IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

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ゴールデンウィークと言うことで、どんな話にするか決めていたということで、
久しぶりに一週間以内の投稿となります。

今回の注意事項は…オリジナル設定に踏み切った事と、白(たばね)さんです。


では、どうぞ御ゆるりと。


IS×FA52ss:…おい、束

 サプライズと言うものは嬉しいものだ。

 それがビックリの仕掛けであっても。

 ただし…余りにも脅かしすぎると、それはただのドッキリカメラに成ってしまう。

 

 

 今日は臨海学校二日目、この日の予定は文字通り朝から晩まで丸一日かけて

ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。

 特に専用機持ちは大量の装備を試験運用せねばならないため負担が大きい。

 

「色んなコンテナが置いてあるなぁ…アソコのって師匠の《コトブキカンパニー》のヤツか?」

 

「そうだが、良く分かったな」

 

「いや、あんな格好良いトラックみたいのって師匠の所しかないし」

 

G.T.A(ギガンティック アームズ)の一つG.T.A 05『コンバートキャリアー』

 ギガンティックアームズシリーズの武装運搬車両」

 

「へ~、…って簪は何で知ってるんだ?」

 

「コトブキカンパニーのプラモで」

 

 IS学園の関係者はIS試験専用ビーチに集まっている。ここは四方が切り立った崖に囲まれており、外観はドーム状なのでアリーナを思い起こさせた。

 そして、海側からでは入りするためには水中通路を使うしかないと映画さながらな場所である。

 その中に集合した学園関係者の他に今日試験運用するパーツや武装が運び込まれており、その中で異彩を放っていたのがコトブキカンパニーだ。

 どこかのロボットの胴体を思わせるターレットトラックが置いてあり、外見も合わさって

浮き出っている。

 それを見て一夏がカンパニーの物であると推測すると、簪がその正体を説明した。

彼女が分かった理由は、カンパニーは作り出した兵器をそのままプラモモデル化する特異性の

おかげである。

 

 G.T.A(ギガンティック アームズ)-これは合体変形をコンセプトにした

【M.S.G史上最大級のサポートユニットシリーズ】の事である。

 前後連番となる大型サポートメカが合体変形すると言う大掛かりなものだ。

ちなみに、各所パーツはユニバーサル規格で形成されているため、規格が合えばFAだろうが、FA:Gだろうが、MDだろうが、六角歯車だろうが、白式だろうが何でも付けれる。

但し、過剰積載には注意だ。

 

「へ~、じゃあアレも合体するのか?」

 

「そう、G.T.A 06『ラピッドレイダー』と言う名前のついたバイクと」

 

「正確に言えば、実物の方はまだ変形合体のプログラムが出来てないから手動で

 付けなくちゃいけないがな。それに武装させてないしバイク(ラピッドレイダー)は持ってきてないから

 どっちにしろ無理だ」

 

 十千屋と簪の説明に感嘆したのか「アレが合体するんだぁ」みたいな感じでマジマジと

コンバートキャリバーを見つめる。

 その横で、簪は十千屋に向かって口を開いた。

 

「カンパニーは商売上手。色んなパーツになるからって、合体後の04、合体元の05と06を

 各二個で買ってしまったし、通販限定のカラー&デカール付きのも買っちゃった」

 

「…安心しろ、簪。俺もだ」

 

「「(=◎=)b∑d(≧▽≦*)」」

 

 玩具側のコトブキユーザーにしか分からない共感で、簪と十千屋は互いにサムズアップを向ける。今まさに、二人の心は一つだ。

 

「まぁ、時間がないから(積み)は止まらず加速するんだがな…」

 

「それは言わないお約束。私も実家の部屋にどれだけ(積み)込んでいるか数えたくない…」

 

 ……そう、二人の心は一つである。

 

「ようやく全員集まったか。…だが、遅刻者ども。一体どうした」

 

「「「「「は、はいっ」」」」」

 

