さすがにこれは唐突すぎるかなぁ、と書き終わった後も1ヶ月くらい悩んでたんですけど、いい案が思い浮かばなかったのでそのまま投降します。
まぁ二次創作だからってことで許してくださいな。
ちなみに上と下に分かれてます。
『いくよ、若サマ』
そう自信に満ちた声で言う姉の顔が
『楽しかったよ、またやろうね』
そう言って笑う姉の顔が
『・・・、おう』
少しの悲しさと多くの喜びをごちゃ混ぜにしたような表情をした若の顔が
最近、頭から離れない。
◇ ◇ ◇
弟の様子がおかしい。
いきなりなんだって思われそうだけど、でも実際そうなのだ。
具体的に言えば、ぼーっと空中を見つめることが増えた。
稽古に集中出来てなかったり、人の話を聞いてなくて周りと違う行動をとってしまうなんてことが続いている。
これはマジで非常事態である。
だってあの弟だよ?後々のソウエイ様だよ?
原作では必殺仕事人!って感じだった彼が、まさかのミスを連発しているのだ。
一体何があったんだか・・・。
「という訳で、相談に来ちゃいました。誰か助けてー」
「なにが『という訳で』だコラ」
「お、なになに?某赤ん坊軍人の真似?」
「は?なにが言いたいんだ」
通じなかった。悲しい。
「でも、あの蒼髪の彼らしくないというのは最もですわ」
「私も思います!あいつ、この頃は手合わせの最中でも気が抜けていて、正直練習にもなりません!」
「まぁ確かにそうだよなぁ。あんなあいつは初めて見たぜ」
私が相談相手に選んだ姫様、紫髪ちゃん、若サマがそれぞれ発言する。
やっぱり、皆おかしいとは思ってたらしい。
「そうなんだよねぇ・・・。弟がなんであんなになったのか、心当たりない?」
「んなのお前のスキル使えば一発だろ。心読めるんだっけか」
「考えたけどやりたくありません。プライバシーの侵害って感じがするし、どうせなら弟の口から聞きたいから」
「ぷらいばしー」
「じゃあ聞けばいいだろ」
「・・・・・・嫌だ」
「なんで」
「無理矢理聞いて嫌われたら辛い」
「あいつそんなんで嫌いになるヤツか?」
「どこに地雷があるかなんてわかんないじゃん」
「姐さんはわからないんですか?あいつが変になった理由」
「わかってたら相談してない」
「・・・確かに」
そう。姉である私ですら、弟の変化の理由がわからない。
家族なのに。姉弟なのに。
前世では得られなかった、お互いを想い合い、助け合い、時にはケンカしたりして、一緒に笑ったり泣いたりできる、側にいるだけで安心できるような、そんな存在。
友達とはまた違った、正しく血の繋がった関係。
あいつは、私の弟は、前世で出会ったどの『親』とも『兄弟』とも違った。
初めての家族だった。
力になりたいんだ。
この世界に転生して、初めて手に入れだ幸ぜを失いたくない。
家族だと、姉弟なんだと心から思えた存在を、助けたい。
私なんかに、出来ることがあるなら。
「どうしたらいいかな・・・」
口から出た声は、私の予想以上に情けないものだった。
◇ ◇ ◇
「結局わからず仕舞いかぁ・・・」
若サマや紫髪ちゃんだけでなく、姫様にもわからなかった。
「なにも出来なくてごめんなさい」なんて謝られちゃったけど、姫様達はなにも悪くない。
逆に何度も何度も考えてくれて本当に感謝している。
そうだ、悪いとすれば。
「やっぱり、私だよなぁ・・・」
姉なのに、なんの力にもなれない私が悪い。
弟のことも、知ってるつもりになっていて実はなにも知らなかったのかもしれない。
私には『転スラ』の原作知識がある。
この世界の未来を知っている。
だけど、それだけだ。
ただそれっぽっちのことを知ってるだけで、弟や皆のことまで知ってる気になってた。
「駄目だなぁ・・・。ホント、バカみたいだ私」
弟が大変なのに。
なにもしてやれないことが悔しい。
「・・・あはは、姉失格ってことかなこれは」
返事が返ってこないことが、こんなに悲しいなんて知らなかった。
前世じゃ当たり前のことだったのに。
知らないうちに、随分とこの世界に馴染んでいたらしい。
どうしようもないことがぐるぐると頭の中を巡っていく。
ハロー、前世の私。私は今、弟が悩んでるのを見てるだけしかできない阿呆になっています。なんてね。
「・・・あ」
カサリ、と音がなる。
地面の草を踏んだ音。私じゃない誰かが来た音だ。
振り返らなくてもわかる。
だって私達は。
「やっほ。珍しいね、こんなとこに来るなんて」
「・・・姉さん」
ねぇ、たった一人の弟。
今の私は、貴方のためになにが出来ますか。
ちょっと短かった。
代わりに下は長め。