後半を付けたら長くなってしまったのでご了承ください。
では、どうぞ御ゆるりと。
理想を語るなら現実を知れ、誰が言った言葉だったろう。
事実は一つ真実は信じる数ほど、これも誰だったっけ。
まぁ、それはさておき理想と現実は違いすぎるのが世の常だ。
でも、現実を知りつつも理想の為に頑張れるのは悪い事ではないはず。
現実にも理想にも押しつぶされたり溺れたりしなければ。
ある日の日曜日、学園はもちろん休日である。そんな日に一夏は久しぶりに学園に入る前の友人の所に遊びに行っていた。
久しぶりに友人-
その時に一夏が居ると初めて気づき、ラフな格好を見られ慌てて去ってゆく。
ああ、此処にも居るのか一夏の
さて、彼らは昼食をとる為に家の裏口の様な所から出ると表に回りそこには大衆食堂『五反田食堂』の看板がある。名前の通り弾の祖父が店長である店であり、実家でもある。そこに入ると昼食と服装を変えた蘭が待っていた。
一夏が彼女に着替えたのかと聞くと、彼女はしどろもどろに成り答えられなかった。でも、その様子を見て彼はとある事が浮かび言葉にする。
「うん、理由は分からないけどさ。似合ってるよ。さっきのラフな格好も有りだと思うけど、
髪を下ろしてワンピースと薄手のを着ると清楚な感じがして良いと思うぞ」
「あ…はい///」
「い、一夏が・・・一夏が女の服装を褒めただとぉぉとぉお!?」
「煩いぞ!弾!!」
ビュッ―――ガン!「あっがぁ!?」
褒められた蘭は顔を赤くしながら惚けて答え、その光景を信じられなくて絶叫を上げた弾は祖父-
が、直様に復活し一夏に問い詰める。
「お、おい!お前本当に一夏か!?俺の知ってる一夏は女の服装を褒めたりなんかしねぇ!
もっと的外れな事を言う馬鹿な奴だ!!」
「おい、弾…お前の中の俺はどんな奴なんだよ。褒めたのは師匠に言われたからだよ。
『女性が一部でも全部でも普段と変わった事をしたら、見て貰いたいモノがぼぼあるから
ちゃんと褒めて評価しろ』って」
「し、師匠…?」
一夏の変貌ぶりに動揺する弾であるが彼の言った師匠の指導のお陰だと知ると、行き成り椅子から降りて床に片膝をつけて祈りだした。
その行動に全員、食堂に居る一般客もドン引きする。そんな彼を誰が声を掛けるか無言のやり取りが始まり一夏に全員の目が行って、彼は諦めて弾に声を掛ける。
「な…なぁ弾、何を祈ってるんだ?あと、師匠に関係するんだったら
師匠はキリスト系じゃないぞ?」
「なに!?じゃあ俺はどうやって
五体投地なのか!?よし!五体投地なんだな!!」
「落ち着け!」
ガッ!ビュッ――ガン!「ぐっへぇ…」
何かを勘違いして五体投地を始めようとする弾に、一夏は正気に戻るように祈りながら渾身の力を込めてチョップし同時にまたお玉が彼に直撃した。
その後、過激なツッコミから復活するのが早い彼は落ち着きを取り戻し、何か憑き物が落ちたような様子で椅子に座ったのである。
ようやく落ち着いて昼食を食べ始めると、食事をしながらの会話内容が一夏のToloveる学園生活になり蘭が食いついてきた。彼はそうなる理由を分からずに受け答えするが彼女は意を決してある、セリフを言う。
「……。決めました。私は来年IS学園を受験します」
「はぁ!?お前何を言『ビュッ――ガン!』てぇい!?」
「え、受験するって何でだ?蘭の学校って大学までエスカレーター式で有名校なんだろ?」
「大丈夫です。私の成績なら問題ないです…て、どうしました?渋い顔して」
「一夏、迷ってるんだったらコイツを止めてくれ!この跳ねっ返…
『ビュッ――ガガン!』連続はキツイ!?」
行き成り蘭はそう言ったが、一夏は少し渋い顔をしてしまう。それに反応した弾はシューティングお玉を何度も喰らいながら妹の説得を彼に促した。
彼の脳裏に過るのはこの間の乱入事件、そして…様々な傷跡が残る十千屋の姿であった。それらから連想するのは戦いの代償である。その為、彼はすんなりと頷くことが出来なかったのだ。
「あ、あの一夏さん…何を悩んでいるんですか」
「一夏…本当にどうしたんだよ?」
「あ~ん~…悪ぃ、俺からじゃうまく説明できないや。こういう話題やこういう時の最終手段!
