IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

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またちょいと遅れましたが、なんとか出来ました。
場面転換が多いですが・・・

では、どうぞ御ゆるりと。


IS×FA17ss:『鉄拳』

 ギシィ…フレーム()が軋む、ドッドッドッ…エンジン(心臓)が響く、キュイン…カメラ()に敵が映る。

 ガキィン…撃鉄を起こせ、体を向けろ、敵意を表せ・・・そう、私達は今を生きている。

 

 

 突如、アリーナの遮断シールドが破られ謎の敵性体らが現れた。それに対してピットにいた十千屋と試合中であった一夏と鈴は観客側の安全を確保するために遅延戦闘を行う。

 あわよくば制圧ができれば良いのだが・・・そして、『最恐』も行動を開始していた。

 

「もしもし!?十千屋さん聞いてます!?織斑くんも凰さんも!聞いてます!?

 聞いてくださいよーーー!!?」

 

 管制室ではISのプライベート・チャンネルに向かって大声で叫んでいる山田先生の姿があった。ちなみにチャンネルへの応答は声を出す必要は全くないのだが、そんなことも失念するくらいに彼女は焦っていた。

 そう、声を出す必要は無いので、一人で声を荒らげている危ない人に見えるのは間違いないのである。

 

「本人たちがやると言っているのだから、やらせてみてもいいだろう」

 

「お、織斑先生!何をのんきなことを言ってるんですか!?生徒が!弟さんが!!」

 

「だから、落ち着けと言っているだろう。そのような有様では正常な判断はできん。それにISは

 専門外だがアイツ(十千屋)が居る引き際は間違えないはずだ。それに・・・これを見てみろ」

 

「・・・え?このアリーナの遮断シールドがレベル4に設定…?しかも、扉がすべてロックされて

 ―――えぇ!?」

 

「ちっ、これでは避難も救援もできん」

 

 暴走気味である山田先生を千冬がとりなおし手持ちの端末を見せる。そこには今問題が発生している第二アリーナのステータス画面であった。

 そこから読み取れることは出入りが出来ないという事実、実質的には避難も救援も不可能ということである。

 現状を読み取り落ち着いた雰囲気で話す千冬であるが、よく見るとその手は苛立ちを隠せない様にせわしなく端末の画面を叩いていた。

 

「では!緊急事態として政府などに助勢の要請を!!」

 

「もうやっている。現在も精鋭ぞろいの生徒たちがシステムクラックを実行中だ。シールドさえ

 何とかできればすぐにでもだ。それに・・・」

 

「それになんです!?」

 

「十千屋が言っていただろ『ツケはこちらで』と」

 

「はぁ!?」

 

 今取れる手段を全て講じていると言う彼女であったが、画面に一つの変化が現われる。その変化を察した彼女はそれを山田先生に見せた。画面には『緊急事態:隔壁破壊』とある。

 

「うわぁ・・・やっちゃったなぁ、素姉ぇ」

 

「止める暇がありませんでしたわ」

 

「な、成る程…(あざな)が『鉄拳』な訳だ」

 

キラキラキラ…カッコイイ(*´∀`)bグッ!」

 

「かんちゃ~~ん!?この惨状でどうかと思うよ~!?」

 

 観客席に居たいつものメンバーは目の前の惨状に十人十色の反応を返す。彼女らの目の前にはこちら(観客席)側から向こう側まで殴り飛ばされた扉があった。

 もう一度、言おう。殴り飛ばされた扉だ。

 事件が起こり、出入り口を隔壁で閉ざされた瞬間に素子は自分の専用機を起動、そのまま隔壁を殴り飛ばして去っていったのである。

 その後しばらくは避難の手伝いをし、さらに時が経つと生徒たちのクラッキングとピットから来た轟で隔壁の解除(物理含む)が完了した。

 

「・・・っ!」

 

「待ちなさい、どこに行く気ですの箒さん」

 

「決まっているだろう!一夏を助けに行くのだ!!セシリアっお前もそうだろう!?」

 

「・・・はぁ、パターンとは言え一夏さんの事で暴走とは。わたくしも出来るものならそうしたい

 ですわ」

 

「ならっ!」

 

「しかし、わたくしの実力ではあの中に入っていけばフレンドリーファイア(誤射・同士打ち)をしてしまいます。

 箒さん、貴女も実は分かってらっしゃるのでしょう?」

 

「くっ!」

 

