君のバスケ   作:JALBAS

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三葉と糸守を救う為、口噛み酒を飲んだ黒子達・・・・
赤司は四葉と入れ替わりますが、三葉と入れ替わるのは誰か?
まあ、そこは主人公なので、当然黒子になるんですが、たった2人で果たして糸守を救えるのか?
ところがそこに、思わぬ援軍が・・・・




《 第十話 》

 

「・・・・んっ?」

目が覚めて、慌てて飛び起きて、部屋を見渡す・・・・三葉さんの部屋だ!

自分の体を見る・・・・女物のパジャマで、胸も有る・・・まだ生きている時間で、入れ替われたんだ!

「・・・・黒子か?」

気が付くと、右の襖が開いていて、四葉さんが立っている。

「あ・・・赤司くん、ですか?」

「そうだ。」

僕は、ある衝動を抑えようと、必死にお腹を抑える。

「く・・・くく・・・・」

申し訳無いけど、それでも、抑えきれない・・・・

「笑うなよ・・・・自分でも、滑稽だと思っている。」

 

着替えて、一緒に居間に降りる。テレビが付いていて、ニュースが流れている。

『いよいよ、今夜、ティアマト彗星が地球に最接近します・・・・』

「墜落の当日に来たようだな・・・・だが、まだ時間はある。」

「はい。」

そこに、お婆さんが入って来る。お婆さんは、僕達を見るや否や、こう言った。

「あんた達・・・三葉と、四葉やないね。」

「え?分かるんですか?」

「どうやら、入れ替わりは、宮水家に代々引き継がれている力のようだな・・・」

 

その後、お婆さんに僕達の事を話し、今夜彗星の破片が糸守に墜ちる事を説明したけど、お婆さんは“そんな事を言っても、誰も信じ無い”と言うだけだった。

僕と四葉(赤司くん)は、とりあえず学校に向かっていた。

「どうやって、皆を避難させますか?」

「お婆さんの言うように、普通に話しても信じてはもらえないだろう。何か、偽の災害でも起こして避難させるか・・・・」

その時、後ろから声が聞こえて来る。

「黒子っち~!赤司っち~!」

振り向くと、名取さんがこちらに向かって走って来る。でも、この呼び方は・・・・

「ふう・・・や・・やっと追い付いた。」

前屈みになって息を整えている名取さんに、四葉が尋ねる。

「お前?・・・黄瀬か?」

「な・・・何で、黄瀬くんが、名取さんに?」

「知らないっスよ、目が覚めたら、この娘になってたんス!」

「ほう?これは、もしかすると・・・・」

「でも、よく三葉さんと入れ替わってるのが、僕だって分かりましたね?」

「そんなの、歩き方見りゃ分かるっスよ!あと、ちょっと認識し辛かったっスから。」

すると、更に後ろから、勅使河原くんが歩いて来る。何故か、袋ごとの“まいう棒”を抱え、ひとつは食べながら・・・・

「おはよ~~~」

「紫原か?」

「まさか、みんな誰かに入れ替わってるんですか?」

「ええっ?じゃあ、青峰っちと、緑間っちは?」

そんな話をしていると、今度は、前からこちらに向かって来る人影が・・・・あれは、確か松本くん?

「よう、三葉に入ってんのは、テツか?」

「あ・・青峰っちスか?」

「ったく・・・何で俺が、このチャラ男なんだよ?」

「やはり、全員、この糸守に来ているようだな?」

「で・・・でも、緑間っちは?」

「その内現れるだろう。皆、三葉の所に集まっていると、思うだろうからね。」

 

その後、僕達は町営駐車場の前に差し掛かる。駐車場では、また、三葉さんのお父さんが、選挙演説をしようとしていた。ところが、僕達が通り掛かると、それを止めて僕達に歩み寄って来る。それを見て、四葉が声を掛ける。

「・・・緑間か?」

「何で・・・俺だけおっさんなのだよ?」

『ぷっ!』

松本くん(青峰くん)と、名取さん(黄瀬くん)は思わず吹き出してしまう。僕は、流石にこれは笑えなかった。

「そうか、これは好都合・・・・いや、そうか!そういう事か?」

何だか知らないが、四葉は、ひとりで納得している。

「皆、学校に行くのは止めだ!緑間、町長室を貸し切ってくれ!」

四葉の指示で、僕達は、糸守町役場に向かった。

 

 

 