助けて!!
一夏は迷いに迷った挙句、十千屋に助けを求めた。彼の携帯に登録されている十千屋のプライベート番号を押して電話を掛ける。
その電波は空と海を超え、十千屋の実家-ゲムマ群島首長国の一部であるアケノ島周辺、そこに在る十千屋家とアーヴァル家の共同所有の孤島にまで届く。
十千屋は家族との昼食を終え、マッタリとした時間を過ごしていたが携帯の着信が鳴りその相手が一夏だと知ると気を引き締めて電話に出た。
「どうした一夏?緊急の用事か、それとも非常事態でも起きたのか?」
「すみません師匠、実はこういう理由で―――」
十千屋は一夏から理由を聞くと受験したいと言った本人に代わって貰い、大きめのタブレットを持っているか聞いた。この問題は家族の問題にもなるので、家族全員と顔を見ながら話のできるTV電話で受け答えする事にしたのである。
その話を聞くと蘭は家族共同のタブレットを持ち出し、ちょうど客足が遠のいてゆく時間帯だったので食堂の大きめのテーブルに集まる。
「行き成りですみませんでした。自分が一夏の師匠分であり一応の同級生、
第二IS男性装着者-十千屋 雄貴です」
「…はっ、失礼しました!私は五反田 蘭です!他は兄の弾と祖父の厳、母の
「うぬ」「はい、よろしくお願いします」
「ア、アーキテクトヘッド?なぁ、一夏…お前の師匠って」
「あ、うん。それには触れないでくれ。かなりキツイ傷跡を隠すものだから」
いきなり写ったロボ頭の人物に驚くが、何故この様な話題に成ったかを聞き受け答えをするうちに、格好はともかくマトモな人だという事は知っている一夏以外理解した。
質疑応答が終わると十千屋は少し悩んでこう言う。
「順調な進路の、突然の変更に驚いて押し止めるのは分かるが…
進学の進路なんて俺が指し示すモノじゃないぞ?」
「いや、師匠さん。兄的にISに関わらなくても順調な進学を突然変更するのは止めますよ。
多分、理由も
「お兄?」 「ひぇ!?」
「儂は蘭がそうしたいなら、どうこうする謂れはない」
「そうですね。蘭が決めたことなら私からもなんとも」
「…チクショウ、味方が居ねえぇ。って、一夏はなんで渋ったんだよ?」
弾がそう言うと、一夏は最近の事で本当に親友の妹をこちら側に招いていいのか不安になったと十千屋に言う。すると彼も唸り声を上げて考え出した。
その雰囲気に五反田一家は不安になってくる。すると、十千屋はこんな事を言いだした。
「分かった、進学の進路をどうこう言う筋合いは無いがIS学園に進むという事をどんなものか、
俺視点で悪いが話そう。それから本当にIS学園に進学するか決めてくれ」
「はい…分かりました」
「と、言っても俺は余りIS親派では無いから否定的な事が多いからそこは注意するように」
彼はそう注釈すると、IS学園…いや、ISへの進学へのメリットとデメリットを語りだした。
メリットは、今一番熱い進路である事と超エリート街道であることだ。途中で脱落せずに進めれば一生安泰と言えなくもない将来を約束されるだろう。
そして、エリート故に社会的ステータスも半端なく上等なモノである事だ。
この事を聞いて蘭は目を輝かせるが、次からは悲惨の一言であった。
デメリットは多岐に及ぶ、先ずは進学のさらなる先の進路である。IS学園は所謂、ISの《専門学校》である。故に卒業後の進路もIS一色に染まり限られる。
IS学園で整備課に進んだ生徒は未だ潰しが効くだろう。整備科とはエンジニアなのでISを取り扱う職場なら必須であるし、その気になれば普通のエンジニアとしても就職が出来なくもない。