 彼女らの視界の先では乱戦の模様が写し出されていた。その中でも、一夏と鈴らの戦闘を邪魔しないように立ち位置を十二分に気をつけながら戦う十千屋と素子の姿がある。

 彼らは一夏たちとその敵の流れ弾も自ら相対する敵からくる攻撃も御しながら戦闘を行っていた。そのバランスは少しでも間違えば崩れてしまうだろう。そんなギリギリの戦いに飛び込めるほど自分らは強くないと分かってはいるのだ。

 

「しかしっだが、しかし!」

 

「あ、お待ちになりなさい!箒さん!」

 

「モップが逃走したー!?」

 

 だが、それでも自らの行動を抑えることは箒には無理であった。制止の声を振り切り何処へといってしまう。追いかけたいのはやまやまであるが未だに避難は完了してはいない。

 それに・・・

 

「セシリア、もしもの時の援護射撃を手伝ってくれる」

 

「ええ、分かりましたわ轟さん」

 

「(父さん、試作のTCS干渉弾…有り難く使わせてもらうわ)」

 

 二人はもしもの場合に備え、観客席に待機した。轟はカンパニーの秘蔵兵器である特殊弾頭を武器にセットしながら…

 

 

 ここで、冒頭に戻る。

 戦闘を開始した一夏組と十千屋であるが状況は芳しくはない。何故かというと、敵の行動が普通ではないからだ。

 敵機は全身に付けられた高出力スラクターでゼロ距離まで詰めれば瞬時に回避し間合いを取る、長い腕はそのまま近接武器となり自ら回転しビームの雨を撒き散らす。それに回避行動も普通ならばどんな者でも不覚を取るような位置からでも、先程のスラクターでラクラクと回避するのだ。

 今わかっている弱点は回転ビームだとビームの射程が半分になることくらいか。一応、今は善戦をしているが避難が予想よりもかかっており競技用のSE(シールドエネルギー)では長くは持たずにジリ貧となる。しかも、敵機のビームの乱射具合から見るにあちらのエネルギーはこちらよりも確実に十全であろう。

 

「くっ・・・!」

 

「一夏の馬鹿!ちゃんと狙いなさいよ!」

 

「狙ってるつーの!ていうか、近接ショットガンの半分は当たったのに大して効いてない!?

 カテーよ!コイツ!!」

 

「っ!(参ったな…回転レーザーに挟まれた!)」

 

 一夏たちは即席のコンビネーションで攻めるが敵の回避力と新たに分かった装甲の厚さで攻めきれずにいた。一方で十千屋は運悪く二体同時の回転レーザーを受けるはめになる。

 雨のように降るビームを以前使ったフリースタイルシールドで避けきれない分を受けながら躱し続ける。シールドは中々に硬いが雨のように振られ続けられる攻撃に歪んできた。

 

「イチかバチか飛び込んでみるか?」

 

 ヒュ~~~~…

 

「父様に手を出すな・・・衝撃のっファーストインパクトっ…」

 

 ガゴキィインッッ!!

 

 進退できない状況に迷っていると片方の敵の肩に何かがぶつかり大きな音をたてる。その音は硬い金属同士を盛大にぶつけたような凄まじいものだった。

 その正体は素子である。破られてた遮断シールドが塞がる前に現場へと文字通り飛んで突入したのであった。そして、音の正体は素子の専用機『FA:G(フレームアームズ:ギア) アーキテクト』の両腕についてる武装 W.U 27:インパクトナックルである。

 FA:G-アーキテクトはFAの基礎素体であるアーキテクトを模した機体で体中に様々な装甲や武装を取り付けるハードポイントがついていて、その気になれば轟たちの専用機である轟雷やスティレットにもできる。素子は追加ブースターや後述するインパクトナックルを好んで使う。

 W.U 27:インパクトナックルは炸薬式のパイルバンカーの杭を握ること位しかできない大型ロボットアームに変えたものである。その見た目を言うなれば、

 「それは 篭手というにはあまりにも大きすぎた 大きく 分厚く 重く そして大雑把過ぎた

  それはまさに『鉄拳』であった」

 と言うしかないだろう。

 

「あと、ネタはマジ。私の背にはプロペラントタンクが3本付いた高出力ブースターがある」

 

「素子…誰に言ってるんだ?でも、来てくれてアリガトな。これでだいぶ楽になる」

 

「で、オーダーは?サーチ&デストロイ?」

 

