堕天使コカビエルとの槍と俺の矢の撃ち合いから2日経った。昨日も学校はあったのだが流石に一晩戦ったので疲労がたまり怪我も少しだけしたので休む事にした。
あの日、2日前の夜はコカビエルは俺の矢で腹を貫いて仕留め、
あー、コカビエルの槍は強力だったな。あの槍の多さに対処しきれず食らった時は頭からちょっと血を流したほどだ。最終的には翼と腹を矢で貫いて倒したのだが。
ま、その怪我もアルジェント先輩の神器で治してもらったから跡も残っていない。
そして今日、もう大丈夫だと思うが大事をとって休む事にした、というのは建前で訪問者が来るから時間空けとけと言われただけだ。
普通なら無視するところだが、まあアザゼルだからそう簡単にあしらえない。話す内容はコカビエルのことだろうけど…………
サボりとも言えるが悪魔側も何も言って、というより電話してこないから大丈夫だろう。アザゼル総督はうちに来るって言ってたし、外に出る必要もないから暇だ。
なのでアザゼル総督に電話で早く来いと催促してみた。
「今こっちでも色々と処理してるから待ってろ!あとヴァーリは意地でもついてこようとするな!」
めっちゃ怒鳴られた。これを玉藻猫で言うなら「解せぬ」だろう。
電話からヴァーリという人名が聞こえたな。そういや、コカビエル倒した時に遅れてやってきたのが白龍皇のヴァーリだったか。
まさか、あの時に言ってた「一度は戦ってみたいものだ」を実行しようとしてるのか?いや、そんなことはないと願っておこう…………
電話してから30分後、玄関のチャイムが鳴った。アザゼルが来たんだろう。予想より少し早かったとだけ記しておく。
「まだ朝っぱらって言うのに急かすなよ、と言いたいが待たせたのはこっちの都合だし仕方ねえか」
「こんな部屋だけど流石にカフェには行けないぞ。下手に見つかったら補導される」
「かーっ、学生ってのは自由なようで割と不自由だな」
この総督が学生なら結構な頻度でサボってそう。あ、そういえば元は天使だったから大昔は真面目だったのかもしれない。今では真面目の影はほとんどない。
立ち話ですませるような事じゃないと思うから中に入れる。ちっぽけな部屋だが、我慢してほしい。
「まあ、何言うかわかってるだろ。コカビエルとバルパーの処置だ。ま、コカビエルはコキュートス、一応説明しておくが、地獄の最下層に位置する氷の地獄だ。そこに幽閉された。もう二度と出てくることは無いだろうな」
その時のアザゼル総督の顔は、まるで友人を失ったような悲しい顔をしていた。長年連れ添った仲間がこうなると悲しいものか。
「で、バルパーは今までしてきたことを自白させて処刑した。ま、バルパーの記録はそれなりに調べてたから自白してもあまり大差なかったがな」
バルパー、お前のこと筒抜けだったのかよ。コカビエルが拾ったと聞いたとはいえ、総督に筒抜けだとダメじゃねえか。
いや、待てよ。ほとんど筒抜けだったのにここまで放置していたのは何故だ?
「アザゼル総督、何故危険因子となる人物を放置していた?どこにも害になるしかないと分かってたのに、どうして?」
「あー…………悪りぃがそれは言えん」
バツが悪そうにアザゼルは視線を逸らした。都合の悪いことなのだろうか、追求したところで答えを得られるとは思ってない。どうせはぐらかせるだろう。
そして話を逸らそうとアザゼルは別の話題を持ちかけてきた。
「そういや、グレモリーのとこに新しい眷属が出来たってよ。例のデュランダル使いが悪魔になるとはなぁ」
「デュランダルって、今回この町に来た教会側の片割れか?あの時は虚空の目をしてたが…………まあ、何かを決意したんだろ」
「天使が堕天使になるように信者も悪魔になったりするさ。ま、神の不在を知った事が一番の原因だろ」
しかもそれで上司に電話越しとはいえ聞こうとした波紋を言い渡された云々をアザゼルから聞かされた。一体どこでそんな情報手に入れてるんだ。
「エクスカリバーは無事、じゃないな、欠片になったが、悪魔にならなかった方のシスターが教会に空便で送り返された。ミカエルの奴、なんで空便なんだ?」
「そんなのは教会に聞いてくれ。ここで言われても困る」
「だよなぁ。向こうも所属不明のお前さんをどうしようか考えてるとこだろう」
そう言われたら「うっ」となってしまう。事実、悪魔が集う駒王学園に在籍してるとはいえ、かなり宙に浮いた存在だ。実力も堕天使幹部を軽く倒せるほどだからどこの組織も引き抜きたいだろう。
だが、俺は乗り気じゃない。これでも家族はいるし、いきなりどこ所属になれなんて言われても抵抗する。望むなら干渉してほしくはないが…………
「大きい力は代償がつく、か。強すぎても平和なんて得られないのが辛いところだ」
「お、よく分かってんじゃないか。俺はお前さんの神器が『
「神滅具が何かはよく分からないが…………」
必殺技でもある
その代わり、俺が死ぬわけだが…………自分を切り捨てて他を救ってるもんだ。
「そうだそうだ、どうせ外に出られないし暇だろ?この前出たゲーム機買ったんだ。一緒にやろうぜ!」
「ゲームか…………どうせ暇だし付き合うぜ」
「よーし、んじゃテレビ借りるぞ」
今思えばこの総督ってここに来るまで忙しかったんじゃなかったか?なのにここでゲームするって…………ああ、サボりか、
忙しい時こそ現実逃避したくなるよな。俺も神器覚醒した時から…………あれ、そういやこれ本当に神器なのだろうか?もしかしたら宝具になるのかもしれない。
現状だと分かるはずもないから今はアザゼルとゲームするか。
某配管工のレースゲームしてる最中、アザゼルのマナーモードの携帯電話がめっちゃ震えてたのは見逃さなかった。ついでに全戦全勝した。
さらに言うと昼抜きでかなり熱中していた。いやはや、学生が何してるんだ。
「それじゃ、お暇させてもらうとするかね」
「ところで携帯がずっと鳴っ「あー、これただのアラームだから」いやでも「アラームだ!」…………」
うわぁ、これ絶対向こうの人、じゃなくて堕天使怒ってるよ。ほぼ一日中ゲームしてたって言ったら怒られるに決まってるじゃないか。
「あ、そうだった。近々お前さんは魔王に会うと思うぞ」
「待て、何を藪から棒に」
「なんたってお前さんの通う学校で天使と堕天使と悪魔の三陣営で会議が行われる予定だ。グレモリーからも伝えられると思うが、絶対に出席せざるを得ないと思うぞ。そんじゃあな」
そう言ってアザゼルは颯爽とどこかへ消えていった。
いや、待て、流石にそれはないだろう。だから言わせて欲しい。
「何故そんな機密っぽい重大な事ををゲームする前に言わないんだ!?」
このあと隣の住民であるミルたんにうるさいと怒られた。
本日未明、行方不明になっていた総督が重要案件を重要人物に対して軽く投げた事が分かりました。総督は「だってまだ先の話だしゲームして時間潰したかったから」と供述しておりグリゴリ一同は今日は何をしていたか徹底的に調べるつもりです。