IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

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投稿操作ミスしてしまいました。
前・後書きが抜けてしまいました。

二週間ぶりくらいですけど、新しくかけました。けど、話が進まねぇ・・・(;^ω^)

では、どうぞ御ゆるりと。


IS×FA50ss:・・・飲んだな?( ̄ー ̄)ニヤリ

 さて・・・修学旅行などの夜など、皆様方はどのように過ごした思い出がありますでしょうか?

 楽しい語らい?素のままで、ハジケた?有りの侭に表した?

 ・・・作者は、明日のために素直に寝てました。

 

 

「はぁはぁ、酷い目に会いましたわ・・・」

 

「仕方ないよ~、セッシーったら~そんな準備バッチリで~部屋を出ていこうとしたんだから~」

 

 夕食の後、就寝時間までの自由時間帯の廊下をセシリアと本音が歩きながらそう話していた。

 セシリアは浴衣の型崩れを正しながら、どこか疲れた口調でそう言い。本音は何時もののほほんとした雰囲気で受け答えする。

 

「全く・・・殿方に出会う可能性があるのならば、確り準備しておくのが()()淑女としての嗜みですわ」

 

「いや~?それでも、高級香水と~エロ下着は~やり過ぎじゃない~?(。-∀-)」

 

「エロ下着とはなんですか!まだアダルト(艶っぽい)セクシー(色っぽい)下着のレベルですわ!

 断じてエロ(バッチコイ,カモ~ン)下着ではございません!」

 

「どーどー、セッシーヽ(ω・`)」

 

 さて、なぜこの二人が一緒に廊下を歩いているかというとセシリアの方は一夏に御呼ばれして、本音は同じようにこっちは十千屋に呼ばれてだ。

 旅館本館で目的の二人(男性)が居るのは教師に与えられた部屋しかないので、揃って同じ場所だったという事である。

 しかも、彼女らは同室だった為こうして一緒に出てきたのだ。

・・・部屋を出る前にバッチリ決めたセシリアを弄りだした(花の乙女のパッション)事があったが。

 その事があり少しプリプリと怒っているセシリアだったが、もう直ぐ目的の部屋の前で・・・

妙な二人が居た。

 

「「・・・・・・」」

 

「・・・何を面妖な事をしでかしていて、鈴さん、箒さん?」

 

「以下、同文」

 

「「あ、やっほ~(・∀)人(∀・)やっほ~」」

 

 目的の部屋の前で、ドアにピタリと耳を押し当て聞き耳を立てている鈴と箒に怪訝な顔をして

セシリアが尋ねる。

 同じように廊下の向こう側から歩いてきた轟も同じような顔をし、チェーロは何時もと同じだったが。

 

「「シッ!」」

 

 だが二人は微妙な顔をする面子に気にもせずに、逆に音量注意と回りを牽制する。

その様子を見て、セシリアらは耳を澄ますと・・・

 

千冬姉(ちふゆねえ)、久しぶりだから大分キツくなってるんじゃない?』

 

『そうっだな・・・!?くっあぁ・・・以前はよくしてもらっていたが、最近はな・・・』

 

『そいじゃ、コッチを攻めるよ?』

 

『くぁあ!そ、そこ・・・はぁっ!』

 

『一夏、そこは()じ込む様にしてやった方がクるぞ?』

 

『成る程っ』

 

『『あぁああっ!!』』

 

『ユウ・・・さん、ソコ強ぃ・・・あぁ、キ・・・キちゃいまふぅっっ』

 

 ・・・・・・・・・?

 

「・・・一夏さん?おじ様?え・・・は?」

 

 聞こえてくる声のせいで、セシリアの思考は完全に止まり、ドアに張り付いていた箒と鈴は

その姿勢のまま通夜の様な雰囲気を出すという変な状態となっている。

 轟は何かを感じたのか遠い目をし、本音とチェーロはこの有様のオチを確認し合い首をかしげていた。

 

『じゃあ次は――』

 

『・・・あぁ、少し待て』

 

 部屋の中の千冬が何かに気づいたのか、一夏の手を止めさせドアを開けた。

 ドアを開けるとどうなる? 知らないのか?

