君のバスケ   作:JALBAS

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白熱する試合のさなか、遂に彗星の破片が糸守に落下します。
入替った黒子達と糸守住民の運命は?・・・・
いよいよ、最終回です。




《 最終話 》

 

第3Qが終了しベンチに戻ろうとした時、突然、三葉が倒れる。

「み・・・三葉っち、だ・・大丈夫っスか?」

テッシーが抱えてベンチに運び、ベンチに座らせる。

「第3Qの間中、全神経を集中して、敵味方全員の動きを予測していたんだ。疲れは尋常では無いのだよ。」

「だ・・・大丈夫・・・です・・・す・・少し休めば・・・」

「いや、借り物の体で、これ以上の無理は避けた方がいい。ご苦労だったね。」

「で・・でも、四葉っち、三葉っちが抜けたら、第4Qはどうするんスか?」

 

この光景を、反対側のベンチで奇跡の世代達が見ていた。

「何だ、向こうのテツもガス欠かよ?」

「でも、2人抜けたらもうメンバー足りないっスよ。」

「流石に、今度こそ試合はここまでのようだな?糸守高校の部員が代役で入っても、俺達の相手にはならないのだよ。」

しかし、赤司は、黙って相手ベンチを見つめていた。

“どう見ても、もう限界だ。だが、何故あいつは平静を崩さない?こんな状況で、まだ何か奥の手があるとでもいうのか?”

 

「お・・俺が出る・・・」

ベンチの後ろから、そこまで横になって休んでいた松本が、おぼつかない足取りで寄って来る。

「ばかを言うな!そんな状態で、とても最後までもつとは思えないのだよ!」

「三葉にも言ったが、借り物の体に、これ以上無理をさせる訳にはいかない。」

「で・・・でも、第4Qはどうすんスか?」

「それを気にする必要は無い。そろそろ時間だ。」

『時間?』

その時、突然凄まじい轟音と共に、体育館全体が大きく揺れ出した。

「うわあああっ!」

「な・・・何だっ!」

「きゃあああっ!」

あちこちで悲鳴が上がり、窓ガラスも割れ、電気も消える。皆、立っていられなくなり、床に蹲るようにして揺れが治まるのを待つ。時間にしては数十秒程だったが、体感した者は何分にも感じられただろう。

ようやく揺れが治まったところで、消防団のひとりが体育館内に入って来る。

「町長!大変です!す・・・直ぐに来て下さい!」

としきは、四葉とアイコンタクトを交わし、直ぐに呼び掛けに応じて外に出て行く。この辺の対応は、事前にとしきと四葉の間で打ち合わせは済んでいた。

「な・・・何が起こったんスか?」

「彗星の破片が落下したんだ。」

「ああ・・・そういや、そうだったな?」

松本達は、試合の事で頭がいっぱいになっていて、その事を完全に忘れていた。

 

少し遅れて、四葉達も校庭に出る。既に3年後で見て来たとはいえ、今しがた起こったばかりの大災害を目の当たりにして、彼らは改めてその悲惨さを実感する。但し、住民全員が糸守高校に集まっていたため、誰ひとりとして亡くなった者はいなかった。

茫然と廃墟を見つめる住民達を見ながら、三葉(黒子)は安堵の息を漏らす。

三葉の横に立っている四葉のところに、赤司が寄って来る。その姿に気付き、四葉は声を掛ける。

「申し訳なかったね、こんな騒ぎにまで巻き込んでしまって。とても、今夜中には東京に帰れないだろう。」

「それは、始めから聞いていた事だから問題無いが・・・最初から、第4Qは行えない事を知った上でこの試合を組んだのかい?」

「・・・・そうだ・・・」

「やられたよ・・・だが、あのまま続けていれば、勝っていたのは僕達だ。そう考えて構わないよね?」

「構わない。但し、あくまで試合にはという事だ。それは、お前達自身が良く分かっていると思うが。」

「言っている意味が分からないな、勝負は結果が全てだ。試合の勝ち負け以外に、何があると言うんだ?」

「今は、分からなくてもいいよ。いずれ、誠凛の光と影が、お前達の前に立ちはだかり、その事を教えてくれる。」

そう言って、四葉は三葉に顔を向け、笑みを浮かべる。それを受け、三葉は優しい笑みを返す。赤司は、未だに納得のいかない顔をしているが、四葉は、もうそれ以上は語らなかった。

「町長?どうしたんですか?」

役場の職員達が騒ぎ出す。宮水としきが、突然意識を失い倒れたのだ。

「もう時間のようだ。お前達の協力には感謝する。」

最後に、赤司に向かってそう言って、四葉も意識を失い、倒れる。三葉、松本、サヤちん、テッシーも同様だ。糸守の住民達は、訳が分からず騒ぐばかりだった・・・・

 

 

 

