君のバスケ   作:JALBAS

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朝起きると、三葉は見ず知らずの男の子と体が入れ替わっています。その男の子は自分と同い年ですが、時間軸がずれています。
最初はその相手は黒子くんだったのですが・・・・
何故か、2回目は、青峰大輝になってます・・・・




《 第二話 》

 

「ん~っ・・・・」

何だ?スマホが鳴ってる?・・・・アラームなんか、セットしたか?・・・・うるせえなあ・・・・

手を伸ばして切ろうとするが・・・・何か、勝手が違う・・・・いつもの場所に無い・・・面倒くせえなあ・・・・

起き上がって、気付く・・・ど・・・何処だ?ここは?俺の部屋じゃねえぞ!

更に、体の違和感に気付く。何か、胸のあたりが重い・・・・視線を下げると・・・・

「何じゃ?こりゃ?」

胸に凹凸があって、谷間がある・・・・試に触ってみると・・・・

「おお、結構気持ちいいな、これ。」

「何しとんの?自分のおっぱいが、そんなに珍しいん?」

「へ?」

いつの間にか右横の襖が開いていて、小学生くらいのガキの女が立っていた。

「誰?お前?」

「何寝ぼけとんの、自分の妹も分からんの?ご・は・ん!はよ来ない!」

そう言って、そのガキは下に降りて行った。

何だ、あれ?さつきの妹か?・・・あいつに、妹なんか居たか?自分の姉と俺を間違えるなんて・・・・いや、俺のこの胸・・・本物だ。それに、何か女物のパジャマ着てるし・・・・

よく部屋を見渡すと、目の前に大きな姿見がある。俺は、そこまで歩み寄って、自分の姿をじっくりと見る。

「な・・・何だと?」

そこに映っていたのは、完全に女の姿だった。

こ・・・これが、俺?ど・・・どうなってやがんだ?

 

訳が分かんねえが、とりあえず壁に掛かってた制服を着て、学校に向かっていた。

妹と言うあのガキは、朝メシの時に“うるせえ!”と怒鳴ったら、怒って先に行ってしまった。

しかし、何で女は、こんな下がスース-する服を毎日着れるんだ?何か、風呂上りにタオル巻いてるような感じで、落ちつかねえ・・・・

「三葉~っ!」

何か後ろから声がするが、気にせずに歩いていると・・・・

「三葉ってば~っ!」

しつこく呼んでいる・・・・何か、うるせえなあ・・・・

「三葉っ!」

「何で無視すんのやっ!」

自転車に乗った2人組みが、俺を追い越して、目の前を塞いで止まった。

何だ?こいつら?

「俺に、何か用か?」

「だから、さっきから呼んどるやろ・・・・お・・・俺?」

「何だ、三葉って、俺のことか?」

「他に、誰がおんねん?」

「で・・・お前ら誰?」

『はあ~っ?』

 

教室で、さっきの2人と引き続き話す。

ここまでの話によると、この2人は勅使河原と名取。今の俺は、三葉という女らしい。2人はその親友のようだ。

「じゃあ、お前は三葉や無い言うんか?」

「ああ、ちげーよ。俺は“青峰大輝”、男だ。」

「何言うとんの、どっから見ても三葉、女の子やないの?」

「そんな事言われても、知らねえよ。朝起きたら、こーなってたんだからよ。」

「あかん、これは重症やわ。」

「絶対狐憑きや!直ぐに、お払いに行った方がいいで!」

「あーもう、うるせえっ!いいから放っとけよ!」

俺は、以後何を言われても、無視を続けた。

 

昼に、勅使河原と名取に一緒にメシを食わないかと誘われたが、断った。俺はひとり、屋上で、婆さんが握ってくれた握り飯を食っていた。

何か、むしゃくしゃすんな・・・・こんな時は、体を動かすのが一番だ。

流石に制服では問題があると思ったので、屋上で体操服に着替え、体育館に向かう。

中に入ると、先客が居た。チャラけた感じの男が、女2人の前で、これ見よがしにドリブルやシュートをしている。一応バスケ部員のようだが、全然大したこと無い腕だ。それでも、女達は喜んでいる。こんなド田舎の無名校じゃ、こんなもんか?

俺が入って行くと、こちらに気付いて、その男は声を掛けて来る。

「・・・何や?宮水、そんな恰好して・・・まさか?バスケやるいうんか?」

「はあ?・・・俺が、バスケしちゃおかしいのか?」

「お・・・俺????」

「別に、お前の邪魔はしねえから、勝手に女と遊んでろよ。」

「な・・・何や、その言い方・・・俺に、何ぞ文句でもあるんか?」

「はあ?ねえよ、そんなもん。だいたい、誰だよお前?」

「松本やろ!喧嘩売っとんのか、お前?」

「売ってんのはそっちだろ!」

話が噛み合わず、口論の末、1on1をやる事になった。気は進まねえが・・・・

「後悔すんじゃねえぞ!」

「どっちがや!バスケ部の実力、思い知らせてやるで!」

「がんばれ~松本!」

「七光りなんて、こてんぱんにしたれや~!」

女どもは、このチャラ男に声援を送っている。しかし、“七光り”ってのは何だ?

