15話
カインとカスティエルは現在ものすごい速度で地上に落下中―
(くそっ!どうする!?俺はまだしもキャスが・・・・!)
カインは刻印の呪いで一度死んでもすぐに復活するが、カスティエルの場合、この高さから落ちれば間違いなく死んでしまう。
「カイン!」
「なんだ!?」
「私に考えがある!」
カスティエルはそう言うと、自分の体を霊体化し、カインの体の中へ入った。
「!これは!」
すると、カインの体の中から力が流れ込んでくる感覚を感じた。カスティエルがカインに力を与えているようだ。
『私がお前の体を器として、力を送り込んでいる。その力で霊応力を聖剣に纏わせ、地上に向けて聖剣の力を放出させて落下スピードを抑え込めば・・・・!』
頭の中に直接カスティエルの声が聞こえてきた。かなりむちゃくちゃな作戦だ。いくら霊応力を増幅させたとはいえ、そんなことで落下する衝撃を吸収しきれるのか?
「できるのか!?そんなこと!?」
「やるしかない」
このまま落ちればカスティエルにも間違いなくダメージが伝わる。そのショックで死ぬ可能性もある。
そう、カスティエルが言うようにやるしかない。
「分かった!!」
聖剣を出現させ、その力を一気に開放させて刀身に纏わせていく。そして、自分の中にある力を全身全霊をもって放った。
「真・覇道滅封!!」
聖剣を地上へ向けて突くと、剣先からものすごいエネルギー波が放たれ、地面に衝突した。その勢いで少しずつ落下スピードが弱まっていったがカインの霊力もなくなりつつあった。
「くそっ!もってくれ!」
そのままエネルギー波を放っていったが、少しずつエネルギー波が消えていきそのまま地面に落下していった。
「くそがっ!」
そのまま地面に叩きつけられてしまったカインだったがなんとか落下スピードは削れていたようで即死には至らなかった。
「カイン!」
カスティエルはカインの体から出てくるとすぐさまカインの元へ駆け寄った。
「い、生きてるか?」
「ああ、なんとかな」
カスティエルはカインの体の中にいたので傷はおっていないがカインが重症だった。落下スピードの全てを殺しきれなかったようで体の骨がいくつか折れているようで内蔵のほうにもダメージがいっているようだった。
「一度死んで全快にしたほうがいいかもな、ほら俺って半分不死身みたいなもんだし」
「バカなこというな、確かに重症だが聖隷術があれば応急処置ぐらいはできる」
カスティエルは聖隷術がを使い、カインの体を治癒し始めた。
「ところで、ここはどこだ?」
「わからんが、近くに集落らしきものがあった。そこで休ませてもらったほうがいいだろう」
二人の現在いる場所はどこかの山頂付近だった。辺りにはなにもなくそこからみえる景色は森や山々だった。
「集落?そんなもんあったか?」
「ここから少し北にある場所だ、落ちてる時に見えた」
カスティエルは治癒を終えると、手を差しのべカインはその手を掴まり立ち上がろうとしたが。
「いっ!」
体中に激痛がはしり、おもわずこけそうになるがカスティエルがカインの体をささえてくれた。
「な、治ったんじゃないのか?」
「いっただろ、あくまで応急処置だと。一旦休息をとったほうが―」
カスティエルがいいかけたその時―
「ほぉ空から人が落ちてきよるとは、珍しいもんがみれたわい」
「「!!」」
声がしたほうをみると、そこにはキセルを携えた老人がたっていた。
「お前は・・・・ゼンライ・・・か?」
「久しいのカスティエル」
「?なんだ、知り合いか?」
カスティエルは目の前の老人のことをしっているようで二人の目はどこか懐かしい友達とあったような目をしていた。
「私の・・・友だよ」
二人はゼンライと名乗る聖隷に自分達の集落まで案内してもらいそこで休ませてもらうことになった。
「ここに住んでいるのは皆聖隷なのか?」
カインは周囲の人達を見渡すと、皆人間にはない雰囲気を感じ、ゼンライにそう訊ねた。
「そうじゃ、ここにいる物たちは皆、聖寮の対魔士から逃れてきたもの達じゃよ」
「対魔士から逃れた?」
聖寮は人々を守るための組織だと聞いた。そんな彼らから何故逃げなければならないんだ?
