彼女と共に歩く   作:矢田 レキ

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俺は今日、新たな一歩を踏み出す

いつからだったか、俺達の関係が間違った方向に進んだのは。俺はいつも依頼が来るたびに自分の身を削って問題を解消して来た。別に褒められたかった訳では無い。奉仕部を、あいつらとの関係を守るため、ただそれだけの理由だった。周りからは責められてばっかだったが、あいつらは俺を見捨てない。分かり合える、本物になれる、そう思ってた。

 

 

けど、本当にそれが俺の求めていた物か?。

 

 

ふとそう思ったが、あまり深くは考えずに俺達は依頼をこなしていった。でも修学旅行で

 

 

 

「あなたのやり方嫌いだわ」

 

 

「人の気持ちもっと考えてよ!」

 

 

 

そうあの2人に言われた。どうして?お前達なら分かってくれると思ってたのに....

 

いや違うな。別にあいつらが悪かった訳では無い。ただ、俺があいつらに理想を押し付けたのが間違いだっただけだ。1番嫌っていた事を自分がしてしまうとはな...

 

 

 

「最初から俺達の関係は間違ってたんだな」

 

 

 

なら終わりにしよう。こんな間違った関係を。

お互いがお互いに理想を押し付ける関係を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奉仕部を辞めたい?」

 

 

 

平塚先生が驚いた表情で俺にそう言ってくる。

 

 

 

「はい」

 

 

 

無理もない。いきなりそんな事言われれば誰だって驚くだろう。だけど俺はもう奉仕部に戻るつもりはない。

 

 

 

「いきなりそんな事言われてもな。修学旅行で何かあったのか?」

 

 

 

「まぁ、色々と思う所がありまして。奉仕部に自分が求めているものはもう無いな、と」

 

 

 

一度壊れた関係はやり直せない。

 

 

 

「.......そうか」

 

 

 

短くそう言って先生は机を探る。

 

 

プリントを渡してきた。退部届けだ。が、いきなりの事で俺はそれを取ることが出来なかった。

 

 

 

「ん?どうした?取らないのか?」

 

 

 

「いや。何があったか聞かないんですか?」

 

 

 

先生の事だから反対すると思っていたけど。

 

 

 

「私としては雪ノ下や由比ヶ浜と一緒に成長していく姿を見たかったのだがね。しかたないさ。彼女達とは求めているものが違ったのだろう?」

 

 

 

驚いた。そこまで分かるものなのか。

 

 

 

「別に大した事では無いさ。ただ、あいつもそんな顔をしていたからな。比企谷もそうなんだろうと思っただけだよ」

 

 

 

「あいつ?」

 

 

 

「陽乃だよ。あいつは昔っから人の上に立っていたからな。そういう関係に憧れてるんだよ。案外、君達2人ならなれるかもしれないな、本物の関係に」

 

 

 

雪ノ下さんも俺と同じ事を考えていたなんて。

あの人の仮面の奥には、他にもどんな事を思っているんだろうか。今度会ったら聞いてみたい気もする。

 

 

 

「それで、いつプリントを取ってくれるんだい?いい加減腕が疲れたのだけれど」

 

 

 

「ああ、すみません」

 

 

 

すっかり忘れてた。俺はプリントを受け取り名前を書き付けた。書いてる途中、少し寂しさを感じたがそれでも最後まで書ききった。

 

 

 

「では、これで」

 

 

 

「ああ。退部届け。しっかりと受理しよう。しかしどうするのかね?雪ノ下や由比ヶ浜には私から説明しておこうか?」

 

 

 

「いえ。自分で言いに行こうと思います。新しい一歩を踏み出す為に過去とはキッチリと別れようと思いますから。

 

 

 

「そうか。それにしてもこれで私と比企谷の関係もただの教師と生徒になってしまうのか。すまなかったな比企谷。私は良かれと思って奉仕部に入れたのだが、それは間違いだったようだな」

 

 

 

やっぱりこの先生は優しい。

 

 

 

「そんな事言わないで下さいよ先生。俺は先生に感謝しているんです。間違った関係だったかもしれませんがそれでも、これまでの事は俺にとって掛け替えのない大切な思い出です。先生があの時俺を奉仕部に入れてくてたからこそ今があるんです」

 

 

 

そう言って俺は職員室の扉を開ける。

 

 

 

「それに俺と先生の関係は終わってなんかいませんよ。また一緒にラーメンでも食べに行きましょう」

 

 

 

そのまま廊下に出て扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう比企谷」

 

 

 

平塚静はその名の通り静かに涙を流していた。




初投稿です。いやー書いてみて分かる大変さ。こんな大変な事を皆やってるんですね。尊敬しそうです。

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