IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

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ちょいと駆け足気味なのでいつもと比べて短い?です。

では、どうぞ御ゆるりと。


IS×FA59ss:フレームアドベンド

 護り人、護り人よ。

 お前は何処にいる?何処へ向かう?

 何を守りたいのだ。答えてくれ…

 気高き衛星の護人(Noble Satellite Guard)よ…

 

 

 ここは一夏達がいる場所からほんの少し離れた場所、正確に言えば十千屋が沈んでいた場所である。

 そこには、ただ一人ポツンと取り残された者がいた。

 

「な、何だったの…いったい」

 

 彼女はIS学園の教員の一人、墜ちた十千屋の捜索を命じられていた。

 少し前に此処へ到着した時は、空には敵機と一応の味方機(束の無人機)、海の中にはコトブキカンパニーの無人機(アント)と沈んでいる筈の十千屋が居り一触即発の雰囲気であった。

 しかし、海中から現れた機械の触手‐‐それと呼ぶには無骨なアントの手足を繋げたマニュピレーターが敵も味方も全て絡め取ってゆく。

 その直後に現れたスクラップを丸めたような奇怪な物体、臨時指令室から聞こえてくる狂い笑いからは()()は要救助者であった十千屋であったらしい。

 機械の低い様な高い様な駆動音が妙に不安を誘いたった数分が何倍もの時間が経ったように思えた。

 だが、臨時指令室から生徒たちの無断行動によって銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を機能停止させたと通信が来た。ただし、その直後に謎の機械に襲われたと同時に知らされたが。

 

 連続する不測の事態にいい加減にこちら(教員側)も動くべきだと思う反面、目の前の物体をどうするかも指示されていない。

 最高責任者(千冬)にお叱りを受けるのは承知の上で、ここは見送り生徒たちを援助するべきだと物体に背を向ける。

 そうした瞬間、何かの拍動が響いたのを全身で感じた。そして、すぐさまの逆光。

 ちょうど背を向けていたので眩しくなかったが、この光量では眼が潰れていたとも思えた瞬間――光が彼女を越えて飛び去って行った。

 呆然と一筋の光を見つめる彼女、周りには光が残していった量子の粒子が雪の様に振る。

 

「もうっ、いったい…なんなのよぉぉおお!!」

 

 理解を超えた事態に彼女は憤りを大声にして表す。

 声が木霊しきった後に聞こえてくる小波(さざなみ)が妙に耳に残った。

 

 

「ドゥルガーⅠ?」

 

FA(フレームアームズ)の世界では第一部の敵勢力である月側の最新鋭機の一体」

 

 突如現れた紫紺の騎士、彼?は敵である球体の包囲網を突っ切り囲まれていた一夏達の真上を陣取った。

 予想外の乱入者に球体のAIは混乱しているのか動きはない。しかし、一夏達も同じこの騎士が

 何者なのか見当がつかず動かない。

 そして、彼が再び敵陣へと飛び込んだ時に一夏達へ機体情報が届く。

 

【十千屋専用機 フレームアドベンド】

 

 この情報に誰もが目を見張った。行方不明になっていた彼が今目の前に現れ、自分たちを守っている。

 彼ら彼女らにとって蒼天の霹靂とはこの事、信じがたい出来事に自分たちの状況も忘れ十千屋であると表示された騎士を見つめる。

 

『織斑たち!応答しろ!!』

 

「…ハッ!?千冬姉!師匠が!師匠が!?」

 

『落ち着け!いい加減、黙認している状況じゃなくなった。そちらの状況も理解している。

だからこちらの指示に従え』

 

 呆然としている彼らを引き戻したのは臨時司令部からの千冬の声であった。

 思考停止から一気に現実に引き戻され混乱する一夏を彼女は窘め指示を送る。

それにより一旦落ち着きを取り戻した。

 

()()が十千屋なのかどうかはモニターしている此方でも確認した。間違いなく…奴だ』

 

「そうなんだ…」

 

『感極まっているところ悪いがそれは後だ。束、お前が知っている敵の情報を聞かせろ』

 

『あいよ~ん』

 

 一夏達は十千屋が開けた包囲網の穴を突破しながら、何故か敵の情報の一部を持っていた束から解説を受ける。

 