が、ISライダーに限ってはそうはいかない。企業所属のテストパイロットらへんになるか、日本だと
次は女性にとっての一番大事だと思われる結婚事情である。
IS関係の人口比率はまんま女子専門学校の延長である。女尊男卑の世の中でその象徴であるISであるから自然とそうなるだろう。すると、職場に出会いはなくエリートである彼女達に男性は贔屓目感じて自然と遠のいてゆく。
しかも女子高のノリでそのままエリートになるので自然と理想の男性像がレベルが高い事に成ってしまう。その結果、未婚の人口が増えているのだ。ちなみにこのデータはコトブキカンパニーの大元である、ナナジングループのブライダル部門の調査の結果である。
次々と上がる事実に蘭はうちしがれてゆく。輝かしいと思ったISへの道がついでに一夏とのキャンパスライフが茨の道に見えるほどの内容であった。
この内容に保護者である厳も蓮も悩み始める。弾だけはもっと言ってやれと息巻いているが。
そして、最大の焦点に移った。
「まぁ、最大のデメリットを話す前に…蘭さん、貴女はISをどう思ってましたか」
「え?うぅん…え~と、カッコいいモノだと普通の人では届かない天上の何かだと思ってました」
「…一般的なイメージはそんなモノか。ふぅ、気を確りと持って聞いて欲しい」
「え…?」
一番のデメリット、それは今世界がISに求められている役割…《兵器》としての役目である。
元は宇宙開発のためのマルチフォーム・スーツとして生まれ、今は平和利用や殺戮兵器としての運用を避けるための条約はあるが、世界が望むのは『既存の兵器全てを上回る超兵器』としての姿だ。
467機中322機-実に七割近くが実戦配備されてるのがその証拠だろう。一般の人達には受け容れがたいがIS学園とはISを扱う兵士を育成する軍学校の側面も持っている。
そして―――
「そして、ISライダー達は有事の際…戦闘に駆り出される事が決まっている」
「え…ウソ…」
「嘘じゃない。もしISと同等それ以上の脅威が現れた際、現段階の最強の《兵器―IS》を使うのは
当たり前の事だ。世界で467機しかなく、使用でき戦えるのはISライダーのみ。
矢面に立たされるのは当然の結果と言える」
「で、でもよぉ…一夏の師匠さん、必ずそうなるって事じゃないだろ?」
「可能性はゼロじゃない。それでは不服か?…俺はISとの戦いに入ったことがある」
「!?師匠!メットを取るのか!?」
兵器としての事実に五反田一家に戦慄が走っている時、十千屋はその証拠としてロボメットを取った。傍から見れば巫山戯た格好になるロボメットの下から現れたのは有り得ない傷の素顔である。
「ひぃっ!?」「うぬぅ…」「…っ!?」
反応は人それぞれだ。小さく悲鳴を上げもの、息を呑む者、唸るもの、だが思いは同じ誰もが恐怖を感じるだろう。
これに彼は一抹の寂しさを感じるが、言葉を止める訳にはいかない。
「兵士は戦争の矢面に立ち、敵を倒し殺す事が役目だ。
…既に娘たちを修羅の道に引きずり込んだ自分が言う資格はないが、
ISを得るという事はどういう事なのかよく考えて決めて欲しい」
悲しみと慈愛の目をした十千屋に蘭は言葉は出ないが頷いて答えた。その答えに彼は満足すると通信を終えようとする。
「今はそれでいい。どうも折角の休日を台無しにしてすみませんでした。」
「いや、儂らじゃ考えつかん事を教えてくれて感謝する。
どうやら今の世の考え方にまだ疎かったようじゃ」
「はい、今回とても勉強になりました。ありがとうございます」