 集合時間から五分経過してやっと全生徒が集まり、千冬はその中で遅刻してきた五人へと

目を向ける。

 その五人とは、いつもの一夏サイドメンバーであった。

 

「あ、あの~…すみません。興奮して上手く寝付けず、寝過ごしてしまいました」

 

「フ~ッ、お前ら全員が臨海学校前にやるようなネタを……(察し) 代表してラウラ、

 罰としてISのコア・ネットワークについて説明してみせろ」

 

「りょ、了解致しました!」

 

 そのいつものメンバーでシャルロットが言い訳を述べると、千冬は小言を言いかけたが途中で

察して舵を別方向に切った。

 このメンバーが興奮して寝付けなかった原因を察してしまったからである。即ち、原因は昨日の女子会であり、リアハのせいであった。

 流石にコレを追求するのは野暮であったためスルーすることにしたのである。

 

 さて、急に当てられたラウラは確りと説明でき、千冬も合格のサインを出したので

胸を撫で下ろす。

 その後は解散となり、各班ごとに割り振られた運用試験を行ってゆく。

その中で千冬が箒を呼び止め、専用機持ちの班に招いた。

 

「さて、箒お前がこの班に呼ばれた理由は分かるか?」

 

「……はい、心当たりがあります。()()()がヤってしまったんですね?」

 

「そうだ…心苦しいだろうが、お前も専用機持ちとなる」

 

「「はぁ~…」」

 

「二人して悄気(しょげ)ないでもらいたいなぁ~束さんは」

 

「姉さん・・・!?」「たば・・・!?」

 

 千冬がこの班に招いた心当たりを箒に聞くと、彼女には思い出すものがあったのか肯定する。

そして、二人してそれに対して溜息をついた。

そうしていたら、急にその諸原因となる人物の声がし二人はそちらに向いて名前を呼びかけたが、誰だコイツは!?となり言葉が詰まる。

 

 その人物はISの産み親、今世紀最大の大天()『篠ノ之 束』であったが二人が知っている姿と

かけ離れていたものであった。

 彼女の傍にシルヴィア(十千屋のメイド)が控えているのは良しとしよう。以前から十千屋との関連性があったようだし。

 しかし、彼女の以前お気に入りの服装はウサミミが装着されたカチューシャをつけ、

胸元が開いたデザインのエプロンドレスと独特のファッションセンスだったはず。

それが今は青のワンピースを着て、白のレースストールを掛けている。

 表情も以前とは違い過ぎる。淀んだ眼の下には隈があって眠たげな印象を持っていたが、

今はその隈は無くなり目には生気が満ちていおり、顔つきも少しふっくらとしたのか優しいものになっていた。

 

 だが、それよりも…千冬と箒以外の全員(やはり、十千屋等は除く)が注目するのは()()だ。

だって、それは……

 

「…はははっ、何やら随分と健康そうになったじゃないか。しかし、なんだぁ?

 健康過ぎて太ったのか()()()は」

 

「もう~、ちーちゃん違うって」

 

「…おい、束」

 

「あ、先に箒ちゃんの用事済ませたいから後でね」

 

「あ、あぁ」

 

 千冬は色んな事を言いたいが、束は箒の要件の方が先だと言って皆を連れて

コンバートキャリバーの方へ向かってしまう。

 千冬も少し遅れて付いて行くが、頭によぎる当たって欲しくない推測により挙動不審であった。

 

「さて、箒ちゃん…束さんと箒ちゃん、二人の約束を果たす時が来たよ」

 

「分かっています。私の我が儘を聞き入れてくれた事に感謝します。

 けど、後で色々と聞かせて貰いますからね」

 

「アハッ、分かっているよ箒ちゃん。では、目ん玉かっぽじってよ~~くご覧あれ!!」

 

 コンバートキャリバーのコンテナが開き、中身が見えてくる。

それは、真紅の装甲をしたI()S()であった。

 赤と表現せずに《朱》もしくは《紅》と言ったほうが良いだろう。全身を朱漆のような深い紅包み、座らせている状態では見にくいが手脚を金の蒔絵のような装飾が施された‘純燗’な機体である。

