IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

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まだ、『学年別トーナメント編』のエピローグが終わりません。
今回は複線回収と設置です。

では、どうぞ御ゆるりと。



IS×FA40ss:以前の名前は

 切れぬ関係()とは一体何だろうか?

 それは何処に繋がっているのだろうか?

 だから、何よりも強いのかもしれない。

 だから、繋がりたいのかもしれない。

 

 朝のあらゆる意味で一夏のピンチだった騒動はとっくに終わり、放課後となった。

 何時もなら特訓に学習に(半ば強制的に)励むのであるが、トーナメントからまだ二・三日しか経ってはいないので軽く調整して流す事となる。

 しかし、一番の理由はこの後に十千屋がラウラに対して話しがあるのと、教官役である彼は

当たり前ではあるが・・・新しい(機械の)足との接合部がまだ痛む為であった。

 さて、ラウラと十千屋との話であるが、やはりと言うか何と言うかいつものメンバー付きである。

 全員が今日の軽い訓練をやり終わり、身だしなみを整えて食堂に向かう。学園生活ももうすぐ三ヶ月になるので何時ものパターンと言うものが出来始めていた。

 

「さて、私に関する事と言うが・・・はて?なんであろう」

 

「ラウラ、もしかして黒いISになった件か?」

 

「それはないと思う」

 

「ぬ?どうしてだ、簪」

 

「それは、わたくしから答えますわ。おじ様は『どうせ知る事に成るから、聞きたい奴は一緒に

 聞け』とおっしゃいました。その口振りからすると、あの様な秘匿にせねばいけない事件を

 関係者以外に聞かすなどありえないからですわ。ですわよね、簪さん?」

 

「ん・・・」

 

 ラウラの疑問に一夏が推測するが、簪がソレを否定する。その疑問とさらなる答えを続けたのは箒とセシリアであった。

 彼女の答えの推測に簪は首を縦に振り短く答える。そうなると、この前の事件以外で何があるのか一同に考えるが、鈴が苦い顔して言う。

 

「でもさ~、アイツの事だからサラッとトンデモない事を言いそうで恐いわ」

 

「そうだよね。僕も父さんと十千屋さんが知り合いだって事をサラッと言われて・・・

 えっ?となったよ」

 

 何時ものメンバーは各々、十千屋が話す内容を予測するが皆目検討がつかない。彼の交友関係はハッキリ言って一夏達にとって謎である。

 何処にどう言うコネがあってもおかしくはないが、どっちにしろ全員の胸中は一つ・・・どうせ、驚かされる事に成るだろうと。

 そんな事を話しているうちに食堂に着く。辺りを見渡すと、どの様な時も目立つロボヘッドが

見えた。一夏の判りやすいよな~、などと独り言にメンバーは同意しながらも彼のいるテーブルへと移動する。

 

「それでVater、いったい私に何の話が有ると言うのだ?」

 

「まぁ、俺というよりはウチ(ブキヤ)のメンバーでラウラに関係する奴が居て、ソイツからなんだが・・・」

 

 「・・・!」「・・・ッ!?」「ィィ・・・!」

 

「おっ、噂をすれば・・・ウェ(;゚Д゚)!」

 

 十千屋が説明するにどうやら、コトブキカンパニー側のメンバーにラウラの関係者が居り、

その人から話しがあるらしい。

 彼がその人物を呼びつけていたようで、聞こえてくる喧騒から近づいてきたと分かりその方向を向いたが・・・思わず声が上擦ってしまった。

 一夏達もその方向を向いた瞬間、何も言えない様な真顔で固まってしまう。

 

「もうー!往生際が悪いよっ、素姉(もとねえ)ぇえ!!」

 

「素子姉さん、ようやく覚悟が決まったんじゃなかったのかしら!?」

 

「いぃいぃい・・・いざ、会うとなったららぁぁあらああ!?!」

 

 声の主はチェーロに轟に素子のカンパニーガールズ達だ。だが、その格好がイケナイ。

 何故ならば、愚図る素子を強制的に連れてきたために・・・二人がそれぞれ彼女の足を引っ張って引き摺って来たからである。

 素子は制服を着崩すと言うか、だらしなく着るので引き摺られてきた結果いろんな箇所が捲れ上がっていた。

 足は持たれているのでその脚線美と、

 ソレをたどった先にある黒のレースで半分透けているエロティックだが品の良い小さな下着、

 鍛えてスっと引き締まったお腹と可愛らしいおヘソ、

 上着は完全に捲くれ上がり下着とセットのブラもズレて小さいが形のいい胸とその頂きまで丸見えである。

 だが、ポーズがイケナイ・・・足は踏ん張っているのかM字大開脚(がに股)、両腕は肩を張って手のひらでブレーキを掛けようとしている。顔は何時も通り無表情に近いがどうしようもない変な必死さを