『あのマン丸の事は分からないよ?でも、アレに使われてるバリアは知ってるよ~。

とーちゃんが作ったマッドサイエンティストの巣窟、通称魔窟(パンデモニウム)で研究してた物質を使ってるね。発見した人の名前をとって《コジマ粒子》って名付けたよ。

コジマ粒子発生機構を用いて“コジマ物質”に定量で安定した電気エネルギーを加えることで発生させるの。あ、コジマ物質の定義はね~』

 

『束、いま必要な情報を頼む…』

 

『束ちゃん、なる早の今北産業でお願いね♪』

 

 長い解説に成りそうだったのを千冬とリアハが抑え、束は首を傾げながら約三行に纏めてみる。

 

『昔、研究した物質でコジマ粒子っていうよ!

 高い軍事活用の可能性が見出されてるよ!バリアとか!

 それは超絶に体と環境に悪い放射線の一種だらか早く離れてね!←今ココ』

 

 「「「それを早く言えぇええええ!!!」」」

 

 三行目の一番大事な部分を聞いた直後に全員が叫ぶ。そりゃ、生体活動に深刻な悪影響を及ぼす環境汚染原と言われれば誰でもそうなるだろう。

 つい、そのツッコミで足を止めてしまった。包囲網を抜ける寸前だったというのに行動を止めたら…

 

「あっ、ヤバァッ!?」

 

 敵の正面?が一斉に振り返り、彼らを狙って撃ちだした。

 満身創痍に近いメンバーを庇い、フォーメーションを変更する暇などなく無防備に攻撃を受けそうになった時に何かが割り込んでくる。

 それはドゥルガーⅠ-十千屋であった。それを確認できたのはホンの一瞬、全員が来る衝撃と

惨状に目を瞑って再び目を開いた時に見たのは違う光景であった。

 赤みがかった紫色の鎧武者が此方への攻撃を防いでいる。鎧武者ははバリアを張っているのか、敵からの攻撃は途中で何かにせき止められその背後に居る一夏達へまでは攻撃が届かない。

 その光景で箒が一番目を見張ったのは鎧武者の大袖(おおそで)。胴の左右に垂下し、肩から上腕部を防御する楯状の部品だ。

 その形はよく目にした事がある。今は紅椿に吸収されてしまったが十千屋から貸し出された打鉄のパッケージ:月甲(げっこう)禍津(まがつ)そのものだったから。

 そして、鎧武者自体もよく知っている。何故か十千屋からプラモデルをプレゼントされ何故か

一生懸命作ってしまったFA、その名は…

 

「NSG-Z0/D マガツキ…」

 

 その名をFAの世界観に詳しい簪がまた呟く。そう、月甲禍津のイメージ元であるFAだ。

 機動力を高め積極的に攻撃を加える役割に特化しているドゥルガーⅠとは逆に、敏捷性と防御力を高めた機体で、敵の攻撃を受け止め、粘り、時間を稼ぐことに特化しているのがマガツキである。

 それを証明するかのように敵の一斉砲撃をバリア-Tクリスタル(C)シールド(S)で完全に防いでいた。

 砲撃が一瞬やんだ瞬間にマガツキは飛び出し、一番近い敵を巨大な刀-戦術迫撃刀『テンカイ』で切り捨て、さらに別の敵へと飛び出した瞬間に姿が変わる。

 全身がISの粒子変換時特有の光を放ったと思ったら、その姿はドゥルガーⅠへと変化した。

 

 その様変わりに一同は顎が外れるような思いをした。それもそのはずだ、アレが十千屋だとすると機体の正体はF()A()()()I()S()のはず。それが全く違う姿へと変わってしまうのはISの常識ではあり得ない。

 

「え、は…?何なのよ一体!なんでISが別の姿へと変わってるのよ!」

 

「粒子の発生の仕方からすると高速切替(ラピッド・スイッチ)の様に見えたが」

 

「無理ムリむりっ!元ネタのFAが基礎フレーム流用の武装組み換えだったとしても、

 全身が一斉に変えられる高速切り替えなんて僕は聞いたことないよ!?」

 

「シャルロット、理解できない事はわかるけど…目の前でやられたわよ」

 

