君のバスケ   作:JALBAS

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朝起きると、三葉は見ず知らずの男の子と体が入れ替わっています。その男の子は自分と同い年ですが、時間軸がずれています。本来は、その相手は瀧くんなのですが、このお話でのお相手は・・・・“黒子のバスケ”の、黒子テツヤです・・・・




《 第一話 》

 

「あれ?・・・・」

朝、目が覚めて、部屋を見渡す・・・・・僕の部屋じゃ無い。何で、こんなところで寝ているんだろう?

「お姉ちゃん、いつまで寝てるん?もう起き・・・・」

突然襖が開き、小学生くらいの女の子が顔を出す。

「あれ?・・・居ないの?」

「あ・・・あの?」

「え?・・・うわあっ!」

声を掛けると、その子は驚く。初対面の人は、みんなこうだ。

「い・・・いつから、そこに居たん?」

「さっきから居ました。」

「ほ・・ほんまに?・・・と・・・とにかく、ご・・ごはんやから!」

そう言って、女の子は下に降りて行った。

僕は、少し遅れて、彼女の言った言葉に違和感を持つ。

あれ?・・・あの子、“お姉ちゃん”って言ってなかったっけ?

そこで初めて、体の異変に気付く・・・・胸のあたりが、何か重いような・・・・そっと下を見ると・・・・胸に見慣れない盛り上がりと、谷間が・・・・

それに、僕が来ているのは女物のパジャマだ。こんな物を着て寝た覚えは無いけど・・・・

よく部屋を見渡すと、目の前に大きな姿見がある。僕は、そこまで歩み寄って、自分の姿をじっくりと見る。

「え?・・・・」

そこに映っていたのは、同年代くらいの女の子の姿だった。

こ・・・これが、僕の顔?ど・・・どうなってるの?

考えても何も分からなかったので、とりあえず壁に掛かっていた制服に着替えて、下に降りた。

先程の女の子が、朝食を食べている。その向かいに、お婆さんが座っている。家族はこの2人だけなのかな?お父さんや、お母さんは居ないのかな?

僕も食卓に着いて、ごはんをよそう。すると・・・・

「お姉ちゃん、遅いなあ。」

さっきの子が、そう言ったので、

「来ましたけど。」

「うわっ!い・・・いつの間に?」

また、驚かれてしまった。

食事をしていると、テレビのニユースが耳に入る。

『1200年に一度という彗星の来訪が、いよいよひと月後に迫っています・・・・』

彗星?・・・一月後?・・・そんな話、あったかな?聞いた事が無いような・・・・

 

朝食を終え、学校に行く事になったが、今の自分が誰なのかも分からないで行く訳にはいかないので、さっきの子は先に行かせて、僕は今の自分の部屋に戻った。

学生証を見つけて、今の自分が“宮水三葉”という女の子である事は分かった。学校は、糸守高校。窓の外を見ると、湖を挟んだ対岸の丘の上に学校がある。あそこがそうらしい。

この他、“勅使河原克彦”通称“テッシー”、“名取早耶香”通称“サヤちん”という友達が居ることは分かった。

 

家を出て、1人で通学路を歩く。周りにも、同じ高校の生徒が何人も歩いている。

しばらくすると、自転車に2人乗りした男女が、通り過ぎて行く。

「あれ?今日は三葉、おらんね。」

「先に行ったか、寝坊しとるんやろ。」

会話が聞こえて来た。

あれ?“三葉”って言ってなかったかな?それって、僕の事じゃ無いのかな?

 

学校に着いて、教室に入るが席が分からない。

よく見ると、さっき自転車で通り過ぎて行った男女が居た。近づいてみるが、やはり僕には気付かない。

「三葉、遅いなあ。」

「やっぱ、寝坊しとるんやろ。」

「あの・・・すいません。」

「え?・・・うわっ!」

「み・・・三葉!い・・・いつの間に?」

「さっきから居ましたけど。」

「ええっ?そやった?」

「あの・・・僕の席、どこでしょうか?」

「はあ?」

「ぼ・・・ぼく?」

あ・・・そうか、今は女の子だったんだ。

「あの、私の席はどこでしょうか?」

『はあ?』

今度はステレオで、怪訝な顔をされた。

 

昼休み、校庭の隅で勅使河原くん、名取さんと昼食を取る。今の僕(三葉)を含めたこの3人は、いつもそうしているらしい。

「ねえ、あんたほんまに三葉?」

「はい、多分そうです。」

「た・・・多分って・・・」

「すいません。自分でもよく分からないです。」

「な・・何か、言葉使いも変やよ。」

「や・・・やっぱ、狐憑きか?」

「あと・・・今日の三葉、何か、存在感薄くない?」

「はい、いつも言われます。」

『言ってないって!』

また、ステレオで怪訝な顔をされた。

 

 

 

「ん・・・んんっ・・・・」

な・・・どこ?ここ・・・・

私は、見たこともない、部屋のベッドで目が覚める。もしかして・・・・これも夢?

