君のバスケ   作:JALBAS

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青峰と緑間のせいで、完全な絶縁状態となった三葉と四葉・・・・
必死に関係改善に努める三葉ですが、四葉は取り合ってくれません。
ところが、そんな姉妹関係を修復してくれたのは、以外にも・・・・




《 第四話 》

 

「ごめんなさい、ね、反省してますから・・・許してっ!」

「・・・・」

「お願いやから・・・ね、四葉、四葉ちゃん、四葉様っ!」

「・・・・」

「四葉ってば~~~」

しかし、四葉は何も答えず、朝食を終えて、そそくさと居間を出て行ってしまう。

「うえ~ん、お婆ちゃ~ん!」

私は、お婆ちゃんに泣き付く。

「仕方あらへんねえ・・・・しばらく、放っときい。」

「そ・・・そんなあ・・・・」

黒子くん、青峰くん、緑間くんと続いた入れ替り。その間の彼らの、妹四葉に対する対応に怒り心頭の四葉は、私とは、全く口を聞いてくれなくなってしまった。まさか、“東京の男の子達と入れ替ってました”等と言っても、信じてくれる筈も無い。どうしたらいいの?

 

「はあ~っ・・・・」

学校に来て、溜息をつく私・・・・

「大丈夫?三葉?」

「全然、大丈夫やない・・・・」

心配するサヤちんに、私はそう答える。

学校内でも、落ち着いていられない。例の松本とのバスケバトルのせいで、今や私は校内で、注目度No.1の女子になってしまった。暇さえあれば、女子バスケ部が勧誘に来る。また、バスケ部だけで無く、その他の運動部までもが勧誘して来た。下級生の女の子には、サインを求められる程だ。

「例によって、何も覚えとらんのか?三葉?」

「うい・・・・」

テッシーの問いに、机に突っ伏して、力無く答える。

覚えている訳が無い。それをやったのは、私では無いんだから・・・・でも、何で、毎回毎回違う男の子と・・・・それも、全員バスケ部で、超一流選手で・・・・え?

私は、ふと思った。そんなに凄い選手なら、メディアでも騒がれているんじゃ?

 

バスケの事は、バスケ部に聞くのが一番だ。また勧誘されるのは嫌だったので、男子バスケ部の人に聞いてみる事にした。クラスメイトの松本がバスケ部なんだけど、こんな状況で松本に聞ける訳も無いので、隣のクラスの子に聞いた。

「ねえ、バスケの強い学校で、誠凛とか、桐皇とか、秀徳って知ってる?」

「おおっ!流石やな宮水、強豪高はしっかりチェックしとるやないか?桐皇も秀徳も、関東の超強豪高や!せやけど、誠凛ってのは知らんな。新鋭の注目高か?」

「え?そうやの?」

誠凛は、強豪じゃないの?そういえば、青峰くんと緑間くんは松本をボコボコにしたみたいだけど、黒子くんは、何もしなかったみたいだし・・・・

「じゃあ、その高校に、青峰くんとか、緑間くんっていう凄い選手がおるの?」

「え?青峰に緑間?・・・・知らんなあ、聞かへんで、そんな選手。」

「え~っ?」

結局、黒子くん達の事は分からず終いだった。

 

家に帰っても、四葉の機嫌はまだ直らなかった。お婆ちゃんの言うように、しばらくは放っておくしかない。それよりも、夜、寝るのが怖かった。また、誰かと入れ替ってしまうのか?そんな不安に駆られながらも、結局は寝てしまったのだが・・・・

 

「ん・・んんっ・・・・」

翌朝、目が覚めると・・・・やはり、私の部屋じゃ無い!またなの?

起き上がって、辺りを見回して、頭を抱える・・・・また、全然違う!

 

今回の私の入れ替わりの相手は、“黄瀬涼太”。海常高校の2年生、当然バスケ部だ。ただ、今迄の男の子と違ってかなりイケメンで、アドレス帳も、女の子の名前が異常に多い。かなり、モテるのだろう。

住所は、東京では無く神奈川県だった。かなり東京寄りではあるが。

東京では無いといっても、田舎の私から見れば殆ど同じで、学校まではかなり迷った。

黄瀬くんは誰とでも気さくに話すタイプのようで、やたらと声を掛けられたが、当然満足な対応は取れず、目一杯周りに不信感を与えてしまった・・・・自分も、黒子くん達の事を文句言ってられる立場じゃ無いなと、つくづく痛感した。

 

放課後は、逃げるように学校を後にした。当然、部活はサボりだ。黄瀬くんがどんな選手かは知らないが、まず間違い無く超一流選手だろう。私なんかに、代役が務まる筈が無い。

 

家に帰ると、今度はスマホに着信の嵐だった。

いきなり、バスケ部の主将から電話が掛かって来たが、

『こっ!なんでんしゅうこない?たんでぞ!』

「は?」

『そで、せいんにかてか!』

何の暗号か分からず、切ってしまった。

その後は、女の子からの電話が何件も、

『黄瀬くん?今から出て来れない?』

『リョー君、何で最近電話くれないの?』

『涼太、今から行っていい?ご飯作ってあげる!』

いちいち、断るのが大変だった。

変わったところでは、モデル会社からの仕事の依頼の電話まであった。流石、都会のイケメン・・・・モデルまでやってるんだ。

その日は、スマホの電源を切って、もう夜の7時には寝てしまった・・・・

 

 

 

「ん~っ・・・・え?」

朝起きると、見た事も無い部屋の中だった。

つうか・・・女の子の部屋じゃねえ?壁に掛かっている制服も、女子のだし、着ているパジャマまで・・・・って、ええっ?