 この場にいる全員がその美しさに見とれてる一方で箒と千冬は「あ、ヤりやがったなコイツ」と思い、その予感は…

 

「これぞ、()()()束の最新作にして()()()。全スペックが現行ISを上回り、展開装甲を盛り込んだ第四世代。束さんが心血注いで作ったお手製の箒ちゃん専用機…『紅椿(あかつばき)』!!!」

 

 見事に的中した。もう、千冬と箒は頭が痛くなる。

 スペックだけでも現行ISの全てを上回っている、ということは最新鋭機にして最高性能機。

しかも()()()()と言うのは今議題にされ、机上の空論とされている物だ。

 考えが追い付いていないギャラリーを尻目に意気揚々と興が乗っているのか、

束は第四世代の説明をし始める。

 

 現段階のISはこの場にある紅椿を含んで一から四世代に分けられおり、

 

 第一世代-兵器としてのISの完成を目指した機体で、現在はほぼ退役している。

 第二世代-後付武装(イコライザ)によって、戦闘での用途の多様化に主眼が置かれた世代。

現在最も多く実戦配備されている。例としてはラファールや打鉄を挙げられる。

 第三世代-操縦者のイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器の搭載を目標とした世代だが、搭載した兵器を稼働させ制御するにはかなりの集中力が必要で、未だ実験機の域を出ない。

即ち、今の専用機(最新鋭機)がここなのだ。

 それを飛ばした第四世代の特徴は、装備の換装無しでの全領域・全局面展開運用能力の獲得を

目指した世代。束が言うには展開装甲や自動支援装備が標準装備される予定である。

 

 ここまで説明されると束と一部除き唖然となる。だってそうだろう?各国が膨大な資金・時間・人材を投入しシノギと身を削って着手している第三世代のIS開発、そしてそれが元になり

出るであろう第三世代の量産機やそこから連なる第四世代への道筋…これらが()()()()()()だと

言うのだから。

 こんな馬鹿げた話はない。例えるならば…高速道路を100km/hで走っていたオレ(各国)達を

()は300km/hで楽々追い抜いていった…そんな感じさ、だろう。

 

 今までの驚きの事実にほぼ全員が止まってる中でようやく千冬が動き出し、この天衣無縫な馬鹿を戒めようとする。

 

「―――っ…はぁ、束、言った「になる予定かも?しれないIS」はず?」

 

「「「は?」」」

 

 だが、ここで束は今までの好評を台無しにするような発言をした。

それには小言を言おうとしたはずの千冬も、他の人々も疑問の声を上げる。

 その反応に満足したのか彼女は箒の手を取り、語りかけた。

 

「箒ちゃんは『力』ではなく『翼』が欲しい、って言ってたよね」

 

「あ、ああ。そうだ」

 

「この紅椿は今は第四世代。ううん、第三世代相当の機能も封印されている。

 ただ単に高スペックなだけのISなの。私ととーちゃんが考えたスタート地点なんだ」

 

「スタート地点?」

 

「ああ、箒…お前が『力』だけを望むのであれば、ただの戦闘スタイルに合わせた高性能機

 渡す事にしていた。でも、力の()()を見失わず答える事が出来た。良くやったな」

 

「うん、だから束さんは紅椿を渡すことが出来た。コレはね箒ちゃん、貴女を守り、

 一緒に成長してゆく相棒(パートナー)なの。だから紅椿を束さんが言った通りの力を発揮するか、

 ただの性能の良いISで終わらすかは箒ちゃん次第なんだよ」

 

 束の話に十千屋も加わり、今の紅椿と箒の関係性を伝える。

どうやら、十千屋が一枚噛んでいたようで彼女の精神的成長が正しい方向へ伸びていれば

紅椿を渡す手筈だったみたいだ。

 彼女らは言う、この紅椿は箒と共に成長するISなのだと。

 これらから箒は察することが出来た。

分相応なISを求める自分、己の力の限りを尽くしたISを渡したい束との妥協点である事が。

 