まじまじと感じた。

 つまり・・・だ。なんつぅ、色気の無いパンモロとサービスシーンなんじゃぁ・・・という事である。

 流石に一夏達も呆然としていたが、なんとか再起動し一夏の傍に居た鈴と箒がビンタするかの様に彼の目線を防ぐ。

 

 パァッン

 

「見るな、一夏」

 

「そうよ、だいぶアレだけど、見ちゃダメよ」

 

「いつつ・・・ああ、分かったって。でも、アレに欲情するとかレベル高すぎて出来ねぇよ」

 

 その後、抵抗したが集合場所まで引き摺られきった素子は、衣服の捲れを直しただけの身だしなみをして立ち上がる。どうやら、先程までの様子からすると彼女がラウラの関係者らしい。

 そして、奇行により食堂に居る他生徒達からも注目を集める中で、素子はラウラを真っ直ぐ見つめて語りだした。

 

「わ・・・私は、基木素子はラウラ・・・貴女の遺伝子上のなのだよ!!」

 

「「「ΩΩΩな、なんだってぇええ!?」」」

 

「因みに、父は父様よ」

 

「そ、そんな・・・基木先輩が私のMutter()で、Vaterが本当のVaterだったなんて・・・・」

 

 素子の核爆発発言により食堂内は騒然となる。確かに素子の言う通り白銀の髪と赤系の瞳、

それと雰囲気もどことなく似ていた。それにより発言の信憑性が増し誰もが信じそうになった。

 

「え、ラウラが師匠と素子先輩の子供!?」

 

「だが待て一夏!

 年齢を逆算しても私達が知っている十千屋さんの実の娘とかの年齢が合わない!?」

 

「胎児の時にはもう既に生殖細胞の雛形があるらしい・・・

 もし、そこから其々を取ってきて人工授精の人工子宮とかのバイオ的な何かをすれば?」

 

「「「それよ(ですわ・だよ)!!!」」」

 

 何時ものメンバーもすっかり信じきりそうに成りそうだったが、次の出来事で「あ、違うな」と考えを180度変更する。

 だって、言い放ち無表情だけどドヤ顔な感じであった素子を、十千屋がアームロックを轟が

ヘッドロックを極めて、チェーロが彼女の両頬を抓んで伸ばしていたからだ。

 

「素子ぉぉお!どうして、お前はそうなのかなぁ!!

 見ろっ、信じそうになってるし、一部当たっているじゃねぇかぁあ!」

 

「素子姉さん・・・いったい、この頭の中は何が詰まっているんでしょうね。

 胡桃みたいに割ってみる?」

 

「素姉?下らないギャグを言うのはこの口かな?かな?」

 

「みょゅぉおぉううおお~~~~・・・・・・」

 

 うん、この光景を見れば誰だってさっきのが彼女の狂言だという事が直ぐに分かり、食堂内の

ざわめきも直ぐに冷めて行くのを感じる。

 素子は「あ、ダメ。それ以上いけない」と誰かが止める寸前まで極められており、

すっかりダウンして床に倒れふしたのであった。

 

「はぁ・・・全く。自分からラウラに話すと言っときながら場を濁して。

 おい、もう俺から話すぞ?」

 

「待って、父様。今度は逃げたりしない。私から話す」

 

 ため息をつき自分の方から話そうとする十千屋を素子が止める。先程のダメージが抜けずに

プルプルと立ち上がった彼女は、張り詰めるような雰囲気に変わってラウラの前に立った。

 さっきの冗談の時とは違う本気の雰囲気に誰もが固唾を飲んで見守る。

 

「ラウラ・・・さっきの冗談の私と貴女が血縁関係にあるのは本当。

 ・・・よく生きていてくれた、よ」

 

「「「ΩΩΩな、なにぃいい!?」」」

 

 再び食堂内は騒然となる。確かに素子の言う通り~(以下、同文)。

 今度は先程の冗談と違って痛い(迫真)のツッコミもおちゃらけも無い。

 寧ろ、確りとラウラを大事に抱きしめる素子の様子からして本当の事だと分かる。

 