「んっ・・んんっ・・・」

な・・・何か、背中が痛い・・・石の上にでも寝ているような・・・周りも暗くて・・・・

少しずつ目を開いていくと・・・あれ?誰かが私の顔を、覗き込んで・・・・

「さ・・・さつきちゃん?」

「・・・やっぱり、テツくんと入れ替わったのね・・・ちょっと、妬けちゃうな。」

「え?」

気付くと、黒子くんの体だった。私、また入れ替わったの?え?でも、ここって・・・・

そこは、御神体の中だった。

「きゃあああっ!何なん、これ?」

突然の悲鳴に、驚いてそちらを向くと、そこには赤司くんの姿が。え?でも、今の喋り方って・・・・

「うわっ!何やこれ?」

「ええっ!どうなってんの?」

「な・・・何だ?これは?」

「何なんや?これ・・・・」

更に、後ろからも悲鳴が・・・・振り向くと、青峰くん、黄瀬くん、緑間くん、紫原くんが・・・・でも、皆、喋り方が・・・・

「ええっ?ど・・・どうして、大ちゃん達まで?」

さつきちゃんまで驚いてる・・・・どうなってんの?

 

 

 

僕達は、町長室を貸し切って、避難計画について話し合っていた。

「で、どうする気なんだよ!赤司!」

「3年後で見て来た通り、糸守高校は無事だった。だから、破片の落下時に、住民全員が糸守高校に居るようにさせればいい。」

「どうやって、避難させるんスか?」

「避難させるのでは無く、集めればいい。例えばだが、今夜、糸守高校で“レディーガガ”がコンサートを開くと聞いたら、住民達はどうする?」

「それは、見に行くでしょうね。」

「そうだ、別にファンで無くても、その名前を知っていれば、興味本意で人は集まる。滅多に有名人の来ない、こんな田舎町なら尚更だ。」

「だけどよ、必ず全員来るとは限らねえぞ。全く、興味無い奴だっているだろ。」

「だから、それを町の行事に組み込む。幸い、今夜はお祭りだそうだ。半ば強制的に、全住民を糸守高校に集める。」

「できんのかよ、そんな事が?」

「できる!町長の権限を使えばな!」

『あ?』

皆、一斉に、町長に入れ替わっている緑間くんの方を向く。

「緑間が、町長と入れ替わったのも偶然では無いだろう。俺達6人が三葉と入れ替わり始めた時から、仕組まれた運命だったのさ。」

「待って下さい、赤司くん。いくら何でも、僕達で“レディーガガ”を糸守に呼ぶ事はできません。」

「ああ、それは単なる例えだ。俺達が呼ぶのは、別な者達だ。もちろん、今日の内にここまで来れる人間だ。」

「いったい、誰を呼ぶ気なんスか?」

「帝光中学、バスケットボール部・・・・奇跡の世代だ!」

『な・・・何~っ?』

「糸守高校で、帝光中学とバスケの親善試合をするんだ!」

「ばか言ってんじゃねえぞ、こんな弱小高のバスケ部が、いくら中学時代とはいえ俺達の相手になる訳ねえだろ!」

「相手をするのは、糸守高校バスケ部では無い!」

「ま・・・まさか?」

「そうだ、俺達が闘うんだ!3年前の自分達と!」

「す・・・すげえ・・・奇跡の世代VS奇跡の世代っスか?」

「待て、赤司。お前は、帝光中学が親善試合に応じる前提で話をしているが、こんな田舎の無名校との親善試合を、帝光が受けるとは到底思えないのだよ。」

「いや、必ず受けるね。」

「何故だ?」

「あの当時の、俺達を思い出してみろ。練習試合も、公式戦も、満足のいく相手が居たか?どの試合も、不完全燃焼の連続で、事務的にこなしているだけでは無かったか?」

「そ・・・それは、そうだが・・・・」

「お前はどうだ?青峰?お前が一番、強敵に飢えていたんじゃないのか?」

「まあ、そうだな・・・“俺に勝てるのは、俺だけだ”なんて、言ってたな。」

「そのお前が、お前の相手をしてやるんだ。受けない筈が無い!」

「じゃあ、僕達の正体を教えるんですか?」

「全員に話したところで、信じはしないだろう。だが、俺ならば、“赤司征十郎”なら信じる。」

「ふっ、そうか・・・そう言われると、何か燃えて来たぜ!」

「腕がなるっスね!」

「めんどくさいけど、面白そうかも~」

「分かった、人事を尽くすのだよ。」