「なにがあった、ゼンライ」
「お主は長いことあちら側の世界にいたせいで今の世界がどうなっているか知らぬのだったな」
「俺にも聞かせてくれ、爺さん」
カインもまたこちらの世界に帰ってきたばかりであれからどれくらいの時間がたったのか、今世界がどうなっているか、まったくわからない状態だった
「ふむ・・・・よかろう、わしが知ってる範囲なら話してやる」
「そうか・・・・あれから3年しかたっていないのか」
集落の中にある家に移動した二人はそこでゼンライの話を聞いた。ゼンライの話によると、あの緋の夜から3年の月日が経過しており、長い間あの闇の世界にいたカインにとってはとても短く感じた。
あの緋の夜以降人間の霊応力はさらに増幅され、全ての人間に聖隷が見えるようになったという。あの日の出来事はアルトリウスが多数の聖隷を従え、業魔の脅威から人々を守った日とされ、「救世主が降臨した」という意味を込め「降臨の日」と呼ばれているらしい。
それによって対魔士も増え、聖寮も一気に勢力を増やし、国にとっても無視できないほど巨大な組織となったという。
聖隷たちもまた、対魔士達に使役されることになり、聖寮に捕まった聖隷は自我を封じられ道具のように扱われている。それでゼンライたちは追い詰められ隠れるように暮らし始めたらしい。
「同胞達が・・・・!」
「キャス・・・・・・」
カスティエルは自分がいない間の世界の変わりようにショックを受けたのか、苦悶の表情でゼンライの話を聞いていた。
「我々は人間達を信じてこの地上に降り、人々に尽くしてきたはず・・・・その挙げ句がこれか」
カスティエルは握っていた拳を血が滲むぐらいに握りしめていた。
「確かに人間達が我々に対する仕打ちは許されないことじゃ、しかしそれは悪意からのものではなく、純粋な善意―世界を救いたいという願いからくるものじゃ」
「だからといって、聖隷達を蔑ろにしていい理由にはならない」
カインは聖隷達のことは正直よく知らなかった、知っている聖隷もシアリーズかカスティエルくらいなものだけど、あの二人もここにいる聖隷達も道具のように扱われていいはずがないと断言できた。
「カイン・・・」
「お主はカインというのか・・・・」
「そういえば自己紹介がまだだったな、俺はカイン、カイン・クラウ。よろしくゼンライの爺さん」
カインは右手を差し出しながら答えるとゼンライもそれに応じてくれた。
「わしはゼンライというものじゃ、よろしくの若いの」
ゼンライは快くカインの手を握ると、じっとカインの目を見据えていた。
「?なんだ?俺の顔になんかついてるか?」
「真っ直ぐ迷いのないよい目をしておるな、お主は」
「え?」
「決して諦めず、自信の抱いた"夢"を必死に抱いておるな?」
「・・・・・・・・」
目の前の老人はカインの心を見据えていた。カインは自分の心を覗かれているような感覚に陥ったが不思議と気持ちの悪い感じはしなかった。
「離すでないぞ、その"夢"を」
「・・・・ああ、分かってるよ」
ゼンライは握っていた手を離すと、急に険しい顔になり立ち上がると、家から飛び出していった。
「な、なんだ?」
「まさか」
二人もあとに続き家からでると、強い衝撃が集落を襲った。
「何物かがわしの領域に侵入しおった」
「業魔か!?」
「いや違う!これは―」
ズドォォォン
衝撃はいまなお続き、集落の入り口から人の声がしてきた。
「私は聖寮から派遣された一等対魔士エレノア・ヒュームです!!聖隷達よ!今すぐ降伏し、聖寮の下に降りなさい!」
それは業魔によるものではなく対魔士達による襲撃だった
スキット「未経験者」
カイン「キャスってさ長いこと生きてるんだろ?女の一人や二人と付き合った経験あんの?」
キャス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
カイン「え?お前・・・・まさか一度も?」
キャス「そういう機会がなかったんだ・・・・!」
カイン「・・・・・・よし!決めた!町についたら綺麗な姉ちゃんのいる店にいくぞ!」
キャス「駄目だ、あそこは悪の巣窟だ。私は行けん」
カイン「お前を童貞のまま死なせん!」
キャス「いや・・・・だから」
カイン「大丈夫だ、お前ならいける。飛び上がれ!タイガー!」
キャス「・・・・・・・・・・・・・・・」