どうやら腐女子がテイルズオブヴェスペリアの世界にまよいこんでしまったようです。   作:rimuku

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腐女子と出会い

わたしは頬にべっとりとついた魔物の血を手でぬぐった。

 

もうどれだけの魔物を殺してしまったんだろう。

最初はわりと魔物を殺すのはおっくうだったが、なんだかなれてしまった。

 

一発で殺せるのはありがたい。

 

 

「...はっ」

 

しばらく魔物の死体を見ながら立っていたわたしは、ふと我に帰った。

素材素材...。

 

わたしはこう見えてもヴェスペリアは十一回以上周回済み。

素材の名前も覚えているので、だいたいどこが売れる素材になるかわかる。

 

いやあ、まさかこんな知識がリアルで役立つ日がくるなんてなあ...

なんだか変な気分だよ。

 

 

死体からは臓物が飛び出ているが、素材の部分は無事だった。

倒した魔物から素材を剥ぎ取る。

 

我ながら素手でうまく解体できるようになったと思う。

 

解剖なんて中学のときやった理科の授業でのイカ以来だよ...

授業のとき、サイコパス気取ってた厨ニ病の男子がわざとらしく笑いながら解剖してたのが随分印象にのこっている。

 

わたしは昔のことを真顔で思い出しつつ手をはらった。

服には魔物の血がべっとりとついてしまっている。この服はもう使えないや。

 

 

十分過ぎるくらいに素材もあつめたし、

なんでこんなに持っていたのかは謎だが、魔物が結構ガルドを落としてくれた。

 

装備やアイテムもこれだけあればなんとか揃うだろう。

わたしは大量の素材をもってカプワ・トリムへと歩みを進めた。

 

 

 

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「アッ...アヒョッ...これくだしゃい...」

 

うわずった声でわたしは店員に尋ねた。

 

ああああ!!噛んだ!!

こんな場面でもコミュ力が必要になるとかわたし涙目。

 

わたしは服と武器を一通り買い揃え、今夜の宿となるカプワ・トリムの宿屋に向かった。

 

買ったものは防具を兼ねた服一式、武器になりそうな大きな弓、アップルグミなどの回復アイテムだ。結構買い込んだが、相当数の魔物を狩ったお陰でまだだいぶガルドには余裕がある。

 

 

わたしは買ったばかりの大きな弓を触ってみた。

漆黒の艶やかな弓に美しい装飾がなされていてなかなか芸術的だが、大きさが半端じゃない。

なんとわたしの身長と同じ位。

 

わたしは弓道部だ。わたしには明らかにサイズが大きいが、わたしが唯一扱える武器っぽいものは弓だけなので、買わざるを得なかった。

むしろ和弓っぽくて好都合かもしれない。

 

武器屋さんによると、この弓は闇属性の攻撃や術の効果を高めてくれる効果があるらしい。

武醒魔導器(ボーディブラスティア)がないからどうしようもないんだけどね!

 

 

 

夜の戸張が降りたこの町は美しく、

建物から漏れる光に紛れ、夜空の星が凛々と輝いている。

凛々の明星はどれだろう。

 

昼間はあんなに活気に溢れていた通りは静まり返り、耳に心地よい波の音だけが響く。

 

 

今は何時くらい...っていうか、

ユーリ一行はどこにいるんだろう。

 

見たところ町にある結界魔導器(シルトブラスティア)も起動していたし

空に星喰みも現れてなかった上、この町からでもみられるカプワ・ノールの天候は悪くなかったから

今は多分ゲームで見れた期間の序盤か中盤辺りのはず。

 

運が良ければユーリたちを生で見られるかもしれない。グフフ...

