IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

30 / 70
ちょっと紆余曲折があり、とある話を一旦棚に上げてコチラを書きました。
棚上げの理由はあとがきにでも。

では、どうぞ御ゆるりと。


IS×FA29ss:刮目するがいい

 ただ言うだけならば簡単だ。だが、それを実行し示すのは容易ではない。

 言うだけで人はついて行かない。示さなければ顔も向けない。

 だから…あの人は言った、実行した、示した・・・・物理的にな。

 

 

 とある日、一夏はとても急いでいた。なぜなら次の授業に遅れそうだからだ。

 授業内容はISの格闘技能に関する基礎知識と応用、ほぼインファイト(接近戦)のみの彼にとっては死活問題となりうる授業になるのは間違いないのである。

 そして、遅れそうになっている理由はトイレが遠い(物理的に)のである。IS学園は女子専門学校だ。つまり、男が使えるトイレは広大な敷地の中に僅か3ヶ所しかないのであった。

 その為、毎度一夏は中距離走の全力ダッシュで行かなければ間に合わない。けど、最近「廊下は走るな!」と叱られたばかりであった。

 十千屋?彼の場合は飲む量などを気を付けて昼休みなど長い休憩時間にするようにしている。どうしても行く場合はパルクール(自在走り)で一直線だ。

 

「は~…毎度の事だけど、この距離だけはどうにもならないなぁ・・・ん?」

 

「織斑先生・・・いや、織斑教官。もう一度、私たちの元へと来てくれませんか」

 

「その話か、分かっていると思うがNOだ」

 

 走っている一夏は曲がり角から聞こえてきた声でふと足を止める。それもその筈、その聞こえてくる声はよく知る人物のモノ。つまり、千冬とラウラのモノであった。

 話の筋からするにラウラは千冬をドイツに連れて帰りたいようだ。だが、千冬は頑なに拒んでいる。

 

「はぁ、やはり来てくれませんか…」

 

「そうだ、私はココ(IS学園)でやる事がある。それを放ってはおけん。

 其れくらい、今のお前なら分かるはずだが?」

 

「一応です。先ほどの話は我が国の上層部も、無論私達も望んでいる事なのです…が、」

 

「が?」

 

「しつこくするとドイツから学園に向けて内部干渉していると言われるから程々にしとけ、

 と先におやっさんから釘を刺されたのでもう止めておきます」

 

「正解だ。たくっ、嫌になるほど先手を打ってくるなアイツ(十千屋)は…

 そう言えば、まだお前がアイツを慕っている理由を聞いたことが無かったな」

 

「そう言えば、そうですね。私が…私達がおやっさんを慕っている理由を簡単に言えば、

『ケツを思いっきり引っぱ叩かれて、尻餅付きながら半ベソかいている時に引き起こされた』

 と言えばいいでしょうか?」

 

「…は?」

 

 此処からラウラの独白が始まった。

 十千屋は千冬が去った後に少しばかり経ってからやって来た。目的はFA部隊をドイツ軍に配備する前の教導官としてである。

 今更な説明になるが、FAとFA:Gは人に装甲を着せた様な姿であり大きさとしては、人より一回り位大きくなった程度である。

 ISと比べて小さいが、それ故にISが入れない市街地や密集地などに適しており、また地上からのISの支援機として運用しようとしたのである。

 だが、IS側が反発し模擬戦(実力)で決定する事を強制したのだ。そして、その模擬戦でラウラの所属部隊-シュヴァルツェ・ハーゼ(黒兎隊)と後のドイツ軍FA部隊-シュヴァルツェ・ヴェーアヴォルフ(黒の人狼隊)&十千屋がぶつかり合ったのである。

 その戦いの結末は、FA部隊・・・いや、十千屋の圧勝で終わった。模擬戦自体は3回行ったのだが、3対3でラウラ側が負け、IS3体 対 十千屋一人でIS(ラウラ)側が負け、終いにはラウラと十千屋の一騎打ちでも彼女は負けた。

