ここで、三葉は入れ替わってる6人が、“奇跡の世代”と呼ばれる知り合い同士である事に気付きます・・・・
「あれ?・・・・」
ここは・・・・確か、三葉さんの部屋・・・・また、同じ夢を見てるのかな?
姿見を見ても、あの時と同じ“宮水三葉”さんの姿が映っている。
制服に着替えて、下に降りる。この間と同じように、妹さんとお婆さんが朝食を食べている。
「お姉ちゃん、遅いなあ。」
「来ましたけど。」
「うわっ!い・・・いつの間に?」
この間と、同じ反応だ。
食事をしていると、テレビのニユースが耳に入る。
『1200年に一度という彗星の来訪が、いよいよ2週間後に迫っています・・・・』
あれ?前の時は、ひと月後だったのに・・・・現実と同じように、時間が経過しているのかな?
朝食を終え、学校に行く。妹さんと別れて、ひとりで歩いていると。また、勅使河原くんと名取さんが、自転車で通り過ぎて行った。
学校に着くと、2人はこの間と同じ会話をしている。近づいても、やはり気付かない。
「三葉、遅いなあ。」
「やっぱ、寝坊しとるんやろ。」
「あの・・・すいません。」
「え?・・・うわっ!」
「み・・・三葉!い・・・いつの間に?」
「さっきから居ましたけど。」
「ええっ?そやった?」
何か、前の夢を再生しているような・・・・やはり、夢なのかな?でも、時間経過は?
「おい、名取。」
会話の中に、同じクラスの男の人が割り込んで来た。これは、初めてのパターンだ。
「今日は、宮水は来えへんのか?」
「ここに居ますけど?」
「うわっ!な・・・い・・・いつからそこに居たんや?」
「さっきから居ました。」
「え?・・・ほ・・・ほんまか?」
「はい。」
「な・・・なんや、今日は、随分大人しいんやな?」
「そうですか?」
「な・・・何で敬語なんや?」
「いつもそうですけど。」
すると、勅使河原くんも含めた全員が、同時に首を振った。
「な・・・何なんや、名取、こ・・・この宮水は?」
「こっちが聞きたいわ。」
「な・・・何か、気が削がれた・・・もう、ええわ・・・・」
そう言って、その男の人は自分の席に戻って行った。
「ん・・・んんっ・・・・」
な・・・ま・・また違う男の子の・・・・ん?
この部屋は、見覚えがある・・・・黒子くんの部屋だ!じ・・・じゃあ、これで1周?も・・・もう、違う男の子になる事は無いの?
考えても答えが出る訳は無いので、私は、とりあえず学校に向かう。でも、一度行っただけなのでよく道を覚えてはいず、少し迷ったのでまた遅刻してしまった。
授業中は相変わらず、クラスメイトの名前は分からず、会話も繋がらない。
今日こそは部活はサボろうと思ったんだけど、また、火神くんに見つかってしまった。
「しかし、不思議だな。」
「え?何が?」
「いや、帰りに黒子を見つけられるなんて、年にそう何度も無いからな。」
何?それ?黒子くんって、保護色でも使って姿隠すの?
部室まで連れて来られ、仕方なくロッカーを開ける。
「?!」
あら、この写真・・・・前は、気付かなかったけど、ここに映ってるのって?
男の子6人と、女の子1人の写真。そこに映っていたのは、黒子くん、青峰くん、緑間くん、黄瀬くん、紫原くん、赤司くん、そして、さつきちゃんだった。
な・・・何?私が入れ替わった6人って、皆、知り合いだったの?学校、全然違うのに・・・・
「ん?何、真剣に見てんだ?・・・・ああ、奇跡の世代揃い踏みの写真か?」
き・・・奇跡の世代?な・・・何なの?それ?
2日後、目が覚めると、そこは、青峰くんの部屋だった。
ま・・・また、青峰くんに・・・・じゃあ、その次は緑間くんで・・・・無限ループなの?