「避難が先だ。あと、こいつら色んなセンサーも勘も反応しやがる。こちらの総合戦闘力が

 六割切ったらと思ったら潰す。それまでは探る」

 

「了解」

 

 殴った反動で十千屋の側に来た素子と彼はそうやりとりする。実際この敵らは謎が多い、ISのような反応をするがどうも似てるようで違うし動き方は何処かロジック的で人工物っぽい、そしてなりよりも彼が一番気になる反応が出ているのだ。

 かくして、十千屋と素子に一体ずつ一夏組は二人で一体を相手にすることになった。

 足りない速力を補わんかのようにエクステンド(後付け)ブースターを付け肉薄する十千屋と素子のカンパニー組、なかなか有効打が出ずにジリ貧気味な一夏組と対照的であったが何合が交りあったあとで遂にカンパニー組が動く。

 装備上、近接戦の素子は何度も懐に入り殴りつける。だが、その度に違和感を感じていた。

 

「…? やっぱり変、まぁいいか…抹殺のぉ・・ぶべしっ」

 

 追いつき一発叩き込むと残数が決まっている高出力ブースター込の拳撃の二発目を打ち出そうとするが、敵機が回転し長い腕のラリアットを後頭部にたたき込められる。

 その衝撃で殴り飛ばされ彼女は頭からアリーナの側面へ飛んでいった。

 

「平気か!?素子!」

 

「だいじょうV(ぶい)…やっぱり、二発目はダメな子ね」

 

 さすがにこの光景が目に入った十千屋はグレネードで敵に目くらましをしたら彼女のもとへ駆け寄った。が、彼女は壁にぶつかる前に体を反転させ壁に着地?する。

 受けた衝撃が規定値以上だったのか絶対防御が発動し生身にはダメージはないみたいだ。

 

「そこまで元ネタに準じなくとも・・・それよりも、何か分かったか」

 

「シールドバリアにムラがあるって言うか…普通のISよりも不安定で弱い、あと殴った感触が

 おかしい」

 

「やっぱり既製のISコアじゃなさそうだな。で、殴った感触とは?」

 

「浸透勁のノリでぶちかましたけど、生身の反応じゃない」

 

「……アレは大きさに対して生命反応が小さく弱い」

 

「じゃあ、やっぱり?」

 

「ああ、()()無人機と言っていいだろう」

 

 十千屋と素子は戦闘しながらの調査の結果、あの敵機らは全て無人機と判断する。が、ある事が彼らにシコリとなって気にかかった。それは僅かにある小さく弱い生命反応…

 

「ほぼ…か。父様、アレから聞こえたノイズがある」

 

「なんだ?」

 

コロシ…タスケ…掠れてるけどこんなのが」

 

「そうか、素子…枷を外せ」

 

「…? 良いの?」

 

「あぁ一夏も鈴も、もうそろそろ限界だろ。いい機会だ、いっぺんに殲滅する」

 

「了解」

 

 十千屋が相手にしていた敵に向かうのを確認すると素子は薄目になり、自分の体の中へと意識を集中する。すると、自分の体を締め付ける鎖が見え始めた。

 手を腕を足を、と全ての動作を妨げるそれは錠前によって繋がれている。そこに鍵を差込むと…鎖は解かれ機械じけの四肢が見えた。

 心臓(エンジン)を脈動させ、シリンダー(筋肉)を凝縮する。するとフレーム()が軋みを上げた。自らの意思は遠くなり機体(素子)に乗り込んだ様に思える。

 いきなりで悪いが、素子は食べるのが好きだ。寝るのも好きだ。(十千屋)と交じることも好きだ。だが、一番古い好きは何者かと死合う事・・・

 自らの出生の一番古い記憶はひたすら体を(改造)られ試合(死合い)する事、故に彼女が一番好きなことは生きている実感を得ることなのだ。

 一番古い記憶では死合う事で死と生の狭間を感じられた。しかし、十千屋から教えてもらった日常の中で生きている実感を得た。だから、ただのキラーマシン(殺人機)(機能)は要らない。

 だが、今は十千屋の命令と自分と似ている何かの為にその枷を外したのであった。

 

 両腕についているインパクトナックルを壁に押し付け、撃鉄を引き弾く。そうする事によって素子の体は壁から押し出され目標に向かって飛び出した。

 無論、敵機はビームで撃ち落とそうとするが彼女はそれを掻い潜り、二段階加速(ダブルイグニション)三次元躍動旋回(クロス・グリッド・ターン)の合わせ技をし、相手の回避反応が間に合わない早さで背後を取った。