 この敗因は、当時の彼女の姿勢に因るものであった。当時のラウラは(ちから)こそが全てで有り、力無き者全てを見下し、他の隊員も兵器の付属品としてしか見ていなかった。

 その為、十千屋は其々の戦いでチームワークで勝ち、彼女が起こす不協和音を利用して勝ち、彼女自身とISの(おご)りを突いて勝ったのであった。

 全敗した彼女は心が折れかけたが、千冬と同じように今度は十千屋が彼女を立ち直らせた。力と千冬への妄執を払い、人との繋がりとそれによって起こせる力を教えたのである。

 それからIS部隊もFA部隊も鍛え上げ、彼が任期を終え去る時には屈強なISとFAの混合部隊が出来上がっていたのである。

 そしてラウラは、彼と出会わなければ自分は只の殺戮兵器か破壊兵器に成っていたかもしれないと、話を括り終えた。

 

 千冬は語られた内容に頭が痛くなる。相変わらず無茶苦茶な過去を持つ彼に頭痛を覚えるが、自身の教え子であるラウラが自分のせいで歪んだ思想に取り憑かれており、それを正して貰った事実のせいで余計に酷くなった。

 もし…彼に出会わず正されてないラウラ来日したら、自分以外には誰であろうが構わず噛み付いてくる狂犬に成っていたであろう事が容易に想像が付く。ある種、純粋な彼女の事だ自分(千冬)(ちから)こそが絶対だと信じ込み問題を起こしたていただろう。

 そうなると、十千屋は思いも知らぬうちに自分の尻拭いをさせたと事になる…千冬はその真実は知りたくなかったと頭の隅へ追いやるのであった。

 

「はぁ…お前が十千屋を慕っているのは、よ~~く分かった」

 

「はい!織斑先生。織斑先生には自信を貰い、おやっさんには本当の仲間を貰いました!

 どちらも私の尊敬する人達であります!」

 

「あぁ…結果的に呼び止める形になって済まなかったな。授業が始まる、教室に戻れ」

 

「分かりました。織斑先生」

 

 喜々として答えるラウラにどこか疲れながらも声色を戻し、千冬は彼女を急かした。言いたい事を全てを言い終えたラウラは足軽に戻ってゆくと、彼女は今度は曲がり角に居るだろう人物に声を掛ける。

 

「そこの男子。盗み聞きとは如何せん感心しないぞ」

 

「ち、違うって!偶然そうなっちまったんだよっ千冬ね―――」

 

 バシーーン!

 

「毎度の事だが、学校では織斑先生と呼べ」

 

「は、はぃ…」

 

 千冬は居た一夏に声を掛けると、内容のせいで彼は慌てて言い訳しながら出てきて…何時ものツッコミが入った。

 どうやら、会話内容ではなく学園内での師弟関係で叩かれたようである。相変わらず一夏は物理的にも精神的にも千冬に対しては頭が上がらないようだ。

 叩き伏せられた彼はトボトボと教室へと向かうが、彼女から声が掛かる。

 

「廊下は走るな。…とは今回は言わん。バレないように走れ。遅れるなよ?」

 

「了解」

 

 どうやら、今回ばかりはルール違反を見逃してくれるようである。姉としても教師としても何処か気に掛けてくれる彼女を嬉しく思いながら、一夏は教室へと急ぐのであった。

 

 

 

 さて、もう既に時間は放課後となっていた。が、十千屋は色々な別件で忙しくなっているため何時ものメンバーには課題を出して自主練習をさせている。

 そんな中で偶然にもセシリアと鈴は同じアリーナで鉢合わせになった。

 

「あら?奇遇ですわね。…鈴さんも狙いは()()でして?」

 

「そうね。今は()()以外に狙うものはあるのかしら?」

 

 とある話題が出ると二人の間に火花が散った。実は今回の学年別トーナメントには妙な噂が出回っており、女子生徒たちはそれによって浮かれながらも優勝を目指している。

 その噂とは『学年別トーナメントに優勝者は織斑一夏と交際できる』と言う内容である。故に一夏を狙う肉食系女子(ヘタれも含む)はヨダレを盛大に垂らしながら牙を研いでいる最中なのだ。

 無論、この二人もそれらの内の一人だ。

 

「優勝するに当たって警戒するべきは専用機持ちのみ、山田先生みたいに

 技量で上回るタイプは今回は出禁になる筈のアイツ(十千屋)のみ・・・」

 

「故にそれに備えるために実戦訓練を行うのが一番よろしい…のですが、」

 

「私達に付き合えるのは、私達のみっていうのが現状なのよねぇ」

 