急に、周りの景色が無くなり、真っ白い何も無い空間になる。そして、僕達の体は、元の自分達の体に戻っている。でも、体が軽く、実体感が無い。

「こ・・・これは?こ・・・ここは?」

「もしかして、意識だけの空間か?」

赤司くんが言う。気が付くと、目の前に人影が・・・・それは・・・・

「み・・・三葉さん?」

「く・・・黒子くん?」

僕達6人と向き合って、入れ替っていた三葉さん達6人が現れる。

「き・・・君達は?」

「しばらくの間、あなた達の体をお借りしていました。」

三葉さんのお父さんの問いに、赤司くんが答える。

「く・・・黒子くん、い・・・糸守は?町のみんなは?」

「大丈夫です、三葉さん。彗星の破片の落下時には、皆、糸守高校に居ました。皆さん無事です。」

「ほんと?よ・・・良かった・・・ありがとう・・・・」

三葉さんは、目に涙を溜めている。

「な・・・何とお礼を言ったら良いか・・・・」

三葉さんのお父さんが、僕達に感謝の意を表す。

「いえ、礼には及びません。俺達も、本来なら味わう事のできない、貴重な体験ができました。」

「最高の闘いが、味わえたっスからね!」

「俺は、2度とごめんなのだよ。」

「めんどくさかったけど~楽しかったかも~」

「皆を助けるためとはいえ、かなり常軌を逸した行動を取ってしまいました。皆さんの、糸守での印象も大きく変えてしまったと思います。申し訳ありません。」

「そんな事・・・私達のみならず、住民皆を救ってくれた事に比べたら些細な事だ。あとの事は、私達で何とかする。」

「宜しくお願いします。」

「四葉ちゃん、元気でね!勅使河原っちも、名取っちも!」

「え?お兄ちゃん誰?」

黄瀬くんの言葉に、四葉さんは戸惑う。

「そ・・・その呼び方は?」

「あ・・・あの時の三葉は、あなた?」

勅使河原くんと名取さんは、以前黄瀬くんが入れ替わった三葉さんを連想する。

「チャラ男、元気でな!俺が言うのもおかしいが、もう少し真面目に練習しろよ!」

「え?チャラ男って?・・・誰や?あんた?」

松本君は、訳が分からず戸惑うばかりだ。

「黒子くん・・・青峰くん、緑間くん、黄瀬くん、紫原くん、赤司くん・・・み・・皆、本当にありがとう!・・・ま・・また、会えるよね?」

「はい、3年後になっちゃうと思いますけど・・・・」

「うん・・・うん!」

相変わらず三葉さんは泣いているが、その顔は、喜びに満ちている。

段々、皆の体が透けるようになってくる・・・・そして、意識も遠のいていく・・・・

 

 

 

気が付くと、僕達は、御神体の山の頂上の縁に立っていた。

「あ・・・あれ?」

「も・・・戻ってるっス。」

僕達が元に戻ったのに気付き、桃井さんが聞いて来る。

「み・・・皆?・・・お・・お帰りなさい!う・・うまく行ったの?三葉ちゃんは?」

「大丈夫です、桃井さん。三葉さんも、糸守の皆さんも無事です。」

「本当?良かった~っ!」

「ご苦労だったね、桃井。」

桃井さんは、嬉さで少し涙ぐんでいる。

「え~でも~、町はぐしゃぐしゃなままだけど~」

3年前の糸守に飛ぶ前と、変わらぬ景色を見て紫原くんが言う。

「彗星の破片の落下自体は止められていないからな、町は廃墟のままなのだよ。」

「住民はとっくに避難して、どっか他に住んでんだろうよ。」

緑間くん、青峰くんがそれに答える。

「でも、いい所なのに糸守、勿体無いっスねえ。」

と、黄瀬くん。

「何、心配はいらない。人が残っていれば、町はいくらでも再建できる。いずれ、昔のような糸守が蘇る可能性はあるさ。」

「はい!」

赤司くんの言葉に、僕は頷く。こうして、僕達は糸守を後にした。

 

 

 

 

 

黒子達の糸守救出劇から、少し時間は遡る。

“VORPAL SWORDS”と“Jabberwock”の決戦の最終局面、シルバーのラフプレイで負傷した紫原に代わって、黒子が登場する場面。その黒子に、熱い声援を送る女性が居た。

「黒子くん、がんばれ~っ!」

火神と黒子は、声援を送る女性の方を向く。

「知り合いか?黒子?」

「いえ、知らない人ですが・・・・どこかで、見た事があるような?」

それは、1年前から東京の大学に通っていて、本当の意味での再会はもう少し先になるが、久しぶりに“奇跡の世代”がチームを組んで闘うと聞いて、居ても立っても居られずに駆け付けてしまった“宮水三葉”であった。

「黒子くん、みんな~っ!がんばって~っ!不良外人なんかに、負けるな~っ!」

 






ここまで読んで下さって、ありがとうございました。
今迄のクロスは、全部最後の入れ替わり無しで話が終わってたんで、今回は“君の名は。”原作と同じように、一度糸守が壊滅してからの“やり直し”パターンで書いてみました。
奇跡の世代同士の闘いを書きたかったので、無理やり6人同時に入れ替わるようなムチャクチャな設定にしてしまいました。“何で、サヤちんやテッシーと入れ替われるんだ?”とか、“四葉やとしきの体で、奇跡の世代の技が使える訳が無い!”とか思われるかもしれませんが、その辺は二次創作なんでご容赦願います。

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