『チートすぎないチートを目指します』
と書かれていて
それだ!
と思いました。
それは、今日の朝の出来事である。
久しぶりに稽古が休みの日で、何時もよりも少し遅い時間に起きた私は、一人自主練をすべく外に出た。
今日は剣ではなくスキルの訓練をするつもりだった。
私がこの世に生まれた時から持っているユニークスキル、相手の心を読む『
前は上手く扱えていなかったが・・・。
いつまでもあの頃の私と同じだと思ってもらっちゃ困るってものだ。
そう、私はレベルアップしたのだ!
あの頃よりずっとスムーズに扱えるようになったし、自分と同等レベルの相手であればそう簡単に
もしかしたら以前は失敗したあの技も今なら使えるかも・・・。
クフフフ、夢が広がるぜ!
ということで、某南国果実や某最凶悪魔のような笑みを浮かべながら、強くなったスキルを更に磨くために今日は頑張ろうと思っていた。
そう、本来ならばそうなる予定だったのだ。
一人隠れた場所練習しようと私お気に入りの秘密特訓場へ向かう最中、剣と剣の打ち合う音が聞こえた。
うげ、もしかして先客がいるのか?
折角私しか知らないお気に入りの場所だったのに。
なんだかムカムカしてきて、取り合えず見知らぬそいつらを追い出すべく道を急ぐ。
そして見えたのは、私の予想とは違う光景だった。
そこにいたのは、子供のオーガ一人と、冒険者らしき人間が4人。
なにがあったのかはしらないが、どうやら戦っているようだ。
オーガの方は女の子で、紫色の髪を後ろで一つに結んでいる。
・・・なーんか見覚えがある気がするなー気のせいかなー。
うん、一回それは置いておこう。
オーガは戦闘種族で決して弱くない、というかここジュラの大森林にいる魔物の中では上位に食い込む強さだが、子供が4人も相手にするのはさすがに苦しいだろう。
現に女の子は人間に囲まれて苦しそうな表情をしている。
あの子、このままじゃ殺られるな。
同族が殺られるのを見るのは忍びない。
加勢しようと腰に手をあてて、今日は刀を持ってきていないことを思い出す。
失敗したかな、と思ったところででふと閃いた。
そうだ、あいつらに実験台になってもらおう。
見たところ、4人の人間のうち2人がBで、後の2人がC+といったところだろう。
あれ位ならば私が負けることはないはず。多分。
今の私のスキルが何処まで通用するのか、試させて貰おうか。
ニヤリと口元を歪め、簡単に身体をほぐし、タイミングを見計らって――。
◇ ◇ ◇
Bランクの冒険者であるケインは、目の前の少女のオーガを見やり勝利を確信した。
オーガはBランクに設定されている魔物だ。弱くはないが、こっちにはBランクが2人、さらにC+が2人もいるのだ、負けるはずがない。
彼らは特にオーガ退治の依頼を受けている訳ではなかった。
ただ、途中で出会ったから戦った、それだけである。
ケインは戦うのが好きだった。
特に、弱くて意思のある魔物を狩るのが大好きだった。
自分の強さに自信が持てるから。
それに人間の敵とされている魔物であれば、殺しても罪にはならないのだ。
そして今日も、出会っただけの罪のないオーガの少女を、魔物であるという理由だけで排除しようとしていた。
四人でオーガを囲み、さぁチェックメイトだと気分の高揚したその瞬間、
「――疑似死ぬ気の零地点突破・改」
知らない声が聞こえた。
「うあぁぁあぁぁぁあ?!」
「ガルマー!!?」
いきなり叫び声をあげた仲間のほうを見る。
ガルマーは力が抜けたように倒れこんだ。
そこを容赦なく追撃しガルマーを気絶させたのは、今までで相手していたのとは別のオーガだった。
「ふぅ・・・良かった。上手くいったね。にしてもやっぱり人間はあんま良いスキル持ってないねぇ」
あおみどり色の髪を首の後ろあたりで小さく結び、左目の下には深緑の刺青があるオーガの少女。
オーガらしい大きな身体に、額には一本の白い角が生えている。
「てめえ、俺の仲間に何してくれてんだ!」
「何って、気絶してもらっただけだけど?別にあんたらなんかどうでもいいんだけどさ、
そう言って笑うあおみどり髪のオーガ。
周りの仲間は警戒し、ロングソードを構える。
「ふん、だからって俺達相手にあんた一人で勝てると思ってるのかよ?だとしたら大間違いだぜ」
「そんなことないよケインさん。だって私あんたらより強いし」
「あぁ?ふざけんなよてめえ。殺されても文句いうなよ?」
「言わないよ。だって私死なないし」
終始おちゃらけた態度で話す相手に、ケインは苛立ちが抑えきれなくなった。
「やっちまえジェニス、バロッサ!!」
ケインの掛け声により、仲間の二人が攻撃を開始する。
終わったな、ざまぁみやがれ。そう思った。
しかし。
「うーん、この程度?こんなちゃっちい剣術じゃ私の弟にだって勝てないよ?」
ジェニスとバロッサの攻撃は全く当たらない。
何故だ、さっきの紫髪オーガには勝てたのに、同じオーガの子供に何故。
焦ったように攻撃していく仲間だが、すべての攻撃がかわされ、そして相手オーガに触れられた瞬間、ガルマーと同じように倒れた。
「な・・・なんなんだよ、お前・・・!!」
ケイン達は知らなかった。
紫髪のオーガに勝てたのは、彼女がまだ戦闘慣れしていない少女だったからであるということを。
ケイン達は知らなかった。
今目の前にいるあおみどり髪のオーガが、この里において一、ニを争う実力者であることを。
「それじゃー、おやすみなさい、ケインさん♪」
――そういや、なんでこいつ俺の名前知ってんだ?
そしてケインは意識を失った。
◇ ◇ ◇
ふぅ、終わった終わった。
ちょっとは苦戦するかなーって思ってたけど案外早く終わったな。
疑似零地点突破・改も上出来だったし、相手のパーソナルデータの読み取りにも成功したし、私的には大満足である。
『
魔素借りまくったから今の私はかなり強くなってると思う。
今なら爺さんにだって勝てそうだ。
まぁ本来の実力じゃないから今勝てても嬉しくないけどね。
「大変だったね、大丈夫?」
ここでちょっと忘れかけてた紫髪ちゃんに話しかける。
見たところ、そこまで深い傷はなさそうである。
無事だったか、よかったよかった。
「え・・・あ、大丈夫、です。その、ありがとうございました」
おう。
思ってたより礼儀正しいな。
まさか敬語使われるとは思ってなかったよ。
「ん、良かった。じゃあ取り合えず傷の手当てしよっか。ついてきて」
「そんな、悪いですよ。大丈夫ですから気にしないで「だーめ、いいからついてきて」・・・はい」
こうして私は紫髪ちゃん――後の
このあと私の作った朝食の残りを振る舞ったら、彼女にやたらなつかれた。
戦闘シーン苦手じゃくそぅ・・・。
次はシュナちゃん出したいな。