IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

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暫くの間、お待たせいたしました。
今回はほぼオリジナル展開『デュノア社襲撃編』となります。

では、どうぞ御ゆるりと。


IS×FA35ss:FA隊は発艦をお願いします

 さぁ、パーティー(闘争)の時間だ。

 クラッカー()を鳴らし、ロウソク(爆弾)に火を灯し、ケーキ()ナイフ()を刺し込もう。

 角ばった形式なんていらない。ただ、ワイワイ騒いで好きなだけ、ご馳走(敵部隊)食べれ(屠れ)ばいい。

 お上品にする必要なんてないさ。これはパーティー(殲滅戦)なんだから。

 

 

「こちらN・D(ネオ・ドルフィン)号、現在予定航路を飛行中。作戦開始地点まであと30分でエンゲージ(到着)

 

「了解、コチラは配置についた。作戦開始のトリガーはそちらに任せます」

 

了解(ラジャー)

 

 薄暗い作戦指令車両の中でやり取りが交わされる。

 それを傍で聞いていて楽しそうに笑う、短い髪を角刈りにした調子のよさそうな男‐

ウィルバーに、彼を不機嫌そうに見る大柄な女性‐リロイが尋ねる。

 

「楽しそうですね、ウィルバー少尉」

 

「そりゃコレから大騒ぎなんだ。ワクワクするさ。まったく、

 アメリカ軍をクビになってから若旦那に拾われたが、毎日楽しくてしょうがないぜ」

 

「はぁ…不貞腐れてニートしていた貴方を引っ張って来たのは間違いでしたかね」

 

「おいおい、そりゃないぜ。(ゲムマ)(アメリカ)もお前と組めて良かったと思っているんだからさ。

 お前のデカいケツに敷かれるのも悪くないと思っているんだぜ?」

 

「そう思うなら、もう少し真面目になさって下さい。あと、敷かないのであしからず」

 

 リロイの塩対応にちぇーっと口先で言いながら未だに高揚感を隠さないウィルバーに、彼女はため息をつく。

 IS学園でトーナメントをしている頃、フランス…いや、ヨーロッパどころか全世界を震撼させる作戦が成された。違法行為をしていたデュノア社に、コトブキカンパニーのFA特殊部隊が強制捜査に入りデュノア社も私設部隊を投入し戦闘になった事件。

 カンパニーの中ではこう呼ばれていた。作戦名『バカ親を天までブッ飛ばせ』

 ちなみにウィルバー以外には作戦名は不評である。

 

 

 バンッ!

 

 「巫山戯んじゃないわよ!!」

 

 長い金髪で化粧の濃い女性が机を叩き大きな音を出して騒ぎ立てる。そのすぐ近くには手を組み黙秘する男が居た。

 女性は『アムル・デュノア』社長夫人 男性は『アルベール・デュノア』社長だ。

そう、シャルルの父親と義理の母だ。

 ココはデュノア社本社の最上階近くに有る社長室。普段は静謐として、

デスクワークの音しかしないこの空間はヒステリックに騒ぐアムルの怒声で満たされている。

 

「落ち着かないか」

 

「はぁ!何を言っているのアンタは!!フランス政府から代行の強制捜査…

 いえ、既に出来上がっていて強制突入しにくるのよ!?

 しかも、代行元は防げるなら防いでみろと挑発の文書を届ける始末、

 コレで冷静に成れってのが可笑しいのよ!!!」

 

「普段の君らしくない。君のコネで軍からIS隊を防備に回してもらったのではないのかね」

 

「ふん…やっぱり、開発とか以外には頭が足りてないようね。

 代行はこの状況になることを予測して挑発してきているのよ。

 それに政府からの強制捜査と言うことは、私は政府から切られる寸前って訳ね

 …巫山戯んじゃないわよ。散々、誰が甘い蜜を吸わせてやってきたと思っているの。

 代行を処理したら後始末は全部アイツ等にやってもらうわ。このツケは高くつくわよ」

 

