キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第四十八話 河了貂さんを救え

ーーー(主人公・章覇視点)ーーー

 

廉頗将軍も避けた程と自負する魏火龍七師の一人・凱孟…………。

 

バカにならないほど重い一撃を放ってくる。

 

受け流してはいるが、その一撃一撃の衝撃は徐々に体に蓄積してきている。

 

廉頗将軍の一撃一撃に慣れていなかったら、間違いなく受けきれないだろう。

 

「ぬぉおおおっ!」

 

凱孟の重い一撃がまた来る。

 

重い一撃を躱すため、奴の得物の刃の根元に一撃を叩き込む。

 

「はっは。 やはり廉頗の弟子とあって粘り強い男じゃのう

嫌いでは無い!

 

だが、そろそろ、終わりにさせてもらおう!」

 

「………………!!」

 

次の瞬間、今まで以上に強烈な一撃がたたきこまれた。

 

馬ごとメリメリと地に沈み込む。

 

そして

 

「モヒヒヒヒン!」

 

馬が足を折った。

 

「くっ!」

 

「死にさらせっ!」

 

凱孟が僕の首元に振り下ろし、死を覚悟した次の瞬間

 

 

 

 

 

ガキン!

 

 

痛烈な一撃により、凱孟の刃は弾かれた。

 

 

「ぬっ!」

 

「何してくれてんだ! オッサン!」

 

信さんだった。

 

「信さん!」

 

「「隊長っ!」」

 

「やたら目立ちすぎなんだよ、オッサン。

大将旗をそんなデカデカと掲げやがって。」

 

「ほぅ。  貴様が飛信隊・信か。

面白い。」

 

「章覇。」

 

「はい…………。」

 

「ひとまず、後方行って休んでろ。

お前はよくやった。

 

みろ、味方の精鋭がここに集まりつつある。

敵はそろそろ退かざるを得ねえから、それまで俺がこのデカブツの相手をしてやる。」

 

「分かりました!  行くぞ」

 

「ああ。」

 

300を引き連れて、僕は後方に下がった。

 

馬はもう使えない。 代わりに楽諒を騎馬から降ろし、喬英の騎馬に楽諒を相乗りさせた。

 

凱孟が僕に集中していたためか、味方の損害は敵よりも相当少なく済んでいる。

 

右翼は羌瘣さんの精鋭が縦横無尽に暴れ回り、壊滅的なダメージを与えている。

 

今日の初期陣形は右翼が1番強く、左翼が1番弱い編成になっている。

 

右翼を敵背後に回らせるためだ。

 

だが、どうにも敵左翼には弱兵ばかり………となると、精鋭はどこにいるんだ?

 

つか、あの軍師どこいった?

 

さっきまで見てた奴。

 

 

 

すると、僕の今いる位置よりも、更に後方にて、悲鳴が聞こえてきた

 

「娘軍師を守れぇええ!」

 

河了貂さんに何かあったのだろうか?!

 

見てみると

 

「敵の軍師…………あんなところにいたのか!」

 

敵の軍師が精鋭を引き連れて河了貂さんのところまでもう少しというところまで到達していた。

 

羌瘣さんの右翼に精鋭を固めたため、河了貂さんのいる辺りは弱兵ばかりだったから、到達も容易であったのだろう。

 

 

「あの敵の背後をつくぞ!」

 

「「了解しました!」」

 

敵の軍師の部隊の背後に一気に強襲をかける。

 

この魏兵は一筋縄ではいかない。

 

背後を強襲する状態は一時的なものにおわり、敵の精鋭は反転攻勢に出た。

 

「砕け散れっ! ガキ兵がっ!」

 

「それは、お前だっ!」

 

敵の槍を砕き、余勢を駆って首を切り裂く

 

だが、如何せん、兵の質が違いすぎた。

 

向こうは精鋭、こちらは疲れ切った一般市民出身の兵だ。

 

ならば…………!!

 

 

「全体、錐行陣形を取れ! 敵軍師を討ち取るぞっ!」

 

「おうっ!」

 

全体の力を僕に集中させ、敵軍師のところまで一気に強行突破を図る。

 

攻撃人数を減らしつつも、攻撃力を衰えさせないこの陣形により…………。

 

 

「覚悟しろ! 敵軍師め!」

 

敵軍師のいるところまで、到達した。

 

河了貂さんも挟撃の態勢を整えるべく、弱兵ばかりの周囲の味方の中から、比較的強い兵士の壁を作り上げていた。

 

左右にも壁が出来ており、敵軍師を逃がす隙は無い。

 

確か………包雷とかいう陣形だっけ?

 

六将・胡傷が三大天・藺相如を戦死寸前に追い詰めた陣形と聞いたことがある。

 

「たかだか300程度とはいえ、その力、測り間違えたか。

抜かったわ。」

 

そう呟いた敵の軍師の頭に矛を叩きつけ、馬から叩き落とす。

 

 

「よし! 散開。 敵の残兵を逃がすぞ!」

 

河了貂さんの指示により、魏兵を逃がし、味方の被害を最小限に抑えた。

 

自軍軍師・捕縛

 

この報せを凱孟に伝えさせるという目的もある。

 

 

 

 

 

 

そして、その報せを受けた凱孟は撤退していき。

 

著雍争奪戦一日目。

 

前線の部隊10000を撃破し、この日は夕暮れを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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