体を起こして、部屋を見渡す・・・・姿見や、化粧台は無い。置かれている家具や、部屋の装飾を見ても・・・・何か、女の子の部屋っぽく無い・・・・

体にも、違和感を感じる。喉が妙に重い、視線を下に落としてみると・・・・胸が・・・無い?・・・逆に下半身には・・・・何かある?ええ~~っ?

 

壁に掛けてあった制服に着替えて、私は下に降りる。まず洗面所を探し、洗面台の鏡を覗き込む。

え?・・・こ・・・これが、私?

そこには、ちょっと影の薄そうな、大人しそうな男の子の顔があった。

わ・・・私、男の子になってるの?

 

顔を洗って、リビングに行く。テーブルの上に朝食が用意されているが、誰も居ないようだ・・・・と、思っていたら・・・・

「おはよう、早く食べないと遅刻するわよ。」

「きゃあっ!」

いきなり声を掛けられて、私はびっくりして声を上げてしまう。

「どうしたの?」

気が付くと、横にお母さんと思われる女の人が居た・・・・え?この人、さっきから居た?全然、気が付かなかったんですけど・・・・

 

朝食後、一旦部屋に戻った。学校に行くといっても、今の自分の事を何にも知らないで行く訳にはいかない。部屋の中とスマホを調べて、以下の事が分かった。

名前は“黒子テツヤ”。東京都の誠凛高校に通う2年生。部活はバスケ部。主な友達は、バスケ部のメンバー。その他にメル友で、“荻原シゲヒロ”という人が居る。

 

家を出て、学校に向かう。

「うわあ・・・東京やあ・・・・」

夢に見た東京・・・・いや、これが夢なのかな?私は、しばらく見とれていた・・・・更に迷ったため、学校には大分遅刻した。

 

その後は、かなり大変だった。授業中に入るのはバツが悪いので、休み時間を狙って教室に入ったが席が分からず・・・・クラスメイトに話し掛けられても、名前も分からず話も通じない・・・・その上、

“訛ってないか?”

“女言葉になってない?”

“何で認識できるんだ?”

等と言われた。最後のは、どういう意味なのか皆目分からなかった・・・・

 

昼休みは、教室には居辛くて屋上に来ていた。

「はあ~っ・・・・」

と、溜息をつく。

何なんだろう?この夢・・・・夢だよねえ?でも、何で男の子に・・・・

その時、後ろから声を掛けられた。

「あれ?黒子か?」

振り向いて、思わず声を上げそうになった。

2m近い長身の男子が、真後ろに立っていた。テッシーよりずっと大きい。左手はポケットに突っ込み、右手に持ったパンを食べている。

「何か、今日ははっきり見えるな。」

は?な・・・何を言ってるの?この人・・・・同じクラスじゃ無いよね?この背・・・バスケ部の人?

「ん?・・・何で、何も言わねえんだ?」

「え?・・・いや・・・その・・・・」

な・・・何を言えばいいの?な・・・名前も分かんないし・・・・

「ま、いいか・・・・じゃあな、放課後部活でな。」

そう言って、去って行った・・・・そういえば、部活もあるのよね?私、バスケなんて、体育の授業でしかやった事無いんですけど・・・・

 

放課後、部活に出ようかサボろうか迷ったけど、やっぱりボロが出るだけなんでサボる事にした。校門に向かって歩いていると・・・・

「よう、黒子。」

運悪く、昼休みの長身の人に呼び止められてしまった。そのまま、部室まで連れて行かれる。

「・・・・・・」

「どうした?早く着替えろよ。」

固まっていたところに、催促をされた。仕方が無いので、ロッカーを開ける。すると、戸の裏側に写真が貼ってあった。6人の男子と、女の子が一緒に写っている写真だった。ただ、その時は、その写真は気にも留めなかった。

着替えて、体育館に向かって歩いて行くと、ユニフォームのような服を着た子犬が、足元に寄って来た。

「きゃあっ!何?この犬?可愛いっ!」

「げっ、2号!」

私は、子犬を抱き上げて顔に近づける。子犬は喜んで、私の頬を舐める。本当に可愛い!