 アルベールからの忠告も聞く耳持たぬで彼女は思考を巡らせる。その際の愚痴は全て独り言として溢れていた。

 デュノアの防備はコネを使った軍のIS三体と、私設の警備部隊だ。

軍のISは秘密裏なので外装などは全て別の物にカモフラージュされている。

 流石、IS世界シェア3位だ。在庫は山ほどあるらしい。

 そして、私設警備部隊と名を打っているが、実際は社長夫人の裏仕事の為の部隊だ。

そこら辺の警察や傭兵よりも優れた装備を与えられている。

 もしテロ組織が攻めて来ても逆に叩き出すことが出来る戦力がここにはあった。

 

 

「と、いう事ですので…N・D号に居る大尉達には空でIS隊の相手をしてもらいます。

 私とウィルバー少尉、00No.(ダブルオー ナンバー)チームは被疑者の確保と人質の解放を目的とします」

 

「あー、俺も空でISを相手にドンパチしたかったなぁ」

 

「俺もだよ、改修前の体なら飛べたんだけどなぁ…」

 

「ウィルバー少尉、貴方の今の機体(FA)は空戦タイプではないので仕方ないです。

 あと、ジェットさん。あまり個人プレイに走らないでください」

 

「「へいへい、分かってますよ」」

 

「はぁ…」

 

「ジェット、冗談はもうそろそろ止めないか?もう直ぐなんだしさ」

 

「あいよ、真面目だなぁジョーは」

 

 作戦の最終確認の際に冗談を言う二人を(たしな)めるリロイ。だが、口先だけの答えにため息が出てしまう。それに援護したのは00No.チームの一人であった。

 冗談を言っていた特徴的な髪型をしている『ジェット・リンク』彼に注意したのは好青年を

醸し出している『ジョー・シマムラ』。

 ここに全てはいないが、彼らを含め9人を00No.チームと呼び、部隊を組ませている。由来はカンパニーに来る前に活動していた時期の各人のコードネームがナンバーで呼びあっていたことからだ。

 国籍も人種もバラバラな9人だがチームワークは抜群でどんな任務もこなして来たエースチームである。

 

 そして、作戦開始の時間が来た。

 上空を飛んでいたN・D号の後部ハッチが開き、ハッチ内部に外からの空気が雪崩込んでくる。

 

「N・D号、作戦エリアに到達。FA隊は発艦をお願いします」

 

「了解…今朝霧スミカ、ラピエール ゼファー 行くぞ!」

 

「トルース・ロックヘッド、バーゼラルド 出る!」

 

「了解した。ロイ・エイラム、スティレット・カスタム テイクオフ!」

 

 後部ハッチから上記の人物達がN・D号から発進する。

 ココはデュノア社から十数km離れた上空、ものの数分で三人はデュノア社にたどり着く。

 だが、上空には隠せる物など何もない。三人が近づいている事はデュノア社に待機しているIS隊もとっくに承知である。

 

「リーダー!三時方向から未確認体三っつ近づいています」

 

「上空で超高速で近づくのは今ではISぐらいしかない。よし、私達も迎撃態勢に入るぞ!」

 

「い、いえ…それが、IS反応ではないんです!」

 

「なんだと!?」

 

 IS反応がない、その言葉に耳を疑うが隠せるものがない空ではISのハイパーセンサーは大いに働く。IS隊のリーダーは近づいてくる機影を確認した。

 三体とも全身装甲(フル・スキン)なのは共通している。だが、どれも知らない機体ばかりだ。

 センター(中央)を飛んでいるのは全身にブースターを取り付けてあるえらくヒロイックな外観をした機体だ。

右は両肩にある複数のフレキシブルスラクターが特徴的で、ツインテールに見えるアンテナユニット、大きな胸部装甲など女性的だが…ISではない。

 左は部下の照合確認からコトブキカンパニーから販売されているスティレットと呼ばれるFAに似ているが、細部が異なる。特に色は低視認性塗装多分(Low Visibility)になっておりカスタム機なんだろうと推測出来た。

 これらの点から全てがFAと呼ばれる物だとリーダーは判断すると同時に怒りも沸く。

 

