君のバスケ   作:JALBAS

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黒子に引き続き、青峰と入れ替ってしまった三葉。
最初は夢だと思っていた体験も、周りの証言から夢では無かったのかと思い始めます。
そして、次に三葉が入れ替るのは・・・・秀徳高校の緑間真太郎です。




《 第三話 》

 

ん?・・・・スマホのアラームが鳴ってる・・・・?!

私は、思わず飛び起きた。そして、辺りを見回す・・・・私の部屋だ。

や・・・やっぱり夢だったのね。な・・・何で、こんな変な夢ばかり見るのかな?

ところが、着替えて下に降りて行くと・・・・

「・・・・」

四葉が、何も言わない。挨拶をしても、話し掛けても、目を瞑って、全く答えない。

「ねえ、四葉、何をそんなに怒っとんの?」

すると、冷やかな目で私を見つめて・・・・

「自分の胸に聞きい!」

そう言って、そそくさと出て行ってしまった。な・・・何なのよ?あの態度は?

私は、お婆ちゃんにも聞いてみる。

「お婆ちゃん、四葉は、何であんなに怒っとんの?」

「ん?そらあ、あんな言われ方したら、怒るやろ?」

「え?・・・どんな?」

 

お婆ちゃんの話によると、昨日、また私の様子がおかしかったようだ。四葉は心配して、私にいろいろ聞いてきたが、その度に私は“うるせえっ!”と言って突っぱねたそうだ。そんな覚えは、もちろん全く無い・・・・というより、また、昨日の記憶が無い。

更に学校に行って、サヤちん達に話を聞いてまた驚いた。

完全に“俺様”調で、男言葉で、話が詰まると“うるせえ!”を連発。しまいには、バスケで松本を、完膚無きまでに叩きのめしたそうだ。それも、ノーブラで胸をバンバン揺らしながら・・・・聞いていて、恥ずかしくて顔が真っ赤になった。

「松本は、相当ショックやったようやな。今日は、休んどる。」

「三葉、本当に何も覚えとらんの?」

「うん、私、どうしちゃったんやろ?」

「やっぱ、狐憑きか?」

「あんた、そればっかやね?」

「ねえ、昨日の私、他に変な事言って無かった?」

「ん~っ・・・そういや、“俺は青峰大輝だ”とか言っとったな。」

「え?」

青峰大輝?それって、昨日の夢で、私がなってた男の子・・・・じゃあ、あれは夢じゃ無くて、私と青峰くん、入れ替って・・・・

 

「ん・・んんっ・・・・」

翌朝、目が覚めると・・・・な・・・ま・・また私の部屋じゃ無い!く・・・黒子くん?それとも、青峰くん?・・・・え?ここ・・・・ま・・・また、全然違う!

 

直ぐに、部屋の中を調べて、今の自分を確認した。

“緑間真太郎”、秀徳高校の2年生、またもバスケ部だ。主な友達は、同級生でバスケ部の“高尾和成”。

立ってみると、視点が全然違う・・・・背が、かなり高い。黒子くんは、私と大差無かったのに・・・・あれ?な・・・何か、視界がぼやけてない?

辺りを見回すと、ベッドの脇に眼鏡ケースが置いてある。そこから眼鏡を取り出して、かける・・・・あ、これで見えるようになった。

「お兄ちゃん、ごはんだよ!」

下から、女の子の声が聞こえる。この男の子も、妹が居るの?

下に降り、まず洗面所に行って、洗面台の鏡を覗き込む。

こ・・・今度は、眼鏡もあるせいか、インテリっぽい男の子だ・・・・凄く、背が高い。この間の、誠凛の火神くんくらいあるんじゃないの?こ・・・これも入れ替ってるの?で・・・でも、何で、毎回毎回違う男の子と?

 

朝食を終え、家を出る。学校に行かなきゃいけないんだけど・・・・

青峰くんの時は、さつきちゃんに連れてってもらったから良かったけど、黒子くんの時は、かなり迷った。今回は、大丈夫かな?東京って、本当に迷路みたいで・・・・

と、家の前で考え込んでいると・・・・

「あれ?何、突っ立ってんの?真ちゃん?」

「え?」

声のする方を見ると、自転車に乗った高校生がこちらに向かってくるが・・・ええ~っ?

何とその子は、自転車でリアカーを引いていた。何で?

「も・・もしかして、高尾くん?」

「もしかしなくても俺だよ、何言ってんの?」

「い・・いや・・・あの・・・・」

「そんな事より、早く乗って!急がないと、遅刻しちゃうよ!」

「え?」

「昨日の賭け将棋で負けて、今日俺が学校まで乗っけてくって事になったろ。」

「え?ま・・・まさか、そのリアカーに乗るの?」

「何言ってんだよ、いつも乗ってんじゃん?」

ええ~っ?ど・・どういう人なの緑間くんって?友達を、奴隷みたいにこき使って・・・・

「あれ?今日は、何も持ってないじゃん。」

「え?何もって?」

「ラッキーアイテム。」

ラッキーアイテム?な・・・何?それ?

