メイン盾の軌跡   作:爆焔特攻ドワーフ

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入学式

―――新入生の方はこちらでーす。

 

声が聞こえた。

そちらを見てみると、紅い制服を着た男子生徒が背が小さい女の子に話しかけられていた。

―――武器はこちらに預けてくださいね。

―――ああ、はい。ではお願いします。

男子生徒は背負っていた刀剣・・・おそらく刀の類を渡すと講堂の方に歩いてゆく。

 

「あ、あなたもこちらで武器を渡して・・・」

「はい、どうぞ」

ドゴオォォォォォン

俺はその場に盾と銃砲を置いた。

この盾と銃砲は特殊な金属で作られているらしく恐ろしく重い。

師匠に散々鍛えられた俺でも、持つのに慣れるまで一ヶ月、実戦で扱えるようになるまで半年もかかったのだ。

それ以外にも靴底にもこの金属と同等の重さの物が仕込んであるため、この靴だけでこの眼前の少女と同じぐらいの重さがあるのではなかろうか?

「・・・えっと、保管場所まで持っていくのお願いできませんか?私の友人もちょっとこれは持てなさそうなので・・・」

「わかりました。では、案内お願いします」

 

このあと、俺はおそらく先輩であろう人に案内してもらって本校舎裏の収納スペースまで持っていくことになった。

そこで小太りのいかにも技術屋のような先輩に絡まれた。

この銃砲はかなり昔に製法が失われており、今ではその製法を知っているものがほとんどいないらしく、先輩はしつこく出所を聞いてきたのだが入学式があることを盾に逃げ出してきた。

 

 

そして、俺は今講堂にて一番端っこの席で話を聞いている。

壇上に立って話をしているのはこの士官学院の長であるヴァンダイク学院長である。

その背丈は2アージュに届く高さであり筋肉の付き方は俺に銃砲を教えてくれたおっさんと同等くらいかそれ以上か。

一度手合せしたいものである。

講堂の前で立っている教員の中にも幾人か知っている顔もある。

一人は若手の軍人であるナイトハルト教官。

もう一人は元A級遊撃士 ≪紫電≫ サラ・バレスタイン

 

いつかは本気で手合せしたいな・・・

 

 

『若人よ、世の礎たれ―――』

「”世”という言葉をどう捉えるのか」

ヴァンダイク学院長の話しは続く。

 

「何をもって”礎”たる資格を持つのか」

これからの社会を担っていくことになるであろう彼等に

 

「これからの2年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手掛かりにして欲しい。」

ささやかな贈り物としての言葉を託す。

 

「―――ワシからは以上である。」

拍手が沸き起こる。

 

そのなかでリィンは頭の中で学院長が贈った言葉を反芻していた。

(『”世”の礎たれ』か……)

言葉自体は短く、その意味は深い。

考えれば考えるほど思考の海に沈んでいく。

 

そんなリィンに声が掛けられる。

「うーん、いきなりハードルを上げられちゃった感じだね?」

声を掛けられた方を見やると、赤に近いオレンジ色の髪をした少年がこちらへ顔を向けていた。

 

「ああ、さすがは《獅子心皇帝》と言うべきか。単なるスパルタなんかよりも遥かに難しい目標だな」

「あはは、そうだよね。」

少年は少し眉をよせてそう言った。

「自己紹介しないか?」

「いいよ。僕はエリオット。エリオット・クレイグだよ」

「俺はリィン。リィン・シュバルツァーだ。」

『よろしく。』

 

自己紹介を終えたリィンはあることに気づく。

「そういえば……同じ制服の色だな。」

「うん、どういう事なんだろうね?」

 

エリオットはそれに同意した。

改めてあたりを見回してみると、自分たちのように赤い制服を着ている新入生はかなり少ないようだ。

「ほとんどの新入生は緑色の制服みたいだけど……。あ、向こうにいる白い制服は貴族の新入生なのかな?」

確かに新入生が座っている席の前から二列は白い制服の生徒たちで固められているようだ……。

「ああ、そうみたいだな。だが……」

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

二人で話をしていると、式の終了を告げる声が聞こえてきた。

 

 

考えている間に話が終わっていた。

・・・にやついてないよな?

俺、子供のころあの森に棲んでいたから友達がいないんだよな・・・人以外の友達というか仲間はいっぱいいたんだけどなぁ

 

ぼっちになったらどうすっかな―――

 

「――以降は入学案内書に従い、指定されたクラスへ移動すること。学院におけるカリキュラムや規則の説明はその場で行います」

そう告げると男性教師は「説明は以上。―――では解散。」

と言って壇上を降りて行った。

新入生たちは立ち上がり男性教師の言われたとおりに行動すべく、ぞろぞろと講堂を出てゆく。

 

「指定されたクラス・・・?」

そんな情報事前に貰ってないのだが。

移動している生徒たちを見ると自分と同じような紅い制服を着た生徒は混じっておらず、講堂内には紅い制服を着た生徒だけが取り残されていた。

ふと、教員が立っていた場所を見るとバレスタイン教官が歩いてきた。

あの顔を見るにこの状況は彼女が知っているとみていいかもしれない。

 

 

「指定されたクラスって……。送られてきた入学案内書にそんなもの、書いてあったっけ?」

「いや、無かったはずだ」

困惑するエリオットと同様にリィンもその言葉に同意する。

「てっきりこの場で発表されると思っていたんだが……」 

だがそんな様子は無く、他の新入生に取り残される形となってしまった。

 リィンはあたりを見回すと自分達の他にも数名、同じ制服を着こんだ者が同じように取り残されているのが目に入り、やはりこの制服の色に何か関係があるのではないかと考えていると、自分達を呼ぶ声が耳に入った。

「はいはーい。赤い制服の子達は注目~。」

そこには先程の入学式において他の教官達と共に脇に控えていた紅色の髪の女性がいた。

「実は、ちょっと事情があってね」

 

そう言うと。

 

「――――君達にはこれから『特別オリエンテーリング』に参加して貰います。」

と告げた。

 

 

 

 


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