「しかし、3年前の俺達なんだろ、スキルもまだ未熟な頃だ、逆に俺達の相手になんのか?」

「侮るなよ、スキルが上でも、こっちは慣れない他人の体だ。身体能力も、圧倒的に低い。下手をすれば、一蹴されるのはこっちの方だ!」

「そんな事言ってるが、目が自身満々じゃねえのか?」

「まあ、やるからには、負けるつもりは毛頭無い。ただ、この試合のキーマンは、俺達じゃない。」

「はあ?」

「黒子、お前だ!」

「え?」

四葉が言う事の意味を、この時は、僕はまだ理解できなかった。

「俺と緑間は、ここに残って色々な手続きを進める。お前達は、糸守高校に行って、親善試合の準備を進めてくれ。」

「でも、学校が許可してくれるでしょうか?」

「糸守町長の要請だと言えば、大丈夫だろう。後で、緑間に電話させる。」

「バスケ部の方はどうすんだ?俺はいいとして、部外者や女やおっさんが選手として出るのを、すんなり認めるとは思えねえ。」

「それは、お前と黒子で説得してくれ。特に、三葉は糸守ではスーパープレーヤーだ。その三葉が頼めば、何とかなるだろう。」

「そんな、うまく行くかね?」

「それで無理なら、多少のアピールはやってもいい。」

「ほんとっスか?」

「ああ、今の体での、ウォーミングアップもしておいた方がいいだろうからな。」

「あ~あ、めんどくさいのに~」

「あ、それから・・・」

「まだあんのかよ?」

「以後は、人前では本名を呼ばないように。周りが混乱する。俺は“四葉”、黒子は“三葉”、青峰は“松本”、黄瀬は“サヤちん”、紫原は“テッシー”と呼ぶんだ。」

『え~っ?』

「赤司、俺は?」

「“お父さん”に決まってるだろ?」

『ぷっ!』

また、松本くんと名取さん、勅使河原くんも一緒に噴き出した。申し訳ないけど、僕も・・・・

 

三葉達が出て行った後、町長室で・・・・

「赤司、ちょっと聞いていいか?」

「何?お父さん?」

「2人の時はやめろ!」

「悪かった、冗談だ。」

「お前はさっき、“赤司征十郎なら必ず信じる”と言ったが、そこまで言い切れる根拠は何だ?常識的に考えて、未来の自分が他人に入れ替わってる等、普通信じないのだよ。」

「ふふ、もうひとりの俺を覚えているか?」

「ああ。」

「この時間の俺を支配しているのは、もうひとりの俺だ。自分が負ける事など、絶対に有り得ないと驕り高ぶっていた頃のな。そんな俺でも、一目おいていた者が居た。本当は優劣を付けたいが、闘いたくともそれが叶わない相手・・・・」

「それが、今のお前だと言うのか?」

「そうだ。だから、そこを突けば必ず食い付いて来る。信じ難い、突拍子も無い話でもな。」

 

 

 

私達は、さつきちゃんに言われて、山の頂上の縁に上がった。

「え?」

「な・・・なんやの?これ?」

「ば・・・ばかな?」

皆、その光景に驚嘆の声を上げる。そこに、私達が知っている糸守は無かった。瓢箪型に姿を変えた糸守湖と、その周りに広がる、瓦礫の山があるだけだった。

「さっき言ったように、3年前に彗星の破片が墜ちて、糸守はこうなってしまったの。」

「わ・・・私達は、死んだの?じゃあ、な・・・何で、今ここに?」

「あなた達の、口噛み酒を飲んで・・・・テツくん達が入れ替わったの。皆は今、破片が墜ちる前の糸守に行っている・・・・三葉ちゃん達を、助けるために。」

「わ・・・私達のために?・・・・く・・黒子くん達が?」

「し・・・しかし、どうやって助けるんだ?こんな事、実際に見なければ、誰も信じないだろう?」

「それは、私にも分かりません。でも、テツくん達は、絶対に糸守を見捨てない!必ず助けます!」

そうだ、今は、黒子くん達を信じるしかない・・・・お願い!がんばって、黒子くん!

 






何と、6人同時に、彗星の破片落下当日の糸守に来てしまいました。
奇跡の世代同士の夢の対決は、果たして実現できるのか?

ちなみに、赤司が“周りが混乱するから、以後は本名で呼ぶな”と言いましたが、本当は“読者が混乱するから”です。あしからず・・・・

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