ステラを放つその日まで   作:蓮太郎

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その剣の過去

 眠れなかったまま翌日を迎えた。一睡もしていないせいで授業中は寝落ちしないように格闘し、午前中の休み時間はずっと寝ていた。

 

 聖剣の謎、7本のうちの1本があの神父の手にあるのには怒りを感じるが、分けられた剣も他の手にあるということだ。未だにあの剣が約束された勝利の剣(エクスカリバー)の欠片とも思えない。

 

 内情を知ってるとすればグレモリー先輩なんだけど昨日の今日で聞けるわけないし、俺を巻き込ませないようにしようとしてキツくなってたからには話を切り出せないどころか行くことも気まずいほどになってしまった。別れ際も大切だってこと、本当に身に染みたぜ。

 

 塔城さんからワンチャン聞けるか?いや、絶対に口が固いから喋らないだろう。聖剣に詳しい人物…………あっ、超長生きしてる奴が俺の携帯電話の連絡先にいるじゃないか。

 

 話が長くなるだろうから今日は学校が終わったらすぐにアパートへ帰った。そして聞き耳を立てられていないか確認して電話をかける。

 

『よう、そっちからかけてくるなんて珍しいじゃねえか。なんだ、やっぱこの前話したキャバクラに興味が』

 

「エクスカリバーの事について教えてくれ」

 

『あるわけ無いよな。妙に切羽詰まった声で言うなよ、つーことは聖剣使いに接触したか?』

 

「お陰様でな。狂人神父が持っていたぞ。アレが本当に神父なら教会には狂人しかいないはずだ」

 

『あー…………もしかしてフリード・セルゼンのことか?そいつ白髪で言動がふざけてたらフリードで間違いないぜ。あいつは異端くらってるから堕天使(こっち)側だ』

 

 やっぱりな。アルジェント先輩は元々教会にいたのに対してあんなのが一緒だと言われてたまるかっての。

 

『まあ、大体何が起きたか察した。フリードが今のところ聖剣持ってるのか』

 

「ついでを言うとグレモリー眷属に襲いかかっていたぞ。それもお前の指示か?」

 

『なーにを言ってんだ、それ確信して聞いてるだろ。答えはNOだ』

 

 それを聞いて一安心する。だが、堕天使側の一人、それも明らかに戦争の火種となる人物を御していないのは総督としてどうなのかと思う。

 

『つーことはやっぱそこかぁ。コカビエルのやつ、フリードまで使うか』

 

「待ってくれ、事情を説明しろ。お陰でこっちも聖剣に恨みもある奴に火が点いてるんだ」

 

『それ、十中八九木場裕斗の事だろ?仕方ないとはいえ、尻拭いさせる形になるが…………』

 

「内容知ってんのか!?」

 

『うるせぇ!大声で叫ぶんじゃねえよ!』

 

 これはいいチャンスだ。グレモリー先輩から聞けないならアザゼルから木場先輩と約束された勝利の剣(エクスカリバー)の関係を聞き出せる。

 

 そして、今回の件にアザゼルが関わっている事も聞き出さなければならない。最悪の場合、こいつが黒幕だという可能性もある。その時は…………

 

『安心しろ、今回の件はコカビエルの独断だ。怪しい動きをしてたのは分かっていたが、今は所在がつかめてなかったところだ。とりあえず情報感謝と言っておく』

 

「……………………そうか」

 

『んで、エクスカリバーの事だったよな?口で言うの面倒だからメールで内容送っていいか?』

 

「いくらなんでも浮つき過ぎるだろ。それに俺のメアドは教えてないから知らないんじゃ」

 

『そのツテに頼んで電話番号なら割り出してもらった。ちょっと待ってろよ』

 

 こいつ、サラッとハッカー紛いな事頼んでやがる!一度電話が切れてツー、ツー、と言う音しかしなくなった。

 

 数分後、差出人不明のメールが俺の携帯に届いた。そこには『エクスカリバーの件について』とタイトルが書かれている。中を開くが…………1秒で閉じてメールを消した。ついでに感情も絶対零度になった。内容は、あの堕天使のR-18な秘蔵ファイルだった。

 

 再度アザゼルに電話をかけるとすぐに出た。そして何かを喋る前にキレ気味に声を出す。

 

「ふざけるようなら次会った時に本気で矢を打ち込むぞ」

 

『いやマジで冗談だから、ごめん本気のトーンで切れるな、だから許してくれ』

 

 俺の怒りが伝わっているのか棒読みではない謝り方をしてくるので本当にふざけただけのようだ。全く、こっちは本気で困ってるのに…………

 

 今度はメールでふざけないように口頭で教えろと何度も言った。流石にアザゼルも折れて口で約束された勝利の剣(エクスカリバー)の事情を話してくれた。

 

 エクスカリバー、かつて最強とも謳われた伝説の聖剣だったが、大昔の戦争で折れてしまった。

 

 いやいやいや、そんなはずはないと思うがその大戦争の時に生きていたアザゼルが頑なに折れたと言うので折れたと信じるしかない。

 

