付け加えました。
目の前にいるこの男はいきなり、血がほしいなんて物騒なことをいいだした。カインはいきなりの言葉に動揺を隠せなかった。
「何故彼の血をほしがる?」
カスティエルは問いただすと、クラウリーはその問いに答えた。
「そいつは刻印を刻まれし者だろ?」
クラウリーはカインの方へ指差すと、そういった。
(刻印?そう言えばアルトリウス達もそんなこといっていたな)
あの時の戦いで俺は確かに死んだ。だが俺の中にある何かが目覚め、生き返った。死ぬ前に受けた傷は完全に完治され、霊応力もかつてと比べ物にならないくらい上昇した。そのおかげでこの世界でも生きていけた。
それが奴等のいう刻印と関係しているのか?
「アンタはこれのことを知っているのか?」
「あぁ、よく知っているとも。その刻印こそが我ら魔族を封じているものだからな」
「!これが!?」
「・・・・・・・・」
カインは自分のなかにあるものが、魔族達を封じているものだということに驚いていたが、カスティエルはまるで知っていたかのように無反応だった。
「刻印を刻まれたものは特別な因子を持っていてな、その因子こそ我らが欲するものだ」
「貴様・・・・また何か企んでいるな」
カスティエルはクラウリーがどういう男かを知っていたため何かしらろくでもないことを考えているということを察していた。
「当然だろう、俺は魔族だ。何か企んでいるのは当たり前だ、お前もそれは承知の上で取引を持ちかけてきたんだろう?」
「・・・・・・・・」
「どちらにしろ、お前たちは取引に応じるしかない」
カスティエルはしばらく考え込んでいたが、その時のカインがカスティエルの前に出て、自分の腕をクラウリーの方へ向けた。
「いいぜ、取れよ」
「!カイン!」
「ほぅ・・・・」
カスティエルはカインの行動に焦りの顔をみせ、クラウリーは意外そうに笑った。
「大丈夫だって、血くらい。別に命をとるってわけじゃないんだろう?」
「いや、だが、しかしだな」
「それに今はこいつに頼るしかないんだ。心配すんなよ、もしこいつが何かしようとしたらその時は倒せばいい」
カインは心配するなとカスティエルの肩を叩きながらそう笑いかけると、カスティエルも諦めたようでやれやれとため息をついた。
「・・・・・・・・相変わらずだな」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、なんでもない」
クラウリーがパン!と両手で叩くと扉から何人かのメイドらしき人が入ってきた。
「さて、諸君。取引成立ということだな」
メイド達がカインの周りを取り囲むと、二人は警戒態勢をとり、身構えた。
「な、なんだ!?」
「採血をとるために別の部屋へ案内する。ついでにその薄汚い服も着替えさせてやる。ありがたく思え」
カインの両腕を掴まれるとそのまま玉座の間をあとにしていき、引きずられていった。
「え?ちょ!まっ!」
ちょっと待て~!!という声を上げながらカインの姿は見えなくなってしまった。
「カイン!」
カスティエルはカインのあとを追いかけていこうとするが、クラウリーに肩を掴まれ阻まれてしまった。
「まぁまて、奴なら大丈夫だ悪いようにはしない」
「信用できるか」
「そう邪険にするな、俺とお前の仲だろう?それにお前には話もある」
「・・・・・・」
カスティエルはクラウリーの手を振り払うと、カスティエルは少し距離をとり、クラウリーと向き合った。
「奴は何も覚えていないのか?」
「・・・・・・・・・・あぁ」
「そうか、やはり」
「カインが私と出会うまで魔族と何人かと戦ったと聞いたが・・・・あれはお前の差し金か?」
「まさか、奴がいると知ったのはここの結界に入ったときだ、奴がこの世界に来ていたことは知らなかった」
クラウリーはわざとらしく、とぼけるとカスティエルはクラウリーを睨み付けるとそのまま背を向け部屋をあとにしようとした。
「奴に自分の記憶のことを教えてやらないのか?」
クラウリーはからかいまじりにそう告げた。
「時が来れば教える」
「ふっ・・・・そうか」
「一ついっておくぞクラウリー」
カスティエルは顔だけをクラウリーに向けると、今まで見せたことのない顔でクラウリーを睨み付けるとそのまま警告した。
「彼に何かしてみろ、私がお前を殺すぞ」
「くっくっくっ・・・・怖い守護天使様だ」
クラウリーはまるで怯む様子もなくカスティエルに笑いかけた。
「心配しなくても、今奴をどうこうしようと思っちゃいない」
「・・・・・・・・」
カスティエルは再び前を向くと部屋をあとにしていった。
「やれやれ、腐れ縁は魔界に堕ちた後も変わらんか・・・・・・因果だなカイン」
クラウリーは一人になった玉座でそう呟いた。
