赤司は四葉と入れ替わりますが、三葉と入れ替わるのは誰か?
まあ、そこは主人公なので、当然黒子になるんですが、たった2人で果たして糸守を救えるのか?
ところがそこに、思わぬ援軍が・・・・
「・・・・んっ?」
目が覚めて、慌てて飛び起きて、部屋を見渡す・・・・三葉さんの部屋だ!
自分の体を見る・・・・女物のパジャマで、胸も有る・・・まだ生きている時間で、入れ替われたんだ!
「・・・・黒子か?」
気が付くと、右の襖が開いていて、四葉さんが立っている。
「あ・・・赤司くん、ですか?」
「そうだ。」
僕は、ある衝動を抑えようと、必死にお腹を抑える。
「く・・・くく・・・・」
申し訳無いけど、それでも、抑えきれない・・・・
「笑うなよ・・・・自分でも、滑稽だと思っている。」
着替えて、一緒に居間に降りる。テレビが付いていて、ニュースが流れている。
『いよいよ、今夜、ティアマト彗星が地球に最接近します・・・・』
「墜落の当日に来たようだな・・・・だが、まだ時間はある。」
「はい。」
そこに、お婆さんが入って来る。お婆さんは、僕達を見るや否や、こう言った。
「あんた達・・・三葉と、四葉やないね。」
「え?分かるんですか?」
「どうやら、入れ替わりは、宮水家に代々引き継がれている力のようだな・・・」
その後、お婆さんに僕達の事を話し、今夜彗星の破片が糸守に墜ちる事を説明したけど、お婆さんは“そんな事を言っても、誰も信じ無い”と言うだけだった。
僕と四葉(赤司くん)は、とりあえず学校に向かっていた。
「どうやって、皆を避難させますか?」
「お婆さんの言うように、普通に話しても信じてはもらえないだろう。何か、偽の災害でも起こして避難させるか・・・・」
その時、後ろから声が聞こえて来る。
「黒子っち~!赤司っち~!」
振り向くと、名取さんがこちらに向かって走って来る。でも、この呼び方は・・・・
「ふう・・・や・・やっと追い付いた。」
前屈みになって息を整えている名取さんに、四葉が尋ねる。
「お前?・・・黄瀬か?」
「な・・・何で、黄瀬くんが、名取さんに?」
「知らないっスよ、目が覚めたら、この娘になってたんス!」
「ほう?これは、もしかすると・・・・」
「でも、よく三葉さんと入れ替わってるのが、僕だって分かりましたね?」
「そんなの、歩き方見りゃ分かるっスよ!あと、ちょっと認識し辛かったっスから。」
すると、更に後ろから、勅使河原くんが歩いて来る。何故か、袋ごとの“まいう棒”を抱え、ひとつは食べながら・・・・
「おはよ~~~」
「紫原か?」
「まさか、みんな誰かに入れ替わってるんですか?」
「ええっ?じゃあ、青峰っちと、緑間っちは?」
そんな話をしていると、今度は、前からこちらに向かって来る人影が・・・・あれは、確か松本くん?
「よう、三葉に入ってんのは、テツか?」
「あ・・青峰っちスか?」
「ったく・・・何で俺が、このチャラ男なんだよ?」
「やはり、全員、この糸守に来ているようだな?」
「で・・・でも、緑間っちは?」
「その内現れるだろう。皆、三葉の所に集まっていると、思うだろうからね。」
その後、僕達は町営駐車場の前に差し掛かる。駐車場では、また、三葉さんのお父さんが、選挙演説をしようとしていた。ところが、僕達が通り掛かると、それを止めて僕達に歩み寄って来る。それを見て、四葉が声を掛ける。
「・・・緑間か?」
「何で・・・俺だけおっさんなのだよ?」
『ぷっ!』
松本くん(青峰くん)と、名取さん(黄瀬くん)は思わず吹き出してしまう。僕は、流石にこれは笑えなかった。
「そうか、これは好都合・・・・いや、そうか!そういう事か?」
何だか知らないが、四葉は、ひとりで納得している。
「皆、学校に行くのは止めだ!緑間、町長室を貸し切ってくれ!」
四葉の指示で、僕達は、糸守町役場に向かった。
「んっ・・んんっ・・・」
な・・・何か、背中が痛い・・・石の上にでも寝ているような・・・周りも暗くて・・・・
少しずつ目を開いていくと・・・あれ?誰かが私の顔を、覗き込んで・・・・
「さ・・・さつきちゃん?」
「・・・やっぱり、テツくんと入れ替わったのね・・・ちょっと、妬けちゃうな。」
「え?」
気付くと、黒子くんの体だった。私、また入れ替わったの?え?でも、ここって・・・・
そこは、御神体の中だった。
「きゃあああっ!何なん、これ?」
突然の悲鳴に、驚いてそちらを向くと、そこには赤司くんの姿が。え?でも、今の喋り方って・・・・
「うわっ!何やこれ?」
「ええっ!どうなってんの?」
「な・・・何だ?これは?」
「何なんや?これ・・・・」
更に、後ろからも悲鳴が・・・・振り向くと、青峰くん、黄瀬くん、緑間くん、紫原くんが・・・・でも、皆、喋り方が・・・・
「ええっ?ど・・・どうして、大ちゃん達まで?」
さつきちゃんまで驚いてる・・・・どうなってんの?