 二人の間の火花は益々大きくなり、会話の最中にも関わらずそれぞれの得物を構え出してゆく。その雰囲気にアリーナ内に居た他の生徒たちは距離をとり始めた。

 

 「さぁ…手合せと行きましょうか!!」

 「さぁ…手合せと行きますわよ!!」

 

「何やら面白そうな事をしているじゃないか。是非、私も混ぜてくれ」

 

「「!?」」

 

 そして、訓練と名ばかりのトーナメント前哨戦が始まるかと否や、ISのオープンチャンネルにとある声が届けられる。その声に気を取られ、声の発生源を探るとセシリアと鈴の二人に近づく一機のISがあった。

 その正体は・・・黒色の機体『シュヴァルツェア・レーゲン』、登録操縦者―――

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・」

 

 そう、ラウラだ。セシリアは複雑な表情をしながらその名を口ずさむ。国的には欧州トライアルの相手であり、個人的には慕っている人物の一番弟子にあたるかも知れない人物。故に内心複雑な相手である。

 

「で?何の用よ」

 

「なに、お前たちはこれからトーナメントに向けてのトレーニング(模擬戦)を行おうとしていたのだろ?

 それに混ぜてもらえないか?…という訳だ」

 

「ふ~ん…だったら変則的にバトルロワイヤルでもする?」

 

「いや、二人纏めて掛かってくるといいさ」

 

「「へぇ…」」

 

 鈴はコチラに来た意図を聞き出したが、ラウラは軽い口調ながらも挑発してきた。まるで今の二人では自分の相手にならないと言った感じである。

 流石にこれには二人共カチンっとくるが、彼女の余裕は揺らぎもしない。

 

「それはどういう事でして?」

 

「なに、両者ともおやっさんの指導を受けて一般候補生よりもマシになっている様に見えるが…

 まだまだ再調整中では私には敵わない、という事だ」

 

「馬鹿にしてんの?アイツの調整を受けた甲龍は一味違うわよ」

 

「ふん、まだまだ振り回されISの性能を十全に発揮できないひよっこが何を言う?

 いや、織斑先生やおやっさんから見れば全員ひよっこか」

 

「ぐぎぎぎぎぎぎ…」

 

「鈴さん。今はお言葉に甘えて…ヤりましょう?」

 

「そうね…そうよね、二人掛りでいいって言った事を後悔させてあげるわ!!」

 

「ふっ、やる気になったようだな。そこの人、カウントダウンをお願いする」

 

「はひっ!?私ですか!?(なんでまたこんな役割に…)」

 

 ラウラはごく自然な態度で二人の神経を逆なでしてゆく。その為、()る気になった二人は彼女の提案通りに二人掛りで戦うことに決めた。

 この様子をラウラは満足気に見ると、近くにいた生徒に模擬戦開始の合図を頼んだ。

 

「カウント3!3…2…1…開始(スタート)!!」

 

 「「はぁああ!!」」

 

 「ふっ、刮目するがいい…我がレーゲンの《停止結界》に!」

 

 

 

 

 ところ変わって、一夏とシャルルだ。彼らは雑談をしながら今日の空いているアリーナを目指して歩いている。

 

「今日は自習かぁ…」

 

「うん、十千屋さんは急用が出来てちょっと忙しい…って言っていたけど、

 きっと僕の事だよね・・・・」

 

「だろうなぁ…って、なに遠い目をしてるんだ?」

 

「いやね?流石に十千屋さんに投げっ放しはダメだと思って、

 少し前に差し入れくらいはしなきゃって持って行った時があったんだけど、」

 

「けど?」

 

「…部屋に入る前に聞こえてきた話が

 『どれくらいまでなら更地にしていいか?』とか

 『買収は何%進んでいるか』とか

 『取引先や技術者の引き抜きは順調か』とか

 聞いちゃいけないような事オンパレードだったんだよ…」

 

「…シャルル、お前は聞いていなかった。そうだろ?