 

 バンッ!!

 

 「「あべしっ!?」」

 

「何をやっている、馬鹿者ども」

 

 ドアに叩きつけられる。そう、この旅館の部屋のドアは廊下に対して()()()

つまり、ドアに張り付いていた二人は殴打を喰らい十代乙女にあるまじき世紀末的な響きを漏らしたのであった。

 

「「はっはは・・・こんばんは!そして、さよならっ織斑先生!!」」

 

 ダメージを受けた二人は脱兎の如く逃走開始――だが、知らないのか?

魔王(千冬)からは逃げられない。あっという間に首根っこを掴まれ逃走は失敗に終わった。

 掴まれた二人は「ああ、終わった。何もかも・・・」と辞世の句を読みそうな雰囲気に包まれていたが、次の千冬の予想外の言葉に目を丸くするのである。

 

「盗み聞きは感心しないな。だが、丁度いいと言えばいいか。」

 

「「はい?」」

 

「お前ら、ボーデヴィッヒとデュノアを連れて来い。そしたら、中には入れ」

 

「「わ、分かりましたっーー!!」」

 

 首根っこを解放された鈴と箒は駆け足で二人を呼びに行く。

これ幸いにと鬼教官(千冬)が見逃した?チャンスを逃がしはしないと。

 それを見送った他の面子は部屋に入っていく。

 

「おお、セシリア。遅かったじゃないか。じゃあ始めようぜ」

 

「・・・い、一夏さん?何を始めるのですか?///」

 

「?」

 

「はぁ・・・一夏。相変わらず説明が足りずに告げてるな?お前の今のイメージはこうだぞ?」

 

 ベットをポンポンと叩いて呼ぶ一夏にセシリアは言葉を詰まらせながら聞いてみる。

彼はどこか恥かしげに紅潮している彼女に不思議な顔をしているだけで何も気づいていないようだ。

 それに溜息を吐きながら十千屋は、自分を背もたれにさせ座らせていたリアハの顎を掴み

・・・何時ものロボメットを取って素顔を彼女の顔へと近づけさせる。その動作は、顎クイキスであった。

 いきなりのアダルトな雰囲気に一同の顔は真っ赤になり、当の一夏もようやく理解したのか

慌てふためき、セシリアはますます顔全体を赤らめる。

 

「あ、アワワワわ!?違うって!?マッサージだよっマッサージ!

 それをセシリアにサービスしようと思ってさ!ほら、セシリアの部屋って班部屋だから、

 それだと落ち着かないと思ってこの部屋に呼んだんだよ」

 

「そ、そうでしたの。なら、お言葉に甘えてマッサージをしてもらいますわ///」

 

「一夏、お前・・・また誤解されるような言い回しで告げたな?」

 

「の様ですね。『後で部屋に来てくれ』ってくらいにしか言わなかったのでは?織斑先生」

 

「やっぱり、こういうオチなんだね~(=_=)」「ね~(。-∀-)」

 

 一夏は自身が招いた誤解の内容を理解し、慌ててマッサージをセシリアに施そうとした事を告げ訂正をはかる。彼女も自身のピンク色な想像を振り切るかのようにいそいそとベットへ横たわった。

 この様子に千冬はまた弟がフラグ建築&ブレイクをした事を察し頭が痛くなり、

誤解された言い回しを轟が予想し、チェーロと本音はオチの評価をするというグダグダ感であった。

 

 セシリアは意外と上手い一夏のマッサージを受け、その心地よさに微睡みに落ちてゆく。

彼曰く、良いマッサージは眠くなるもの・・・だ、そうだ。

 昔から千冬に施していたと言う彼のマッサージは、その一級の腕前までに差し掛かっており彼女は心地良く受け続けている。

 が、いきなりお尻を掴まれ彼女の意識は一気に覚醒した。彼のラッキースケベ以外のあるまじき大胆さに彼女は高まる胸を押さえつけながらそちらを向くと、

 

「白だが・・・随分、年不相応な代物な下着だな、マセガキ」

 