胸には、盛り上がりと谷間がある・・・・触ってみると・・・・感じる、本物だ!

「ほんまに、自分のおっぱいが好きやね。」

「え?」

気付くと、右手の襖が開いていて、小さな女の子が、冷やかな目でこっちを見ている。

「ごはんやよ・・・・」

それだけ言って、下に降りて行ってしまう。誰だ?あの女の子は?

部屋を見渡すと大きな姿見があったので、その前まで行って自分の姿を映す。

「え?」

そこに映ってるのは、同い年くらいの女の子の姿だった。

お・・・俺、女の子になってるの?

 

俺は、制服に着替えて下に降りた。夢だか何だか知らないけど、女の子になるなんて中々経験できる事じゃない。せっかくだから、少しこの生活を満喫してみようかと思った。

「おはよう!」

居間で朝食を取っていた、さっきの子と、お婆さんに挨拶する。お婆さんは返事をしてくれたが、少女の方は無視だ。さっきの様子もそうだったが、何か機嫌が悪いのかな?まあ、ここは深入りせずに、流しておこう。

テレビでは、“彗星最接近まで、あと3週間”とかいうニュースをやっている。あれ?そんな話あったっけ?でも、最近はモデルの仕事も復活させて忙しかったから、あんまりニュース見れて無かったけど。

 

朝食を終え、学校へ田舎道を歩く。建物も少なく、殆ど車も走っていない。かなり山の中のようだ。都会育ちの俺には凄く新鮮で、何だか楽しい気分になって来る。

「三葉~っ!」

後ろから呼ぶ声がする。出る前に、最低限の確認はして来た。今の俺は“宮水三葉”、糸守高校の2年生の女子。友達は、今声を掛けてくれた2人組、勅使河原克彦と名取早耶香。

「おはよう、三葉。」

「おはよう、勅使河原っち!名取っち!」

「勅使河原っち?」

「名取っち?」

2人は、怪訝そうな顔をする。まあ、そんなの俺は気にしない。

「み・・・三葉、その髪・・・」

「ああ、似合うっしょ?」

髪が長かったんで、ドラマ“カインとアベル”の倉科カナ風に纏めてみた。

「いつもの結い方と違うやん。」

「組紐使っとらへんし。」

「たまにはいいっしょ!」

まあ、初めてなんだけど。

「ちょ・・・ちょっと、三葉!」

名取っちが、俺の指を見て驚く。

「ネイル塗っとるの?」

「ああ、一度やってみたかったんス。せっかく、女の子になったんスから・・・」

「女の子になった?」

「あ・・いや、こっちの話っス。」

「だめやよ!校則で、禁止されとるやろ!」

「ええ~っ?」

やっぱ、田舎はそういうの厳しいのか・・・・うちの学校じゃ、自由なのに・・・・

 

昼休みは、勅使河原っちと名取っちと、3人で校庭の隅で昼食を取る。

「いや~、大自然の中で食べるランチ、最高っスね!」

「ね・・・ねえ?」

「ん?何っスか?名取っち?」

「あんた・・・ほんまに三葉?」

「そうっスよ。」

「いや、全然そうに見えないんやけど・・・・」

俺は、そんな2人の事は気にせず、大自然の中の女子高生ライフを満喫していた。

 

「ただいま~っ!」

家に帰ると、例の妹はまだ怒っているようで、全く返事をせずむくれている。

「四葉、いい加減に仲直りしいや。」

お婆さんがそう言っても、無視して行ってしまう。

名前は“四葉”っていうのか・・・・勿体無いなあ、あの子、笑えばとっても可愛いと思うのに・・・・ん?そうだ!

俺は、四葉ちゃんの後を追って、声を掛ける。

「ねえ、四葉ちゃん?」

「・・・・」

凄く機嫌の悪そうな顔で、四葉ちゃんは振り向く。

「何か、食べたい物無い?何でも、好きな物作ってあげるよ。」

「え?ほんと?」

四葉ちゃんは、やっと笑った。やっぱり、笑うとすごく可愛い。

 

 

 

・・・・ん?・・・携帯の、アラームが聞こえる・・・・

「?!」

私は、慌てて飛び起きた。直ぐに部屋の中と、自分の体を確認する・・・・自分に戻ってる・・・・?!

気付くと、右の襖が開いていて、四葉が立っていた。

ま・・・まさか、黄瀬くんも、四葉を怒らせるような事を・・・・

自分の顔から、血の気が引くのが分かった。“何か言わなければ”と思うが、言葉が出ない。

「どうしたん?お姉ちゃん?・・・ごはんやよ。」

四葉は、にっこり笑ってそう言って、下に降りて行った。

「え?・・・・」

私は、しばらく放心状態で動けなかった・・・・

 






青峰と緑間がメチャクチャにしてしまった、三葉と四葉の姉妹関係を、黄瀬が見事に修復してくれました。流石、奇跡の世代の中では、赤司に次ぐ常識人だけの事はあります。
ただ、その次に控えるのが、最も常識の通じない男なんですが・・・・・

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