま言葉を続ける。

 

「戦いだけじゃないぜ。ベルが作ってくれる料理はすっごくうまいし、家事はなんなくこなす、少なくとも俺には出来ないことことだな。そして、ベルのその明るい性格とか、ベルのその笑顔がなによりも俺の力になってくれてる。それにすっごく助けてもらってるだぜ、俺はもちろん、ライフィセットやアーサー義兄さんもな」

 

ベルベットはカインのその言葉に頬を赤く染めながら聞いていた。それと同時に元気をカインに分けてもらっている感じがした。ベルベットは自分にもできることがあるということをカインの言葉を聞いて再確認した。

 

「それに・・・・俺は、お前が側にいてくれたから強くなれたんだ」

 

「あたしが?」

 

「ああ、お前に助けてもらったあの時から・・・・俺は、お前を・・・・お前達を守るって誓ったんだ」

 

「カイ・・・・」

 

二人は歩みを止めて、顔を向き合わせた。

 

 

なにやらこれはかなりいい雰囲気なのではないか?

そう感じたカインは今まで言えなかった思いをぶつけることにした。

 

「だからさ・・・・俺・・・・あの時から・・・・お前のことが・・・・す―」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

ベルベットは顔を真っ赤にしながら手でカインの口を塞いだ。

 

「むぐっ!?」

 

「その、あの、えっと、そう!急いで村へ戻って薬もらわないとお店しまっちゃうかもじゃない!?」

 

ベルベットはカインの口から手を離すと、目をそらしながら慌てた感じに言った。

 

「そう言うわけだから!急いで村へ戻ろう?ね?」

 

「えっ?いや、だから」

 

「じゃ!あたし先にいってるから

!」

 

ベルベットはそう言うと一瞬で村の方向に走っていき一瞬で見えなくなった。

 

「えぇ!?ちょっ!?・・・・・・何なんだよ・・・・」

 

一人取り残されたカインだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ・・・・・・まったく・・・・まだ早すぎるわよ」

 

 

ベルベットはカインからしばらく離れたところで立ち止まり、息切れしながら休憩していた。

 

「・・・・・・・・そう・・・・あたしにはまだ早い・・・・」

 

ベルベットは少し落ち込んだ様子で立ち尽くしていた。

自分にはまだライフィセットがいるし、自分が誰かと一緒になったらライフィセットが一人になるような気がして恐いのだ。それが例えカインでも。

 

 

「・・・・ごめんね・・・・カイ・・・・本当は・・・・あたしも」

 

罪悪感が薄れるまで

ベルベットはしばらくそこで立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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