 そして、片腕のインパクトナックルのナックルをパイルバンカーに変え相手の腹を突き破った。

 

「これで、もう…離せられない。そして、叩き壊せないなら押し切るまで」

 

 腹を貫かれた敵機は無人機と暫定されているため未だ健在、しかしパイルバンカーの杭についている返しが敵機と彼女を繋いで固定する。

 激しくもがいて抵抗する敵であったが、暴れまわる前に彼女のほうが先に行動する。巨大なハサミとなった腕で敵の巨腕を根元からへし折り切り、刃を立てて装甲を毟り取り、抉り取る。

 W.U 28:インパクトエッジ-コレはインパクトナックルと基部を共にし、アームの部分を四本二組の高周波カッターになっているが、素子はカッターをとにかく丈夫にし基部のスライド機構と特殊油圧装置で押し切る方向にカスタムしている。

 素子とインパクトエッジにより敵機は見るも無惨な姿へと切り刻まれてゆく。ハイパーセンサーでこの様子を見てしまった一夏や鈴、まだ避難しきっていない生徒などはこの狂気の沙汰を目の当たりしてしまった。

 そして、頭と思えるような部位を引きちぎると光る何かを見つけた。それは小さめのサッカーボールくらいであった。

 

「そう、それがアナタのコア(姿)なの」

 

 素子が敵の中核を確認すると、敵は錐揉み回転して壁に近づいてゆく。その目論見を瞬時に察知して彼女はパイルバンカーの杭部分を強制排除し離れた。

 切り刻まれ毟り取られた無惨な体では勝機が無いというのに敵機は反転し、彼女へ体当たり-特攻を仕掛けてくる。

 

「でも、もう大丈夫。今からアナタを開放()してあげる。救っ(殺し)てあげる。助け()してあげる」

 

 それに臆することなく、素子はプロペラントタンクの最後の一本を燃焼し始めた。最後の一本は燃料の量も質も特別製にしてあり今までとは比べ物にならない力を持っている。

 そして、十千屋の方も決着を付けようとしていた。

 

「確かにお前らの装甲やビーム砲、機動力は驚異だろう…だが、そんな事は関係ない!」

 

 十千屋も素子と同じようにエクステンドブースターでの加速(イグニション)系の技と最近の十八番となっているマイクロミサイルの足止めで肉迫し、次々とソードを展開し敵の装甲の隙間や全身に配置されているスラクター口に突き刺してゆく。

 この敵機は先程も言ったとおりにシールドが不安定だ。故に破損を防がなくてはいけない箇所も素通してしまう。彼はそこに目を付け装甲の継ぎ目やスラクター口など装甲が覆われてはいない所を破壊してゆく。

 さらに試作のイオンレーザーカッターで前面を切りつけ、レーザーで柔らかくなった前面装甲をこんどは両手持ちの斧で叩きつけて吹き飛ばす。その仕上げとして吹き飛ばす直前に突き刺していた複数のソードを拡張領域に収納し、まだ手にある両手持ちの斧に重ねるように展開する。

 そこにはスラクターが付いた巨大な片刃両手剣があった。H.W.U 03:複合式超大型ソード・ユナイトソードである。鍔にあたるスラクターと自身のバーニアで加速し、先ほど斧で傷つけ亀裂の入った部位をめがけ突貫した。

 

「滅殺の…ファイナル・インパクトっ」

 

「貫けぇぇえええええ!!」

 

 特攻を仕掛けた敵は素子の最後の一撃で急所と思われる光る部位ごと胴体の半分を叩き潰され沈黙し、十千屋は見事亀裂をユナイトソードで貫いた。貫かれた敵は何度か痙攣して静止する。

 その一方で、一夏と鈴も最終局面に入っていた。

 

「鈴、十千屋さんの話し聞こえていたか?」

 

「聞こえていたわよ。でも、()()()()()()()I()S()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そういうものなのよ」

 

「そうだとしても、無人機ならイケる」

 

「はぁ?なに?無人機なら勝てるって言うの?」

 

「ああ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからな。だから、

 策と賭けに一つノってくれないか?」

 

「…もうちょいすれば十千屋達が来ると思うけど」

 

「でもさ、お荷物のままってカッコ悪くねぇか?後で分不相応とか実力不足とか言われるだろう

 けど…俺は嫌だ。鈴は?」

 

