君のバスケ   作:JALBAS

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急に三葉との入れ替わりが途絶え、黒子達は不思議に思います。
そんな中、赤司からの呼び出しが有り、黒子達は糸守へと向かいます。
そこで黒子達は、衝撃の事実を知る事になります・・・・




《 第九話 》

 

もう1週間くらい、三葉さんとの入れ替わりが無い。この間は赤司くんだったので、もし入れ替るのなら僕の番なんだけど・・・・もう、入れ替わりは無くなったのかな?入れ替わりの理由について、赤司くんは、何か分かったのだろうか?

桃井さんも、心配してよく電話を掛けて来る。赤司くんの話では、僕達と三葉さんの時間は3年ずれているらしい。だから、入れ替らない限り、僕達が三葉さんと連絡を取る術は無い。この時間の三葉さんには、いくら連絡しても繋がらない。多分、スマホのアドレスが変わっているのだろう。

その時、スマホの着信音が鳴った・・・・赤司くんからだ。

『黒子か?直ぐに、青峰と黄瀬に連絡して欲しい、桃井にもだ。』

「え?何をですか?」

『大変な事が分かった。詳しくは会ってから話すが、次の日曜日、昼までに岐阜県の飛騨古川駅まで来て欲しい。』

「な・・・何故ですか?」

『それは会ってから話す。俺達、全員に関わる話だ。緑間と紫原には、俺から連絡しておく。』

「は・・・はい、分かりました。」

 

赤司くんに言われた通り、青峰くん、桃井さん、黄瀬くんに連絡して、次の日曜日、僕達は飛騨古川に向かう電車の中に居た。

「で、赤司は何にも言わねえのかよ?」

「はい、会ってから話すって。」

「勿体つけやがって、用件くらい言えってんだ!」

「きっと、三葉っちの事っスよ。赤司っち、入れ替わりの後も調べてたみたいだし。」

「心配よね?何で、急に入れ替らなくなっちゃったのかしら?」

「お前は、入れ替らないからいいかもしれねえが、結構大変なんだぞ!あれ!」

「俺は、楽しかったっスけどね。」

「お気楽でいいな、てめえは・・・・」

飛騨古川駅に着くと、改札口の前で既に、赤司くん、緑間くん、紫原くんの3人が待っていた。

「あれ、紫原っち早いっスねえ?一番遠くなのに。」

「昨日の内に来させて、洛山の寮に泊まらせた。寝坊されては困るからね。」

「流石、抜かり無いわね、赤司くん。」

「そんな事より、こんなとこまで呼んで何の用だ?赤司?」

「百聞は一見にしかずだ。一緒に付いて来てくれ。」

「はあ?何処に行くんだよ?」

「糸守だ!」

『ええ~っ?』

 

飛騨古川駅から、タクシー2台で移動する。電車やバスは無いのかと聞いたところ、以前は走っていたが、今は廃線との事・・・・どういう事だろう?

タクシーで1時間弱、廃校となった学校の前で降りる。その学校名を見て、僕達は愕然とする。

“糸守高校”

「な・・・何で廃校になってるんだよ?3年で、そんなに過疎化が進んだってのか?」

赤司くんは、どんどん先を歩いて校庭の方へ行ってしまう。僕達も、慌ててその後を追う。

校庭の端、勅使川原くんや名取さんと昼食を取っていた辺りに行き、町を見渡して、更に僕達は驚愕する。

「な・・・何だよ?これは?」

「ひ・・・酷い・・・・」

そこに、町は無かった。糸守湖は、元の円にもうひとつ大きな円が重なった、瓢箪状に姿を変え、湖畔の町は、全て瓦礫の山と化していた。三葉さんの家や、宮水神社のあった所は、新しい円の中心辺りだ。その辺りは、町がごっそり無くなっている。