「こんなISの紛い物みたいな強化外骨格が相手だと…

 全機!ISが最強である事をあの勘違い共に教えてやれ!!」

 

「「了解!」」

 

 空手の戦いの火蓋は切って落とされた。

 しかし、このあと直ぐにISリーダーは自身の認識を塗り替えられる。

 ISに叶う兵器が有るわけ無いという事と乗り手の実力を。

 

 

 空で戦いが始まろうとしていた時に地上でも動きがあった。

 挑発…いや、脅迫状か?それがデュノア社に届けられたため一般社員は退避させられ、

いま居るのは社長夫人の私設部隊だけだ。

 正面玄関を見張っていた隊員がこちらに向かってくる何かを見つけた。

 

「…?アレは何だ。バイク?と装甲車・・・敵襲!奴ら正面から着やがった!!」

 

 見張りの部隊は正面入口のシャッターを下ろし、部隊を揃えてアサルトライフルで攻撃する。

 だが、敵機のスピードは落ちずに向かってくるので部隊は左右に逃げ始めた。

 

「リロイ!隔壁をブッ飛ばせ!!」

 

「分かりましたよ!」

 

 バイク?からウィルバーの声がしたと思うと、そのバイクに乗っていたトリコロールカラーの

鎧武者の様なロボットからリロイの返答が戻ってくる。

 そして、そのロボットの肩装甲の一部がスライドすると榴弾が一発発射され、入口のシャッターを吹き飛ばそうとした。

 だが、かなりひしゃげたがたった一発では破るまでいかないみたいである。

 その為、彼女はもう一発撃とうとしたが彼に止められた。

 

「もう一発っ!」

 

「いやっ、イイぜ。リロイ…確りと(つか)まっていな!!」

 

「少尉?まさか!?」

 

「若旦那のマンガ直伝…

ラァイィィダァァアアッ!(ダイナミック!)ブレェエェェエクゥウウッッ!!(お邪魔します!!)

 

 「きゃあああ!?」

 

 バイクはそのまま隔壁(シャッター)を突き破り、ターンドリフトしながら静止する。その間にも装甲車も(なら)って車両ごとビルへと突入した。

 ターンドリフトしている間に鎧武者‐リロイが装着しているFA:レヴァナントアイ・イーギルは飛び降りており、それを確認したバイクは直ぐ様に別行動へ移る。

 

「リロイ!俺はバカ親どもをブッ飛ばしてくるから後はヨロシク!」

 

「少尉!単独行動はっ…ちぃ!?」

 

 階段をモノともせずに軽快に走ってゆくバイクにリロイは警告しようとしたが、私設部隊が

正面玄関のフロアーに展開し始め戦闘になったため制止する事が出来なかった。

 装甲車からMD(メイルデバイス)、FAとは系統が違う強化服を来た00No.チームと一緒にリロイは

一階フロアの制圧に乗り出す。

 

「(単独行動させるのは癪ですが、頼みましたよ少尉!)」

 

 リロイは内心こんな事を思いながらも、自分に課せられた任務を達成するために動いてゆくのであった。

 

 

 

 一方、上空ではIS対FAの戦いが始まっていた。戦況は素人見では五分、しかし実際はFAの方が有利である。その理由は、やはり練度であろう。

 奇しくもそれぞれに合った戦闘距離を持った者同士が戦い合う事になっている。

 ラピエール ゼファー = スミカと戦っているISは近~中距離を自在に移動し安定した空中静止で格闘を仕掛ける彼女に苦戦を強いられている。

 近距離ではスミカの手にある大型二丁拳銃を巧みに使い銃撃と格闘を混ぜた所謂ガンカタで相手を制し、中距離ではその拳銃を使って追い打ちをかける。

 しかもこの二丁拳銃はタダの拳銃ではなかった。

 

「ぐぅう!?(このシールドの減り具合とセンサーから感じる磁界…まさか、

 あの拳銃は超電磁砲(レールガン)だというの!?)」

 

 そう、この大型拳銃は携行できる超小型リニアレールカノンなのだ。普通はISの物でも大砲の様な物や、なるべく小さく作られてもアンチマテリアルライフル並みの大きさになるのが普通である。