僕達は、町長室を貸し切って、避難計画について話し合っていた。
「で、どうする気なんだよ!赤司!」
「3年後で見て来た通り、糸守高校は無事だった。だから、破片の落下時に、住民全員が糸守高校に居るようにさせればいい。」
「どうやって、避難させるんスか?」
「避難させるのでは無く、集めればいい。例えばだが、今夜、糸守高校で“レディーガガ”がコンサートを開くと聞いたら、住民達はどうする?」
「それは、見に行くでしょうね。」
「そうだ、別にファンで無くても、その名前を知っていれば、興味本意で人は集まる。滅多に有名人の来ない、こんな田舎町なら尚更だ。」
「だけどよ、必ず全員来るとは限らねえぞ。全く、興味無い奴だっているだろ。」
「だから、それを町の行事に組み込む。幸い、今夜はお祭りだそうだ。半ば強制的に、全住民を糸守高校に集める。」
「できんのかよ、そんな事が?」
「できる!町長の権限を使えばな!」
『あ?』
皆、一斉に、町長に入れ替わっている緑間くんの方を向く。
「緑間が、町長と入れ替わったのも偶然では無いだろう。俺達6人が三葉と入れ替わり始めた時から、仕組まれた運命だったのさ。」
「待って下さい、赤司くん。いくら何でも、僕達で“レディーガガ”を糸守に呼ぶ事はできません。」
「ああ、それは単なる例えだ。俺達が呼ぶのは、別な者達だ。もちろん、今日の内にここまで来れる人間だ。」
「いったい、誰を呼ぶ気なんスか?」
「帝光中学、バスケットボール部・・・・奇跡の世代だ!」
『な・・・何~っ?』
「糸守高校で、帝光中学とバスケの親善試合をするんだ!」
「ばか言ってんじゃねえぞ、こんな弱小高のバスケ部が、いくら中学時代とはいえ俺達の相手になる訳ねえだろ!」
「相手をするのは、糸守高校バスケ部では無い!」
「ま・・・まさか?」
「そうだ、俺達が闘うんだ!3年前の自分達と!」
「す・・・すげえ・・・奇跡の世代VS奇跡の世代っスか?」
「待て、赤司。お前は、帝光中学が親善試合に応じる前提で話をしているが、こんな田舎の無名校との親善試合を、帝光が受けるとは到底思えないのだよ。」
「いや、必ず受けるね。」
「何故だ?」
「あの当時の、俺達を思い出してみろ。練習試合も、公式戦も、満足のいく相手が居たか?どの試合も、不完全燃焼の連続で、事務的にこなしているだけでは無かったか?」
「そ・・・それは、そうだが・・・・」
「お前はどうだ?青峰?お前が一番、強敵に飢えていたんじゃないのか?」
「まあ、そうだな・・・“俺に勝てるのは、俺だけだ”なんて、言ってたな。」
「そのお前が、お前の相手をしてやるんだ。受けない筈が無い!」
「じゃあ、僕達の正体を教えるんですか?」
「全員に話したところで、信じはしないだろう。だが、俺ならば、“赤司征十郎”なら信じる。」
「ふっ、そうか・・・そう言われると、何か燃えて来たぜ!」
「腕がなるっスね!」
「めんどくさいけど、面白そうかも~」
「分かった、人事を尽くすのだよ。」
「しかし、3年前の俺達なんだろ、スキルもまだ未熟な頃だ、逆に俺達の相手になんのか?」
「侮るなよ、スキルが上でも、こっちは慣れない他人の体だ。身体能力も、圧倒的に低い。下手をすれば、一蹴されるのはこっちの方だ!」
「そんな事言ってるが、目が自身満々じゃねえのか?」
「まあ、やるからには、負けるつもりは毛頭無い。ただ、この試合のキーマンは、俺達じゃない。」
「はあ?」
「黒子、お前だ!」
「え?」