「大ちゃん、いい加減に起きないと、遅刻するよ!」
あれは・・・さつきちゃんの声・・・・私を迎えに来たの?ま・・・待って、このまま一緒に学校に行くと、またお昼に・・・・
私の脳裏に、2週間前の恐怖の昼食の光景が蘇る。
だ・・・だめ、あんな物、2度と食べられない・・・・ど・・・どうすれば・・・・
その時、2日前の、黒子くんのロッカーで見た写真を思い出した。
青峰くんと、黒子くんは知り合い・・・・そ・・・それなら!
私は、青峰くんのスマホの、アドレス帳を検索する・・・・あった!黒子テツヤ!
すかさずコールする・・・・待機音が流れて、直ぐに繋がる。
「も・・・もしもし、く・・・黒子くん?」
『はい・・・どうしたんですか?青峰くん?』
「よ・・・よく聞いて、わ・・私は、青峰やけど、青峰やないの・・・・」
『え?』
焦ってて、自分でも何を言っているのか、よく分かって無い。
「わ・・・私は、み・・・三葉やの!た・・・助けてっ!黒子くん!殺されるっ!」
1時間後、私と黒子くんは、近くの公園で待ち合わせた。私もそうだが、黒子くんは私の事を心配して、学校を休んでくれた。ただ・・・・
「テツく~~~~ん!」
「い・・・痛いです。桃井さん。」
さつきちゃんも、付いて来てしまった。彼女は、会うや否や、黒子くんに抱き付いた。
あれ?さつきちゃんて、青峰くんの彼女じゃ無かったの?
その後、私達は近くのファミレスに入った。
「え~っ?じゃああなた、大ちゃんじゃ無いの?」
「はい、宮水三葉といいます。」
「まさか、2人で私を、からかってるんじゃ無いでしょうね?」
「本当です、桃井さん。僕も、2日前に三葉さんと入れ替わってます。」
「ええっ?テツくんまで?」
その後、私は、2週間の間に黒子くんや青峰くんも含めた、“奇跡の世代”と言われる6人とそれぞれ入れ替わった事を説明した。
「ふ~ん、大変だったんだ、三葉ちゃん。」
「ええ。」
「で・・・でも、“殺される”は酷く無い?いくら、私が料理が苦手だからって。」
「ご・・・ごめんなさい、つ・・・つい・・・」
私達の会話を聞いて、黒子くんはくすくす笑っている。
「あ~、酷い!テツくん、何笑ってるのよっ!」
「あ・・・す・・すいません。」
「あ?それじゃあ、今、三葉ちゃんの体の中には、大ちゃんが入ってるの?」
「そ・・・そうなるんやね。」
「ま・・・まさか、三葉ちゃんの体で、あんな横暴ぶりを?」
「うん・・・た・・多分・・・・」
「ご・・・ごめんね!三葉ちゃん!」
「い・・・いや、さつきちゃんのせいや無いから・・・・」
「だけど、何故、僕達6人と、三葉さんが入れ替わるんでしょうか?」
「うん、それが、分からんのやけど・・・・」
「前の時は、僕の後が青峰くん、そして、緑間くん、黄瀬くんの順番で入れ替わったんですよね?」
「うん。」
「これから入れ替わる人にも、この事を伝えておいた方がいいですよね?緑間くんと黄瀬くんは近いから、ここに呼んで話しましょう。」
「ほんと?助かる!」
黒子くんは、緑間くんと黄瀬くんに電話を掛けてくれた。しかし、緑間くんは、“馬鹿な事を言っているのでは無いのだよ!”と言って電話を切ってしまった。黄瀬くんの方は、直ぐに飛んで来てくれた。
「ええ~っ?じゃあ今、青峰っちの中に、三葉っちが入ってるんスか?」
み・・・三葉っちって・・・・
「いや~、でも、糸守いいところっスね!空気はおいしいし、夜は星が凄い綺麗で。」