 しかし、コトブキカンパニーはそれを大型…いや、訂正しよう銃身の長さが人の腕くらいあるので超大型拳銃サイズと言うしかないが、それくらいまでに小型化できたのだ。

 寧ろ、この大きさと見合うだけの丈夫さもあるので、スミカは好んでガンカタを使っている始末である。

 

 

 スティレット=ロイと戦っているISは純粋なドックファイトに成っている。

 相手の後ろを突き攻撃を仕掛けるといった、戦闘機同士が戦う時代からの戦闘方法だ。

 敵ISは何度もロイの後ろに付くがその度に逃れられ、逆に後ろに付かれてしまうのを繰り返している。

 

「今度こそ。ロック…おっん!?」

 

「ふん、バランスが悪くなるのを承知でコレ(クレイドル)を付けているんだ。

 この程度で驚いてもらっていては困る」

 

 敵ISがロックをした瞬間、ロイは急停止をかけ太ももに設置された増加装甲と推進機と機関砲とブレードを合体させた多機能ユニット、通称・ACSクレイドル(又はクレイドル)を進行逆方向に向け噴射。

 敵と衝突する寸前に肩についているスラクターを出力最大にして、瞬時に横に移動することによって避け敵の後ろに付くという荒技を披露し、逆に攻撃を仕掛ける。

 ドックファイトで元イギリス空軍のエースパイロットを相手取るには敵ISのパイロットでは荷が重すぎたようだ。

 ちなみにACSクレイドルの『ACS』は『Armor Complex Supplying(複合兵装供給)システム』の略語である。

 

 

 バーゼラルド=トルースと戦っていたのは敵ISのリーダーだ。流石にリーダー格だけあって他の二人とは一、二段違う実力を持っている。

 だが、それだけだ。元来、バーゼラルドは高機動な敵を上回る為に開発された機体である。

それがある人物(十千屋)の設定上の機能だとしても、それを頷ける機体性能がコレにはあった。

 そう、例えISであろうともバーゼラルドに追従するのは至難である。

 

「(ありえない…有ってはならない!こんな、ISの紛い物みたいな強化外骨格に

 我ら(IS)が劣るなどとは!!)」

 

 敵リーダーはトルースに張り付こうとするが、あっという間に離され相手の機動に振り回される。バーゼラルドにはPIC等無い。だが、全身に付けられたフォトンブースターが縦横無尽の機動力を生み出しているのだ。

 少し、航空戦力の話をしよう。ISが出るまでの汎用航空戦力の頂点は戦闘ヘリであった。

戦闘機以上の小回りと空中静止(ホバリング)もできる空中機動能力、様々なオプション(兵器)が付けられる多様性と汎用性。これらが頂点と言われた理由であった。だが、ISの台頭により様々な戦力の頂点はIS一色に塗り替えられた。

 戦闘ヘリを越す『機動性』戦闘機を抜く『速度』戦車、いや戦艦並みの『防御力』様々な武装を携帯できる『汎用性と火力』これらによって戦闘兵器の歴史が塗り替えられた。

 しかし、それ故にISを無敵と勘違いしてしまったのだ。

 確かに『現』FAにはISの様なシールド=防御力は無い。だがしかし、それ以外はどうだろうか?

 ISは一応空戦仕様の為、FAスティレットと比べてみる。『機動性』『速度』これらは十分に張れる。『汎用性と火力』は量子格納が無いため数は限られるが、IS用の装備は十分FAでも運用できる。つまり、FAに足りないのは『防御力』だけなのだ。

 それが指し示すことは、

 

「(こんな…こんな、シールドも無い。

 ほんの少しだけでもダメージが入れば堕ちるモノなどに!)」

 

「(と、こんな事を思っているんだろうな。馬鹿か?