「あ、え・・・きゃぁぁあああ!?」

 

 そこにはイタズラが成功したのか笑みを零す千冬が居り、セシリアのお尻をすくい上げるように掴んでいた。彼女の笑みは悪戯小僧の様な可愛らしいものではなく。

ニヤリと獲物を甚振(いたぶ)(ひょう)の笑みである。

 そして、問題なのは千冬がそういう風に掴んでいたため、浴衣の裾はまくれ上がりセシリアの

豊かなヒップが(あら)わになっていた。無論、そこにある下着も丸見えである。

 タイプとしてはローレグタイプの面積が少ない物で豪奢(ごうしゃ)なレースを編み込んであり、見た目の美しさと絶妙な透かし加減の『魅せる為の下着』というものだ。

 

 叫んだあと呆然とした彼女であったが、一夏の顔を赤らめて視線を()らすという様子にバッチリ見られたことを自覚すると羞恥のあまりに隠れてしまいたくなった。

 それをニヤニヤと眺める千冬に彼女は涙目に成りながら訴える。

 

「せ、先生!後生ですから、お離しになってください!」

 

「やれやれ。教師の前で淫行を期待するなよ、未成年」

 

「い、い、インコぉ・・・っ!?」

 

「は~い、織斑先生。私とユウさんはどうなんでしょうか?」

 

「お前の旦那は生徒であって生徒(未成年)でない。だが、公共良俗は守れ。堂々とするな。

 そして、また聞き耳を立てている二人&新規の三人。そろそろ入ってこい」

 

 アッサリと手放し、今度は下世話な冗談でセシリアをからかう千冬であったが・・・

リアハの堂々としたある宣言に彼女は真顔となって注意をし、扉の向こう側にいる人達に入室を促した。

 どこか、ギクゥっ!?と表すような雰囲気がし多少の沈黙のあとにドアがゆっくりと開く。

立っていたのは箒に鈴、彼女らに呼ばれたシャルロットとラウラ、そして十千屋に呼ばれていたが多少遅れてた簪であった。

 

「一夏、マッサージはそれぐらいでいいだろう。

 ほら、お前らと十千屋に呼ばれていたと思われる更識も好きなところに座れ」

 

 ちょいちょいと彼女に手招きされ五人はおずおず部屋に入る。

そして言われた通り各人好きな・・・と、言ってもベットかチェアの二択、それと一夏側なのか

十千屋側なのかの二種の二択を選択して座った。

 

「ふ~。流石に二人連続してすると汗かくよな」

 

「手を抜かないからだ。少し要領よくやればいい。あと、もう一回風呂に入ってきたらどうだ?」

 

「あ~、流石に汗臭くなっちまうか?

 あと千冬姉、手を抜いたらせっかく時間を割いてくれる相手に失礼だって」

 

「愚直だな。ま、それがお前の持ち味か」

 

「たまには褒めてくれたっていいじゃんかよ」

 

 楽しそうに会話する二人を見て入ってきた面子がやっと状況を飲み込む。部屋の中で響いていたあの艶声は・・・マッサージをしていただけという事に。

 その事に気づき、ある者は脱力したり、妙な強がりを見せたり、何か()()()()想像をして自爆していたり、変わったところで「何もしてないの?つまらない」と冷めている者も居た。

 

「あん?ペラペラペラ…あ、一夏。今の時間帯って女子が風呂を使ってるようだぞ?」

 

「え?マジで師匠?」

 

「臨海学校の旅のしおりだとそうだな」

 

「ぬぅ?ペラペラペラ…

 そうだったな。人数が人数だから男女両方の風呂を開放してるのがアダになったか」

 

 タオルと着替えを持って風呂に行こうとする一夏に何かを思い出したのか十千屋が引き留める。理由は今の時間帯は女子生徒達が風呂を使う時間帯だったと思い出したからだ。

 旅館には大浴場があるが一夏―男に対しては時間割別を設けている。

流石に大浴場でも一学年全員がいっぺんに入れる広さではない。

その為、男女両方の大浴場を開放して使っているのだ。

 そうまでして広く使っているのに一夏と十千屋、たった二人の男のために他の全員が

窮屈な目に合わすのも避けたいために時間別となっている。

 

「ん~、どうしようかな?部屋に付いてるのでもじゅうぶん広いからの使ってもいいけど、

 今からお湯を張るのもなぁ・・・」

 

「だったら一夏、俺とリアハが泊まっている離れの方はどうだ?