「師匠さん、本当にありがとうございます。自分勝手なノリと勢いで話が始まったけど…
聞けて良かったと思ってます。」
「…本当にありがとうございます」
五反田家が感謝を述べると、十千屋は会釈をして通信を切った。切れた後は暫しの沈黙が続いたが、蘭が最初に声を上げる。
「一夏さん、おじいちゃん、お母さん。私、もうちょっと進路を考えてみる」
「あぁ、その方がいいじゃろ。アイツの目は戦場を知っている
儂のオヤジや爺さんと同じじゃった。経験者は語る、よく考えればええ」
「なぁ、一夏…お前の師匠ってスゲェな」
「ああ、俺も色んな事を教えてもらって助けてもらってる。
だから、俺はあの人を《師匠》って呼ぶんだ」
光り輝くモノには必ず暗く見えないものがある。事実とは時に残酷な事もある。
ISという物の見えない部分を知った時であった。
だが、その暗闇を見つめ続けているだろう十千屋の目は一体何を見ているのだろうか。
さてところ変わって某日のIS学園ここは整備室、この日はようやく皆が待った日がやって来た。
「最終起動実験開始!」
「
「パイロットとISとの同調開始!」
「PIC及びその他システム正常です!」
「パイロット、IS共にパーソナリティ安定!」
「簪!!」
「了解…《打鉄弐式》起動開始」
そう、この日は簪の専用機《打鉄弐式》の最終起動実験の日であった。これが上手くいけば後は稼働してからのデータ取りだけになる。
それだけに今まで簪を含め、この打鉄弐式を組み立ててきた者達は皆が緊張して挑んだ。皆が固唾を飲んでいるため、報告の声と機械の駆動音だけが聞こえる。
全てのデータが入力済みなので
そして…
「
「「「やったぁああああ!!」」」
簪の報告に周りのメンバーたちは声を上げた。その中には涙ぐむ者、仲間同士で称え合う者、絶叫したままの者など様々であったが皆の感情は一緒である。つまり歓喜だ。
次々と同じ目的で集まったメンバーは遂に専用機の開発~完成までやり遂げたのだ。その歓声の中で簪が皆に声をかける。
「みんな、ここまで一緒に来てくれて…本当にありがとう」
「「「(がふぅ!?)」」」
(なに?何なの!?この可愛いのは!?)(高まるぞハート!萌え尽きるほどヒート!)
(クーデレ、最高です!) (ああ、天使だ…)(女神だ…)(結婚したい…)
簪が見せた感謝と感動と労わりを含めた微笑みは周りの人達の心を射抜いていった。普段は物静かでクールに見える簪の柔らかくとても優しい微笑みは破壊力抜群であったらしい。
その中で一人、彼女を称えながら次の実働テストの準備をする十千屋。どうやら何故か彼だけは軽症ですんだらしい。
ちなみに一番の重症は
「しゅ、
「いや、クーデレ系のデレはウチの一部の娘たちで慣れてるし、
俺にとっての一番はリアハの笑顔だからな」
「奥さんのですか?」
「あぁ、どんな時も微笑みをたたえて俺を支えてくれて助けてくれる。
だから俺もその微笑みに答えたいし絶やしたくない。
まぁ、大概無茶をして泣かせてしまう事もあるんだが…どうした?」
「「「「どうも、ごちそうさまでした(ザラザラザラ・・・」」」」
「あー、すまん(;´д`)」
「で…あたしを呼んだ用事っていい加減なんなのよ」
理由と共に惚れ気を吐いた十千屋にこの場にいた全員が砂糖を吐くような気分になってしまう。その有様に憮然とした態度で答えたのは鈴であった。
彼女は以前彼に言われたように甲龍を見せにココへ来たのだが、このイベントに巻き込まれてしまったようだ。
「あー、一応用事の方は終わっている。
言うと分かりづらいから一緒にアリーナに来てくれないか?