 その聖剣の破片を教会が回収し、錬金術を用いて7つの特性を7本の聖剣に分けて作り直された、が真相のようだ。しかし、あの神造兵器が折れるだなんて…………

 

『何そんなにショック受けてんだ?確かにエクスカリバーなんて剣士からすれば憧れの聖剣だがお前は何かと言ったら弓兵だろ?そこまで気にかける必要はないんじゃないか?』

 

「…………ほっとけ。憧れも気に入りもあるんだ」

 

『そうか。ま、お前もロマンを持つ男だって事だな!』

 

 全く腑に落ちていないがこれで一つの重要な疑問が解決(仮)した。さて次の問題だな。

 

「アザゼル、コカビエルが独断で動いてると言ったな。それはどうしてだ?」

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 アーラシュという英雄の幸運値はDである。それは高くもないしやや低いとも言える(新志談)。まだ自害させられるような令呪がないだけEよりはマシだ。何タイツとかは言わない。

 

 どうしていきなりその幸運の話をしたかというと、その幸運の低さにもかかわらずある話を聞いてしまったのだ。アザゼルが知る範囲でコカビエルの計画と木場先輩の過去を聞いた次の日だ。

 

 その日は休みだったし外食の気分になったので、とある店に寄ったらちょうど兵藤先輩と匙先輩、そして塔城さんが入ってくるのを見た。奇遇だと思い声をかけようとしたら他にも客がいたのだ。それも女性二人。

 

 服装もシスター服のようなものだし、身体からは聖なるタイプのオーラが滲み出るような感じから教会関係者だろう。しかし、一体なぜ悪魔である3人と教会関係者が一緒に?

 

 席は離れていたものの高スペックな聴覚も活かしつつ口の動きを見て会話の内容を聞き取った。

 

 会話を聞いているうちにこの二人も約束された勝利の剣(エクスカリバー)の持ち主だということが分かり、しかし扱うにはまだ早すぎると感じ取れた。

 

 話を聞いてるうちに事情が読めてきた。兵藤先輩は木場先輩の恨みを約束された勝利の剣(エクスカリバー)を破壊させることで晴らしてやりたい。だから『壊す』ことを手伝わせてくれと言うことだ。

 

 なかなか美味い話でもあるし教会側からしたら悪魔と手を組むこと以外はメリットしかない。そしてゼノヴィアと言う一つ上っぽい女性が悪魔ではなくドラゴンの力を借りると言ったことに感心した。

 

 成功率はもともと低いが先輩達の協力があれば生還率が上がると踏んでの話だ。これで契約(?)が成立した。そしてすぐに兵藤先輩が携帯電話を取り出して誰かを呼び出した。

 

 少し待っている間にもガツガツと食べるシスター服を着た女性二人、もしかして飯に釣られたとかじゃないんだよな?一応、君達は聖剣使いだよね?

 

 そんなどうでもいいところに不信感が募る中、呼び出した人物、いや悪魔が現れた。

 

 呼び出した相手は木場先輩だった。いや、兵藤先輩はいい噂は全く、まっったく聞かないけど仲間思いのいい奴だな。性格がアレだけども。

 

 そこで幾らかの話し合いの末、悪魔側は何をすればいいか話し合った。俺は参加せずにこっそり聞いているだけだが…………

 

 フリード神父が狙っているのは教会側の神父、あれ、そういえばあの日は神父の姿なんて見てないが…………それは置いといて現れる場所は人気がかなり無いところ。

 

 そんな場所はかなり絞られてくる。だが、駒王町はかなり広いしそんな地点も数多く存在する。千里眼を使っても場所を特定できないんじゃなぁ…………

 

 いや、特定するとなれば兵藤先輩達をマークしておけばいい。そうしたら彼等の作戦につられて現れる可能性がぐんっと高くなる。となると、マークしつつ早めに全方位を見渡せる高い建物に俺がいればバレずにサポートできる。

 

 矢を放ったところでバレると思うけど、そこは許してもらうしかない。

 

 そして教会側の二人が出ていったところで事情を知らない匙先輩がなぜこのようなことをしたかという理由を聞いた結果、号泣して協力すると泣きながら言っていた。

 

 

 他にも塔城さんも心配してるアピールで木場先輩は一人でやり遂げるのを諦めたようだ。いい人に恵まれてるじゃないか。

 

 そして、そのままいい話みたいな感じで3人とも店から出ていった。

 

 このことは敢えて誰にも話さないし、直接兵藤先輩達に協力するとも言わない。敵の得物は剣で俺の得物は弓だ。そうなるとリスクが高すぎる。

 

 本当は言えばいいと思うけど、アザゼルは論外でグレモリー先輩はああ突き放されてからまだ気まずくてまだ行けてないけどな。でも、こう事件を知ってしまったからには影ながらも協力する。

 

 偽善と言われようとも、自己満足と言われようとも、俺の目で見える者達を全てを救いたい。たとえ隣に誰も居なくても…………




 次回、イッセー達が探す中、どこかの紅茶を思い出させるような場所に主人公が張り込む!

 これで分かったら凄いと思います(ヒントはバーサーカー戦)

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