 小さいけど十分な広さをもつ露天風呂がある」

 

「それだったら、お願いしても良いか師匠?」

 

「ああ、それに俺もさんざん昼に入浴したが夜は夜で寝る前に入りたいからな。

 お前が嫌じゃなかったらまとめて入るか?」

 

「サンキュー師匠。あと、裸の付き合いってヤツだろ?いい「まぁ・・・」ぜ?」

 

「実際には、俺の入浴介助してもらいたんだがな・・・」

 

 広い大浴場でのんびりするつもりだった一夏は出鼻をくじかれ、どうするか迷う。

部屋にある風呂場も一人では十分すぎる広さがあるが、大浴場があるのにわざわざ湯船に

お湯が張るも億劫(おっくう)であるし、この女性だらけの空間で一人汗臭いのも気が引ける。

軽く悩んでいる彼に十千屋は自分とリアハが泊まっている離れにある露天風呂を使うことを提案し、彼は同意した。

ついでに男同士でじっくり話し合うのもいいだろうと言われ、すっかりその気になっていた一夏であったが十千屋の介助という言葉に動きが止まる。

 

「師匠、介助って?」

 

「お前、忘れたのか?俺は背中の機械を外せば、右目と右腕が不全になり、

 左足なんて無いんだぞ」

 

「あ・・・でも、昼間入ったって言ってたけど?」

 

「完全防水のは今メンテナンスした後に干したままだ。

 念の為に完全に乾燥するまで放置したいからな。

 いま風呂に入ろうとすると、今つけている機械類を外さなきゃならん」

 

「あ、あぁ・・・別にそれでも俺は構わないけど」

 

「ありがとうな、一夏」

 

 すっかり忘れている人も居るかもしれないが、十千屋は色んな部位の障害を持っている。

普段は機器でそれらを補助しているが、防水加工されていないそれらを付けては風呂になんて入れはしない。

 障害の部位を考えれば自然と介助が必要になってしまうのである。一夏は普段の十千屋の様子のせいでそれを失念していたようだ。彼は誘われた手前、断るのもはばかれるし介助もそこまで大変ではないだろうと生返事で了解する。

 

「じゃあ、リアハと皆は女子会を楽しんでいてくれ」

 

「それじゃ、くつろいでいってくれ。って、難しいかもしれないけど」

 

 そう言って男たちは出て行ったが・・・

 

「・・・・・・・・・・・(き、気まずい(;´д`))」

 

 一夏側に居た、現千冬側の面子は言われたまま座ったところで止まってしまっている。

逆に十千屋側、現リアハ側の面子はチェーロと本音は遊びだし、簪はリアハに膝枕してもらったり、轟はお茶を汲みに行ったりと完全にくつろいでいた。

 

「おいおい、葬式か通夜か?いつもの馬鹿騒ぎはどうした。見ろ、あっちを普段通りだぞ?」

 

「い、いえ、そのぉ・・・」

 

「織斑先生とこういった感じで話すのは、ええとですね・・・」

 

「は、初めてですし・・・」

 

「まったく、しょうがないな。私が飲み物を奢ってやろう。

 篠ノ之、何か嫌いなものでもあるか?」

 

「・・・ビクッ! あ・・・あっ、はい!イロモノ系でなければ特に嫌いなものは・・・・・・」

 

「織斑先生、こちら(リアハ側)はお茶を汲んだのでお構いなく」

 

 いきなり名指しされた箒はビクッと肩を(すく)ませてしまい、言葉がつっかえながらも返答した。

それを聞きながら千冬は旅館の備え付けの冷蔵庫を開け、中から清涼飲料水を取り出してゆくが

途中で轟が自分たちの分は要らないと告げられ5人分取り出したところで戻ってくる。

 