「…成る程、私と姉さんの約束は確かにこうすれば成立する。そして、相変わらずズルいし

 凄い人だ、姉さんと十千屋さんは。これでは受け取るざるを得ないじゃないか」

 

「箒ちゃん、受け取ってくれる?」

 

「ああ、こうもお膳立てされているのはしゃくに障るが…紅椿、私の新しい相棒。よろしく頼む」

 

 箒が紅椿を受け取る意思が確りと確認されると、束は彼女の手を解いた。

そして、彼女はコンテナの上に鎮座する紅椿に手を置いて言葉をかける。

 こうして、ここにまた専用機持ちが誕生したのであった。

 

「あの専用機って篠ノ之さんが貰えるの?身内って理由だけで?」

 

「だよねぇ、突然で驚いたけどズルくない?」

 

 怒涛の展開に押し黙っていたギャラリーの中から、ふとそんな声が聞こえてきた。

確かにそう思わなくはないだろうが、実際に口に出すのはマナー違反である。

 そして、いの一番に声に反応したのは束であった。彼女は、アゴを上げ背中側に

体全体が反り返り挑発的に見下ろしながら声の主らに言う。

 

「おやおや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それこそ、生命が誕生してからずっと。唯一平等なのは死ぬくらいじゃないかな?」

 

 所謂、シャフ度と呼ばれるような姿勢をし、千冬が以前からよく知っている澱んだ目で

束は声の主らを睨みつける。

 睨みつけられた女子らは短く息を飲み身を竦ませ悲鳴をあげたが、十千屋が割って入り

 束の曲がった姿勢を正し小突いた。

 

「あいたっ。なにするのさ、とーちゃん」

 

「脅し過ぎだ束。あと、女子生徒達。狡いとは思うのはしょうがないが、

 精神的代償でなら彼女()は既に払っているぞ」

 

 十千屋が言った内容に首を傾げる生徒であったが、暫くして理解した。

 この天災(馬鹿)によって一家離散、保護してくれるはずの政府から軟禁と尋問の日々、

保護プログラムのせいで転々とし親しい友人など作れなかった。そして、その諸原因となった奴は既に雲隠れし悠遊(ゆうゆう)としている。

 そんな説明を受けてこんな経験をするのはゴメンだと思うのと、このISがある意味で侘びも

含まれているのだと分かった。そう、今回は()()()()侘びを入れる人物が篠ノ之束だったのと

粗品がISだっただけの事だと理解しとこう、コレが生徒の出した結論である。

ちなみにちゃんと箒に謝りました。

 

 何だかんだで紅椿と箒の初期設定が始まると、今度は展開装甲についての質問があった。

それに対し気を良くした束は専門用語のオンパレードで語り始めるが、見かねたのか十千屋が

概要を説明してくれる。

 展開装甲とは装甲とアクティブ・エネルギー・ブラスターの複合装置であり、

装甲を並び替えたり形を変えたりして攻・防・速と様々な状況に応じて対応できる第四世代の

アプローチを叶えるシステムだという事だ。

 

「で、『雪片弐型(ゆきひらにがた)』にも組み込まれているよ、展開装甲。束さんが作った試作品だけど」

 

「え?本当(マジ)ですか、束さん。一体どうして?」

 

「何かね?白式って後付装備出来ない代わりに第一形態から単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)を使えるって

 機体らしかったんだけど、失敗して放置されてたの。だから、束さんが興味本位にちょちょいとソレをね?」

 

「束、機密事項をバラすな。この馬鹿が」

 

 白式に-正確に言えば雪片弐型に展開装甲が組み込まれていると、オマケついでに束に言われ

一夏は呆然となる。その直後に千冬が彼女にツッコミ(強)をいれた。どうやら機密事項に触れていたらしい。

 彼女自身も超人のケがあるが、同じ超人系である千冬のツッコミ涙目になってしまう。

そして、また問題発言が…

 