 従来、当たれば死ぬ戦いに《ソレ》は御法度な思考だろうに)」

 

 相手(IS)の攻撃を掻い潜れる力量さえ持っていたりすればFAでも十分対抗できるという事である。

 シールドエネルギーの残量圏内なら安全だと慢心しているISライダーと、当たれば調子が悪くなれば死ぬと生死の狭間で戦っているエースパイロットとどちらが上かは考えなくとも分かる事だ。

 そして、更にリーダーを追い詰める事がある。コレは全ISの優位を揺らがせるモノであった。

 

「がフッ!(シールドを()()()()()()()だと!?しかも、非致死性弾だと巫山戯な!

 私を愚弄しているのか!!)」

 

「ちっ(何だかんだで、俺も甘くなったものだな。こんな玩具(非致死性兵器)で相手を倒そうだなんてな)」

 

 そう、トルースの放つ非致死性の弾丸はISのシールドエネルギーを通り抜けているのだ。

 以前、IS学園の無人機事件の際に轟が使った『TCS干渉弾』の完成版『攻性干渉弾(ATCS弾)』をトルースは使用している。干渉弾はシールドだけに干渉して無効化するだけで、その()()()()を通常弾なりで通り抜けなければならなかった。

 しかし、コレは干渉弾と通常弾の機能を合わせたもので、単体でシールドを貫通して攻撃できるのだ。ちなみにT結晶(クリスタル)が発生するシールドとISのシールドエネルギーが極めて近い為、攻性干渉弾が効果を発揮するのである。

 今回は流石に皆殺しにしに来た訳ではないため、通常弾側を非致死性弾に変更している。

 

 

 上空の激闘の最中、デュノア本社ビルの中では二方向に分かれて作戦が進んでいた。

 上層階へと駆け上ってゆくバイクその正体はウィルバーであるが、彼は社長室にいると思われる社長と社長夫人がターゲットだ。

 一方で、リロイは00No.チームと共に下、つまり地下へと向かっていた。

 エレベーターの制御盤を操作し、公にはなっていない秘匿階層へと降りてゆく。

 

 「撃てぇええ!!」

 

 ダァッダダダダダ!!

 

 エレベーターが目的の秘匿階層にたどり着いた瞬間、敵部隊が待ち伏せしていたのか

 エレベーターの扉が開く前にそこに向かって乱射する。

 穴だらけになった扉が軋みながら自動で開くと、そこには誰も居らずただ弾痕だけが残っていた。敵が不審に思い確認しようとした瞬間、白い強化外骨格を来た人物が逆さの宙吊りで現れそちらを攻撃してくる。

 突如の攻撃に敵部隊は瓦礫しかかるが、畳み掛けるように次々と同じ装備をした者達がエレベーターの天井裏から降りてきて攻撃を始めた。

 彼らはもちろん00No.チームである。待ち伏せを予見し、エレベーターだけを先に行かせ

その天井裏で待機していたのだ。あとはご覧の通りである。

 

「ココが要人の軟禁場所の様ですね。ロックはどうですか?ブリテンさん、ハインリヒさん」

 

「いや~、それがどうにもこうにも…」

 

「ワザとレトロな施錠装置にしてやがる。ハッキングとかそういうものじゃない。

 もっと古くて単純なものだ」

 

「じゃあ、爆破すれば」

 

「ジョー、そいつはダメだ。この超合金製の扉を爆破する量の爆薬を仕掛けたら、

 通路も俺たちも保護するべき人も危ない」

 

「アイヤー、そいつはイケないアルネ。ワタシの炎でもダメアルねぇ」

 

 敵を退けリロイと00No.チームは要救助者が居る軟禁部屋にたどり着いたのだが、唯一の出入り口は固く閉ざされている。

 その硬いは比喩ではなく本当に硬いのだ。スキンヘッドのグレート・ブリテン、極端な三白眼と銀髪が特徴的なアルベルト・ハインリヒも開錠を試みるが徒労に終わる。

 この扉は純粋な機械仕掛け、すなわち前時代的な鍵によって施錠されている。しかも扉の材質は特殊な超合金で出来ており硬度は恐ろしいものであった。

 火を扱う事が専門の張々湖(チャン チャンコ)もこの扉にはお手上げだ。しかも、爆破処理で取り除こうとしても爆風で内外どちらとも致命的な被害が出るように設計してあるらしく手出しができない。

 そんな中、声を上げた人物がいた。チームの中で最大の巨躯に褐色の肌を持つG・J(ジェロニモ・ジュニア)である。

 

「俺が何とかしてみよう…ぬぅっ!!