「ほれ。キリンレモンとなっちゃん、アクエリアスとジョージア、コレは午後ティーか。

 それぞれ他のがいいやつは各人で交換するか取りに行け」

 

 千冬は戻る過程で近場から配っていったが、受け取った全員はとくに不満はなかったので

そのまま受け取る。

 

「い、いただきます」

 

 受け取った全員が同じ言葉を口にし、飲み物に手をかけた。そして、全員が一口付けたところで千冬がニヤリと笑う。

 

「・・・飲んだな?( ̄ー ̄)ニヤリ」

 

「は、はい?」

 

「そ、そりゃ、飲みましたけど?」

 

「もしや・・・罠でしたの!?」

 

「あながち間違いではないが、失礼な事を言うなバカ。

 口止め料みたいな物だよ、チョッとしたな」

 

 そう言って千冬が冷蔵庫から自分用に持ってきた缶にはキリンのマークがキラリと光っている。それはキリンレモンでは無く・・・

 

「プハァッ!ふむ・・・本当なら一夏に一品作らせるところなんだが・・・居なければ仕方ないか」

 

「織斑先生?良ければ私が作りましょうか?」

 

「十千屋夫人、有り難いですが部屋には簡易キッチンなどは付いてないのでそれには及びません。

 何時もだったら、という愚痴ですので」

 

「あら、そうでしたか。あ、そう言えばユウさんがビーフジャーキーを持ち込んで・・・あった。

 はい、どうぞ」

 

「これはありがとうございます」

 

 千冬が手にとったのは、キリン()()()であった。

彼女は最初に炭酸が漏れ出す景気のいい音を立てて開け、泡が吹きこぼれないうちにそれを一気に喉を鳴らしながら飲み干したのである。

 一旦、缶ビールから口を離すと彼女からツマミの催促があり、リアハがツマミになりそうな物を渡すと上機嫌な様子でベットにかけた。

 他の面子はと言うと、全員がそれの様子に唖然としている。それもその筈、いつもなら規則と

規律に厳格で全面厳戒態勢の()()()()と目の前の人物とギャップがあり過ぎて理解が出来ないのだ。

 特にラウラは、ボケーっとした顔で何度も首をかしげている。

 

「お前ら、おかしな顔をするなよ。私だって人間だ。酒くらい飲むし気を抜く事だってするさ。

 それとも何か?私が絶対無敵のサイボーグにでも見えたか?」

 

「あ、いえ・・・その・・・」

 

「そういう訳じゃ、ないんですけど・・・」

 

「でも、あの・・・その・・・今って」

 

「はい、お仕事中なのでは・・・?」

 

(コクコク・・・)

 

「堅い事を言うな。それに口止め料なら払っただろ?」

 

 そう言ってニヤリとする千冬は飲み物を手に持った面子を流しみる。

そこでやっと女子一同は飲み物の意味に気づき「あ・・・」と声を漏らした。

 

「さて、前座はこれくらいでいいだろう。そろそろ肝心な話をするか」

 

 千冬は二本目のビールをラウラに取りに行かせ、文字通り箒たちを酒の肴にして話し始める。が・・・ここで一夏と十千屋はどうしているか見てみよう。

 

 

「・・・お約束はしとくべきか。一夏、コイツを見てどう思う?」

 

「・・・す、凄く大きいです。って、何をやらせるんだ師匠!?」

 

「いや、お約束だよ。お約束」

 

 離れの露天風呂に来た二人は掛け湯をしていざ入ろうとした気に十千屋がいきなりくそみそネタを始め、ついノってしまった一夏であったが直ぐに疑念の叫びを上げる。

 それに対して、ネタのお約束を出来て満足したのか十千屋は気にせずに杖を使いながら湯船に入っていった。

 一夏はそれに釈然としないというか、からかわれた事にチョッと不機嫌になるが風呂の心地よさに身も心も(ほぐ)れてゆき忘れてしまう。

 湯の中でリラックスする彼はつい横目で十千屋を見る。

彼の裸、正確に言えば上半身だけだったが改めて見るとその身に傷の付いていない場所など何処にもない。

 彼の年齢は未だ二十代半ばに届かない数だ。なのにコレだけの傷を負ったという事は、どれだけの修羅場をくぐり抜けてきたのだろうかと嫌でも思ってしまう。

 