「そこまで言われちゃあ、女が廃るわね。一夏、どうすればいい?」

 

 十千屋達が決着をつける前、こちらも動き出していた。

 実はこの四人は互いの状態がわかるようにオープンチャンネルを開いたままの状態で戦闘している。その中で一夏は十千屋たちがアレが無人機ではないかという話を耳にした。

 彼もこの敵に対してどこか違和感を感じていて、それが機械的だという事に話の内容で気づいた。それが本当であればやりようがあると。

 二人の残っているSEは攻撃用含め心持たない数値である。本当に・・・全てのエネルギーが一括使用というのは不便どころか何かあった時に危険なのではと思うが、その話はさておき。

 現在の二人の火力では敵を機能停止(ダウン)させるには勝率が低い、それを引き上げるためにも強力な一撃が必要だ。その強力な一撃には彼は心当たりがある。白式唯一の武器である雪片弐型だ。

 彼は常々考えていたことがある『雪片弐型』の威力は、零落白夜を含めて高すぎるという事を。そんな物を訓練や学校内の対戦で使うわけにはいかないが、この状況でしかも無人機であるならば最悪の事態を想定しなくてもいい。ただ相手が壊れるだけだ。

 彼の中で判断材料が全て揃った所で、鈴にある事を頼んだ。「自分の合図で最大出力の衝撃砲を撃ってくれ」と。

 彼女は怪訝な表情をするが了承する。それを確認した一夏は突撃姿勢に入ろうとしたがその瞬間、アリーナのスピーカーから大声が響いた。

 

「一夏ぁっ!男なら!!男ならそのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」

 

 大声の正体は中継室から館内放送を使って叫びだした箒であった。彼女は自分にできる事として一夏の応援・叱咤激励をしたとの事だろうが悪手である。

 敵機は館内放送の源を新たな障害物と認識したのか腕…武装を中継室の方に向けた。しかも、タチが悪い事に中継室には彼女が入ってきた時に跳ね飛ばされ気絶している審判役とナレーター役がいる。

 一夏はこの状況に逃げろと言っても間に合わない事を瞬時に理解した。だから、敵を倒すことで状況を打開する。

 

「鈴、頼む!」

 

「了解っ!って!?どきなさいよ!」

 

「いいから撃て!」

 

 「どうなっても知らないんだから!馬鹿ァぁあぁああ!!!」

 

 最早、発射直前の敵に向かって加速する一夏、その直後に指示を受け衝撃砲最大出力の姿勢に入る鈴なのだがその射線に彼が躍り出る。彼女が警告するがかれはそのまま撃てと言う、一刻も争う事態にはんばヤケで彼女は衝撃砲を射出した。

 射線の前に出た彼は背中に高エネルギー反応を受け、『瞬時加速』を作動させた。

 ここで一旦、『瞬時加速』の原理を説明しよう。ISのスラクター又はバーニアなど機動装置からエネルギーを放出、それを内部に一度取り込み、放出する。その際に得られる慣性エネルギーを利用して爆発的に加速する。ちなみに速度はそのエネルギー量に比例する。

 つまり彼の策は、衝撃砲のエネルギーを自分の瞬時加速に足して相手に避けきれないスピードを得る事であった。

 

 「―――ウオオオッ!」

 

 一夏は衝撃砲を受ける感覚を体が軋む音として感じ、右手の『雪片弐型』が強く光を放ちながら敵機に向かって加速する。

 そして、彼は極限状態に入った。感覚、集中力、力が湧き上がり普段は情報で見る零落白夜の発動も感覚で分かる。それは白式との確かな一体感、即ち『人機一対』となった証拠である。

 しかし、悲しいかな・・・彼が加速に入った瞬間に敵機は中継室に向かって死線を放っていた。眩しいまでの光が中継室を飲み込もうとしたが…それを遮る一つの影が有り、それは普段彼らが目にしているロボットの影―そう、十千屋であった。

 彼は自分の相手にしていた敵をユナイトソードで貫いた時にこの状況に気づき、ソードを放ってその身を盾にしに来たのだ。ダメージが蓄積しているフリースタイルシールドを掲げ、致死的なビームをその身に浴びる。

 盾となった十千屋は自身の二つのシールドが融けてゆくのが分かるが、引くわけにも行かない。己の死をも覚悟したとき、一閃が走った。

 

 一夏の必殺の一撃が凶光を発する右腕を切り落とす。だが、それだけではない。

 

