キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第八話 蕞防衛戦二日目 中編 カイネを巡る愚者の争い

「河了貂さんっ!」

 

僕は矛を振るい駆けつける。

 

「なんだこのガキッ!」

 

趙兵ののど笛をかっ裂きかっ裂き、女兵士の元に向かう。

 

「今仁、こいつは敵の軍師だ。

捕らえて捕虜にする。

いいか。これは私の獲物だと伝えて、兵士には指一本触れさすなよ」

 

「ええっ 面倒くせっ  

てか、お前、李牧様が好きなんじゃなくて、少女趣味だったのか。」

 

「うっさい! り、李牧様のことは関係ないだろ!

いいから早く連れて行け!」

 

李牧、顔は良いからな~。  そしてこの女兵士も案外良い顔してるから、李牧とつくづくお似合いかもしれない。

 

と、そんな下世話なことを考えている間に、僕はその今仁という、河了貂さんを抱えた趙兵に一閃浴びせた。

 

「うわっ!」

 

今仁は死んだ。

 

だが、

 

「一緒に来い! 河了貂っ!」

 

その女兵士は河了貂さんの右手を掴む。

 

「河了貂さんを離せよっ!」

 

その女兵士の右手を狙って一撃をかます。

 

左手を狙えば河了貂さんにも怪我を負わせてしまう。

 

 

「うわっ」

 

城壁際にいた女兵士はバランスを崩し、河了貂さんの手を掴みながら、落下…………

しなかった。

 

僕が咄嗟に河了貂さんの身体を抱えたからだ。

 

「ひっ、非常時につき、し、失礼します。

それよりも早く、その女兵士の手を離させて下さいっ!」

 

我ながら感心な台詞だ。

 

「おい、ガキ兵っ!

河了貂を抱えているやらしい手を離せ!

さもないと、河了貂の首を突くぞ。」

 

なんてことを言うんだこのアマっ!

 

「うるさいぞ李牧の愛人のくせしてっ!

やらしいのはどっちだっ!」

 

「なっ! り、李牧様と私はそ、その様な関係ではないっ!」

 

河了貂さんが微妙な視線で見てくるのがいたたまれない気持ちにさせる。

 

「ん? どうかしたのか?」

 

たまたま通りかかったのは出っ歯の兵士だ。

 

民兵か飛信隊なのか、イマイチよく分からない身なりだ。

 

「敵の兵士がぶら下がってる。

河了貂さんを人質に取ってるから、殺してください」

 

「?! あ、ああ。」

 

出っ歯の兵士がぶら下がっている女兵士に槍を突き刺すその瞬間

 

「カイネが落ちるぞー!」

 

「「「ぃ、よ、喜んでェーーっ!」」」

 

趙兵は既に女兵士・カイネを受け止める準備を整えていたようだ。

 

それにしても、喜んでってなんだ。

喜んでって

 

 

 

 

 

「うっひょ  姐さんの身体、柔らけー!」

 

カイネを受け止めた趙兵が狂喜乱舞していた。

 

「てめ、なに姐さんだっこしてんだオラッ!」

 

「かわれ、かわれ」

 

「カイネ姐さんは俺の嫁だ」

 

「いや、おれんだ。」

 

「やるか?」

 

「上等だ。 戦よりも大事な、譲れねえもんが俺にゃあるんだぜ」

 

何故か内紛を起こした。

 

「とにかく、助かったよ………章覇に尾平。」

 

出っ歯の人は飛信隊の隊士だったみたいだ。

 

「いえ…………それより趙兵。

いつもあんななんですか?」

 

「んな訳あるか。

一体、なんなんだ、あいつら…………。」

 

「あはは…………。」

 

その後、目覚めた傅抵は竜川百将に吹き飛ばされて城下に消えた。

 

カイネを巡った争いは、傅抵が連中の頭に直撃して収まった。

 

なんて、自由な奴らなんだオイ。

 

 

「尾平さん。 河了貂さんを大王様のいるとこまで、護送をお願いしてもいいですか?」

 

「あ、ああ。 任せておけ。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

 

その後、僕は飛信隊の隊士さん達と一緒に趙の新手を何十人も斬った。

 

 

 

そして、この新手のために、この日の戦いで、南壁は予備の兵士を使い切ってしまった。

 

 

 

 

 

 


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