次の日。
私はやっぱり着慣れない可愛いフリフリのお洋服を着せられていた。
「あ、あの、ミリアさん……もうちょっと大人しい服って……」
「ごめんなさい。趣味に合わないですよね。今日までなのでもう少しだけ我慢していただけますか?」
違う、違うの!
こういうお洋服はお姫様みたいでずっと憧れてたんだけど……
憧れてただけになんていうか気恥ずかしいの……
似合ってないんじゃないかなとか、いろいろ考えちゃって……
「大丈夫ですよ、セレイル。よく似合っています」
え、今口に出てた!?
だったらすごく恥ずかしい……
「ふふ、大丈夫です。口には出していませんでしたよ」
また!?
なんでわかるの!?
「なんで、と言われても困りますが……そうですね、セレイルがわかりやすいから……でしょうか?」
「なんだか、すごくバカにされた気がします……」
「いいえ、素直で可愛らしいと思います」
むぅ……なんだかうまくごまかされた気がする……
でもそう言ってもらえるのは嬉しいかな。
「ではお母様、行ってまいります」
「はい、気をつけて行ってらっしゃいね。セレイルちゃんのこともしっかりみるのよ」
「もちろんです、お母様」
「セレイルちゃんも好きなものはなんでも買ってちょうだい。ミリアにお金は渡しておくわ」
「あの、そんな……」
「いいのよ、気にしなくて。好みの服もあるでしょう。これから魔法学校に通うつもりならうちの服じゃなくて自分の服を持っていた方がいいでしょう?」
「そ、それはそうですけど……」
「もしどうしても気になるなら……」
そこで区切ったテレリアさんに私は首をかしげる。
あんまり大変なことだとできないけどなんだろう……
「ミリアと魔法学校に行くとしても行かないとしてもずっと仲良くしてあげてください」
「は、はい! もちろんです!」
私もミリアさんとずっと仲良くしたいって思ってるもん!
でもそれじゃあ……
いつかまた離れ離れになっちゃうかもしれないのに。
私は心配をかけないように笑顔を作る。
「うん、よろしく頼むわね」
「では行って参ります」
部屋を出る私たち。
うまくごまかせたかな……?
「セレイル、私はずっと友達だと思っていますよ」
「え……?」
「いいえ、なんでもないです。さあ行きましょう。まずは役所からです」
不意に言われたミリアさんからの言葉は私も不安を全部見抜かれているようで。
ごまかせないって怖くなったけど、すごく安心もした。
だから今度は絶対守るんだ。
もうお別れなんてしなくていいように。
――そんな力なんてないくせに
エリサさんの声が聞こえる。
苦しい……
怖い……
「大丈夫ですか? 今日は外出するのやめましょうか?」
ミリアさんが私をそっと抱きしめてくれた。
本当に、私のこと、なんでもわかっちゃうな……
「大丈夫です。行きましょう」
心配そうに顔を覗いてくれるミリアさんに笑顔を見せた。
仕方ないなぁって顔をしてミリアさんは私の手を取る。
「さあ行きましょう。今日はお買い物もしなくちゃいけないですから」
「はい!」
手を繋いでもらって私は外に出る。
久しぶりのお外……って言っても私的には一日外に出てないくらいにしか感じないけどね。
でも改めてみると本当に綺麗な街だなぁ……
石? で作ってあって、街の灯りはとってもおしゃれだし……
この服とかミリアさんのお家とかでなんとなくわかってたけど、やっぱりここってお金持ちさんがたくさんいるところなんだね。
私には全然縁がないと思ってたよ。
あ、あれってもしかして昔読んだ絵本に出てきた馬車!?
うーん、でもちょっと違うかも?
馬は確か角なかったし……
「あれはドズーという車を引いたり仕事を手伝ってもらったりしている動物ですね。初めて見ましたか?」
「あ、いえ、その……」
どうしよう、絵本で読んだお姫様が乗ってたのに似てるからとか言えない……
もう流石に恥ずかしい……どうしよう……
「まだ、セレイルくらいなら夢を見てもいいのではないですか?」
「あ、あははは……」
きっとこれも私が何を考えてるのかわかってるんだろうなぁ……
本当にミリアさん怖い……
「ここが役所ですね。まずはあなたの魔力値を測定してみましょう」
ごくり……これでもし魔力が0とかだったらどうしよう……
「まずこの申請用紙に必要なことを書き込んでください。あ、でもセレイルの身長ではここだと高すぎますね。あっちの低いところに行きましょうか」
「いろいろ気にしてもらって本当にありがとうございます……」
「書きやすいところで書くほうがいいですからね」
あれ? そういえば私ってこの世界の文字知らない……
そもそも私、エリサさんともそうだったけどどうしてお話しできるんだろ……?
「セレイル? どうかしましたか?」
「う、ううん、なんでもない! 書いちゃうね!」
どうやってもごまかせなさそうだし、私の世界の文字で書こっと……
あれ? こんな文字知らない……でも横に書いてある文字と似てる……
もしかしてこれがこの世界の文字?
私、知らないうちにこの世界の文字、かけるようになってる?
わかんないけどとにかく書き進めてあっという間に全部埋まった。
う〜ん……コミュニケーション取れるようにするために新しい世界に行くと自動的に教えてくれるのかな?
うん、今はそれでいいや、きっとわかんないし。
「すみません、お願いします」
「はい、セレイル・レッダローズさんですね。こちらの機械にどうぞ。あとは機械音声の案内に従ってください」
「わかりました」
機械になんか輪っかみたいなのが付いててそこに手を通すみたい。
なんだか不思議な形。
あ、測定が始まったみたい。
数字がだんだん大きくなっていって……あ、終わりかな?
「はい、お疲れ様です。魔力値は5274ですね。魔法に関してはかなり才能があると思います。妹さん、すごい才能をお持ちですね」
「あ、あの……」
「あ、ありがとうございます……」
「すぐに証明書をお作りしますので少々お待ちください」
なんだか普通に姉妹で通っちゃった……
あれ、ミリアさんすごくちっちゃくなってるけど大丈夫かな?
「ごめんなさい、姉妹といってしまうのは迷惑でしたか?」
「い、いえ! 全然! むしろ私なんかが妹っていってしまうのが申し訳なくて……」
「そんなことはないですよ、セレイルは可愛いですし、本当に妹にしたいくらいです」
そんな可愛いなんて面と向かって言われると照れるよぅ……
「そ、それよりも! 私の魔力値ってどうなんですか? 才能があるっていってましたけど……」
「一般的には魔法使いは数百から千数百くらいだそうですよ。全体の平均は数十くらいだそうですからかなり魔力値は高い方ですね」
「そうなんだ……あれ、ちなみにミリアさんは……?」
「私は4500くらいですね。魔力値だけでいえばあなたの方が才能はありますよ、セレイル」
そうなんだ。
私、才能あるんだ……
それなら今度こそ……
あんなことに……
「……イル、セレイル」
「あ、ご、ごめんなさい……」
「出来たそうですよ、証明書」
「はい、お待たせしました」
「ありがとうございます!」
えへへ、これが私の才能の証……!
これなら私も魔法学校行けるかな?