「じゃあ、行くぜ!」

俺のボールでスタート。余裕かましてハンデのつもりだろうが、甘い。

俺は速攻で、チャラ男の横を抜く。案の定、チャラ男は、全く俺の動きに付いて来れない。一気にゴール下に掛けより、シュートを決める。

ほう?意外と反応いいじゃねえか、この体。運動神経は、悪くねえみてえだな。

「な・・・何や?・・・何で?」

チャラ男は、信じられないような感じで、放心している。ギャラリーの女どももだ。

「これで分かったろ・・・・じゃあ、俺はひとりでやるから、お前はお前で楽しんでろよ。」

「ま・・待て!今のはまぐれや!も・・もう1回や!」

「はあ?何度やったって同じだよ。」

「ええから、もう1回や!」

「分かったよ、気が済むまでやってやるよ。」

結局、昼休みの間中付き合わされた。当然、全て瞬殺で、松本とかいうチャラ男はあえなく撃沈。限界を通り越して、床に突っ伏している。こっちは、大して汗も掻いていない。まあ、チャラ男の慌てぶりが滑稽だったんで、気晴らしにはなったが・・・・

『おお~っ!』

いつの間にか、ギャラリーが増えていて、最後の方は歓声も上がっていた。やけに、男が多いのが気になるが・・・・

「ちょ・・・ちょっと、三葉!」

そこに、いきなり名取が入って来て、俺の手を引く。

「な・・・何だよ?」

「いいから、こっち来て!」

名取は、体育館の外まで俺を引っ張っていく。

「あ・・・あんたまさか、着けてへんの?」

「へ?・・・何をだ?」

「だ・・だから、ブラやよ!」

「あ・・・あたりめえじゃねえか。何で、俺がそんなもん着けるんだよ?」

「あちゃ~っ・・・・」

そう言って、名取は、手で顔を覆って俯いてしまう・・・・

 

 

 

「ん・・・んんっ・・・・」

な・・・ま・・また私の部屋じゃ無い!まさかまた・・・・え?どこ?ここ・・・・

私は、しばらく放心していた。また、黒子くんの部屋かと思ったら、全然違う!男の子の部屋だろうけど、かなり散らかっている。部屋のそこら中に、Hな本も転がっている。

体の感覚は、この間に近い。胸が無く、下半身には・・・・

「大ちゃん、いい加減に起きないと、遅刻するよ!」

階段の下から、女の子の声が聞こえる。

大ちゃん?・・・誰?それ?

とりあえず、制服に着替えて下に降りて行くと、ロングヘアの同い年くらいの女の子が待っていた。

「ほら、早く顔洗って、朝ごはん食べないと。」

「は・・・はい。」

「え?」

素直に返事を返したら、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をされた。な・・・何か、おかしな事言った?“はい”って、返事しただけだけど・・・・

「いつもすまないわね、さつきちゃん。」

「い・・いいえ、おばさま。」

台所から、この女の子にお礼を言う声が・・・・お母さんかな?

洗面所に行って、洗面台の鏡を覗き込む。

え?・・・こ・・・この間と、全然違う・・・・

そこには、かなり肌が黒くて、目つきの鋭い男の子の顔があった。

だ・・・誰なの?この男の子は?

 

その後、超特急で朝食を済ませて、学校に向かう。さつきちゃんが待っていたため、今の自分を確認する時間が無かった。でも、さつきちゃんが居るので、学校への道のりは問題無いだろう・・・・ただ、未だに自分の名前が分からない。

“大ちゃん”だから、“大介”とか、“大吾”とか・・・・まさか、“大左衛門”って事は無いわよね?

「ねえ?大ちゃん?」

「は・・・はい?」

呼ばれたので返事をしたが、また、怪訝な顔をされた。何で?この大ちゃん、いつもは返事をしないの?

 

学校に行くまでの間に、このような問答が何度もあり、相当不審に思われた。

そんなこんなで、ようやく学校に着いた。学校は、“桐皇学園高校”だ。この間の、黒子くんの学校とは違う。

さつきちゃんは、クラスが違うようで、私の教室の前で別れた。

その後が、また大変だった。例によって席が分からず・・・・クラスメイトに話し掛けれれても、名前も分からず話も通じない・・・・・ただ、今の私の名前は“青峰大輝”で、バスケ部の所属という事は分かった。何で、またバスケ部なの?

 

昼休み、さつきちゃんが、お昼を一緒に食べようと誘って来たので、一緒に屋上に行った。

「さあ、召し上がれ。」

と言って、渡されたお弁当を見て、私は凍りついた・・・・何なの?これは?と・・・とても、食べ物には見えない・・・・ほ・・・本当に、食べて大丈夫なの?体に、害は無いの?

「どうしたの?早く食べて。」

さつきちゃんは、満面の笑顔で勧めて来る。こんな顔をされると、とても断れない。ここは、我慢して、食べるしか無い・・・・

ひょっとしたら、見てくれは悪くても味がいいかなと思って、一口食べてみた。

「う・・・・」

思わず、吐き気を催して来た・・・・あ・・・味も、最悪・・・・こ・・・こんな物とても・・・・

そう思って、さつきちゃんの顔を見る。天使のような笑顔が、私を攻め立てる・・・・天使のような・・・・悪魔だ!

どうしてもこの笑顔に逆らえず、私は、死ぬ思いでそのお弁当をたらい上げた・・・・

 

午後の授業には、出られなかった。

私はひとりトイレに篭り、そのまま、夕暮れまで出て来れなかった。

 

放課後、体育館で ――――

「青峰はどうした?またサボリか?あの野郎!」

「あ・・・あの・・・・」

「ん?どうした、桃井?」

「だ・・大ちゃんは、わ・・・私のお弁当にあたって・・・・」

 

お腹は辛いけど・・・・部活に出なくて良くなったのは、助かった・・・・かな?

 






話の都合上、松本を勝手に糸守高校のバスケ部にしちゃいました。バスケ部内ではレギュラーですが、まあ、奇跡の世代の敵ではありません。
さつきの恐怖の弁当は、学生時代の青峰は一度も食べていないんでしょうね。実際に食べている描写は無いので、この話の三葉のようになるかどうかは分かりませんが・・・・
さて次回は、三葉はいったい誰と入れ替るのか?

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