 

 

わたしはとても気持ち悪い笑みを浮かべつつ、ちょうどついた宿屋の扉に手をかけた。

扉についた鈴が、チリンチリンと音をたてる。

 

わたしは猫背でいそいそと宿に入った。

 

 

宿の中はクリーム色の清潔感のある壁に、漆の塗られた艶のある木の床の

なかなかイケてる内装だ。

 

テイルズの建物っておしゃれだよね。

これぞRPGの宿。

 

 

「おういらっしゃい。お嬢ちゃん一人かい」

「へっ!はい!」

 

 

宿屋のおっちゃんに話しかけられてビビる。

 

ひきつっているであろうわたしの顔を気にもとめず、

おっちゃんは話を続ける。

 

「お嬢ちゃん変わった格好だねえ!

それに魔物の血がついてるってことは...

どっかのギルドの奴か?」

 

「ま、まあそんな感じです!

その、ちょっと魔物討伐の依頼がありまして...

今夜泊めて下さい!」

 

「おうよ!まいど!」

 

怪しまれないよう適当に言い繕う。

今のわたしは買ったばかりの大きな弓も持っているので

それっぽく見えるはず...

 

 

宿屋のおっちゃんに部屋を案内してもらい、

わたしは崩れ落ちるようにベットに寝転がった。

今頃になって緊張が溶け、どっと疲れが押し寄せる。

 

思えばわたしはいきなり知らない土地に放り出されたんだ。

今まで自分は、不安で仕方無かったのだとようやく気がついた。

 

...家が恋しい。お母さんに会いたい。

 

 

わたしは気がついたら目を閉じて、深いねむりの中に落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

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翌朝。

 

カーテンを閉め忘れてしまっていたのか、

窓から射し込んだ朝日が眩しくてわたしはすぐに目を覚ました。

 

「んー...スマホスマホ...」

 

わたしは手探りでスマホを探す。もはや癖だ。

しばらく手をふらふらとさせてわたしは気がついた。

 

そうだった...ここにそもそもスマホない...ここテルカ・リュミレースだよ...

 

 

わたしは枕に顔を埋めて落ち込む。

よくよく考えてみれば、この世界にはゲームどころかネットもない。

 

ネット環境がないのはわたしにとってなかなか由々しき事態だ。

フレユリが補給できない。ワイ死んでまう。

 

そういえばいきなりここに来てしまったせいでツイッターを放置しちゃってるなあ。

フォロワーさんがリプくれてたらどうしよう...なんの報告もしてないから申し訳ない...

 

 

 

わたしはもそもそと昨日買った服に着替えはじめた。

TAKENOKOシャツは念のため洗って持っておく。

 

昨日買った服は暗い紫を基調とした緩やかなローブだ。袖は振り袖のように大きく、全体的に和風な印象を受ける。どうやらこのローブは灰色のマフラーがセットになっているようなので、ローブに似たような雰囲気のマフラーを巻いてみた。暖かい。

左側に紫の花がついた(かんざし)のような髪飾りをつけ、わたしは鏡のまえで髪を整える。

 

...すごい。わたしの顔がテイルズ風になってる...

 

鏡に映ったわたしの顔は、ステータス画面で見たあのアニメ調な感じになっていた。

 

服はモブっぽくないはずなのになぜか全体的にモブっぽい。意味がわからないよ!

 

 

わたしがほったらかしになっていた他の荷物を整理していると、

隣の部屋から物音と話声が聞こえてきた。

 

隣の部屋に誰かが泊まっているようだ。

それにしてもお隣さんいい声だな...

まるでcv鳥海さん...

 

 

...まてよ。

 

ここはテルカ・リュミレースだ。

 

そしてこの世界でcv鳥海さんのキャラクター。

 

...。

 

 

 

ユーリィイイイ!!それユーリじゃないですかやだ!!!

 

 

い"え"あ"あ"あ"あ"あ"!!

どうしよう!!!

お隣にユーリたちが!!土下座するか!!!

 

 

わたしは一人興奮しながらベットの上で土下座した。

それは、他人から見ればさぞ訳のわからない光景だっただろう。




森園よだか...腐女子主人公。ツイッターのフォロワーは400人くらい。

ユーリ・ローウェル...テイルズオブヴェスペリアの主人公。黒髪長髪。

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