 こうしている間にも敵はその数を減らしていった。

 ドゥルガーⅠとマガツキには遠距離武器はないが無駄のない動きと、攻撃を寄せ付けないTCSで一方的に墜としてゆく。

 その中で誰かが「敵のバリアっぽいのはどうなった?」と呟くと、束から説明が入った。

 敵が使っているバリアは『プライマルアーマー』とい呼ばれていると答える。

 機体周辺に散布したコジマ粒子を安定的に還流させることで、慣性抑止フィールドとも呼べる

力場を形成、自機に向かってくる各種攻撃の速度や威力を減衰させて受けるダメージを軽減・

無効化させる防御機構だとの事だ。

 特徴や弱点なのど説明できる事は幾らでもあるが、なぜ十千屋が敵のプライマルアーマーを突破し攻撃できるかどうかの説明はこうであった。

 TCSでPA(プライマルアーマー)に干渉している為だと。

 ドゥルガーⅠの突撃槍《戦術駆逐槍「ヘイルラング」》はTCSオシレータ(TCSの発生装置)を

搭載しているためPAへ干渉、その結果貫通させている。

 マガツキの武装にはTCSオシレーターは付いていないが、機体そのもののTCSをPAにぶつけて

相殺したところを切り裂いているらしい。

 バリア同士の干渉で無効化するなどISの防御機構では難しい。似たような方法で無効化しているだろう方法は一夏の白式―つまり単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)零落白夜(れいらくびゃくや)であるが、エネルギー消費が激しいという弱点がある。

 同じようにバリア同士の干渉で無効化というのは同じエネルギーでプラスマイナスゼロによる差し引き、つまりエネルギーが大きければ大きいほど消費する事となる。

 だが、新たな十千屋の専用機《フレームアドベンド》はSE(シールドエネルギー)の消費がほとんど見られない。

その理由はカンパニー側は気づいていた。

 彼の機体からユビキタス(U)エネルギー(E)・システム、FAなどに使われている一種の半永久エネルギーシステムの反応がしているからである。

 

「すげぇ…エネルギーチートかもしれないけど、あんなに居た丸いのがあっという間に減ってる」

 

「まぁ、ボクらと仕様が違うからねぇ。でもね、にんじん?あれがパパの本気じゃないから」

 

「「「は?」」」

 

 機体解説をFAに詳しい簪やカンパニーの面子から受けていると、信じられない事をチェーロが言い放つ。

 十千屋を詳しく知らない学園側は間抜けな声をだして彼女の方に振り向いた。

 

「父さんのFA時代の専用機…主に使っていた武装の組み合わせは、陸戦型の強襲用パックだった。

 つまり、あんな突撃を繰り返す攻撃方法じゃないの」

 

「そ、そう言えばVater()が教習してくれていた時はそのような機体だったな」

 

 本来と違う戦闘スタイルであそこまで戦える十千屋に戦慄を覚える学園側一同であったが、

それを他所にこの戦いの幕が下りようとしていた。

 

 球体が十千屋の周りを不規則に飛び、彼を取り巻いた。

彼が一機墜とす隙を狙って連結し蛇の絞め殺しの様に圧殺を狙う。

 だが、逆に絞め殺す前の一瞬の緩みを彼は逃さない。またドゥルガーⅠからマガツキに変化し、戦術迫撃刀『テンカイ』二刀流回転切りで切り刻み脱出。

 多数の傷を受け、動作不良を起こした敵は連結解除による回避が間に合わない。

そのため、再びドゥルガーⅠに変わった彼によって先頭からまるで紐を通すかのように貫かれていった。

 

 敵は多数の爆発やショートを起こしながら海へ沈んでゆく。

静かになった海上で十千屋は構えたままであったが、少し経つとその態勢を解いた。

 今度こそ、本当に終わったのである。

 

「師匠!」「義兄(にい)さん!」「「十千屋さん!」」

「父さん!」「パパ!」「Vater!」

 

 全てが終わった十千屋の元へ各自の彼の呼び方を叫びながら近づいてゆく。

 近くに来た彼ら彼女らを見渡すと、彼は見渡し頷くと…ガクンと力が抜け、ISが解除し落ちかける。

 それを近くにいた面子が支えた。どうやら彼は気絶しているらしい。

 無理もないだろう。此処へ来る前の状態を考えれば彼は重傷の筈だ。

 ISのアンダーウェアはボロボロに近いし、今回失った左腕は剥き出しのアーキテクトフレームの腕へと置換されている。

 誰もが「お疲れ、ありがとう」と思う中で…彼を支えている面子は微妙な違和感を覚えた。

 それは、彼が大柄だからといってこんなに()()()()だろうか?