「いった~い。相変わらず、ちーちゃんの愛情表現は過激なんだから。

 それに機密事項なんだの言ってたら、とーちゃんの方が先にアプローチは違うけど

 展開装甲を作ってるって」

 

「やかま…おい、一体それはどういう事だ」

 

「ん~、ヘイッ!そこの宝塚ガール!エクシードバインダーの使い心地はどうかな!?」

 

「え?あ?は、はいっ!?盾にブースターに射撃にシザーハンズと色々役立ってます!?!」

 

「って、事だよ」

 

「…ちゃんと、せ・つ・め・い しろっ!」

 

 なんと束は展開装甲を作ったのは十千屋-コトブキカンパニーが先だというのだ。

それには千冬は黙っておれずに詳しい説明を求めるが、彼女はいきなりシャルロットに十千屋から貸し出されているH.W.U(ヘビィウェポンユニット)の感想を求めた。

 いきなり珍妙な呼び方で名指しされたシャルロットはしどろもどろに成りながら答え、

束はそれが答えと言わんばかりにふんぞり返る。無論、すぐに千冬からバッシングを受けることになったが。

 

 コトブキカンパニーが開発したH.W.U(ヘビィウェポンユニット)は複数のユニットによって形成されている。

これによって一つの兵装で幅広く対応できる作りだ。

 さて、ここで第四世代と展開装甲のアプローチを思い出してみよう。

…お分かり頂けただろうか?H.W.Uは展開装甲と比べてパーツと展開力に遅れをとっているが、

変形・合体で様々な局面に対応できるのだ。

 

「毛色は違うけど、これらも展開装甲と言って良いと思う性能はあるよね?」

 

「ISとFAらは目指す先が微妙に違いますが、この装備だけを見れば第3.7世代くらいには

 出来るんじゃないかというのが自分と束の結論です」

 

 ああぁ、もう…頭が痛い。これが千冬の心情である。

前から十千屋-コトブキカンパニーの技術力は想定外だと思っていたが、ここまでとは思わなかった。この分ではいずれFAがISと同等に成ってしまうのではと嫌な予感し、それは拭えなかったのであった。

 そんな彼女を尻目に箒と紅椿のフィッティングとパーソナライズが終わり、試運転へと入っていた。既に彼女は空へと飛び立っており、その周りにターゲットとなるドローンが飛んでいる。

 

「箒ちゃん聞こえる?今の紅椿じゃその(IS)本来の固定武装は使えない。

 その代わりに本当なら後付武装(イラコザ)がないんだけど、とーちゃんの方から後付けの拡張領域(パススロット)…ん~、収納領域(イベントリ)って呼ぶね。それを付けてくれて、中に束さんととーちゃんが選んだ箒ちゃん向けの武器が入ってるから、使ってみて」

 

 オープン・チャンネルから聞こえてくる説明に箒は耳を澄ませ、紅椿に武器が無いかどうかを

尋ねるような形で精神を集中する。すると紅椿は二本のブレードと一丁のライフルが備えられていると返答した。

 ブレードの方はW.U(ウェポンユニット)14-サムライソード2、叩き切る様に作られた一本と、

刃の差し替えによって野太刀の様にできる一本でセットになった日本刀モドキのブレードセットである。

 ライフルは、試作ベリルショットカノン「ナカトリ」本来はベリルショット・ライフルの

強化タイプとして作られる予定であったが、急きょ紅椿に積み込んだ試作兵装。

一応、照射は出来ない代わりに連射性能と頑強さはベリルショット・ライフルより上である。

 

 箒はサムライソード2でドローンを斬り伏せ、ナカトリで射抜いてゆく。

その様子はまるで初めて紅椿を動かしたとは思えないほど堂々としたものであった。

 

「どうかな箒ちゃん?紅椿は」

 

「あぁ、思った通りに動いてくれる良いISだ。だけど、薄皮一枚の様な違和感?らしきものを

 感じるんだが」

 