「テーピングもしてないし・・・・」

テーピング?だめ、全然訳が分かんない・・・・

 

そんな問答を繰り返していると遅れるので、“いいから乗れ”と言われて、リアカーの後ろに座らされた。でも、メチャクチャ恥ずかしかった。おかげで、学校には迷わずに行けたけど・・・・

授業中は、できるだけ大人しくして、休み時間には席を外してやり過ごした。

でも、部活の方はそうはいかず、サボろうとしたら高尾君に見つかってしまった。

それでも、基礎練習は何とかこなしたんだけど、問題はその後。緑間君は別メニューになってるようで、シュート練習をやるハメになった。

また高尾君が“賭けに負けたから”といって準備をしてくれたんだけど、いきなりコートの端に立たされて、その位置から、反対側の端のゴールにシュートを入れろというのだ!

何?これ?ひょっとして、いじめ?こんなところから、どうやったらあんな遠くのゴールに入るのよ?冗談じゃ無いわ!

「あれ?どうしたの真ちゃん?打たないの?」

高尾君、ひょっとして、リアカー引かせた報復をしてるの?で・・でも、悪気がありそうな顔には見えない・・・・

「緑間!何をしている!さっさと始めろ!」

いつまでも突っ立ったままなので、主将の激が飛んでしまう。仕方が無いので、覚悟を決めて、打ってみることにする。

「ていっ!」

遠いから、思いっきり投げてみるが、投げ方も良く分かって無いので、ボールはコートの真ん中にすら届かなかった。

「え?・・・何やってんの?真ちゃん?」

高尾君が、とんでも無いものでも見たような顔をする。

「い・・いや・・・今の、なし・・・無しね・・・」

ちょっと手投げだったかな?・・・・もっと、腰を落として・・・・

今度は、腰を落として反動を付けて投げる・・・・でも、やっとコートの真ん中辺りに届いた程度だ・・・・

「まじめにやってる?真ちゃん?」

大真面目ですよっ!こんなの、出来る訳無いじゃない!

心の中で叫びながら、3投目・・・・遠くに投げるんだから、高く上げなくっちゃっ!

今度は、思いっきり高く投げる・・・・ボールは真上に上がって、そのまま、自分の頭の上に落ちて来た。

「い・・・痛ったあ~っ!」

高尾君が、私の肩に手を置いて言う。

「ごめん、真ちゃん・・・・」

え?

「いつも俺が、“ユーモアが無い!堅すぎる!”って言うから、必死に考えてくれたんだね。」

い・・いや、そうじゃ無くて・・・

「よ~く分かった、真ちゃんには、ユーモアのセンス全く無いから、もう、無理に笑い取ろうとしなくていいよ。」

そうじゃ無いの!私はこれでも、必死なんだってば~!・・・・もう、いや~っ!

 

 

 

アラームの音で目が覚めたが、目覚ましの音では無い・・・・

目を開け、体を起こして、部屋の中を見る・・・・何処だ?ここは?・・・・ん?何故、こんなに視界がはっきりしている?眼鏡をかけていないのに・・・・

ふと、体の違和感にも気付く。胸が、やけに重い。下を見ると・・・・胸に凹凸が・・・・

「何だ?これは?」

思わず、声を出してしまった。

「・・・・」

ふと、視線を感じて横を見る。襖を開け、ひとりの幼女が、じっと俺を見ている。

「・・・・ごはんやよ・・・・」

それだけ言って、下に降りて行ってしまう。何だ?あの幼女は?いや、そんな事より、今は体の異常を確認するのが先だ。

目の前に姿見を見つけて、俺はその前に立つ。そこに映っていたのは、完全に女の姿だった。

こ・・・これが、俺だと?ど・・・どういう事なのだ?

 

部屋の持ち物で確認した限り、俺は“宮水三葉”という女になっているようだ。いつまでも動揺していてもどうにもならないので、とりあえず壁に掛かった制服を着て下に降りた。

さっきの幼女と婆さんが、既に朝食を食べている。家族は、この2人だけか?

空いてる席に座って、俺も飯を食べる。横の幼女は、この女の妹なのか?さっきから、何も言わずに黙々と食べているが・・・・

「いい加減に、仲直りしない。」

婆さんがそう言う。何だ?喧嘩でもしているのか?

