今回かなり短いです。
最後テキトーに纏めた感満載。
最初のシーンが書けたので私は満足です。
その日は、随分と調子が良かった。
刀が迫る音。
交わる毎に飛び散る火花。
相手の視線、呼吸。
一挙一動。
力の流れ。
心音。
静寂。
そして。
それら全てを塗り潰す、甲高い音。
「強くなったのぅ・・・・・・」
それは、私が初めて師匠に勝った日。
◇ ◇ ◇
「そかそか、遂に剣鬼の旦那に勝ったべか!流石だべや」
「でもまだたったの一勝だし。次はスキル無しで勝てるようになりたいな」
「ほ~っ。目標高くていいんでねぇべか。これからも頑張れよ!で、今日の依頼はなんだべ?」
「その、実は―――」
あの日から数日。
私が師匠に勝ったからといって今までの関係が壊れるようなことはなく、いつも通りの騒がしくも平凡な日々を送っていた私は、修行を抜け出して黒好きおじさんの元に来ていた。
え、誰それって?ほらあれですよ、後のクロベエのお父さん。
クロベエと同じく、この人も刀鍛冶やってるんだよね。
私が今まで使ってた刀もおじさんが打ったものだし。
と、それはいいとして。
「―――まずはこの刀を見てほしいんだけど」
「ん?これは・・・ヒビが入っとるな」
「そうなんだよね。師匠との手合わせの時にやっちゃったみたいで。それで、師匠に
『折角の機会じゃ。刀を新調してみてはどうかの?』
と言われて」
「なるほどな。つまり、新しい刀を打ってほしい、ってことだべか?」
「うん」
これが、私が今日ここに来た理由。
気に入った刀だったとはいえ、ヒビ入っちゃ直したりしない限り危なくて使えない。
それならいっそ、ということである。
師匠が言うには、元々この刀と私の力は釣り合いがとれていなかったとかなんとかで、もっと頑丈なものを使った方がいいと前々から思っていたらしい。
「で、やってくれる?」
「そうだな・・・今打ってるのが終わったら少し暇になるし・・・・・・よし、剣鬼の旦那に勝った記念だ、やってやるべ!」
「ほんと!?」
良かった。これで駄目だったらどうしようかと思ってたよ。
「で、どんな刀がいいんだべか?」
「えっと、長さはは前と同じ位でいいんだけど、もっと頑丈なものがよくて、」
とそこで閃く私。
どうせなら、あの刀造ってもらえないかな?
いや、無理な気がしてならないけど、あのクロベエのお父さんだしなんとかなったりして・・・
「・・・普段は竹刀なんだけど、高速で振ったら刃が現れる刀とか」
「意味わからないべ」
駄目だった。残念。
モドキとは言え時雨蒼燕流を使ってるんだし、夢だったんだけどなぁ時雨金時。
まぁいいや、だったら―――。
◇ ◇ ◇
それから一月。
「ほう・・・それが、お主の新しい刀か」
「そーです!」
私は修行場に来た師匠の元に真っ先に訪れていた。
新品の黒い二振りの刀を持って。
「まさか二刀流とはのう。驚いたわい」
「前からやってみたいと思ってたんだよね。無理そうだったらやめるけど」
「いや・・・お主には二刀流のほうが向いとるかもしれんな」
あらマジですか。
ならばとことん練習して早く慣れないとね。
黒好きおじさんが打ってくれたこの刀、ランクはノーマルだが、それでもレアにかなり近いノーマル。
今おじさんに打てる最高級のものらしい。
黒い刃を空に掲げると、太陽の光に照らされて綺麗に輝く。
・・・うん、いいね。凄くいいよ。
頑丈さも、魔力の馴染みやすさも申し分無し。
この武器と一緒に、私はこれからも頑張っていくんだ。
手始めにスキル無しで師匠に勝てるようになろう。
私は、まだまた強くなれる。
「これからも精進するのじゃぞ」
「・・・はいっ」
とある師弟が未来を見据えて笑い合う。
そんな、ありふれたような日常の一コマ。
次は!ソウエイ回!の、予定!!