「しょ、証拠は・・・証拠はあるのか!?」

 

「突然の事で狼狽えるのは分かる。DNA検査をすれば分かることだけど、

 今すぐ証明するためには私と貴女にだけ分かる事がある」

 

「な、なんだ・・・それは・・・・・・」

 

 本当の事だと心が訴えているが、頭の方は突然の事に理解出来ていない。

 それ故にラウラは彼女の事を引き剥がし、証拠を求めた。

 すると、直ぐに素子はそれに応じる。が、その目は何処か哀しみを湛えていた。

 

「そう、私の・・・素子は父様から貰った名前。それ以前の名前は《遺伝子強化試験体β-666》

 ・・・非合法研究所から作られた貴女(ラウラ)試験体(プロトタイプ)と呼ばれる存在」

 

「・・・あ、わ‥私は《遺伝子強化試験体C-〇〇37》。そのコード(名前)は私よりも以前の物だ」

 

「分かってくれた?基礎遺伝子は同じものだから、クローンとかと同じものかも知れない。

 けど、同じ(遺伝子)を持った姉妹の様なものだと私は思う」

 

「あ、貴女が私の姉?ファ、Vater・・・本当の事なのか?」

 

「ああ、そうだ。疑うのなら後日、DNA検査してもいい。だけど、もう分かっているだろう」

 

「そう、私は貴女(ラウラ)のお姉ちゃん。実家には妹に当たる子も居る」

 

「そうなのか・・・私にはSchwester(姉妹)が居るのか」

 

「うん」

 

「わ、私は一人ではなかったのだな」

 

「そう、()が居る。父様(十千屋)母様(リアハ)も居る。血の繋がった妹も、絆で繋がった姉妹達も居る」

 

「そう・・・なのか、そうだったのか・・・・・・くぅう」

 

 事実は小説よりも奇なり、素子の正体はラウラと同じデザイン・ベビー。人工的に作られ、鉄の子宮から産み落とされた命であった。そして、素子とラウラは同じ遺伝子を持つ姉妹のような存在である。

 その事は初めは受け入れられなかったラウラであるが、十千屋と彼女の肯定が全てを物語っている。しかも、彼らの家にはラウラよりも後に生まれた妹と呼べる存在も居るらしい。

 血の繋がった家族など一生縁が無いと分かっていたラウラにとって衝撃的なことであった。

 そして、自分には迎え入れてくれる家族がいると分かり、胸の奥から熱いものが溢れてくる。

 彼女は今度は自分から(素子)に抱きつき、溢れてくるモノを涙に変えて喜びを表わすのであった。

 

「家族か・・・まぁ、良いものだよな?」

 

「一夏・・・あんた、良いこと言ってるつもりでも、回りは問題だらけよ」

 

「「(・・・サッ)」」

 

 感動的なシーンだが、一夏サイドのメンバー達は色々とその話題には問題があったり、

過去に問題があった事があるので何名かは目を反らした。

 その反応に苦笑する一夏であったが、コイツはまだ地雷原を突っ走るつもりである。

 

「でもさ、何だかヘビィな境遇だったんだな~って。つい思っちまうよ」

 

「朴念仁、下手な同情は逆に失礼よ。」

 

「そーだねー。まぁ、ボクらにしてみれば、そうだったんだ位なんだけど」

 

「「「え?」」」

 

 一夏の安い同情を注意する轟であったが、その後のチェーロの言葉に皆が固まる。

 何故なら、ラウラの境遇を知っても飄々としており、同じような過去を持つ身内(素子)が居たとしてもかなりドライだ。

 彼女らの様子はまるで、先週に嫌な事があったと聞いたくらいの反応しかない。

 余りにもドライ過ぎるので聞こうとしたら、彼女達から話し出してくれた。

 

「ボク、パパにスカウトされるまでストリートチルドレンで、毎日盗んだり

 小金を持ってそうな気弱なおじさんにタカったりして生き延びてたからねぇ」

 

「私は、女尊男卑の風潮のせいで母親は蒸発。父親はDV化して、それから逃げるように家出して何処かの孤児院に転がり込んだけど・・・悪い奴に目を付けられていたらしくて、施設が犯罪行為に手を染めかけた時に父さんとその親会社に助けられたわ」

 