「な・・・何なんスか?これは?」

「ティアマト彗星だ。」

『え?』

僕たちの問いに、赤司くんが答える。

「黒子が言っていた、3年前に地球に最接近した彗星だ。その最接近の際に一部が分裂して、破片が日本に墜ちた。その墜ちた場所が、この糸守だ。」

「何だと?」

「そ・・・そういえば、確かに、3年前にそんなニュースあったっス。」

「町は壊滅、住民の約1/3が巻き込まれて亡くなったそうだ。」

「じ・・・じゃあ、三葉ちゃんも?」

「その1/3に含まれている。」

「そ・・・そんな・・・・」

「本当に迂闊だった・・・・彗星の話を聞いた時に、思い出せば・・・いや、直ぐに調べれば良かったんだ・・・・済まない・・・・」

「もしかして・・・・あの入れ替わりは、この事を僕達が三葉さんや糸守の人に伝えて、皆を避難させるために・・・・」

「そう考えて、間違い無いだろう。」

「じゃあ俺達は、その期待に応えられなかったって事か?」

「そんな・・・三葉ちゃん・・・・」

とうとう、桃井さんは泣き出してしまった。他の皆も、唇を噛み締めている。

「も・・・もう、どうにもならないんスか?」

「入れ替わりは、もう無くなった・・・・万事休すなのだよ。」

「いや、まだ可能性は残されている。」

「何?」

全員が、赤司くんに顔を向ける。

「本当か?赤司?」

「ああ、皆を呼んだ、本当の理由はそれだ!・・・付いて来てくれ。」

そう言って、赤司くんはタクシーのところに戻る。僕達は、それに続く。

 

タクシーは、糸守の廃墟を迂回して、糸守高校と湖を挟んで反対側の山道に入る。かなりの悪路を進み、それ以上は車で移動でき無くなる所まで行く。そこからは歩きで、山を登って行く。頂上に付くと、そこはカルデラ状の窪地で、真ん中に岩と一体化した巨木が立っている。

「あれが、宮水神社の御神体だ。」

『御神体?』

「あの岩の裂け目から、下に降りられる。そこまで行くんだ。」

僕達は、赤司くんに続いて歩いて行く。御神体を囲むような円状の小川を渡り、岩の裂け目から、御神体の中に入る。そこには、小さな祠があり、瓶子が2つ供えられていた。

「これは、口噛み酒といって、糸守に古くから伝わるお神酒だ。三葉と四葉の姉妹が、米を噛み、吐き出して瓶子に入れた物だ。」

「噛んで吐き出した?おえ・・・・」

「ちょっと、失礼だよ!大ちゃん!」

「供えたのは俺だ。最後に、三葉と入れ替わった時にね。左が三葉の物、右が四葉の物だ。俺が供えたのは1週間程前だが、ここでは3年経っている。もう発酵して、お酒になっているだろう。」

「それで、これが何なのだよ?」

「あの日、お婆さんが語ってくれた。糸を繋げることも、人を繋げることも、時間が流れることも、全部同じ言葉“ムスビ”を使う。それは神様の呼び名であり、神様の力でもあると。俺達と三葉の入れ替わりも、何かの“ムスビ”だろう。入れ替わりが無くなったのは、それが強制的に切られたからだ、彗星の破片の落下によってね。」

『・・・・』

皆、真剣に、赤司くんの話に聞き入っている。

「もうひとつ、お婆さんが言っていた。この口噛み酒は、三葉と四葉の半分・・・2人の分身のような物だと・・・・だとすれば、これを飲む事により、もう一度俺達と三葉を“むすぶ”事ができるかもしれない。」

『?!』

皆、この言葉に衝撃を受ける。

しばしの沈黙の後、僕は、三葉さんの口噛み酒の入った瓶子に手を伸ばす。

「じゃあ、これを飲めば、もう一度三葉さんと入れ替われるんですね?」

「絶対では無い。その可能性がある、というだけだ。」

「ま・・・まさか?飲む気か、テツ?」

「はい、だって、これじゃ、三葉さんが可哀想すぎます・・・・本来なら、僕達は、三葉さんを助けなきゃいけなかった・・・・それが、彗星の破片落下に気付く事もできなかったなんて・・・・このままじゃ、悔いが残ります!」