 師匠は俺達が足を踏み入れられない向こう側の世界にいるんだ」

 

「(゚д゚)(。_。)_。)うん、僕は何も聞いてない。聞いていないよね?」

 

「ああ!」

 

 只の今日の予定話しだった筈が何故か十千屋の闇の部分の話になってしまった。一夏とシャルルは踏み込むべきではないとして強制的に話しを打ち切り、忘れることにする。幸いにもこの会話は誰にも聞こえなかった。

 さて、気分を切り替えアリーナへと進む。途中で最近何故か微妙な雰囲気の箒と合流し、今日の使用人数が少ないと言われる第3アリーナへと向かった。

 暫くして目的のアリーナへとたどり着いたのだが、使用人数が少ないと聞いてた割には賑わっていた。何故かと近寄るとどうやら誰かか模擬戦をしているらしい。

 

「どうも賑わっている原因は、模擬戦を行っているグループが居るせいの様だな」

 

「へぇ、んでその相手はっと…!?」

 

「どうやら、オルコットさんと凰さんのコンビとボーデヴィッヒさんが戦っているようだね」

 

 一夏達が来たのは彼女らが模擬戦を始めてから少し経った位らしい。そして、戦況は・・・二人で戦っているセシリアと鈴が若干不利と言ったところだ。

 その理由は、ラウラのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』の第三世代型兵器が原因だ。

 

「ちっ、もう一回!」

 

「結果は同じだ。どうやらお前の衝撃砲と私の停止結界は相性が良すぎるようだ」

 

「こちら的には相性最悪だけどね!」

 

 最大威力の衝撃砲を鈴は撃つがラウラはそれが来る方向に手を掲げると、次の瞬間には何らかの作用によって衝撃砲の不可視の砲弾はかき消されたようだ。

 そこからすぐにラウラは攻撃に転じ、ワイヤーで繋がっている刃物-ワイヤーブレードと言えば良いだろうか。それを両肩のユニットから射出し鈴に迫る。しかも、このワイヤーブレードは操作可能なのか鈴の迎撃射撃をくぐり抜け彼女の武器-双天牙月を絡め取ってしまった。

 マニュピレーター(ISの手)ごと絡めて獲っているので得物を手放して脱出するわけにもいかない。此処から綱引きが始まるかと思いきや、ラウラに向かって多方向からレーザーが襲いかかる。

 それはセシリアの援護であったが、ラウラはグレイズ(掠め)しながら最小限の動きで避け、先ほど衝撃砲をかき消したように両腕をビットに向けて掲げる。すると、ビットは動きを封じ込められた。

 

 衝撃砲の砲弾消失、ビットの停止、これらはシュヴァルツェア・レーゲンの第三世代型兵器-『慣性停止能力(AIC)』によるものだ。ちなみにAICはアクティブ・イナーシャル・キャンセラーの略である。

 これはISに搭載されているPICを発展させたもので、簡単に言えば任意の空間の動きを止める装置である。強力に見えるが欠点もそこそこ有る、がそれは別の機会にしよう。

 

「第三世代型兵器にはかなりの集中力が必要…コレは速く、

 複数動かすためにパターン化させているな」

 

「のんびり観察している暇はありまして!」

 

「無論だ、コイツを返すぞ?」

 

 二機のビットを止める動作をしたため動きが止まったラウラをセシリアは横に動きながら攻撃するが、その進路方向に絡め取っていた鈴を放り投げる事によって妨害する。

 放り投げられる最中に鈴は、絡め取られた腕を収納(クローズ)する事によって脱する。そのせいでラウラは隙を作ってしまい、セシリアと残り二機のビットの攻撃がクリーンヒットした。

 

「…くっ、何もかも分が悪すぎるわ。セシリア、上手く入ったと思う?」

 

「入りましたけど…ちょっとよそ見して調べた結果、

 ボーデヴィッヒさんの装甲は対ビーム仕様なんですの。

 レーザー(熱線)ビーム(粒子)と違いはありますが『焼き切る』のは一緒…つまり、」

 

「少し驚いたが、それだけだな」

 

「…わたくしの攻撃も相性が悪いという事ですわ」

 

 それなりのレーザーを撃たれたと言うのにラウラのISは未だ健全、対してこちら(英・中コンビ)はダメージもそれなりに溜まっており、レーザー主力のセシリアはエネルギーも心持たない感じとなっていた。

 どうやらラウラが言った通りに再調整中で修業中の二人では相手にならない様だ。事前に相性の事を知っていればもう少し結果は違っていただろうが、それはIF(もし)の話だ。悔しいが負けかけているこれが現実だ。

 

「さて、ギャラリーも五月蝿い…シールド越しで音声的には喧しくないが、

 いい加減ここいらで決着といかないか?」

 

「…そうね、相性問題もあってこっちのジリ貧だし一応模擬戦なのに

 ダメージを負いすぎるのも良くないわね」

 

「鈴さん、悔しいですがご好意に甘えましょう。

 わたくし達の技量が彼女に届かないのは事実…でも、次は、」

 

「ええ、次は負けないわ!」

 

「決まった様だな、ならばこのコインが落ちたら最終戦開始だ」

 

 両者ともにその位置から身構えると、ラウラはコインを宙に放る。何秒かは知らないがコインは宙を舞いそして、落ちた。

 

 ゴォウン!!

