ステラを放つその日まで   作:蓮太郎

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アガルタの女楽しかったです、ガチャは☆4礼装ばっかりでした


弓兵の憂鬱

 芦屋新志の様子が少しだけおかしかった、と数々の生徒が証言した。

 

 授業参観が終わり三日経った日のことだ、たった二日とはいえ遠くから戻ってきた母親を見送った日を境に憂鬱な顔をしている。

 

 それはいつかの木場佑斗の様子と似ていたのはどうでもいいことだ。

 

 この時、塔城小猫は主であるリアス・グレモリーからメッセンジャーを頼まれていた。内容は三陣営の会談を行う予定日、それに加えて始まる時間を伝えること。

 

 こそっと一般生徒に気づかれずに伝えるだけのはずだった放課後になるとがいつの間にか新志の姿が見えなくなっていた。

 

 これはいけないと思い新志を探すも既に学校内にいなかった。これは既に帰宅してしまったのだろう。新志の住所を知らないので主人(リアス)から教えてもらうしかないと思い、一度部室へと向かった。

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

「…………ここですか」

 

 どこにもありそうな平凡なアパートの前に小猫は立っていた。もちろん新志が住んでるアパートだ。

 

 普通すぎて先日に堕天使コカビエルを撃ち倒した人間にしては質素すぎると思うが、なんにせよあくまで『人間』なので仕方ない。簡単に城を建てたりとかピラミッド建てたりする奴がおかしいのである。該当する人物はこの世界には存在しないのだが。

 

 トテトテと錆びつきかけてる階段を登り、かの人物がいる部屋の扉をノックする。

 

 …………返事がない、もう一度ノックする。

 

 ……………………返事がない。またノックする。

 

 ………………………………返事がない。もしや留守なのかもしれないと思い始める。

 

「…………芦屋さん?」

 

 今度は声をかけながらノックしてみる。

 

 

 

…………………………………………ガチャ

 

 

 

 少し間が空いたが中から住人が出てきた。

 

「なんだ、塔城さんか」

 

「…………まるで違う人が来ると思ってた顔」

 

「あー、もしかしたら別の奴が来たのかもしれないって思ってた」

 

 ジト目の小猫に対して新志は苦笑いをしていた。ついでに妙な警戒も混じってたような気がしたがすぐに霧散した。

 

「うちまで来たってとこは、外じゃ話せない内容か。言っとくけど暫くは部室に行かないからな」

 

「…………なんでですか?」

 

「なんつーか、心配事があってな。どうも厄介な事で他のに相手しづらいってのがな」

 

「…………なんか怪しい」

 

「そっち関係で簡単な話ですみそうなら中で話すべきじゃないか?」

 

 ここはアパートだ、いつ誰に聞かれるか分からない玄関で話すよりある程度密室になっている部屋の中で話す方がいいだろう。

 

 新志は部屋の中へ戻り小猫が続く。ドアはちゃんと閉めた。

 

「まあ座って、それで改めて聞くけど話ってのは何だ?」

 

「…………明日の夜に天使、堕天使、悪魔の首脳陣が集まって会談することに決まった」

 

「互いに争いあってる勢力の会談?かなりの極秘事項っぽいけど、授業参観に大きな存在があったのは視察の為か」

 

「…………大体あってる」

 

「大体?」

 

 二人の魔王からしたら視察より授業参観の方をメインとしてやって来ていたことを小猫はあえて黙っておくことにした。あれはある意味で傷を抉ることになる。

 

「まあ、アレだろ?コカビエル倒した人間に興味がある、とか我々が討ちとるはずだったのにどうしてくれるんだと言ってくるか…………まあ、前者だろうな」

 

「…………」

 

 なぜ分かってるかのように言うのか謎であるが、小猫から見て彼は無理をしてるようにしか見えなかった。

 

 明らかに何か焦っている。外敵に怯えてるとも思えるほど警戒している。その様子は先輩である兵藤一誠でも僅かに読み取れそうなほどだった。

 

「まあ、どうせ行かなければ厄介なことになるのは目に見える。心配しなくてもちゃんとぐっすり寝て行くさ」

 

「…………本当にですか?」

 

「本当もなにも、そこまで信じてもらえないか?」

 