四葉が言う事の意味を、この時は、僕はまだ理解できなかった。
「俺と緑間は、ここに残って色々な手続きを進める。お前達は、糸守高校に行って、親善試合の準備を進めてくれ。」
「でも、学校が許可してくれるでしょうか?」
「糸守町長の要請だと言えば、大丈夫だろう。後で、緑間に電話させる。」
「バスケ部の方はどうすんだ?俺はいいとして、部外者や女やおっさんが選手として出るのを、すんなり認めるとは思えねえ。」
「それは、お前と黒子で説得してくれ。特に、三葉は糸守ではスーパープレーヤーだ。その三葉が頼めば、何とかなるだろう。」
「そんな、うまく行くかね?」
「それで無理なら、多少のアピールはやってもいい。」
「ほんとっスか?」
「ああ、今の体での、ウォーミングアップもしておいた方がいいだろうからな。」
「あ~あ、めんどくさいのに~」
「あ、それから・・・」
「まだあんのかよ?」
「以後は、人前では本名を呼ばないように。周りが混乱する。俺は“四葉”、黒子は“三葉”、青峰は“松本”、黄瀬は“サヤちん”、紫原は“テッシー”と呼ぶんだ。」
『え~っ?』
「赤司、俺は?」
「“お父さん”に決まってるだろ?」
『ぷっ!』
また、松本くんと名取さん、勅使河原くんも一緒に噴き出した。申し訳ないけど、僕も・・・・
三葉達が出て行った後、町長室で・・・・
「赤司、ちょっと聞いていいか?」
「何?お父さん?」
「2人の時はやめろ!」
「悪かった、冗談だ。」
「お前はさっき、“赤司征十郎なら必ず信じる”と言ったが、そこまで言い切れる根拠は何だ?常識的に考えて、未来の自分が他人に入れ替わってる等、普通信じないのだよ。」
「ふふ、もうひとりの俺を覚えているか?」
「ああ。」
「この時間の俺を支配しているのは、もうひとりの俺だ。自分が負ける事など、絶対に有り得ないと驕り高ぶっていた頃のな。そんな俺でも、一目おいていた者が居た。本当は優劣を付けたいが、闘いたくともそれが叶わない相手・・・・」
「それが、今のお前だと言うのか?」
「そうだ。だから、そこを突けば必ず食い付いて来る。信じ難い、突拍子も無い話でもな。」
私達は、さつきちゃんに言われて、山の頂上の縁に上がった。
「え?」
「な・・・なんやの?これ?」
「ば・・・ばかな?」
皆、その光景に驚嘆の声を上げる。そこに、私達が知っている糸守は無かった。瓢箪型に姿を変えた糸守湖と、その周りに広がる、瓦礫の山があるだけだった。
「さっき言ったように、3年前に彗星の破片が墜ちて、糸守はこうなってしまったの。」
「わ・・・私達は、死んだの?じゃあ、な・・・何で、今ここに?」
「あなた達の、口噛み酒を飲んで・・・・テツくん達が入れ替わったの。皆は今、破片が墜ちる前の糸守に行っている・・・・三葉ちゃん達を、助けるために。」
「わ・・・私達のために?・・・・く・・黒子くん達が?」
「し・・・しかし、どうやって助けるんだ?こんな事、実際に見なければ、誰も信じないだろう?」
「それは、私にも分かりません。でも、テツくん達は、絶対に糸守を見捨てない!必ず助けます!」
そうだ、今は、黒子くん達を信じるしかない・・・・お願い!がんばって、黒子くん!
何と、6人同時に、彗星の破片落下当日の糸守に来てしまいました。
奇跡の世代同士の夢の対決は、果たして実現できるのか?
ちなみに、赤司が“周りが混乱するから、以後は本名で呼ぶな”と言いましたが、本当は“読者が混乱するから”です。あしからず・・・・