「ん?どうした一夏」

 

「い、いや・・・俺もこれだけ傷つくほど戦い抜けば強くなれるかなって」

 

 一夏の視線に気付いた十千屋は彼に尋ねるが、何となく見ていた故にどう答えていいか迷ってしまう。

 その為、十千屋の一番のイメージ()()を連想させこんな言い訳をしてしまった。

 答えを聞いた十千屋は自傷気味に苦笑する。それはどこか憂いを秘めたものであった。

 

「フッ・・・止めとけ止めとけ、俺の様に修羅道を歩くんじゃない。

 強さを得る前に身も心もボロボロになるぞ?」

 

「でもさ、師匠はそれで強くなったんだろ?」

 

「結果的には・・・だ。色々と生き急いで死に急いでいたからな。

 リアハが嫁になって麗白が生まれて、轟やチェーロ、シルヴィアに鞘華・・・色んな奴と出会って家族になって、ようやく回りを見れるくらいに歩けるようになった」

 

「師匠・・・」

 

「一夏、頑張るのは良いが生き急ぐな。お前もまだ若い。

 いずれお前だけのモノ、お前が求める強さにたどり着けるさ」

 

「そう、なのかな・・・」

 

「ああ・・・。辛気臭い話はここまでにしよう。一夏、体を洗うから手伝ってくれ」

 

「あ、うんっ」

 

 強さを求め何かを求め修羅道を駆け抜けた先駆者の言葉だろうか。

一夏はそれに何かを感じて何も言えなくなってしまう。そんな彼に十千屋は優しく(さと)し、湯船から上がる。

 風呂から上がった十千屋を追うように彼も出るが、先に見える大きく傷だらけの背中も

今はどこか何時もより小さく見えてしまった。

 

「なぁ、師匠。この突起の部分って擦っても平気なのか?」

 

「あからさまにゴシゴシ擦ると駄目だけど、軽く擦れる程度なら大丈夫だ」

 

 十千屋は洗える所は自分で洗い、腕や背など片腕では十分洗えない部分は一夏に任せている。

今は背を洗ってもらっているが、背骨から飛び出す接続端子が気になってるようだ。

 彼は過剰に擦らなければ平気と言い、一夏はなるべく擦らないように洗い出しす。

 

「・・・なぁ、一夏?」

 

「なんだ?師匠」

 

「何時もの面子を含めてなんだが、お前って誰が好きなんだ?」

 

「・・・・・・はぁああ!?」

 

 ゴリィイッ「おがぁああ!?」

 

 背を洗っていた一夏は、十千屋の予想外の質問に手に力が入った状態で滑らせてしまう。

そのコースは見事、端子の列を跨ぎ強く擦ってしまった。

 彼の叫びと共に十千屋は神経に響くような痛みに襲われ苦痛を挙げる。

 

「ぬぅのぉおぉぉ・・・神経に、神経に響くぅうう・・・・・・」

 

「わ、ワリィ師匠・・・って、師匠が変な事を聞くからだろ!!」

 

「いや、大事なことだぞ。今は正真正銘、女性陣が居ないからこその話題だ」

 

「男同士で恋バナなんて、どこに需要があるんだよ・・・師匠、もしかして真面目な話か」

 

「に、なるだろうなぁ」

 

 一夏は一応謝るが原因を思い出して十千屋に噛み付く。しかし、十千屋が真面目な顔をして受け答える姿に姿勢を正した。

 十千屋の予想では今後どこかで必ず誰と付き合うかが問題になる日が来るだろう。

一夏はI()S()()()()()()、色んな意味で喉から手が出るほど欲しがる所が沢山ある。

 それ故に情だの愛などをダシにして確保しようとする奴らも出てくるだろう。

そうなると、彼の()()恋愛は一応条約で守られたIS学園生徒の間しかない。

 