「あれ?パーソナライズのデータは最新のにした筈なんだけどな?ん~…まぁ、箒ちゃんも紅椿も初めて会って初めて動いたんだから未だ息が合わないのかな?いずれ消えると思うよ」

 

 束が調子を聞くと箒は微妙な違和感を訴えた。

それに対して彼女は疑問に思うが、どちらとも知り合ったばかりのせいだとして結論づける。

箒は答えを聞くとそんなものかと思い慣らしの続きを要求した。

 その要求に答え束はターゲットドローンを自動配布する様に設定すると、

一区切り付いたと言わんばかりに千冬が近づいてくる。

 

「はぁぁあああ、束。お前には色々と聞きたいことがあるが…

 その腹は、()()()わけじゃないんだな?」

 

「もぅ、酷いなぁちーちゃんは。違うって言ったでしょ」

 

 再度、千冬は束に彼女自身の体型について尋ねると、再び違うと答えられた。こうなると自分が知っている体型が変わるほどの生理現象は一つしかない

 だが、認めづらい事実に片唾を飲んで千冬は彼女に事実確認をする。

 

「なぁ、前の通信の時…体調を崩した様子を見せたのは、悪阻(つわり)か?」

 

「うん!いや~、驚いたよ~。束さんって普通は平気だけど、

波が来ると一気に気持ち悪くなるタイプだったなんて」

 

 認めたくない、認めたくない。自分(千冬)と同じように一生喪女だと思っていた相手が結婚し、

あまつさえ()()しているなどとは!だが、あと一つ二つ確かめなければならない事がある。

 

「おい、何ヶ月だ?そして…()()は誰だ??」

 

「ん~五ヶ月だよ?あと、相手はね~。えへへ(´∀`*)」

 

 揺ぎ無い事実、束は妊娠五ヶ月を迎えており、しかもシングルマザーでは無く相手は…

少し離れた十千屋の腕を取り、体を預け幸せそうに彼女は微笑んだ。

 

 あぁ…そうか。また貴様か…。千冬の意識レベルは一気に低下し、現世界の問題に

たびたび波紋を起こす人物-十千屋を見据え…頭の何処かでプチッと音が鳴った気がした。

 

 「イチカァアアそいつ(雪片)をよこせぇぇぇ!!!」

 

「ハ、ハィイィイイッッ!?!」

 

 いつの間にか十千屋から離れていた束に、白式の様子を見たいからといって

起動させていた一夏は、女性がしてはいけない剣幕で睨みつけた(千冬)に言われるがまま雪片を渡してしまう。

 それを奪い取るかのように持った彼女は、十千屋に斬りかかった。激昂のまま振り下ろされる

唐竹割りは、飛び避けた彼が居た砂地に突き刺さった瞬間、盛大な砂煙を上げる。

 まるで爆発が起きたようなそれに周りは一目散へと逃げ散った。

十千屋もそのまま逃げたかったが、完全に狂化(バーサーク)した千冬に目標にされておりW.Uのトンファーを装備して退却戦に入る。

 

 千冬が雪片を振るうたびにその剣圧で砂が舞い散り、十千屋が防御すると二人を中心として

衝撃波が立ち上がる。コレだけでバトル漫画の様な描写だが、忘れてはならない…二人は

I()S()()の武装で戦っている事を。普通の人間では振り回せないソレで大立ち回りしている事を。

 

「…なぁ、箒。IS用の武器を軽々と振り回して暴れる千冬姉と師匠を人間扱いしていいのかな?」

 

「すまん、その答えには答えられん」

 

「いえ、身体改造(ガチ)をすれば意外といけます」

 

 現実の光景と思えない惨状に一夏は、現状に気づいて降りてきた箒にたいして問いかけるが…

彼女も答えを持っていなかった。

 代わりにシルヴィアが答えてくれたのだが、答えにはなっていない。

 

「つーか、アイツのメイドさん。コレ出してくれたのは良いけど…どこから出したのよ、コレ?」

 

企業秘密(四次元ポケット)です」

 