 「何だか師匠の回りは重過ぎる!?」

 

 十千屋の娘たちから衝撃の告白で、またもや重過ぎる境遇に唖然とする一夏とその周りの生徒たち。

 どんな境遇でも受け入れてしまう十千屋の懐の深さを知る事が出来たが、やはり色々とあらゆる意味で濃いメンツだと再認識する場面となってしまった。

 

 なんやかんやあったが、これ以降はラウラは十千屋のグループとよりよく行動する事となる。

 だが、ある種の純粋培養である彼女に余計な事を吹き込む人物(素子)が増えた事は、今は誰も知らないのであった。

 

 

 

 今の時間帯は就寝時間ギリギリ前だ。それなのに寮の屋上に誰かが居る。黒の長いポニーテールをなびかせて空を見上げているのは箒だ。

 何か思い悩むことがあるのだろうか?彼女は星を見上げているというよりも、ただ呆然と遠くを見ているようだ。

 そして、意を決すると・・・携帯を取り出してとある番号を入力する。

 

 prrr....Prrrrr..P!

 

『はろーはろー、おゲンキ~?今、何してる~の~?

 何もする事ないなら、お姉ちゃんとヤらブツッ!!

 

 prrr....Prrrrr..P!

 

『箒ちゃ~ん・・・調子に乗ったのは謝るから、お話してよ~(つд⊂)

 文通を始めてくれたのは嬉しかったけど、

 ☎で生の声聞けるのはもっと嬉しいから~・゜・(ノД`)・゜・』

 

「―――最初から真面目にやってください、姉さん」

 

 何と箒が電話を掛けた主は篠ノ之束であった。要人保護プログラムが開始されて以降、

箒の方から姉妹の関係は断絶していたが再び話そうとしているのは驚きである。

 しかし、コレにはちゃんと理由がある。束は文通と言っていた、それは入学初日に彼女が十千屋から受け取った手紙から始まっているのだ。

 手紙の差出人は無論、束である。内容は・・・失踪と保護プログラムや回りの評判など、

様々な事で彼女に謝りたいと言うのが主だ。

 勝手な言葉ばかり言って、と最初は無視していた彼女であったが二~三日に一度くる真摯に謝り続ける手紙の内容に少しづつ軟化してゆき、ようやく最近だと文面上では会話できるようになってきたのである。

 

「―――・・・姉さん」

 

『な~に~?』

 

「そちらは楽しいですか?」

 

 最初は何を言うか躊躇っていた箒が声を掛けると、電話の向こうで息を呑む音が聞こえた。

 きっと驚いてではなく、嬉しいからそうなったと思う。

 束からの返答は今まで箒が聞いたことがない純粋で嬉しそうな声であった。

 

『うんうん!楽しいよ!とーちゃんに襲撃して、プライドの()の字まで塗りつぶされて、

 とーちゃんに魔窟(パンデモニウム)と言う所に入れられて、毎日が楽しい!!』

 

「そうですか」

 

『だって、別分野だけど束さんと同レベルの人たちがイッパイ居るんだもん!

 そんな人達と何か作ったり、討論したり、自慢しあったりして、

 今までになく充実してるって言うのかな?とにかく楽しい!!

 あ、そう言えばこの前なんかねぇ~』

 

 箒は束がまるで普通の人みたいに楽しそうに語るのを聞いて、驚くのと同時に嬉しくもあった。過去の束は何時も退屈そうにしているか、狂気の笑みを浮かべているだけであったから。だから、こうして子供の様に楽しそうな彼女は何処か嬉しく感じる。

 最近の文通で何となく分かってはいたが、こうして生の声を聞くとその感情が強くなったと

思う。が、話す内容がヤバそうになっているので自分の要件を伝えて、電話切るべきだと箒は判断した。

 

「姉さん、相談したい事があるのですが」

 

『あーあー!そうだね!ゴメンね!電話もらって嬉しくなっちゃってた!!

 (^-^*)(・・*)(^-^*)(・・*)ウンウン、分かってるよ!欲しいんだよね?

 君だけの唯一(オンリーワン)代用無きもの(オルタナティブ)、箒ちゃんの専用機が!!もっちモチロン!!