 

 その合図(落下)とともに鈴とラウラは瞬間加速(イグニッション・ブースト)で間合いを詰め、セシリアはビットを展開する。

 瞬間加速で刹那見切りになると思ったが、ラウラは逆Vの字で急上昇急降下した。

 

二段瞬間加速(ダブル・イグニッション・ブースト)!?いや、ちがっ短いっ!?」

 

 鈴は思っていた間合いを外され調子を狂わせられた。咄嗟に停止をかけ、両手にプラズマ手刀を光らせ懐に入ろうとするラウラを後退で距離を取ろうとする。

 セシリアはなんとか援護をしようとするが二人の距離が近すぎて誤射の危険があり、手出しができない。鈴の方も間合いが近すぎるためにお得意の回転(バトン)攻撃ができずに後退しながら何度も凌ぎを削った。

 鈴は急激な機動変更に依る錯乱、態と懐に飛び込んできて此方の間合いを消すやり方、それらにとある人物を思い出す。

 

「ちぃ!このやりづらさ、十千屋みたいじゃないの!!」

 

「当たり前だ!私はおやっさんの弟子でもあるからな!

 にわかで(最近)入ったお前らとキャリア(年数)が違う!!」

 

 後退を続ける鈴は痺れを切らし、衝撃砲を撃とうとするがそのラグ()のせいで逆に衝撃砲のユニットを撃ち落とされてしまう。それによって更なる隙が生じ、止めのプラズマ手刀が迫るがセシリアがビット一機を犠牲として防ぐ。

 その間に鈴は瞬間加速で離脱し、ミサイルビット含む全ての武装を撃ちだしたセシリアに乗じて最大出力の衝撃砲を何発もラウラに発射した。

 

「ふむ、コレがお前たちの全てか…足りないな、まだ足りない!足ァりないぞォ!」

 

 ラウラは迫り来るレーザーの嵐を又しても最小限の動きで回避し、

 

「お前達に足りないものは、それは~…」

 

 そのレーザーの嵐の中でミサイルビットをAICで停止させ、ワイヤーブレードで確保する。

 

「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!そしてェなによりもォ-------」

 

 と、同時にセシリアと鈴に向かって投げ返し、向かってきていた衝撃砲はAICで相殺。

 

 「ご飯が足りない!!」

 

 「「なんじゃそりゃ(ですの)ーー!?

   って、きゃぁああ!!!」」

 

 ラウラ謎の発言にツッコミを入れつつも投げ返されたミサイルビットを避けようとするが…AICで固定され、ミサイルは直撃した。

 爆炎が立ち込め、暫くするとセシリアと鈴が現れるが両者のシールドエネルギーはレッドゾーン、武装も半壊気味でありこれ以上は戦えない状態になっていた。

 つまり、先ほどのやり取りからしてもこの状態は・・・ラウラの勝利と言う事になる。

 

 彼女らの戦いを見ていた一夏は思わず固く拳を握っていた。

 挑戦状を叩きつけてきた相手(ラウラ)の実力を目の当たりにし思うことがあったのだろう。

 表情も険しく戦いの行方を見ていたのであった。

 

「…コレがボーデヴィッヒの実力か。一夏、彼女は強いぞ?」

 

「あぁ、俺は絶対勝つとは言えねぇ…でも、俺の全身全霊を賭けてアイツに挑む!」

 

「一夏、その意気だよ。でも、少し力を抜こ?手が真っ赤になってるよ」

 

「あ、すまん。ありがとう」

 

 一緒に見ていた箒とシャルルもラウラが強敵だと確認しても、一夏の闘志は折れない。いや、以前よりも強くなった。

 そんな、少年漫画の様な燃えるシーンであったが…一夏を気遣って彼の手をとり、固く握り拳を(ほぐ)してゆくシャルルの行動に周りの腐女子は黄色い悲鳴を上げていた。

 更に少し立つと戦っていた三人が同じピットに戻るのを見ると、彼らもそのピットへ向かった。そこに着くと既にISを収納しダメージレベルを調べている三人が見え、一夏は声をかける。