 

 Gが扉の取っ手に手を掛けると、力尽くで扉を開こうとする。普通の人間では無理だが、

00No.チームは人間ではない。

 人間に極めて近く限りなく遠い、人間を超えた肉体を持つ人造人間(サイボーグ)だ。だからといって彼らは

人としての生を奪われたわけではない。

 改造コンセプトの『極めて近く限りなく遠い』の通りに寝食すれば老いもする。

子供だって残せる。ただ、強靭な肉体を与えられているだけなのだ。因みに…シルヴィアも本人の希望で同じコンセプトの改造手術を施術済みである。

 話を戻そう。基本はそれをベースとし、個人に合わせたセッティングが成されている。

Gは頑丈さと力に振り分けられ、肉体一つで戦車部隊を相手取ることが出来るのだ。

 その怪力は扉どころかそれに接する壁も軋みながら押し分け、粉砕しながら力尽くで開いた。

いや、扉が開いたというよりはこじ()けた…粉砕した?と、言ったほうが適切だろうか?

 それはともかくとして、部屋に入るとそこにはベットに座った女性が居た。扉の事で驚いているようだが、特に錯乱したり恐慌している様子がなく物珍しげにこちらを見ている。

 肝が据わっていると言うか、天然だというのかシャルルが年齢を重ねた様に見えるこの女性が

要救助者、つまり・・・

 

「突然の来訪と言いますか、襲撃を失礼します。

 私はコトブキカンパニーFA部隊:リロイ・ハロルド。階級は准尉です。

 彼らは協力者である00No.チーム。貴女はセリシエ・オトンヌさんですね?」

 

「ええ、はい。私がそうです。それでどのようなご要件でしょうか?」

 

「私達は上からの(めい)と、貴女の娘さんと旦那さんの願いを受けて貴女を助けに来ました」

 

「そう、そうなの…あの子はココまで来てしまったのね

 

 そう、この女性はシャルルの母親。デュノア社で軟禁されている女性だ。

 リロイはFAのヘッドを取りセリシエの目線に合わせて話すだが、彼女は喜びよりも

何処か失望したような表情を見せる。

 この対応にリロイは困惑するが、セリシエは意を決したのか彼女を確りと見据え言った。

 

「ねぇ、無茶を承知でお願いしたいことがあるの」

 

「…何でしょうか。余りにも無茶で無ければ何とかしたいと思いますが」

 

「私を……」

 

 

 セリシエが決意を述べているその頃、上層階へ駆け上っていたウィルバーはついに辿り着く。

 

「よう…初めまして。ダメ親父にクソババァ!こういう時はなんて言うんだったけな?

 ああ、若旦那の漫画ならこうか・・・アンタらに不吉を届けに来てやったぜ、てか?」

 

 デュノア社本社、社長室・・・ココにジャン・B・ウィルバー少尉(FA部隊の問題児)が参上した。




本当にしばらくお待たせいたしていました。気力が完全にエンプティしてました…。
本当なら今回で終わらせる予定だったのですが・・・相変わらず長く延びてしまったので、ココで一旦切ります。
今回の字数は8700文字位、またもや相変わらず長い説明文が助長してます。
もっとメリハリが効いた戦闘風景を書き出したいと思っていますが、自分の才と想像(妄想)力が足りずに申し訳ございません。orz

次回はウィルバーの活躍をご期待してください。

そして、誰もツッコマないから言いますが…リロイ・ハロルドさんは原作つまりFAの挿話では、
()()です。
はい、ココでは()()として書かれています。
だって、挿話だと委員長的なキャラで書かれていて、ピンチの度にウィルバーに助けられたり助けたりなんてしていて…無意識に女性だと勘違いしていた経緯からです。
本当に細かく読み返すまで女性かと思っていましたよ…(遠い目



では、今回は此処まででございます。

そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。

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