 最高級品(ハイエンド)にして規格外能力(オーバースペック)、そして・・・白と並び歩むモノ―――その名は、』

 

「いや、そんな物は必要ないです」

 

 『どんがらガッシャンコ!!』

 

 箒の要件を聞く前に束は彼女がきっと望んでいるだろうと思われる事をまくし立てる。

何時もハイテンションである束がハイパーテンションに変わり、芝居がかった口調で最高に

盛り上がった所で・・・箒に否定された。

 彼女は()ける効果音を自分で言って・・・いや、実際に電話の向こうでは大転けかもしれないが

大きく話の腰を折られてしまったみたいだ。

 

 『ええぇえ!?何でェエエΣ(゚д゚;)』

 

「・・・っ!私には必要な・・・・いや、分不相応だからです」

 

『箒ちゃん?』

 

 大声で聞き返す束であったが、流石に大音量と成っていたのでスピーカーから耳を遠ざけ耳鳴りが静まってから箒はそう返答した。だが、その声は苛立ちと悲しみが入り混じった様に聞こえ束は彼女を案ずる。

 

「私はそのような大きな力を持つ資格は無い。己を律するとか言っておきながら、暴力と自己満足を振り回す私には・・・資格など無いんだ」

 

『箒ちゃん・・・』

 

「力はとは・・・そう、刀のようなものだ。触れれば切れる物だが、達人は斬りたいものだけ斬り、そうでない物は絶対に傷つけないと言う」

 

『・・・そうかもね』

 

「私は十千屋さんにそう教えてもらったような気がするんだ。

 専用機でも練習機でも私達を圧倒し、いざ事件が起きれば敵を倒し・・・私達を守ってくれる。

 真の力の使い方とはこういうものなのだと」

 

『そっか、箒ちゃんもとーちゃんに助けてもらったんだ』

 

 箒は力を、束謹製の強力な専用機を否定する理由を話した。

 今までの自分と、様々な事を教えてくれる助けてくれる恩師の様な同級生(十千屋)を見て考える事が

あったらしい。

 彼女は理由を話すたびに自身の不甲斐なさを思い出すのか、苛立ちと哀しみを覚え声が震えていた。そして、泣き出しそうになるのを堪えて本当に欲しいものを話す。

 

「だから、そのような身に余る力は要らない。けど・・・けど、もしも我儘が許されるのであれば・・・

 皆に置いていかれないだけの翼は欲しい」

 

『翼?』

 

「あぁ、並び立つための力は自身で手に入れる。だが、置いて行かれるのは嫌なんだ。

 だから、置いて往かれない為に、追いかける事が出来るように()()()()()が欲しい」

 

 箒が本当に望んでいる事は力ではない。ただ、皆と同じ場所へ行く為の翼を欲しがっていたのだ。いつものメンバーで専用機を持っていないのは自分だけ。専用機を持っている彼らと比べるとどうしても差を感じてしまう。

 そして、何よりも何かが起こった際に力に成るどころか同じ場所に立つことさえ出来ないのが

悔しかった。

 自身のISの性能なんてどうでもいい。

 けど、彼らと同じ場所まで飛んで行ける翼だけは欲しかったのだ。

 

『そうか・・・そうなんだね。それが箒ちゃんの望みなんだよね?』

 

「あぁ・・・卑怯だと思っている。狡いと罵られると思っている。

 だが、もう嫌なんだ!置いてかれるのも、追う事も出来ないのも!

 だから、姉さん。私だけの翼をくれ!!

 性能なんざ打鉄くらいでいい、いやそれ以下でも十分だ!!だからっ、どうか私に・・・」

 

 『・・・全く、とーちゃんもズルいよねぇ。こうなるの分かって条件付けてたんだから』

 

「・・・姉さん?」

 

『いやいや、何でもないよ~・・・箒ちゃん、』

 

「・・・なんですか、姉さん?」

 

 箒の慟哭を聞いた束は一人でごちる。それは箒にはよく聞こえなかった様で尋ねるが、

彼女は誤魔化し途端に優しい口調になって話し始めた。

 

『うん、君の願いは良く分かった。それでこんな時で悪いんだけどさ・・・

 こっちのお願いも聞いてくれないかな?』

 

「等価交換、いや私の方が貰い過ぎか・・・分かりました。

 私に出来る事で尚且つ怒らない様なものであれば」

 

『あはは・・・手厳しいね、箒ちゃん。

 いや、お願いってのは箒ちゃんのお願いにも通じるんだけどさ・・・』

 

「なに詰まづいているです?貴女らしくない」

 

『いや・・・うん・・・・あのね。()()()束として最後の作品(IS)を貰って欲しいんだ』

 

