キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第五話 蕞防衛戦 開戦

直後、僕は父さんに呼び出された。

 

「出しゃばってはダメだろう

結果的にはよかったからまだしも、もしお前の一言で台無しになったらどうしようかとヒヤヒヤしたぞ」

 

「すいません

黙っていられなかったんです………。」

 

「…………だが、的確な分析ではあった。

見事だ。」

 

「ありがとう 父さん。」

 

「さぁ、お前はもういけ 俺は東壁に配属になった。

お前は武術やってるから南壁だそうだ。」

 

父さんは僕の分の鎧と剣を差し出してそう言った。

 

「わかった。」

 

 

 

僕は久々に道場にいった。

 

「章覇っ お前…………っ!」

 

「その、なんだ。  やるじゃねえか」

 

皆から褒められた。

 

「いや…………甘秋が戦う覚悟を決めたのに、僕が逃げるわけにはいかないじゃんか」

 

と、その時。

 

「いでっ!」

 

師匠に矛でぶん殴られた。

 

「な~に一丁前のこと言っとるんじゃお前は

ろくに稽古もせずに」

 

「師匠…………痛いよ」

 

「じゃがな、お前の言うとおりじゃ。

お前の檄も、大王様のそれには大分劣るが悪くはなかったぞい。

 

だから、この矛はお前が使え。

この道場で最強のお前がな。」

 

師匠は自分が大切にしていた矛を渡してくれた。

 

「師匠  良いんですか?」 

 

「うむ。」

 

「ありがとうございます。」

 

僕は矛を受け取った。

 

「ずりぃ!」

 

「よこせっ」

 

同門の人たちから妬みの声が上がる。

 

「欲しけりゃ捕まえてみ!」

 

僕は走り出した。

 

 

 

 

 

そうして南壁に向かっていると

 

「おっ! お前はさっきの甘秋ってガキの……」

 

飛信隊・信が話しかけてきた。

 

「確か…………飛信隊の隊長の信さん?」

 

「ん? おうよ。

って何で知ってんだお前」 

 

「飛の旗で。

それに万極を討った話は聞いておりますから」

 

「ん。 そうか。

とにかく、さっきのはなかなかよかったぜ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「確か、お前の名前、章覇………とか言ったか?」

 

「はい。」

 

「いい矛持ってるな~。 お前。」

 

飛信隊・信は僕の矛の腹をぺしぺしと叩いてきた。

 

「あはは………師匠に先ほど譲ってもらったんです」

 

「ま、俺ももっといい矛を預かってもらってるけどな。

政に。」

 

「政…………やはり大王様と知り合いでしたか」

 

「さてはおまえ、見てやがったな南門で……ったく。

情けねえ姿見せちまったぜ。

 

じゃ、俺は政んとこ行ってくるからな

一緒に乗り切ろうぜ この戦」

 

「はいっ!」

 

 

これが僕と飛信隊・信の最初の出会いである。

 

僕はこの戦いで、飛信隊の幹部・百人将の田有さんという人の下に配属された。

 

 

 

 

 

 

蕞は南道の武器庫だ。

 

肝心の武具・武器は全員に行き渡った。

 

その後、北から総司令・昌平君の援軍が100騎くらい来た。

 

先程、南門で見かけた妙な服の少女が何故か大王様と同じ場所にいて、援軍の到着にやたら喜んでいたのが見えたは何故だろうか。

あの少女、何者なんだろう………。

 

 

 

 

とにかく、僕たち蕞の軍は李牧軍の到着前には戦闘態勢を整えていた。

 

 

 

李牧はこちらの大半が民間人だとすぐに看破したようで、攻める前に降伏勧告を行ってきた。

 

騎馬の美男子。

あれが李牧だろう。  

なんか腕も立ちそう………。

 

「趙国三大天 李牧である!

蕞の住民達に告ぐ!

 

民間人でありながら武器をとったその勇気、敵ながら感服いたす。」

 

バレてる………やはり流石は李牧だな。

 

さてはどっかの民兵が騒いでいたからか………?

 

「しかしながら、蛮勇だけで戦ができると思っているのなら、勘違いも甚だしいぞ!!

 

我が軍は4カ国の軍により選り抜かれた精鋭部隊で構成されている30000の兵。

加えて大将はあの王騎と麃公を討った三大天・龐煖。

そして軍略を預かるのはこの李牧!

 

万に一つの勝ち目もない!

 

降伏せよ 蕞よ  

さすればこの李牧、1人の命もとりはせぬ」

 

 

 

と、その時

 

「ゴチャゴチャとうるせえぞ李牧っ!

てめえの下らない口車になんざ誰が乗るかってんだ!

 

それに戦う前からどうか降伏してくださいなんて頭下げやがって

精鋭部隊が聞いて呆れるぜ ギャハハッ!」

 

飛信隊・信が叫ぶ。

 

「けど残念だったなぁ? 李牧  俺たちは絶対に降伏しねえぞ!

なぜなら…………」

 

「俺たちには全軍の命を擲ってでも譲れねえものがあるからだ!!」

 

「来るならさっさと登ってこい! 何があってもこの城は

てめえらには落とさせねえからな!」

 

「「「「うぉおおおー!」」」」

 

蕞の民兵や飛信隊は雄叫びを挙げた。

 

 

 

 

 

 

 

紀元前241年(始皇6年)

 

龐煖将趙魏楚燕之鋭師攻秦蕞

 

(龐煖の率いる趙魏楚燕の精鋭は秦の蕞を攻めた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の初陣である蕞防衛戦は開戦の火蓋を切った。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




史実でも嬴政は咸陽から自身の衛兵を送り込んでいます。

李牧に合従軍の指揮をさせる……………この『もしも』は他に塚本靑史さんという歴史小説家も合従軍の実質的指揮官として李牧の名前が挙がっても不思議ではなかったと著書『春申君』で語っていました。

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