カスティエルはカインを探しにそこらじゅうにある部屋を散策していた。
(くそっ!何処にいるんだ)
「ギャアアアアアアアア!!」
すると何処からかカインの叫び声が聞こえてきて、カスティエルは急いで声のする方へ向かった。
声のする部屋の前に立ち、そのドアを思いきり開くと―
「カイン!無事か―」
そこにはメイドを裸で押し倒すカインの姿があった。
「・・・・・・・・・・・・・・・邪魔をしたな」
「いやまてまてまてまて!!」
カインはドアを閉じようとするカスティエルを必死に引き留め、閉めようとるドアを掴んでいた。
「いや、すまない。ノックもしなかった私が悪かった、許してくれ」
「いや、カスティエルさん?なんかものすごい勘違いをしている、誤解だ」
すると先程のメイドが倒れ付しており、よよよと泣き崩れていた。
「うぅ・・・・申し訳ありません、私はそのつもりはなかったのですがカイン様が無理矢理・・・・」
「いやいや、アンタも何いってんの!?」
「カイン・・・・まさかそこまで」
カスティエルが深刻そうな顔でこちらをみると、カインは頭を抱えた。
「頼むから話を聞いてくれ!」
ようやく事態が落ち着いた後、カスティエルは部屋へと入りカインの話を聞いていた。
どうやらカインは血を採られた後、メイドが着替えさそうとカインの服を掴み脱がせようしたらしい。それに、抵抗したカインは揉み合いになり、その拍子で服も破け、そのまま押し倒す形になったというなんだかありがちなことになったという。
「そうか、良かった。私はてっきり・・・・」
「そんなわけないだろう、全く。そもそも俺には心に決めた奴が・・・・」
「申し訳ありません、私も少々悪ノリしてしまいました」
先程のメイドが謝罪してきたがその顔は全く悪いと思っていない、顔をしていた。むしろまだ少し顔がにやけていた。
「アンタな・・・・」
カインはメイドに何かいいたそうにしたが、はぁとため息をつくとメイドに礼をいった。
「いや、ありがとな服やら食事まで用意してもらって。えーと・・・」
「ルビーとお呼びください。カイン様」
「ルビー、ありがとう」
「いえ、お礼など私のような使用人―まして業魔などにお礼は不要でございます」
ルビーと名乗ったメイドは、カインに頭を下げるとそう告げた。
「君は業魔なのか」
「はい、200年ほど前にクラウリー様に救っていただきそれ以来お仕えさせていただいております」
「あのクラウリーが君を救っただと?」
カスティエルはクラウリーが誰かを救ったという言葉が信じられず、怪訝な顔をした。確かに顔はかなり整っており、黒髪でポニーテールの髪形をしている美女だか、奴が見た目で拾うとは思えないので大方気まぐれかこの少女に何かしらの特別な力があったからそれを利用するためだろうと納得した。
「ここじゃあ、魔族と業魔の違いがよくわからなくなるな」
「どちらも基本穢れを持っているからな、見分けるのは難しいが、魔族は皆人の形だから全く分からないわけではないな」
そうなのかとカインはカスティエルの話を聞いていた。
「そう言えばその服」
「うん?ああ、これか?」
カインは立ち上がると服をカスティエルに見せた。
青と白の服でフードのついたコートに黒いズボンに白色ブーツを見にまとっている。魔族の城にあったにしては随分と綺麗な色をした服装だった。
「あのクラウリーって奴結構いい奴なんじゃないのか」
「いや、あれがいい奴のはずがない。必ず何か裏がある」
「どんだけ信用してないんだよ、そう言えばカスティエルの服も用意してくれてるとか言ってたぞ」
「断る」
「即答かよ、でもいつまでもその格好じゃな」
カスティエルは長い旅のせいで、服もボロボロであちこち破れておりかなりひどい有り様だった。
「私はこの型の服以外着るつもりはない」
「そう言うと思いカスティエル様の着ている服と同じ物をご用意しております」
ルビーはそう言うとその手には、カスティエルの着ているものと同じ服が折り畳んでいた。
「ぐっ・・・・」
「意地はっていないで着たらどうだ?」
「では服はこちらに置いておきますので私はこれで」
「ああ、ありがとうルビー」
ルビーはお辞儀をするとそのまま部屋をあとにした。
「・・・・・・やむを得んか」
カスティエルは置いてあった服を掴み、何か術が仕掛けていないか調べておき、それから着替え始めた。
「なぁカスティエル」
「なんだ?」
着替え終わったカスティエルは、カインの座っているベットの反対側に座り込んだ。
「なんでお前は俺にそこまでするんだ?」
「なんのことだ?」
「あのクラウリーとの取引はかなり危険があったんだろう?場合によっては自分の命も取引材料にされる危険性もあったはずだ。そしてこうして今も俺についてきてくれる、何故だ?」