 

「おーい、セシリア、鈴、大丈夫か?」

 

「いっ一夏!?」

 

「い、いいぃい一夏さん何時頃から此処に?」

 

「何時って?セシリアと鈴がラウラと戦っている最中からだけど?」

 

 この一夏の発言に挙動不審であったセシリアと鈴は顔色が青くなって次の瞬間には赤くなって震えだした。

 

「お、おい…二人共?」

 

「「こ…」」

 

「こ?」

 

 「「こんな あたし/わたくし を見ないで(くださいまし)ーー!!!」」

 

 突如の逃亡に一夏は唖然とするが、シャルルは溜息をついて理由を話す。

 

「あ、あれ?二人共どうしたんだ?」

 

「一夏…きっと二人は恥ずかしかったんだと思うよ。たぶん意気揚々と戦いを挑んだけど

 ボロボロに負けて、それを一番仲のいい人に見られて、いたたまれなくなったんだよ」

 

「それは、私でも逃げ出したくなるな…」

 

「なぁ、コレって暫くソッとしておいた方が良いよな?」

 

「うん…」「あぁ‥」

 

「模擬戦で負けても恥では無いのに、何をやっているんだあの二人は…」

 

「「「!?」」」」

 

 二人の奇行に目を追ってしまっていたが、ラウラの呟きで三人は彼女が居ることをようやく思い出した。

 彼女は憮然としているが、慣れた手つきで今できるISのメンテナンスをしていた。それが区切りが良くなったのかこちらに居直る。

 

「ふむ?で、どうだったかな?私の戦いは」

 

「悔しいけどさ、お前が俺を軟弱者扱いするのはしょうがなく思えたよ。けどな…」

 

「けど?どうなんだ」

 

「俺はお前に負けねぇ。負けるにしても絶対にタダじゃ済まさねぇ!」

 

「くくく…なら、楽しみに待っているぞ?チャレンジャー」

 

「ああ、お前もISと首を洗って待っていろ」

 

「くくく…あはは…あーはっはっは!!」

 

 一夏の啖呵が可笑しいのか楽しみなのか分からないが、ラウラは笑い声高々にこの場を去っていった。

 彼はその姿が見えなくなるまで見送る。そして…

 

「箒、シャル、まだアリーナの使用時間は過ぎてないよな」

 

「うん、あと一時間ちょっとって所だね」

 

「ああ、すぐに用意しよう。一夏、分かっているな」

 

「あぁ!今回の短期目標は打倒ラウラ!やってやるぜ!!」

 

 敵が強大であるほど燃えるとはこの事だろうか?今の一夏の目標は学年別トーナメントで勝ち残りラウラを倒すこと、若しくは超える事だ。

 その為に今まで以上に気合を入れて特訓に力を入れるのであった。

 

 

 その頃、悪の三段笑いを決めたラウラは?

 

「…そう言えば、模擬戦後のブリーフィングをしていなかったな。…よし」

 

 ラウラはISネットワークの対戦相手履歴からとある人物たちへメールを送る。内容は

『先ほどの《ご飯》の内容を聞きたかったら夕食時に来い。

 ついでに模擬戦後のブリーフィング(反省会)もするぞ』

 であった。

 

「さて、こうは書いたが時間があるな…おやっさんにFAや装備の新作があるか聞きに行くか」

 

 現役ドイツ軍人のラウラ・ボーデヴィッヒは何だかんだで学園生活を満喫中であった。




はい、今回は原作だとラウラ前哨戦ですね。
原作だと此処から少し立つとトーナメントが始まるのですが、まだちょっとかかりそうです。
それは前書きに書いた棚上げの話になります。
実は、箒にちょっとしたイベントを起こしたのですが…なんか、時系列っぽい事を考えたら少し後の方がいいんじゃないかと思い、今回のを仕上げました。
ですから、次の話はソレか、一応考えてある今回の話の夕食頃の話とかありますね。
後に書いた夕食話だとまた時系列系がアレなのでイベントがまた後回しになってしまいます。
どっちがいいんでしょうかね?

では、今回は此処まででございます。

そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。