 砂煙と衝撃波が舞い散るこの場から身を守るため、ISを身につけていない十千屋と一夏のいつものメンバーは、シルヴィアが出した大きなアクリル製のドームの中に居た。

 助かっているのだが、どこから出したのか鈴が聞くとシルヴィアははぐらかす。どうやらコレもコトブキカンパニーの企業秘密の様である。

 

「それにしても、今ようやく分かった。姉さん、()()()束として最後の作品(IS)という約束は、

お…お嫁に行ったから篠ノ之性で無くなる、という事だったんだな」

 

「うん、そうだよ~。既に日本の戸籍データは消滅してあるし、

ゲムマに『タバネ・トチヤ(束 十千屋)』として入籍済みだよ」

 

「はぁ…それにしても姉さんが妊娠してるとは」

 

「ビックリした?したよね?ビックリサプライズ成功だね!ねぇ、箒ちゃん…」

 

「…なんですか、姉さん」

 

 「やったね箒ちゃん!家族がふえるよ!!」

 

 「「「おい馬鹿やめろ」」」

 

 以前、箒が束と交わした約束の意味がようやく理解でき、そこからいつものメンバーとの雑談が始まる。…目の前でオサレバトルに移行し始めている二人に対しての現実逃避とも言えるが。

 

 束の連れ子的な人物がラウラの姉にあたると言う話や、自分()は一応、十千屋の第三夫人であることや、チェーロに叔母さん呼びにしていいのかと言われ狼狽える箒など、楽しく雑談していた。

ちなみに束がISコアを自分の子供みたいだといい、箒には合計で480以上(ISコア+十千屋チルドレン)の姪っ子・甥っ子?がいると言われ…箒は絶対に叔母さん呼ばわれはさせないと心に誓ったそうだ。

 

 その和やかな雰囲気は、血相を変えて走ってくる山田先生によって終わった。

 

「た、たっ、大変です!お、おおお、織斑先生っ!って、こちらも大変な事になってる!?」

 

 いきなりの山田先生の声に、千冬と十千屋は即座に戦闘を中止しそちら側に向き直った。

 いつも慌てていたりする山田先生だが、今回はわにかけて慌てており尋常でない事が起こっていると物語っている。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。

各班、ISを片付け旅館に戻れ。連絡が有るまで各自室内で待機すること。以上だ!

行動に移れ!!」

 

 山田先生から小型端末を受け取り内容を理解すると、千冬は生徒に向かって緊急退避の指示を

出す。この不測の事態に浮き足立つ生徒だが、彼女の一喝によって慌てて動き出した。

 

「専用機持ち-いつもの一夏と十千屋のメンバーは全員集合しろ!―――いくぞ!」

 

 突如の事態に理解が追いつかない一夏達は千冬の指示に従って彼女についてゆく。

十千屋は海の彼方を一瞥した後に合流する。

 この緊迫した雰囲気に誰もが不安を感じながら行動し始めるのであった。

 

 

――おまけ:次回?予告――

 

私は思い上がっていた

 お前が居れば、皆が居れば、どんな事も乗り越えられるのだと…

 だが、分かっていたはずなのに、世界は残酷であると…

 次回、

 義兄(にい)さん』

 大事なものほど、手から零れ落ち離れてゆく




はい、今回はどんな話にするか、かなり構成が固まっていたのでスンナリと書けました。
そして、次回からはようやく福音戦へと入れそうです。

…え~、ここでかなりオリジナル設定に舵を切った事をご報告します。

白い束さん&ご懐妊は、原作も終わっておらず、何がしたいか分からない束さんの手綱を握る設定だと思ってくれれば…良いと思います。ご懐妊は決して離れない離さない繋がりと言うことで
お一つお願いします。

そして、最近のISのウィキを読んだら…デュノア社関係が完全にオリジナルとなっている事を
再確認しました。もう、修正が効かないのでこのまま行きます。

原作未完了&読み込み不足で始めたこのSSですが、よろしければこのままお付き合い頂きたいと思ってます。よろしくお願いします。

そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。

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