ちょうど打鉄弐式の実働テストの為に借りているから」
「ふ~ん、つまり甲龍の設定をイジったのね。で、もしもの場合はちゃんと元に戻るのよね」
「そこに関しては大丈夫だ。ちゃんと丸々コピーはしてある」
「了解、何が変わったのかしら?」
で、皆はアリーナに移動しまずは簪からアリーナ内に入った。
「観測員は些細な事も逃さないように、一夏とセシリアとISを借りられてた人は
万が一に備えて簪と共に行動してくれ」
「「「了解(ですわ)!」」」
「パパ~、私は鈴ちゃんのフォローに回るね」
次々とアリーナ内に飛び出してゆくISライダー達、そしてようやく鈴の番がきた。しかし、彼女は変わった甲龍を試したくてウズウズしているようである。
「ようやく、あたしの番ね!甲龍…出るわ!!」
「あ、いきなりアクセルを吹かしちゃ…」
「きゃぁぁあああ!?」
「あーあ…」
いつもの通りに鈴は一気に速度を上げアリーナ内に飛び出ようとしたが、日頃とは違い勢いが付き過ぎて錐揉みで飛び出していってしまった。
彼女は悲鳴を上げながらも機体を制御しようとするが、何処を止めようとしても勢いが付き過ぎてそれどころではない。
設定を変えたからといってこんな風に成るとは思ってもよらず、一夏とチェーロの手助けでようやく止まったのである。
「はぁはぁはぁ…さんきゅ、一夏、チェーロ。って、なんなのよコレは~!?
…うっ!?にゃぁあぁあ!!?!」
「うお!?誰か鈴を止めてくれ!」
予測していない事態に混乱する鈴であったが、怒声と共に身振りをしたらまたその勢いで甲龍は飛び出していってしまう。
あさっての方向に飛んでゆく鈴を見て一夏は誰かに助けを求めるが、今度は簪が助けに入った。
「大丈夫?凰さん」
「ありがとう更識さん…本当になんなのコレは? あと、あたしの事は鈴でいいわよ」
「分かった鈴、あと私も簪でいい」
「OK、簪」
憔悴した鈴を助けた簪は彼女をゆっくりと離す。すると彼女はおっかなびっくり姿勢制御を試みるのであった。
その有様は初心者の様でとても代表候補生に見えるものではない。そして、ようやく十千屋にこの有様を追求できたのであった。
「で、一体あたしの甲龍に何したのよ、ロボ頭さん」
「人の話を聞かず、行き成り飛び出した跳ねっ返りは誰だ?あと、それが甲龍本来のスペックだ。
瞬間出力と反応速度が全く別ものだろ?」
「えぇ!?コレが本物の甲龍なの!?」
「そうだ、ちょうどイメージ図が出来たところだ。
…これがさっきまでの甲龍のプログラム設定の図だ」
「「「うわぁ…」」」
「なによ、この…締め切り前とか修羅場中のマンガ家の机みたいのは」
十千屋の説明に驚く鈴であったが…次の図解に見えた人は皆が引きが入った。なにせ、資料も道具も書き途中の原稿もごっちゃになっている机がイメージ図として使われているからである。
説明の続きはこうだ。甲龍の元のスペックは人が扱うのには大変扱いづらいモノであった。試作機や実験機に有りがちだが、色々と詰め込みすぎた結果オーバースペックに成っているのである。
無論、このままでは使えないのでダウンサイジングなりをして調整するのだが…鈴の国元-中国は修正パッチを当てまくる事で対応したのである。
イメージとしては、ただ動作修正が出来ればいいとプログラムを一つずつ思いついたものをメモ用紙のように次々と積み重ねていくだけ、と言ったところか。その現状のイメージ図が
ISコアはとても賢いのでこの乱雑な机の上から今必要なものを抜き出して実行できる。が、普通のCPU等ではラグが起きまくりのバグが大量発生するだろう。
その為、十千屋は本来のスペックを発揮できる必要最低限のプログラムとパッチを選定、その結果が鈴と甲龍の暴走であった。
「と、まぁ…こんな感じだ。扱いきれないのであれば、
更に整理したパッチ郡を当てて修正と整理をするが?」
「ふ~ん、なるほどねぇ…うぁ、本当に色々容量を食っていたのね。今の空きの
大型武器が2~3つ入るくらい空いてるじゃない」
「で、どうする?」
「ふっ、決まってんでしょ!今の甲龍を扱いきってやるわよ!!