そんな時、テレビのニュースが耳に入って来る。

『1200年ぶりの彗星の接近まで、ひと月を切りました・・・・』

ふと、時間が気になって、部屋の時計を見る。時間を見て、俺はテレビのチャンネルを変える。

「ああっ、何で変えるん?」

「おは朝の、占いの時間なのだよ。」

「はあ?何なん、それ?もう知らん!」

そう言って、妹は怒って席を立って行ってしまった。何を、そんなに怒っているのだ?

 

朝食の後、学校に向かう。

しかし、凄い田舎だ。紫原の居る陽泉は、こんな感じだろうか?

「三葉~っ!」

後ろから声を掛けられ、振り返る。自転車に2人乗りした男女が、走って来る。おそらくあれが、勅使河原と名取だろう。この女の持ち物で確認した限り、主な友人はあの2人だけだ。

「おはよう、三葉。」

「ああ、おはよう。」

一応、挨拶を返しておいた。

「あれ?また、髪が・・・・」

「ま・・・また、狐憑きか?」

髪?・・・長いので後ろで纏めただけだが、それがどうかしたのか?それに、狐憑きとは何だ?

「ん?・・・な・・・何や?それ?」

勅使河原が、俺の持つ“招き猫”に疑問を持つ。

「ラッキーアイテムなのだよ。」

「ラッキーアイテム?」

「・・・なのだよ?」

余計に、疑念を持たれてしまった。しかし、説明しても理解されるとは思えなかったので、何も答えなかった。

 

学校に行くと、今度は別な男から声を掛けられた。

「おう宮水、この間は、ようもやってくれたな?」

何だ?この男は?この女の友人は、さっきの2人だけでは無いのか?

「松本、何言うてんの?元は、あんたから絡んだんやろ!」

「引っ込んどれ、名取!俺は、宮水と話しとんのや!」

“松本”というのか?唯の、クラスメイトか?

「リベンジマッチや!今日の昼、つきあえや!」

何の事だか分からないが、断ると余計にこじれそうなので付き合うことにした。

 

昼休み、体操服に着替えて体育館に行く。

松本は、バスケットボールを持って待っていた。何だ、俺にバスケ勝負を挑むつもりなのか?身の程知らずもいいとこだな。

「だ・・・大丈夫か?三葉?」

勅使河原と名取も、心配して付いて来た。それだけでは無く、他の生徒も大勢見にきていた。おそらく松本が、呼び寄せたのだろう。

「問題無いのだよ。」

糸守高校など、聞いた事が無い学校だ。こんなところに、俺と対等に闘える選手がいるとも思えん。

「ドリブルは、得意なようやな?せやけど、バスケの花は3Pや!今日は、3Pで勝負や!」

フリースローラインのところに、籠に入れられボールが沢山置かれている。

「まず俺からや!お手本やから、よう見とけ!」

松本は、フリースローラインから、3Pを放つ。

なってないな。フォームが汚い。あんな投げ方じゃ、3回に2回は外す。それに、ろくに練習もしていないようだ、足腰が不安定だ。

ボールは、リングに当たってふら付いたが、何とかゴールに入った。しかし、美しくない!美の欠片も無い、低俗なシュートだ!

「さあ、お前の番や!やってみい!」

あの程度のシュートで、得意そうな顔をするな!虫唾が走る!適当に手を抜いてやろうと思っていたが、こいつは許せん!

俺は、ボールを持ってコートの中央に立つ。

「な・・・何やっとるんや?ま・・・まさか、そこから打ついうんか?」

「うるさい!黙って見ているのだよ。」

慣れない体だから、この辺が限界だろう。だが、体は柔らかいし、反応は悪くない。何より、今日の蟹座の運勢は最高だ、外す懸念は微塵も無い。

俺は、そこからシュートを放つ。ボールは綺麗な放物線を描き、リングの中央をすり抜ける。うむ、初めての体にしてはいい方だ。

『おお~っ!』

「な・・・なんやと?」

周囲からは歓声が、松本からは、情け無い言葉が発せられる。直後に、体育館中から拍手が沸き起こる。

「み・・・三葉・・・」

「す・・・すげえ・・・」

勅使河原と名取も、驚嘆の声を上げているが、俺にとっては日常の事だ。別に驚く事では無い。

「さて、お前の番だが、まだやるか?」

腰を抜かしてへたり込んだ松本は、言葉を発することができず、首を思いっきり横に振るだけだった・・・・

 






前回に引き続き、奇跡の世代の引き立て役にされた松本くん・・・・
一方三葉は、スーパープレイで、一躍糸森高校のスーパースターになってしまいます。
でも、本当の三葉は、奇跡の世代のスキルを強要される環境下で、散々な目に合っています・・・・
また、入れ替わりのせいで、四葉との姉妹関係にも危機が・・・・

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