「お前だって政略結婚とか嫌だろう?」

 

「そりゃ、そうだって。・・・はぁ、久々だけどコレも男性装着者の業ってヤツかぁ」

 

「だな。で?誰が好き、まではいかないか。気になっているんだ」

 

「んんぅ・・・あ~」

 

 十千屋の予想に一夏はウンザリしていると、彼は誘導尋問で選択肢の幅を狭めてゆく。

 その結果、やはりただのクラスメイトや友人よりも何時もの面子、

箒・セシリア・鈴・シャルロット・ラウラが少し気になるようであった。

 だが、それは好きか嫌いかで言えば好き、ただのクラスメイトよりも何時もの面子の方が良い位である。

 けど、十千屋にとってはそれくらいで良かった。

 

「その程度あれば、お前にとっては上出来か」

 

「俺にとっては・・・って、師匠~」

 

「そんな恨みがましい目をすんなよ。

そうだな、ついでに俺から見た彼女達の評価も教えてやるか」

 

 一夏の答えに苦笑する十千屋であったが、彼はその反応を見て不機嫌に訴える。が、そんな事はへでもないと十千屋は話を続けた。

 さて、十千屋からみた彼女らの評判は次の通りである。

 

 箒-

 一途な大和撫子と言って言いだろう。

 ただし、一途すぎて多少頑固で素直ではない面も見受けられるため、確り向き合って付き合わう必要がある。

 

 セシリア-

 誇り高き貴族のお嬢様。こちらが未熟でもそれを知って導いてくれる優しさと厳しさ美しさがある。

 しかし、彼女と付き合うと貴族社会と向き合わなくてはいけない事になるだろう。

 

 鈴-

 友達同士の様な軽いノリが一番だろう。けど、距離が近すぎてケンカする事も多いかも知れない。

 けれども一番気軽な相手かも知れない。・・・彼女のバックである国はそうはいかないが。

 

 シャルロット-

 一番そつなくフォローしてくれる安心感。丁度いい付き合い方をしてくれる気遣いの達人。

 但し、そのため自分自身で抱え込む事も多いのでソコは察してあげなければいけない。

 あと、彼女と付き合うとコチラはお金持ちの付き合い方を学ばなければならない。

 

 ラウラ-

 純粋無垢に慕うので、手綱さえ握れば自分の好きな色に染められるだろう。

 但し周りからの悪影響に注意致し。

 そして、彼女の生活基盤が軍隊なので付き合えばそれの関係者に成ってしまうだろう。

 

「・・・と、こんな感じか?」

 

「いや、こんな感じと言われても」

 

 十千屋の評価に一夏はどこかゲンナリとし、どう反応していいか分からない。

彼も良く彼女たちを見ている事は察せれたが、それでどうしろと・・・というのが本音である。

 しかし、彼の話は終わらない。

 

「この中で一番楽なのが箒かね?彼女は面倒な背後関係がないからな。

 逆に鈴本人は良いんだが・・・彼女のバックがな。他の三人は好みとしか言い様がないな。

 まぁ、それぞれ先のマナーを学ぶ必要がある。だけど、この三人は俺との繋がりがあるから

 いざという時はフォロー出来るのが強みかね?」

 

「いや、そうは言っても・・・」

 

「・・・だな。すまん、チョッと勢いが過ぎた」

 

「いや、師匠のお陰で何となくは分かってたものが少しハッキリしたけどさ。

 まだ、分かんねぇよ。それにアイツ等とどう顔を合わせればいいかも分かんねぇ」

 

 十千屋のお陰で一夏は好意を向けられてた事をほぼ確信する事が出来た。

しかし、どこか宙に足が浮いたような感覚で実感がない。恋愛というものが分からないのだ。

 戸惑い気味の彼に十千屋は向き合い、優しげな笑みで彼の頭に手を置く。

 

「そうだな。俺から見ても一夏、お前はどこか心の余裕が無いように思える」

 

「・・・余裕?」

 