「そういえば、黄瀬くん、四葉の機嫌を直してくれたんやよね?ありがとう!」
「どういたしまして。俺、末っ子だから、妹って憧れだったんスよ!」
「四葉さんの機嫌って、僕、何かしましたっけ?」
「あ、ううん、黒子くんじゃあらへんよ。」
「きっと、大ちゃんね!」
「緑間っちも、やばいっスね!」
その後、私達は、入れ替った際にできるだけ周りを混乱させないように、ルールを決めた方がいいという話になった。
「まず、言葉遣いね。三葉ちゃんの時は“一人称”は“私”と言うこと!」
「方言は、真似できませんが・・・・」
「それは、大丈夫やよ。短い言葉で話せば、それ程違和感無いと思う。」
「でも、テツくんは、敬語で話しちゃダメね。きーちゃんも、“っス”は禁止!」
「え~っ?」
「三葉ちゃんは、逆にテツくんときーちゃんの話し方を真似ないと。」
「それは、難しくないっスか?」
「そうですね、6人分の話し方を覚えるのは、大変です。」
「ん~っ、そっかあ・・・」
「あの・・・話し方はがんばるつもりやけど・・・どうにもならない問題が・・・・」
「え?何?」
「・・・バスケ・・・・」
『あ~!』
3人共、相槌をうつ。
まさか毎回サボる訳にもいかないので、この3人に入れ替った時は、さつきちゃんに電話をすれば、さりげなくサポートしてくれる事になった。
「緑間っちは、どうすんスか?取り合ってくんなかったでしょ?」
「それも、私が何とかする。同じ東京だし。」
「じゃあ、紫原っちは?」
「ん~っ、ムッくんかあ?」
「氷室さんに、相談したらどうでしょうか?」
「うん、いいわ、それよ!テツくん!」
「ああ、あの人なら、柔軟に対応してくれそうっスね。」
「じゃあ、残るは赤司くんね。」
「本人に聞いてみましょう。」
そう言って、黒子くんは躊躇せず赤司くんに電話をする。
黒子くんって、大人しそうなのに、行動は大胆なのね・・・・
説明に時間が掛かるかと思ったんだけど、赤司くんの対応は、
『そうか、やはりお前達も入れ替わっていたか。』
「気付いていたんですか?」
『ああ。入れ替わりの理由までは分からないがね。』
え?赤司くん、たった1回の入れ替わりで、もう入れ替わりに気付いていたの?それも、他の5人が入れ替わってた事まで・・・・す・・凄い、1年生で名門校の主将を務めるだけの事はある。
『俺と入れ替った時の事は、心配する必要は無い。言葉遣いだけ気を付けてくれれば、部員の練習メニューはあらかじめ用意しておく。あとは、指導しているふりをしていればいい。』
な・・・何て、頼りになる人なの?流石、奇跡の世代を束ねるリーダー。
『それよりも、入れ替っていて、何か気付いた事は無いか?』
「え?僕は、特に何も・・・・」
『そうか?緑間の次は、黄瀬の番だと言ったな。何でもいい、気付いた事を、入れ替った翌日に俺に連絡するように言ってくれ。』
「はい、分かりました。」
良かった、これで、入れ替わっても混乱は少なくて済みそう・・・・でも、本当に、何でこんな入れ替りが起こるんだろう?・・・・
やっとお互いに入れ替わって事実に気付き、フォローし合うようになれました。
しかし、6人と入れ替わっていたため、ここまでにかなりの時間が経過してしまいました。
彗星の破片落下の日は、刻一刻と近づいています・・・・
こんな話を書いてる間に、黒子くんとユキちゃん先生の熱愛が報道されてしまいました。ですが、この話の黒子くんは、糸守に行ってもユキちゃん先生にアタックはしません。
あしからず・・・・