「メガスラッシュエッジッ!全開だぁああああ!!!」

 

 左腕に全てのパーツがまとまり巨大なセイバーとなったメガスラッシュエッジが敵の斜め下から斬り上げた。前のめりからの文字通りのアッパーカット、PICの技術が応用され巨大な推進力をもった輝くフィールドソード(力場剣)は敵の右脇腹から左胸までを切り裂く。

 腕を切り落とされ、胴体に巨大な傷を負った敵は機能不全に陥りかけるが反撃を試みる…試みたが、それは叶わなかった。

 

「狙いは?」「バッチリですわっ!」

 

 零落白夜のシールド無効効果によりエネルギーシールドが失くなった状態で、ブルー・ティアーズの4機同時狙撃が貫く。これも一夏の策、先程の零落白夜で遮断シールドを切り裂きブルー・ティアーズによる無人機械には予測できない認識外からの攻撃であった。

 それを行うため事前にプライベートチャンネルでセシリアに頼んでいた。タイミングはギリギリであるが戦ったこともあれば何時も練習を共にしていたからこそ可能だと確信していたのである。

 そして、その同時刻-十千屋の倒したはずの敵機がそちらを狙っていたが謎の爆発を起こし今度こそ機能停止する。その正体はセシリアと同じく援護待機していた轟である。

 

「そちらもお見事ですわ。まさか、アンチマテリアルライフル(対戦車・超長距離狙撃銃)の2丁持ちで狙撃を行うとは…」

 

「使い慣れているから、どうしたこともない」

 

「しかし、その弾頭は・・・」

 

「企業秘密よ」

 

 轟はH.W.U 01:ストロングライフル、カンパニー製のアンチマテリアルライフルでシールドに干渉し無効化する()()のTCS干渉弾で遮断シールドと敵機のシールドに穴を開け、十千屋が開けた傷に炸裂弾を撃ち込んだのである。

 ちなみに弾はほぼ同時に撃たなければシールドの穴が塞がってしまう為に轟は其々の手と脇でストロングライフルを扱うはめとなった。

 

「ふぅ、何とかなったか」

 

「一夏!無事!?」

 

「あぁ、大丈夫だけど…もう休みたい」

 

「それだけ言えれば大丈夫さ。敵を倒そうとしたのは欲張りすぎだが、結果は重畳。

 良くやったな」

 

「「十千屋(さん)!」」

 

 敵を倒した一夏の前にアリーナ内にいたメンバーが集まる。この非常事態を乗り切りったと誰もが思っていた。

 そう、思い込んでしまったのだ。

 

「て、十千屋さん無事ですか!?」

 

「そうよ!あんたビームに飲み込まれて!?」

 

「あぁ、大丈夫だ。ちょっとシールドと腕の装甲が融けて融着してはいるが」

 

「「それは大丈夫だと言わねぇよ(わよ)!?」」

 

 ――敵の再起動を確認! 警告(アラート)! ロックされています!――

 

「!?」

 

「「えっ・・・」」

 

 機能停止したと思われた一夏が倒したはずの敵が再稼働し、残った腕を最大出力形態(バースト・モード)に変形しビームを放った。

 完全に虚を突かれた一夏と鈴は動けず、唯一動けた十千屋は二人を庇い背にその攻撃を受ける。敵自体は素子と轟が完全にトドメを刺したが、一夏はそれを目にすることはなかった。

 十千屋が攻撃を受け、崩れ落ち倒れるのを追うように一夏もまた今までのダメージと疲労で気を失うのであった。




さて、感想で先にツッコまれる前に言いますが・・・
別にアニメで言うと、ED近くの映像でデスポエムが流れたりオールフェエンズとかになっていたりしませんから!
ちゃんと男性陣は快気退院できますから!ついでに入院なんてしませんから!!

さて、今回の反省点は場面転換が多いことですかね?
一応、それぞれの場面が終わってから移ってましたが、話を短くして話数で分けたほうが良かったですかね?
あと、一夏の方がどうしても原作よりな戦闘シーンに成るのもどうにかしたほうがいいか?

そして、《ふたりの幼馴染編》は原作だと後ちょいとで終わりますが・・・ここでは色んな所の挿話があるのであとちょいと続きます。話の内容的には2~3つほど、転校生を待っている人たちには申し訳ありませんが、もうちょっとのお付き合いをお願いしたします。

では、今回は此処まででございます。

そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。

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