「ああ、壁であり憧れである織斑先生を思って走り続けているように見えるし、

 早く一人前になりたいと何処か心で我武者羅な部分があるように思える。

 そんな奴に好きだの惚れたのだの腫れたのだろと感じる余裕があると思えるか?」

 

「・・・いや、無いと思う」

 

「だな。総すれば『自分自身の事で精一杯』って事かね」

 

「・・・・・・俺ってそんなに余裕がない様に見えるのか?」

 

 十千屋になんだかダメ出しされているように感じて一夏の表情は暗くなってゆく。

けれども、彼の優しげな笑みは変わらず頭に置かれた手は撫でる様に動かされた。

 

「いや、ただ闇雲に走っていくのは若さ故の特権だ。

 けれども、自分自身だけで何でもかんでも抱え込むんじゃないぞ?お前を助けてくれる、

 好きだって言ってくれる、一緒に居たいと思ってくれている人たちが居るのを忘れるな」

 

「・・・師匠」

 

「人ひとりで出来ることは限られるんだ。お前が強いと思っている俺や織斑先生もな。

 俺はリアハが居ないとダメだし、織斑先生は・・・お前が居ないと家事が全滅だろ?」

 

「はは・・・どこで聞いたんだよ師匠。いや、千冬姉はそうだけどさ」

 

「強さの話題もそうだが、変に(あせ)る必要はない。お前自身の早さで確り踏み込んでいけばいい。

 けど、お前を気にかけてくれる人達が居るって事は忘れるな」

 

「ああ、分かったよ師匠」

 

 一夏は十千屋が心配してくれて色々と語ってくれる事が何となく分かった。

話の流れ的にダメ出しされる部分が有ったかもしれない。けどそれは、自分の事を心配してくれるからだと分かる。

 色々と心配させてしまう自身の未熟さに苦笑してしまうが、彼の優しさは胸の内を暖かくしてくれた。千冬とは違う暖かさは彼にこんな事を思う。

 

「(兄貴って・・・いや、父親ってこんな感じなのかな?

 千冬姉とは違うくすぐったさと暖かさだけど、うん・・・嫌じゃない)」

 

「どうした一夏?夏とはいえ、このままだと冷えるからな。温まりなおそう」

 

「ああ、今行くよ師匠」

 

 女だらけのIS世界に放り込まれた男同士、そこから始まった師弟と言う名の縁は確かに結ばれているらしい。一夏は十千屋を信じているし、十千屋は一夏を裏切らない。

そんな確証もない事も信じられるモノがココにはあった。

 

「あー、一夏。どうしても誰かを選べないってならウチの国に来い。

 条件は厳しいが多夫多妻OKだからな」

 

「いやちょっと究極過ぎやしませんかね、ソレ」

 

「ん?あぁ・・・変なことに気づいたぞ」

 

「何だよ、変なことって」

 

「何かしらでお前がラウラと縁を結んだらな。一夏、お前が()()()になるって」

 

「・・・あ、あぁ~、そうだった。ラウラってガチで師匠の娘になる予定だった」

 

「どこかあり得る未来で、お前に義父(とう)さんって呼ばれる世界が有るのかねぇ・・・呼んでみるか?」

 

「いや、師匠・・・それは超絶恥ずいって」

 

 まぁ、彼の言った通りにあり得るかも知れない未来では、師弟ではなく父子としての縁が結ばれるかもしれない・・・・・・




はい、今回は臨海学校一日目の夜でした。
原作ではチョッとした女子会ぽかったので、男子会(2名のみ)をしてみました・・・
が、なんだかオリ主の父親力が上がってゆくような・・・(;^ω^)
いや、歳上の頼りになる男って感じで書きたいなぁ・・・と思っていますが、父親じみてくるのはどうしてだ?

そして、話は進まない・・・
一話を一万文字超えたら整理しようとしてるのですが、そのせいか話数が嵩む気がします。
本当にこれで銀の福音戦まで行けるのだろうか?

次回は女子会の続きと二日目の最初の部分まで書きたいですね。

そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。

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