 そんなよく分からない疑問であったが、戦闘が終わった解放感でそんな疑問も吹き飛んでしまう。

 

 今日一日を掛けて行われた銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)討伐戦、これにて終了。

 

 

「ハハハ!見てたよルーキー(学生さん)!今はまぁこんなところかな?

 まだカリメロ君(カラ被りひよこ)レベルだし、機体(IS)発展途上(ゴミムシ)だしね」

 

 ここはIS学園が貸し切っている旅館がある海岸線の何処か。

 そこから全てを覗いていたものが居る。

 

「でもまぁ、なかなかやるじゃない?ちょっと時間かかったけどね。

 まぁ丁度いい腕かな?ゴミ虫(量産無人機)の相手にはさ!」

 

 傍観者としてはあまりにも異質な青くずんぐりむっくりした人型の機体。それが見ていた。

 

「でもねぇ…アレはヤバいんじゃない?」

 

 機体の視線の先、望遠機能で見つめる先には支えられ回収されている十千屋の姿がある。

 

「そうだな、貴様がな」

 

「曲者だぁ、であえであえっ、で…ゴザル」

 

「アレ?」

 

 観察に夢中になり過ぎたのか、機体の首に鎌と日本刀らしき物が後ろから引っかけられる。

 得物を持つ正体はコトブキカンパニーの特殊営業課情報部(諜報=ニンジャ部隊)の一員であるカルタムス=(じん)

インディゴ=(あい)であった。

 彼女らの仕事はIS学園、ひいては十千屋達を狙う不届き者を消す事である。

 まさに、今がその時だ。

 

「さて、色々と不穏だが…貴様の口調から察するにあの丸いのは、貴様の手勢らしいな」

 

「嘘を吐いても良いでゴザルよ?その時は直接脳を取り出すだけで御座る」

 

「ギャハハッ。アレ?もしかして、ピンチってやつ~?でもね、ポイっーと!」

 

 最終通告になっていない台詞を吐かれ、機体は狂ったように笑う。そして、肩の装甲から何かが飛び出し辺りを眩ませる。

 

「くっ」

 

「ぬぅおぅ…目がぁ、目がぁ、でゴザル~」

 

「ギャハハッ!残念でしたー!またどっかで遊んでやるよ~!」

 

 目の眩みから立ち直ると遠くにはスラスターの発光、足元にはあの機体の頭部ユニットがあり、そこから捨て台詞が流れていた。

 直後にユニットが爆発し、迅と藍は後方に飛び退く事で回避する。

 

「迅の姉君…カルタムス、奴は一体。人みたいであったが、気配が無かったで御座る」

 

「あぁ、気軽に頭部を破棄するといい、人間ではないのかもな」

 

「やはりそう思うで御座るか、カルタムス」

 

「あぁ、どうやら…何やら動き出した様だな」

 

 姉妹は気配を消して、この場には何もなかった様な静寂が戻る。

 だが、何かが裏側から、闇の中から動き出しているのは…確かな様だ。

 

 そして、誰も知らぬ場所で――また…

 

 銀の福音戦―初戦で水を差した密漁船、それが何処かの軍艦に寄り添って止まっていた。

 それを見つめる小さな小さな、手の平くらいしかない影が見つめている。

 

「見たにゃぁ、見たのにゃあ…ご主人様にご報告なのにゃ」

 

 様々な陰謀が見え隠れしつつ、今日という日が過ぎてゆく。




はい、今回で銀の福音戦を――正確に言えば戦闘シーンを終えたかったので駆け足気味です。
いやぁ…新調した十千屋さんにバリア特化の無人機だけでは十分活躍しきれなかった感が。(;^ω^)
ともかく、色んなフラグをばら撒きつつエピローグや大人サイドの裏話などに移りたいと思います!
はぁ、何とか一月以内に投稿できた…。
うぅ…ようやく【銀の福音編】の終わりがみえたよ~・・・

……会社の年間休日予定の関係で連休なのに、半日以上寝過ごしてしまうし、作る気力が湧かないし、アリスギアに何となくハマっているし、(積み)が重なり続けている~~~!!(´;ω;`)ウッ…

そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。

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