「な・・・何を言っているんですか、姉さん?」

 

『それはソレを渡す時、ちゃんと箒ちゃんと会う時に教えてあげる。

 だから今は聞かないでくれないかな?』

 

「分かりました。だけど、その時が来たらちゃんと聞かせてもらいますよ」

 

『えへへ ヾ(´▽`) ゴメンね? あ、もうこんな時間だね。

 お休み~、マイスゥイィートシスター箒ちゃ ブツッ

 

 束が出してきた条件?はISを受け取って欲しいと言うことであったが、()()()束として最後のISとは一体どういう事であろうか。

 それを箒は尋ねようとしたがはぐらかしてしまう。だが、ソレを渡す時に全て話すという約束を結んだ。そして、話し終わると直ぐに何時もの調子に戻った束に付き合いきれないと、箒は一方的に電話を切る。

 

「もう、箒ちゃんたら照れ屋で冗談が通じないんだからぁ~。

 ・・・・・・『紅椿(あかつばき)』どうやら箒ちゃんは君のパートナー(装者)の資格を得たみたいだよ?」

 

 束の視線の先には真紅の装甲が特徴的な作りかけのISが鎮座している。

 作りかけ故にコードに繋がれ機体の外に置いてあったISコアは彼女の声に反応したかのように、仄暗い中で優しく輝いていた。

 

 

 

 ところかわって今度は学園での十千屋の本拠地―テーサウルスアルマ。

 今しがたの時間は丁度、夜もふけてきた頃・・・となると、

 

「あぁん!あっっうっっつ!!はぁ・・・」

 

「ぐっぅ!」

 

 あーはいはい・・・今夜も元気そうでナニよりですよ。丁度、互いの確かめ合いが終わったようだ。

 十千屋の上で浅く息を吐いている女性はそのまま脱力し、全てを任せるかの様にそのままとなる。彼は仕方ないと彼女をそのままにし、()()()()の髪を梳くように触る。

 すると、リアハが近くにやって来て彼に膝枕をし、その様子を微笑ましく眺めていた。

 暫くすると、女性は何かを決めたかの様に意を決した声を出す。

 

「私、決めた・・・近いうちにあの人に挑んでみる」

 

「・・・いいのか?」

 

「無理しないでくださいね?」

 

 彼女の宣言に十千屋は真意を問い、リアハは彼女を案じる。だが、彼女の意思は変わらないみたいだ。

 

あの言葉の意味も一緒に考えてくれた。戦い方を教えてくれた。貴方達が勇気をくれた。

 なら、私がやるべき事はたった一つ・・・」

 

「そうか。なら、教えてくれ。そのたった一つを」

 

クスッ 覚悟を決めてあの人との関係をやり直すこと」

 

「それは素敵ですね。頑張ってください」

 

「ん・・・」

 

 彼女はそう微笑みながら言う。その様子に十千屋とリアハも満足したようだ。

 言い終わった彼女は私物を取るために、十千屋の上でうつ伏せになったまま腕を伸ばして辺りを探る。リアハはそれに気づくと()()()()()()を手渡した。

 

「あ、ありがと・・・じゃぁ、もう一回」

 

「あらあら、じゃあ私もお願いしちゃおうかしら」

 

「あいよ、まとめて愛で尽くしてやるからな」

 

 ・・・どうやら、ある女性に空前絶後の危機が迫っているらしい。




あ~~~、まだ、『学年別トーナメント編』のエピローグが終わらないんじゃ~(´Д`;)
次で、次で終わりにします!
次回の内容は、教員というか大人の裏事情サイドです。真面目な話になるので、合間合間でギャグに走って、シリアスとシリ()()のバランスをとりたいです。
諸曰く、ギャグを入れないと死んでしまう病なので・・・

今回で分かった通りに、FA:Gが元ネタの娘達は容姿とか合えばIS原作勢に何かしらの関係を持ってます。
今のところ、もう一人は確りと考えてありますが・・・いずれ、ISヒロインズとコトブキヒロインズがキャッキャウフフ出来るようにしたいです。
あと、IS原作勢の人間関係修復は早めにしています。ギスギスは苦手で書けないので。

さて、最後のシーンは唐突過ぎましたが・・・あの人をイジる布石になるのでどうかご勘弁を!
弄られると輝くんですもの形無し会長!!


では、今回は此処まででございます。

そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。

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