しかし、長身の彼は、何故か後ずさりをしている・・・・何で?まさか、こんな子犬が恐いとか?

「こらっ!火神、黒子、何やってんだ、早く来い!」

「は・・・はい!」

先輩・・・と思われる人に呼ばれ、名残惜しいけど子犬を離し、体育館に向かう。

そうか、この長身の子、火神くんっていうのか・・・・

 

部活では、また散々だった。

基礎練習までは何とかなったんだけど、実戦練習の際に、チームの人は何故か、敵に向かってパスを出す。当然、ボールは敵に取られるが・・・

「何やってんだ?黒子!」

何故か、私が怒られる・・・・何で?・・・・

 

翌朝、スマホのアラームで目が覚める。

自分の部屋だ・・・・体にも、違和感は無い。起き上がって、姿見の前まで行って、じっくりと見る。

うん、いつもの私だ。やっぱり、夢だったのね。

と、思ったんだけど・・・・下に降りると、お婆ちゃんと四葉の様子がおかしい。

「・・・・今日は、普通やな・・・」

「昨日は、ヤバかったもんなあ・・・」

“今日は普通”・・・“昨日はやばかった”・・・どういう事?

 

学校に行っても、サヤちんとテッシーが・・・・

「今日は普通やね、三葉。」

「あれは、絶対狐憑きや!」

いろいろ聞いてみた感じだと、昨日の私は、まるっきり別人のようだったらしい。

自分で昨日の事を思い出そうとしても、思い出すのは黒子くんになった夢のことだけ・・・ほ・・・本当に夢だったの?

 

 

 

目が覚めると、自分の部屋だった。

着替えて、洗面所に行く。鏡で見ても、自分の顔だ。あれは、夢だったのだろうか?

 

学校に行き、特に誰にも話しかけられず、放課後、部活に行く。

「あれ?黒子君はまだ来てないの?」

「昨日は、おかしかったからな。休んでんじゃないのか?」

監督とキャプテンが、僕の目の前で会話をしている。

「あの、僕ならここに居ますけど?」

「うわっ!」

「い・・・いつの間に?」

「いえ、ずっと居ましたけど・・・・」

「き・・今日は普通ね?」

「ああ、影の薄さもな・・・・」

今日は?・・・・どういう事だろう?

 

 

 

「ん・・・んんっ・・・・」

な・・・ま・・また私の部屋じゃ無い!まさかまた・・・・え?どこ?ここ・・・・

私は、しばらく放心していた。また、黒子くんの部屋かと思ったら、全然違う!男の子の部屋だろうけど、かなり散らかっている。部屋のそこら中に、Hな本も転がっている。

体の感覚は、この間に近い。胸が無く、下半身には・・・・

「大ちゃん、いい加減に起きないと、遅刻するよ!」

階段の下から、女の子の声が聞こえる。

大ちゃん?・・・誰?それ?

とりあえず、制服に着替えて下に降りて行くと、ロングヘアの同い年くらいの女の子が待っていた。

「ほら、早く顔洗って、朝ごはん食べないと。」

「は・・・はい。」

「え?」

素直に返事を返したら、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をされた。な・・・何か、おかしな事言った?“はい”って、返事しただけなんだけど・・・・

「いつもすまないわね、さつきちゃん。」

「い・・いいえ、おばさま。」

台所から、この女の子にお礼を言う声が・・・・お母さんかな?

洗面所に行って、洗面台の鏡を覗き込む。

え?・・・こ・・・この間と、全然違う・・・・

そこには、かなり肌が黒くて、目つきの鋭い男の子の顔があった。

だ・・・誰なの?この男の子は?

 






という訳で、最初に黒子と入れ替わった三葉ですが、次は青峰と入れ替わってしまいました・・・・
さて、いったいどうなって行くのか?この話・・・・

ちなみに黒子のバスケでは、奇跡の世代の面々の家の描写が、全く出てきません(赤司を除いて)。火神やリコの家はしょっちゅう出て来るし、誠凛の他のメンバーの家や家族も、洛山との決戦前に出たってのに・・・・
そんな訳で、奇跡の世代の家の描写は、全部オリジナルです。

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