誰が手加減された物に乗って喜ぶと思ってんのよ!!!」
十千屋の説明に鈴の闘志に火が付いた。元々負けん気が強い彼女の事だ、自分の専用機と言えども手を抜かれていた事が大層気に食わなかったらしい。
意気込み身振りをするとまた…変な方向に飛んでいってしまうが、今度は自分で体勢を立て直した。
すると、姿勢制御して一息ついた彼女からある疑問が浮かび十千屋に問い質す。
「そう言えば、何で十千屋さんは甲龍がそんな状態に成っているなんて気づいたのよ」
「あぁ、不審に思ったのは鈴と一夏が戦った時だな」
彼は鈴とも一夏とも戦ったことがある。その中でどちらとも鍔迫り合いを起こしていた。その結果、彼の実感的に白式と甲龍が腕力-パワーアシストの出力で拮抗するのがおかしいと思ったのである。
さらについ最近であるが、鈴が他の一夏メンバーと軽い言い争いになっている時の台詞で疑問を深めた。その台詞とは『同じパワータイプ』というフレーズである。
一つ言いう事がある、白式は
それの発生装置『雪片弐型』自体は
千冬なら単純な力押しではなく、必殺の一撃を与えるための駆け引きとそれを行う為の機動力を優先するだろう。つまりそういう事である。
なのに甲龍と白式が拮抗する、コレに何かあると踏んだ彼は甲龍を調べた結果…パッチの存在を知ったのである。パッチ自体は高性能過ぎる甲龍の出力を制限したりスラクターや慣性制御で押さえつけているのが分かったが…まさか、こんな乱雑にされているとは思ってもみなかった結果ではある。
「…やっぱり、凄いわ。あんたって」
「師匠…スゲェ…」
十千屋の考察に舌を巻く一同、そんな僅かな違和感でここまで考えることが出来るのは流石としか言えない。
その後、簪は打鉄弐式の実働テストと慣熟飛行をし、鈴は本来の甲龍に慣れる為にとにかく動き回った。
その中で一夏が、ミスや不良を起こした簪や鈴を助けてフラグ建築や強化を行ってしまっていたのは些細なことであろう。
その頃、別々の国から飛び立つ飛行機があった。
一つはフランスから飛び立ち、金髪の人物を乗せているがその人の表情は何処か思いつめている。
もう一方はドイツから飛び立ち、銀髪の人物を乗せていた。
「ふふ、もうすぐ会えるな『おやっさん』」
こちらは金髪の人と比べ、どこか嬉しそうな雰囲気がしている。
それぞれの向かう先は《IS学園》・・・どうやら、またひと波乱がありそうだ。
はい、最後の行の通りに次回から本格的に『二人の転校生編』なります。
もう、お分かりの事でしょうが既に転校生の方は改変が入っています。
それが本格的に分かるのは次回という事で…
さて、食堂の件も甲龍の件も自分が好きな作者様のリスペクトになります。
実際、ISは兵器として使われているのに一般人の扱いの程度がゲーム:『カスタムロボ』並みの試合の為の道具という印象でした。
この辺はそのカスタムロボやメダロットにも言える事ですよね。それを指摘された時に私も衝撃を受けてISの扱いを変えました。
甲龍は面白要素でしたが、コレも上手いと思いました。
しかも、私は鈴の強化方法が分からなかったので甲龍をパワーアップと言うか先祖返り?させてみました。
では、今回は此処まででございます。
そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。