「…………芦屋さん、怪しいです。なにを警戒してるんですか?」

 

 そう問いかけた時、新志は目を細くして困ったような表情になった。いや、これは困ったより憂鬱に近い表情だ。

 

「……………………(小猫から目を逸らしている)」

 

「……………………(じっと新志を見ている)」

 

「……………………嫌なところに目をつけてくれるな」

 

「…………少しあからさますぎたので」

 

 一つため息を吐いて観念したかのように思い詰めた顔をした。本来、言うべきではないのだがせめてここは疑問を解消しなければずっと疑われたままになる。その様子をリアス・グレモリーに伝えられたら速攻で問い詰められる可能性だってある。

 

 だから、彼は言った。

 

「もうすぐ俺の戦いが始まりそうでな、あれからずっとそのことを考えていたんだ」

 

「…………戦い、ですか?まさか堕天使に」

 

「そっちじゃない。いや、そっちも関わってるかもしれんが…………まだ敵がはっきりしていない」

 

 余計に意味がわからない。いったい何と戦っているのかすら掴めない。堕天使なのか、もしかしたら天使なのか、はたまたそれ以外か。

 

 この時、まだ何も知らないことを後悔する事はなかった。ただ何があるのかを知りたいだけだ。

 

「塔城さん、聖杯って知ってるよな?」

 

「…………聖杯、というとキリストが最後の晩餐に使われた杯のことですよね?」

 

「ああ、俺は聖杯を取るための戦争に参加せざるをえなくなった。ま、その本物の聖杯じゃないんだがな」

 

「…………戦争!?」

 

 明らかに規模がおかしいと小猫は誤解したが、実際はそこまで迷惑はかからない(ファラオの兄さんや冬木のキャスター諸々は除く)が魔力、エネルギーの揺らぎにより全勢力に観測される可能性が非常に高い。

 

 新志に宿るアーラシュの宝具は「それ本当に弓なのかと!」と言われてもおかしくないほどの威力を持っているため、逆に察せない方がおかしい。

 

「これを俺は、いや俺たちは聖杯戦争と呼んでいる。規模は七人、イレギュラーが混じったら八人で殺し合うってのが俺が持つ知識だ(・・・・・・・)。何にせよ、この聖杯戦争はイレギュラーが起こってる事は確かだ」

 

「…………芦屋さんが憂いてる事は分かりました。実力もあの時に見ました」

 

コカビエル程度を軽く捻るくらい(・・・・・・・・・・・・・・・)じゃダメなんだ。あいつは聖杯戦争に加担する中でよっぽど戦闘に向いてない奴じゃない限り負ける要素がない」

 

 非常にイラつかせるような発言だが、新志の実力は本物、それにあの時は手を抜いていた節も見られていたため、グレモリーと最後まで観戦していた白龍皇ですら実力の底が見えていない。

 

 そんな彼が警戒するほどの正体不明の敵がこの世界に最低六人いるのだ!

 

「…………何で芦屋さんは聖杯戦争、に参加しようと?」

 

 その言葉に新志が示したのは沈黙、答えないという意思表示だった。

 

「……………………悪いが、聖杯戦争については他言無用だ。もう既に始まってる上に無闇に俺の居場所を明かされたくはない。さあ、帰ってくれ」

 

 沈黙の末に他言無用と言い小猫を追い出すように言い放つ。どう見ても巻き込ませたくはないのだろうと分かるほどの露骨さだ。

 

 小猫も空気を読めない悪魔ではない。これ以上の詮索をしたら襟を摘まれてポイッと外に捨てられそうだと感じ、自主的に立ち上がり部屋から出る。

 

「…………会談には出席してください」

 

「それは善処する」

 

 最後にそれだけを言い残して小猫は主人(リアス)の元へ帰るために歩き出した。

 

「………………………………はぁ、聖杯戦争で気が立ってたな。しかも会談だけでも荒れそうな気がする」

 

 セイバーでもないのにそう直感が言っている事にため息を吐き、不用意に会談を行う三陣営に接触していたことがバレるという事についてさらに頭を悩ませることとなった。




だが不夜城のキャスター、貴様は赦す赦さないの話に非ず、偉大なるかの王の最期を侮辱したお前は全力を持って殴り倒す(ギリ倒せました)

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