「ん~、まあ、そうだけどよ・・・・」

「気付いてても、青峰っちじゃ救えなかっただろうっスけどね。」

「うるせえ!一言多いんだよ、てめえは!」

僕は、瓶子の蓋を開け、その蓋に中の口噛み酒を注ぐ。

「待て、黒子。」

僕が、蓋を口に近づけようとしたところを、赤司くんが制止する。

「お前ひとりでは大変だろう、俺も一緒に行く。」

そう言って、赤司くんは、もうひとつの瓶子を手に取る。

「ちょっと待って、赤司っち、それは・・・・」

「三葉の妹、四葉の口噛み酒だ。」

「あの、ガキと入れ替るつもりか?」

「仕方が無いだろう。口噛み酒は、この2つしか無いんだ。人口が少ないとはいえ、1500人を避難させるんだ。人手は、ひとりでも多い方がいい。」

「ありがとうございます。お願いします、赤司くん。」

「ちょっと待て、テツ!」

「はい?」

今度は、青峰くんが僕を制止する。

「お前じゃ不安だ、俺が代わる!」

『え~っ?』

周りの皆が、驚きの声を上げる。

「お前じゃ、影が薄くて、皆が気付いてくれないと困る。その点、俺なら目立つ!」

「それなら、俺の方が目立つっスよ!俺が行くっス!」

「でしゃばんな、引っ込んでろよ、黄瀬!」

「なんでっスか?俺だって、三葉っち助けたいっスよ!」

「待て、どうもお前達は遊び半分に思えていかん。俺が行くのだよ。」

「え~っ?何言ってんスか、緑間っち?」

「だいたいてめえは、全然非協力的だったじゃねえか?」

「何にも分からない状態で、議論しても無駄だと思っただけなのだよ。目的がはっきりしているなら、ここは副主将の俺が適任なのだよ。」

「そんなの中学時代の話だろ!今は関係ねえ!」

「そうっスよ!」

3人で、口論を始めてしまった。

「ムッくんは参加しないの?」

「だって~、めんどくさいし~」

しかし、3人共全く譲らないので、いつまで経っても決着はつかない。

「俺だ!」

「俺っスよ!」

「俺なのだよ!」

「あ~もう、ストップ!」

痺れを切らして、桃井さんが口を挟む。

「それなら、三葉ちゃんに選んでもらいましょ!」

「え?」

「いねえ奴が、どうやって選ぶんだよ?」

「だから~・・・・」

そう言って、どこから出したのか、桃井さんは、お猪口を4つ取り出す。それぞれに三葉さんの口噛み酒を注いで、青峰くん達にひとつずつ渡す。

「これで、皆で飲むの!」

「はあ?」

「そんな事したって、入れ替れるのはひとりっスよ?」

「そう、きっと、一番三葉ちゃんと“むすばれてる”人が入れ替るわ!」

「何で、俺まで~?めんどくさいんだけど~」

「文句言わないの!さあ、飲んでっ!」

そこで、じっと待っていた赤司くんが、ようやく口を開く。

「話は決まったようだね・・・・桃井、うまくいけば、三葉と四葉が入れ替ってここに来る筈だ。多分混乱するだろうから、君が説明してあげてくれ。」

「は・・はい!」

「では、皆、行くぞ!」

「はい!」

「おうよ!」

「いいっスよ!」

「いいのだよ!」

「めんどくさいのに~」

全員で、口噛み酒を一気に飲み干す。

「何だ?この変な味は?」

「まず~い!」

「いまいちっスねえ。」

皆、文句が多い・・・・

しばらくすると、徐々に意識が遠のいていく・・・・こ・・これは?・・・・

 






既に、三葉が亡くなっていた事を知り、衝撃を受ける黒子達。
今度こそ、三葉と糸守を救うために、口噛み酒を飲みました。
赤司は四葉と入れ替る事になりますが、三葉と入れ替る事ができるのは、黒子か?青峰か?黄瀬か?緑間か?はたまた紫原か?・・・・

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