「・・・・・・あえていうなら・・・・友との約束があったからか」
「約束?その約束と俺に着いてきてくれることと関係あるのか?」
カスティエルは何処か懐かしむような目をしながら、話をしてくれた。
「すまない、今はそのことは話せない。だが信じてほしい」
カスティエルはカインの目を見ながら、真髄に自分を信じてほしいと話した。カスティエルとは確かに出会って日も浅く、彼の全てを知っているわけではない。だがカインはカスティエルのことを信じられた。勘でしかなかったが、始めてあった時から感じていた。彼は信じられると。
「信じているさ、信じているからここまできたんだろ?」
カインはカスティエルの肩に手をおき、そう告げた。
「感謝する、カイン」
「よせよ礼なんて、仲間なら当然だろう」
「仲間・・・・・・そうか」
カスティエルは眼に涙を浮かべ、咄嗟に顔を伏せた。
「なんだ、お前泣いてんのか?」
「違う、これは眼にゴミが・・・・」
「いや、わざとらしいな言い訳」
カスティエルは嬉しかったのだ。長い長い間この世界をさ迷い、仲間も何もかも地上におきさり、ずっと独り待ち続けた。そしてようやく出会えた待ち人に出逢い、そんな彼に仲間といわれたことがただ嬉しかった。この一万年の放浪がようやく報われた気がしたのだ。
カインはカスティエルに手を差し出すと
「じゃあ、これからもよろしくなキャス」
「・・・・・・キャス」
「ああ、カスティエルのキャスだ。呼びやすいだろこのほうが」
「・・・・・・そうだな」
カスティエルは差し出された手を握り、強い握手を交わした。
「よろしく頼む、カイン」
「ああ、頼りにしてるぜ」
二人は笑みを浮かべながら、誓いの言葉を交わした。
この時二人の絆はより強いものとなり、それが後に彼らの力になっていった。
二人が部屋で休んでいると、ノックをされた音が聞こえ、外からクラウリー様がお呼びですという声が聞こえてきた。
「ようやくか」
「いこう」
二人はベットから立ち上がり、部屋をあとにした。
ルビーに案内をされ、ついた部屋はとても広い空間だった。なに一つ物がない殺風景な部屋だったが、その中心にはまるで空間に亀裂が入ったかのようなものがそこにあった。
「あれが・・・・」
「ああ」
彼方側の入口、それが彼らの前にあった。すると背後から扉が開く音が響き、振り替えるとクラウリーが入ってきた。
「やぁ諸君」
「クラウリー」
「これが入口か?」
「そうだ、お望みのものだ。あの亀裂の中へ飛び込んで行けば元の世界へ帰れる」
「そうか、ようやく」
長かった、本当に長い旅路だった―ようやくこれでベルの元までいける。
カインがこれまでの闇の世界での旅を振り返っているとカスティエルがカインの肩を叩いた。
「行こう、カイン」
「ああ」
カインは後ろにいるクラウリーに振り向くと、これまでのことに礼をいった。
「世話になった、ありがとう」
「魔族に礼などよせ、それに欲しいものは手にはいったしな。取引の結果さ」
「・・・・・・じゃあな」
カインは再び前を向き、亀裂の中へ歩んでいった。
「旅の無事を祈っているぞ」
「心にもないことを」
カスティエルはクラウリーの言葉に吐き捨てるようにいい、二度と振り替えることなく、カインの後に続いていった。
「よし、準備はいいな?」
「いつでも」
二人はそのまま亀裂の中へ突っ込んでいき、目映い光の中へ消えていった。
「また会おう」
その時のクラウリーは不適な笑みを浮かべていた。
二人があの魔界からようやく脱出し、元の世界へ戻った二人が今現在いる所は―
地上の遥か上空から落下中だった―
「うおおおおおおおお!!!」
カインは雄叫びを上げながら今まさに落ちていた。
「まさか、上空に繋がっていたとは思いもしなかったな、このままでは地面に激突するまであと数分というところだな」
「なに冷静に分析してんの!?」
「落ち着けこんな時こそ冷静になれ、焦れば焦るほど何も出来なくなるぞ」
「いや、でも!」
「見てみろ、カイン」
カスティエルはおちながら、まっすぐ指を指し示した。
カインは指し示したほうへ顔を向けるとそこには―
「・・・・・・すげぇ」
とても美しい世界が広がっていた。太陽の光、輝く海、美しい森、どこまでも広がる大地。
そこにはカインが今まで見たことのなかった世界がどこまでもあった。
「これが―世界!」
カインは感動を胸に抱き、今帰還を果たした。
愛する人の元へ帰るために―
カインの服装はfateのプロトセイバーを参考にしたかったのですが、うまく表現しきれませんでした( ;∀;)
ここに出てくるルビーはドラマスパナチュでてくるルビーとは全くの別物です。どちらかというとオーバーロードのナーベラルを参考にしました